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ダンロップの「シンクロウェザー」といえば、大谷翔平選手が出演するCMでおなじみの新型タイヤだ。ドライ路面と雪道の「二刀流」をこなせるというシンクロウェザーの実力は? メルセデス・ベンツの名車「W124」に装着して一般道、高速道路、雪道を走ってみた。

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二刀流タイヤの実力は? 「シンクロウェザー」をメルセデスの名車で試す

JAN. 24, 2025 08:00
Text : 原アキラ
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ダンロップの「シンクロウェザー」といえば、大谷翔平選手が出演するCMでおなじみの新型タイヤだ。CMでは「このタイヤ、何刀流だ。」というメッセージが出てくるが、ドライ路面と雪道の「二刀流」をこなせるというシンクロウェザーの実力は? メルセデス・ベンツの名車「W124」に装着して一般道、高速道路、雪道を走ってみた。

  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車

    「シンクロウェザー」の実力は? メルセデス「W124」に装着!(本稿の写真は撮影:原アキラ)

そもそも「アクティブトレッド」とは?

シンクロウェザーは、水に濡れたり温度が下がったりするとゴムが柔らかくなる次世代タイヤ用の新技術「アクティブトレッド」を初採用したオールシーズンタイヤだ。このタイヤを愛車のメルセデス「W124型E280セダン」に取り付けて実力を試した。

さて、アクティブトレッドとはなんぞやというのが最初の疑問だが、ダンロップブランドを展開する住友ゴム工業によれば、タイヤのゴムの中に路面状態の変化に反応する2つの「スイッチ」を組み込むことで、ゴムの柔らかさの因子となるポリマーの動きをコントロールできるようした技術である、との説明だ。とはいえ、念のために申し上げておくと、タイヤの中に物理的なスイッチが入っているわけではない。

  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車

    「シンクロウェザー」はタイヤの中にスイッチが組み込まれている?

2つのスイッチとは「水スイッチ」と「温度スイッチ」だ。

ゴム内のポリマー間の結合の一部を従来の「共有結合」から水で脱着できる「イオン結合」に置き換えることで、水に触れることでゴム表面が柔らかくなり、ウェット路面でグリップ性能が向上するのが「水スイッチ」である。

ゴム内のグリップ成分の一部をポリマーから切り離しても機能する材料に置き換える新発想により、常温ではサマータイヤと同等の剛性感をもちながら、氷上路面など低温でも柔らかくグリップする機能を「温度スイッチ」と呼ぶ。

この2つのスイッチを組み合わせることで、ドライ、ウェット、雪上、氷上のあらゆる路面で高い性能を発揮するゴムが「アクティブトレッド」だ。その技術を初採用したのが、今回のオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」である。

その性能は、2024年2月の旭川と6月の岡山で行われた住友ゴムの夏冬性能試乗会で体感済み。ただ、その際はテストコースでの試乗だったので、実際の道路ではどんな感じになるのか興味津々だった。なので今回、愛車のW124に装着してみたわけだ。

195/65R15サイズを認定店で装着! デザインは?

W124の純正タイヤサイズは195/65R15。今までは夏タイヤとしてはブリヂストン「レグノ」、冬タイヤとしては4シーズン目のグッドイヤー「アイスナビ」という組み合わせで使用していたが、今回はスタッドレスとおさらばしてシンクロウェザーを装着することにした。同じサイズはダンロップのテスト会場で「カローラ」が履いていたので、製品化されているのは確認済みだった。

新製品であるシンクロウェザーを装着するには、同社の認定試験に合格したスタッフがいる「認定店制度」を取り入れたお店を選ぶ必要がある。筆者は東京・用賀にある「タイヤセレクト世田谷用賀」で取り付けていただいた。

  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • タイヤセレクト世田谷用賀でシンクロウェザーを装着

「DUNLOP」と「SYNCRO WEATHER」のロゴがよく目立つサイドウォールには、「ACTIVE TREAD」のシンボルマークとともに、国際氷上テスト合格の「アイスグリップ」、欧州冬用タイヤの「スノーフレーク」、オールテレインの「M+S」、日本の冬タイヤである「SNOW」の各マークがずらりと刻まれている。チェーン規制がかかっていない道路であれば、そのまま走行可能なタイヤであることの証明だ。製造年月日は「3724」(2024年37週目製造)と当然ながら新しい。空気圧はフロントを指定通りの2.2barとし、リアは0.1barアップの2.4barとした。

  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • 「シンクロウェザー」のトレッドパターン

  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • 「シンクロウェザー」のサイドウォール

  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車

    「W124」の指定空気圧は給油口のフタに書かれている

サマータイヤとしての乗り心地は?

早速、ドライ路面に走り出してみると、ロードノイズの少なさ、乗り心地の良さに改めて感心する(まぁ、新品タイヤ装着時には、だいたいそう感じるものなのだが)。筆者はこれまでもグッドイヤーとミシュランのオールシーズンタイヤを装着したことがあり(どちらも初期型)、オールマイティな性能のトレードオフとしてロードノイズが高まることを知っていたのだが、そこは良い方向に裏切られた。排水、排雪を考慮すると、どれもよく似た形になってしまうV字のトレッドパターンだが、最新のノイズシミュレーションを用いたシンクロウェザーでは、ここが大きく改良されているのだ。ふわりとした乗り心地を提供してくれる代わりに、路面との接地感が少し薄まるというフィーリング面については、好き嫌いが分かれるかもしれない。

シンクロウェザー装着後、すぐに東京~浜松間を往復(浜松のスズキ歴史館取材のため)して650kmほど走り、燃費は約9.8km/Lだった。これまでW124を使用したロングドライブの燃費は大体10km/Lをオーバーしていたので、そこだけが不満点として残った。その対策として考えられるのは、タイヤの空気圧をアップしてみること。すぐにフロント2.4bar、リア2.6barにしてみたが、一般道でも高速でも変わらず静かな乗り心地がキープされていて、いい感じなのだ。

  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • 浜松往復では9.8km/Lをマーク

油断は大敵?

年が明けてからは、山梨県北杜市に私用があったので、雪道走行も期待してW124で行ってみた。残念ながら目的地付近には降雪がなく、ドライ路面が続くばかり。諦めかけたところで、八ヶ岳に向かってまっすぐに伸びる林の北側に並行する部分(つまり、1日中日陰になっている場所)だけに、雪がしっかりと残っている坂道を発見。あたりの交通量もほぼゼロだったので、迷わず乗り入れた。

  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車

    山梨県に出掛けてみると……

  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • うまい具合に雪の残る道路を発見!(山梨県原村付近)

するとシンクロウェザーは、雪をしっかりとグリップしつつ、まずまずの勾配をモノともせずどんどんと登ってくれる。ステアリングを左右に切ってもフラつかず、手応えがある。「温度スイッチ」が入って柔らかくなったタイヤ表面が性能を発揮しているのがよくわかるのだ。「さすが!」と思いつつ坂の途中でクルマを止めて撮影を行うことにした。

そして再スタートしようとしたその時だ。アクセルをゆっくりと踏み込むと、ウォーンと直列6気筒エンジンの回転が上がるのだが、W124は全く前に進まない。少しバックして滑ったあたりを確かめると、タイヤの回転で表面の雪が飛ばされたその下は、ツルンツルンのアイスバーンになっているではないか。平らな氷上ならまだしも、凍った斜面でデフロックのないW124のような単純なFRでは、通常のスタッドレスを履いていてもムリかも、という状況だったのだ。

  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • 撮影を終えて再スタートしようとすると、リアが空転して前に進まなかった。黒い部分がリアタイヤのスリップ跡。坂道の表面はツルンツルンの鏡のような氷で覆われていた

仕方がないのでずーっとバックして雪のないところまで戻った。テストコースとは違い、一般道はどんな罠が待ち受けているかわからないので、油断は大敵なのだ。トランクには布製チェーンの「オートソック」を積んでいたけれども、帰ってから亀甲型の金属チェーンも追加して搭載した。

  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • トランクにある布製チェーン「AutoSock」(オートソック)の装着をテスト

  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車

    オートソックとともに金属チェーンも載せておくことにした

この日は294km走って給油したハイオクガソリンは26.85L。単純な満タン法で10.95km/Lになり、ロングドライブでの燃費は改善された。シンクロウェザーの空気圧は、W124に限っては少し高めにしたほうがいいかも、という結論を得た。

  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • メルセデス・ベンツ「W124」の「シンクロウェザー」装着車
  • 八ヶ岳をバックにしたW124シンクロウェザー装着車


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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