肝臓や膵臓などさまざまな器官を再生するための立体的な器官の芽(原基)をつくり出す、新たな培養手法が発見された。再生医療を進めるための画期的な技術として注目される。

図1. さまざまな器官の芽創出への応用に成功

図2. 機能的な腎組織の形成を確認

発見したのは、横浜市立大学大学院医学研究科の武部貴則(たけべ たかのり)准教授と谷口英樹(たにぐち ひでき)教授、埼玉大学大学院理工学研究科の吉川洋史(よしかわ ひろし)准教授らのグループ。研究成果は、米国科学誌「Cell Stem Cell」に4月16日掲載された。

同グループはこれまでに、胎内で臓器の芽が形成されるプロセスを模倣した人為的な培養技術により、試験管内で、ヒトiPS細胞から立体的な肝臓の芽(肝芽)をつくり出し、自己組織化させることに成功している。未分化な内胚葉細胞、血管内皮細胞、間葉系細胞を共に培養すると、48時間程度で立体的な肝芽が自己組織化されることを突き止めていた。その培養条件を絞り込んだ結果、間葉系幹細胞の存在と、培養系の物理的な外部環境の硬さに起因する多細胞集団の力学的な収縮現象が必須の条件であることを解明し、今回の培養技術の確立につながった。

この新たな培養技術によりすでに研究チームは、ヒト間葉系細胞とマウス胎児等の細胞を共に培養することで、肝臓、膵臓、腎臓、腸、肺、心臓、脳などのさまざまな器官の立体的な芽をつくり出すことに成功している。またがん細胞から血管などを含むがんの元となる組織をつくることにも成功した。さらに、試験管内でつくられた器官の芽や組織は、生体内へ移植すると2-3日で機能的なヒト血管網を構成できたとし、マウスを使い、この培養手法で作製した膵組織が血糖値を下げ、腎組織が尿をつくる組織を自律的に形成したとしている。

今後、研究は、国立研究開発法人医療研究開発機構(AMED)再生医療実現拠点ネットワークプログラムの支援を受け、横浜市立大学を拠点に、肝芽移植の臨床への応用の実現を目指して進められる。肝不全や腎不全など臓器不全のための新たな移植療法や治療法の開発のみならず、人為的につくり出したがんなどの異常組織を使った創薬分野への貢献も期待される。  

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