ヤンマーは5月23日、揚げ物などに用いられた後の廃食油を、そのまま加工することなくバイオマス燃料として運転することが可能なバイオディーゼル仕様のマイクロコージェネレーション「CP25BDZ-TC」を開発したことを発表した。

従来、廃食油を用いたバイオディーゼルは水分やカスを取り除く前処理工程の後、メタノールと反応させることで、「脂肪酸メチルエステル(FAME)」へと化学変化させ、その後、化学変化の際に分離されたグリセリンや、反応せずに残ったメタノールなどを除去することでようやく燃料として利用可能となるなど、手間が多く、年間35万トンといわれる廃食油のうち、1万トン程度しかバイオディーゼル燃料として活用されていなかったという。

一方、ヤンマーは、これまで下水処理場などを中心に、バイオガスマイクロコージェネレーションを提供してきたノウハウがあり、それをベースに、動力源をガスエンジンから液体燃料が利用可能なディーゼルエンジンへと変更する形で、バイオディーゼル燃料の発電用途での活用を検討してきた。同社が発電用途に着目した背景には、バイオディーゼル燃料をバスやトラックに活用するという動きもあるが、環境規制が年々厳しくなっていっていること、ならびに長期間、バイオディーゼル燃料を利用した場合、不純物の残留や酸化しやすい、ゴム類が膨潤しやすいなどの注意するべき点が多く、そのためメンテナンス頻度が高く、運転時に不具合が生じると事故につながりかねない、などの観点から、発電用途が最適であると判断したようだ。

同コージェネが利用可能なバイオディーゼル燃料は、上述のFAMEのほか、不純物を取り除いただけの植物油(廃食油)であるストレート・ベジタブル・オイル(SVO)の2種類。FAMEは、軽油と同等の燃焼性を有しているが、SVOは、常温で粘度が軽油の約10倍程度と高いという問題ある。同社では、油の種類などによって異なるSVOの性質を分析し、SVOタンクを最適に加熱することで、粘度を実用レベルにまで下げる手法を考案。その結果、1時間あたり8リットルの廃食油で25kWの出力(連系時)を実現。発電効率も35.0%を達成したとする。また、同コージェネの回収熱量は34kWで、廃熱を活用して85℃の温水も供給することが可能となっている。

FAMEとSVOの概要

基本的な活用方法としては、小規模な店舗や工場、施設などに設置し、地域で発生した廃食油を燃料に、地産地消バイオマス発電システムとして、常用発電利用を想定しているが、非常時(停電時)における自家発電システムとしての利用も可能とのことである。

さらに、バイオディーゼル燃料の活用における課題の1つとなるメンテナンスについては、条件などによって異なってくるが、基本的には2000時間を目安としており、独自の遠隔監視システム「RESS」で機器ごとの運転状況を把握し、運転時間や発電電力量などをモニタリングするソリューションも用意しているとしている。

なお、受注開始は7月1日を予定。メーカー希望小売価格は1500万円(税別)だが、タンクユニットや付帯工事などは、別途追加費用が必要となる。販売はヤンマーのほか、染谷商店の関連会社BDFでも担当していくとしており、今後もパートナー企業を広く募集を行っていき、2020年度までに累計で200台の販売を目指すとしている。廃食油を、そのまま利用できるというメリットを勘案すると、目標販売台数はいささか物足りないものにも思えるが、ヤンマーエネルギーシステム営業統轄部 エンジニアリング部 ソリューション営業推進グループ 部長を務める林清史氏によると、「メンテナンス頻度が高いという点をご理解いただく必要があるのが大きなポイントとなる。これまでなかった市場を生み出す、という点でも、いきなり強気な姿勢は出せない」ということで、着実に成果を積み重ねていくことで、地産地消バイオマス発電という市場を育てていきたいとしていた。

2017年5月23日から26日にかけて東京ビッグサイトにて開催されている「2017 地球温暖化防止展」のヤンマーエネルギーシステム/BDFブースにて展示されている本物のバイオディーゼル仕様のマイクロコージェネレーション「CP25BDZ-TC」。実証実験機はローソンのほか、生協、おかき製造工場などで稼動している。コージェネのサイズは2010mm×1990mm×800mmで、質量は1250kg