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世界的なウイスキーブームが続いています。興味がわいて飲み始めた人も多いと思いますが、その奥深い世界に「どこから入ればいいか迷ってしまう」という声もよく耳にします。そこでウイスキーの基礎からより深い知識まで、5回にわたって解説していきます。第2回は世界5大ウイスキーと基本的なウイスキーの種類です。

( Life ) ウイスキーを楽しむ

世界5大ウイスキーと種類を押さえる

Updated JAN. 30, 2025 14:28
Text : 柳谷智宣
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ここ数年、世界的なウイスキーブームが続いています。とりわけ日本産ウイスキーの人気はめざましく、高騰する価格と品薄状態がしばしば話題にのぼります。そんな中、ウイスキーに興味を持ち始めた人も多いでしょう。

でも、いざ意識して飲み始めてみると奥深い世界が待っていて、「どこから入ればいいか迷ってしまう」という声もよく耳にします。そこで本特集では、ウイスキーの基礎から、より深い知識まで、5回にわたって解説していきます。第2回となる今回は、世界5大ウイスキーと基本的なウイスキーの種類についてです。

  • 魅力的で美味しいウイスキーの世界へようこそ

現在、ウイスキーは世界中で造られていますが、特に定評のある5カ国をまとめて、世界5大ウイスキーと呼ばれます。その5カ国とは、スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、日本です。日本のみウイスキーの歴史が浅いのですが、クオリティの高いウイスキー造りが世界的に評価されています。

ウイスキーはモルト(大麦の麦芽)などの穀物から造られ、地域や種類によって原料や製造方法が異なります。それぞれの地域でも色々なバリエーションがあり、今回はまず基本情報をご紹介します。

スコッチ・ウイスキー

スコッチ・ウイスキーは、その名のとおりスコットランドで造られるウイスキーの総称です。起源は15世紀ごろまでさかのぼるといわれ、当時は薬用酒のような存在でした。やがて蒸留技術が発展し、世界的にも広く愛されるウイスキーへと成長を遂げます。スコッチは大きく、モルトウイスキーとグレーンウイスキーに分類されます。

モルトウイスキーは大麦の麦芽(モルト)のみを原料とし、ポットスチルと呼ばれる独特の形をした釜で蒸留することによって、豊かな風味と個性が生まれるのが特徴です。一方、グレーンウイスキーはトウモロコシや小麦などの穀物を使い、連続式蒸留機で効率的に造られることから、軽やかな味わいに仕上がります。

  • ウイスキーを蒸留するポットスチル。ボウモア蒸留所にて撮影

さらに、スコッチ・ウイスキーはシングルモルトウイスキーとブレンデッドウイスキーにも分けられます。シングルモルトは、単一の蒸留所で造られるモルトウイスキーだけを瓶詰めしたもの。作り手の個性が強く出るという特徴があり、ウイスキー愛好家から根強い人気があります。ブレンデッドウイスキーは、複数の蒸留所のモルトウイスキーやグレーンウイスキーを組み合わせることで、バランスの良い飲みやすさを追求したものです。

モルトウイスキーのほうがコストが高く、販売価格も比較的ブレンデッドウイスキーのほうが安くなります。グレーンのみで造ったシングルグレーンウイスキーもとても数は少ないですが、リリースされています。

  • 写真は「デュワーズ」を構成する原酒の一部です。アバフェルディ蒸留所にて撮影

スコッチウイスキーの味わいには、地域ごとの気候や地形、そして蒸留所の伝統的な手法の違いが大きく影響しています。大きく分けると、ハイランド、ローランド、スペイサイド、アイラ、キャンベルタウン、そしてアイランズ(島々)に分類されています。これらの地域は同じスコットランドという国土にありながら、海からの潮風や内陸部の気候条件、さらには使用する水や麦芽を乾燥させる方法などに違いがあるため、それぞれ個性豊かなウイスキーを生み出しているのです。

ざっくり紹介すると、ハイランドは広大なエリアで多彩なスタイルを持ちます。ローランドは穏やかな気候からライトで優しい口当たり。

スペイ川流域に多数の蒸留所が集まっている地域をスペイサイド呼びます。ここで造られるウイスキーはフルーティーな香りとシェリー樽由来の甘みが魅力です。

アイラ島は力強いピート香やヨード香が際立ち、潮風も感じられる個性派。かつて栄えたキャンベルタウンは、今や数少ない蒸留所ながら潮気とオイリーな風味が希少です。最後にアイランズは、アイラ島を除く島々を指し、地域ごとに異なる風土と製法による違いを楽しめます。

  • スコットランドの雄大な自然と美味しい水の恵みによって、ウイスキーが造られています。写真はアイラ島にて撮影

アイリッシュ・ウイスキー

アイリッシュ・ウイスキーは、アイルランドで造られるウイスキーの総称です。その歴史はスコットランドと同じく古く、中世には修道士たちが蒸留技術を広めたといわれています。かつてアイルランドはウイスキー生産の一大拠点でしたが、戦争や経済情勢の変化などにより衰退期を迎えました。しかし近年の世界的なウイスキーブームに伴い、新たな蒸留所が続々と誕生し、再び注目を集めています。

一般的に、アイリッシュ・ウイスキーは3回の蒸留を行うことが多い点が特徴です。スコッチの多くが2回蒸留なのに対して、アイルランドでは伝統的に3回蒸留し、より軽くなめらかな口当たりに仕上がります。また、アイルランド固有のポットスチル方式で造られる「アイリッシュ・ポットスチル・ウイスキー」は、大麦の麦芽(モルト)だけでなく、未発芽の大麦も使用するため、モルティかつ穀物の風味が豊かです。

こうした蒸留工程や原料の違いにより、アイリッシュ・ウイスキーは柔らかい飲み口、穏やかな甘さ、スムースなのどごしが魅力とされています。カクテルのベースとしても使いやすく、アイリッシュコーヒーやハイボールなど、幅広いアレンジを楽しめます。

  • 「ジェムソン」は有名なアイリッシュウイスキーのひとつ(ジェムソンのWebサイトから)

アメリカン・ウイスキー

アメリカン・ウイスキーは、移民たちがヨーロッパからもたらした蒸留技術を基に発展しました。18世紀ごろにペンシルベニアやケンタッキーなどで始まり、トウモロコシやライ麦、小麦など、豊富な穀物資源を生かして造られてきました。アメリカの広大な土地と多様な気候はウイスキー造りにも大きな影響を与え、独自の風味を持つ地域限定のブランドが数多く存在します。

代表格といえばバーボンです。バーボンとは、アメリカ合衆国で造られるコーン・ウイスキーの一種で、法的には原料の51%以上にトウモロコシを使用し、新樽の内側を強く焦がしたオーク樽で熟成することが義務付けられています。

特にケンタッキー州で造られるものが有名であり、そのほとんどはライ麦や小麦、大麦の麦芽をブレンドして味のバランスを整えます。樽の内側を焦がすことで生まれる甘く香ばしい香りと、芳醇なバニラやカラメルの風味が大きな魅力です。

  • 木樽の内側は炎で焦がします。さらに焦がした板を追加で入れることもあります。メーカーズマーク蒸留所にて撮影

また、ライウイスキーやテネシーウイスキーなど、バーボン以外にも多彩なスタイルが存在します。ライウイスキーはライ麦が主原料で、スパイシーな味わいが特徴。テネシーウイスキーはチャコール・メローイングと呼ばれる独特のろ過工程を経て、さらにまろやかな口当たりを実現します。アメリカン・ウイスキーは多彩な風味のバリエーションとカジュアルな飲みやすさで、多くの人々に親しまれています。

  • バーボンだけでも数えきれないくらいの製品があります。ケンタッキー州のショップにて撮影

カナディアン・ウイスキー

カナディアン・ウイスキーは、19世紀ごろに移民がもたらした蒸留技術を基礎に、カナダの豊かな穀物資源を活用して発展しました。カナダは寒冷な気候や広大な国土を持ち、自然環境による影響を受けながらも、実用性と効率性を重視した蒸留が進められてきました。禁酒法の時代にはアメリカへ密輸するために大きな需要が生まれ、品質と生産体制を高めるチャンスにもなりました。

カナディアン・ウイスキーはブレンデッドが主流で、軽やかで飲みやすいのが特徴です。トウモロコシ、ライ麦、小麦など多様な穀物を使い、連続式蒸留機によって効率的に造られるため、全体としてまろやかな口当たりに仕上がりやすいのです。

一方でカナダにはライウイスキーの伝統も深く根付いており、辛みやスパイシーさを生かした商品も存在します。現代ではライトなブレンデッドから、モダンなクラフト蒸留所が手がける個性的なライウイスキーまで、多彩な選択肢が共存している点が魅力です。

そのため、カナディアン・ウイスキーは飲み方も柔軟。ストレートやオン・ザ・ロックはもちろん、カクテルの材料としても使われています。落ち着いた甘みと穏やかな風味を生かしたハイボールやミキサードリンクは、日常シーンでも楽しみやすいでしょう。こうしたカナダ独自のウイスキー文化は、アメリカやスコットランドなどの影響を受けつつも、独自に発展してきた歴史の賜物だといえます。

  • 「カナディアンクラブ」はもっとも有名なカナディアンウイスキーのひとつ。画面はサントリーのホームページ

ジャパニーズ・ウイスキー

ジャパニーズ・ウイスキーの始まりは、20世紀初頭に日本人がスコットランドで学んだ蒸留技術を基礎としています。竹鶴政孝氏がスコットランド留学で得た知識を持ち帰り、日本独自のウイスキー造りを始めたのです。当初はスコッチを模倣する形でスタートしましたが、日本の風土や気候、職人の繊細な技術の影響を受けることで、徐々に独自の進化を遂げていきます。

ジャパニーズ・ウイスキーが世界的に高い評価を受ける要因のひとつに、ミズナラ樽の存在があります。日本固有のオークであるミズナラを使った熟成においては、独特の香木を思わせる香りや、和のニュアンスを含んだ味わいが生まれます。また、日本の四季の移り変わりがウイスキーの熟成に影響を与え、比較的短い期間でも豊かな風味が育まれるのです。こうした条件が相まって、海外のウイスキーとは異なる繊細で複雑な味わいが特徴となりました。

  • ミズナラ樽で熟成した「山崎50年」。香木の香りが最高でした。今では数千万円の価格が付いています……

製法や原料の分類としては、モルトウイスキーとグレーンウイスキーがあり、またブレンデッド、シングルモルト、さらに近年はシングルグレーンまで幅広く展開されています。日本特有のクラフト蒸留所も増加し、個性的な製品が続々と誕生しているのも見逃せません。

酒税法におけるウイスキーの定義は「10%以上穀類由来のウイスキー原酒を使用」と緩く、かつては低品質な商品もあったものです。そこで、2021年に日本洋酒酒造組合は「ジャパニーズ・ウイスキー」を定義しました。原材料には麦芽、穀類、日本国内で採水された水のみを使用し、糖化、発酵、蒸留は日本国内の蒸留所で行うこと、そして内容量700リットル以下の木樽に詰め、日本国内で3年以上貯蔵すること、などが定められています。

今や世界のコンペティションで数々のアワードを受賞するほど地位を確立したジャパニーズ・ウイスキー。職人のこだわりや日本的な美意識が感じられる奥深い味わいは、ウイスキー愛好家だけでなく、多くの人々を魅了し続けています。

  • ジャパニーズ・ウイスキーの品質は世界に誇るレベルです。山崎蒸留所の熟成庫にて撮影

以上が、世界5大ウイスキーの概要となります。スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、日本という各地の風土や歴史、そして人々の工夫が織りなす多彩なウイスキーの世界。ぜひ色々と飲み比べてみて、その個性豊かな味わいを楽しんでください。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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