日本パラリンピアンズ協会は8月23日、「第3回 パラリンピック選手の競技環境 その意識と実態調査」の結果を発表した。同調査は9月7日に開催される南米初のパラリンピック「リオデジャネイロパラリンピック」を前に実施されたもの。

調査期間は7月4日~8月5日、対象は2016年リオデジャネイロパラリンピック日本選手団代表選手及びコーチ・スタッフと、2014年ソチパラリンピック日本選手団代表選手及びコーチ・スタッフ。回答者数は計175名(夏季選手97名、冬季選手14名、夏季コーチ・スタッフ54名、冬季コーチ・スタッフ10名)。

負担が大きい項目は「国際大会参加のための遠征費」

「選手が1年間に、競技のために個人負担する費用」で最も多かったのは「100~150万円未満」で全体の21.6%を占めた。以下「50~100万円未満」(20.7%)、「50万円未満」(18.0%)、「150万円~200万円」(13.5%)、「250万円以上」(12.6%)となった。

「選手が1年間に、競技のために個人負担する費用」

夏季(リオデジャネイロ)と冬季(ソチ)を比べると、冬季の選手では「250万円以上」が35.7%にも及び、夏季の選手よりも個人負担額が多いという傾向が明らかになった。

全選手平均自己負担額は147万円(推計値)。また、夏季と冬季の平均額では、冬季が249.3万円に対し、夏季が131.7万円と、120万円近い差が出た。

「競技活動にかかる費用負担が大きい項目」を尋ねたところ、「遠征費(国際大会参加)」が42.3%と高い結果となった。冬季と夏季とで比較すると、冬季は「道具・器具購入費」(42.9%)が高いのに対し、夏季は、「遠征費(国際大会参加)」(44.3%)が最も多かった。

「競技活動にかかる費用負担が大きい項目」

パラリンピック選手の3割が「企業との契約なし」

「企業との契約関係の有無」については、68.5%が「企業との契約関係がある」と回答したものの、契約関係のない選手が約3割であることもわかった。

「企業との契約関係がある」と回答した選手に、「どのような契約形態であるか」を聞いたところ、「契約・嘱託社員」(50.0%)が最も多く、次いで「アスリートとしてのスポンサー契約(ウェアや用具のスポンサー契約)」(36.8%)、「正規社員」(23.7%)という結果になった。

企業との契約形態

「障害を理由にスポーツ施設の利用を断られたりした経験」を尋ねたところ、「ある」が21.6%で、「ない」が74.8%。パラリンピック出場選手でさえも、5人に1人が「障害を理由に施設利用を断られたり条件付きで認められた経験がある」と回答していることが明らかになった。

断られた経験のある選手からの自由回答による状況説明によれば、「キズがつくから」といった回答が車椅子バスケットボール、ウィルチェアーラグビーなどの車椅子スポーツ選手からの回答が多く、競技による偏りも見られた。また、視覚障害や知的障害の選手から、「危ない」「けがした場合の保障ができない」などの理由も挙げられた。

「専任コーチの有無」では、「専任コーチがいる」と回答した人が64%となり、前回調査から約1割増加した。専任(パーソナル)コーチをつけている選手に、「そのコーチは高い専門性を有しているか」を聞いたところ、41.8%が「有していると思う」と回答した。

オリンピックとの違いは「一般の関心」

「2020年に東京で開催されるパラリンピック競技大会の開催意義」を聞いたところ、「パラリンピックに関心を持ってもらう良い機会になる」(80.2%)が最多。次いで、「障害者のスポーツ全体の活性化につながる」(53.2%)、「パラリンピック選手の競技環境が良くなると期待できる」(45.9%)、「障害者に対する理解が深まる」(41.4%)となった。

「2020年に東京で開催されるパラリンピック競技大会の開催意義」

「パラリンピック選手が感じるオリンピック選手との違い」で最も多かったのは「一般の人の関心」(40.5%)、次いで「競技環境」(36.0%)、「競技団体の組織力や経済力」(33.3%)だった。

「パラリンピック選手が感じるオリンピック選手との違い」

コーチ・スタッフが感じる違いでは「競技環境」(51.6%)、次いで「競技団体の組織力や経済力」(46.9%)、「一般の人の関心」(39.1%)の 3 項目が上位となった。