東京医科歯科大学は、同大学難治疾患研究所の仁科博史教授、山崎世和特任助教(現エール大学)、出来(有馬)誉恵氏の研究グループが、早稲田大学先進理工学部の柴田重信教授、名古屋大学環境医学研究所の山中宏二教授、金沢大学医学系の河﨑洋志教授、東京大学医科学研究所の山梨裕司教授、東京女子医大医学部の松岡雅人教授、米国カリフォルニア大学のJamey D. Marth教授、オーストリアIMBAのJosef M. Penninger教授との共同研究で、概日リズムや運動の制御に重要な遺伝子を同定したことを発表した。この研究成果は8月4日、国際科学誌「Scientific Reports」オンライン版で発表された。

神経細胞特異的MKK7欠損マウスの活動記録(出所:ニュースリリース※PDF)

これまで研究グループは、リン酸化酵素であるMKK7が哺乳動物培養細胞に内在する細胞時計の制御に関わること、マウスの神経系の発生に必須の役割を果たし、生後すぐに致死となることを報告してきた。しかし、成体マウスの神経細胞における役割は不明であった。

そこで、成体マウスの神経細胞特異的なMKK7欠損マウスを作出し、MKK7の機能解析を行った結果、MKK7欠損マウスは活動の概日リズム周期や活動量に異常をきたし、さらに加齢に伴って後肢に顕著な筋力の低下を示すことが明らかになった。筋力の低下には骨格筋の萎縮と脊髄の軸索変性が付随した。

この結果は、MKK7が成体の神経細胞において概日リズム制御ならび運動能の保持に必須の役割を果たすことを示唆している。

最近、ヒトの統合失調症患者の中にMKK7遺伝子の変異が報告されており、概日リズム障害や加齢依存的な運動能低下に関するこの研究成果は、今後の精神や運動に障害を持つヒト疾患の原因解明に貢献する可能性があると説明している。

神経細胞特異的MKK7欠損マウスの加齢依存的な筋力低下(出所:ニュースリリース※PDF)