赤色部分を茶系にした京都のマックは多いが、マクドナルド東山三条店は赤色部分がほぼない

数多くの寺社を始め、様々な歴史的建造物や名所旧跡が存在する古都・京都。特に京都市中心部は、そうした名所旧跡や古い街並みとショッピング街・繁華街が混在した状態となっている。そのため、京都市では昭和31年(1956)から屋外広告物条例を制定し、商店の看板などに一定の規制を設けている。

調和する色彩、マクドナルドにも黒や白が

規制の内容は、「広告の“地”の部分は白地を原則とし、周囲の景観との調和を配慮する」「特に、赤・黄色を下地に用いる場合は、これらの色と補色関係(正反対)にある色の使用を避ける」といったもの。これにより全国展開している有名チェーンなども、京都市内の店舗では他府県では見られない京都独特のデザインに変更がなされている例が、数多く見受けられるのである。

マクドナルド烏丸丸太町店は、黒を基調としたシックな看板

KFC北白川店のロゴは、背景が赤色でないどころか格子戸状になっている

例えばマクドナルド。マクドナルドの看板と言えば、赤色の背景に黄色い「M」のロゴ、そして白字で「マクドナルド」と書いてあるのが一般的だが、京都市内のマクドナルドの多くは配色が異なる。京都御苑のすぐ南西側向かいにある烏丸丸太町(からすままるたまち)店の場合、背景の色が赤ではなく黒になっており、とてもシックで落ち着いた雰囲気の看板及び店構えとなっている。

また、東山三条店にはもはや背景色すらなく、タイル張り風の店頭外壁の上に白字で「McDonald's」の文字が並んでいるだけ。おなじみの黄色い「M」のロゴは、店舗上方の1カ所に小さく掲げられているのみである。

「ケンタッキーフライドチキン」の看板も、赤色の背景に白字でKFCの文字が並んでいるのが一般的だが、京都市内の多くの店舗では背景色も白にしている。更に北白川店では、外観上部が格子戸状になっていて、和風テイストな印象の造りとなっている。

また、牛丼の「吉野家」の看板も、京都ではおなじみのオレンジ色の占める割合が極力抑えられている。四条東洞院(しじょうひがしのとういん)店に至っては、店頭上部の看板は白地に黒文字というモノトーン状態となっており、吉野家のイメージカラーであるオレンジ色が全く消し去られているといった具合だ。

オレンジ色部分が全くない吉野家看板は京都の中でもレア(吉野家四条東洞院店)

オレンジ色と言えば、auショップも鮮やかなオレンジ色の看板が印象的だが、京都ではベースの部分と文字の部分の色が反転。つまり白ベースにオレンジ色でauのロゴとなっていて、完全に白がメインとなっている。

ベース部分と文字部分の反転パターンで言うとユニクロもそうだ。本来は赤色ベースに白文字がほとんどだが、白地に赤文字で「UNIQLO」と書かれた看板になっている。

印象的なオレンジではなく、白ベースに(auショップ烏丸御池(からすまおいけ)店)

元々がシンプルなデザインなので意外と違和感を覚えない(ユニクロ西陣店)

瓦屋根のセブンだってある

もちろんコンビニも例外ではない。例えばセブンイレブンの場合、ビル内などではなく独立した店舗では、瓦屋根の和風の外観となっており、また幾つかの店では、店頭の看板などもモノトーンの色使いとなっている。

京都のセブンイレブンの多くが、瓦屋根の造りとなっている(撮影地:セブンイレブン平安神宮前店)

あのカラフルな看板もモノトーンに(撮影地:セブンイレブン京都福王子店)

ローソンも看板のベース部分の色が鮮やかなスカイブルーではなく、濃い青色になっている店舗や、白ベースに黒字というモノトーンになっている店舗がほとんど。

八坂神社前店に至っては、看板も含め外観全体がモノトーンになっている上に、屋根は瓦ぶき、周囲には犬矢来(いぬやらい=京都の町家でよく見るアーチ型の竹をハカマ状に軒下に敷き並べたもの)、そして格子戸をあしらった部分もあるという徹底ぶりだ。

ちなみにこのローソン八坂神社前店は、京都市が景観に配慮した屋外広告物を表彰する「市優良屋外広告物賞」の最優秀賞にも選ばれている。

あんどんをイメージした照明とシックな外観・看板で見事に周囲と調和している(ローソン八坂神社前店)

もちろんこれら以外にも、京都の広告物規制該当区域内には、飲食店やコンビニ、ガソリンスタンドから銀行に至るまで、全国的になじみ深いロゴやイメージカラーを持つ様々な店舗・施設がある。京都を訪れた際には、景観に配慮したそれらの“京都仕様”デザインを見つけるのも面白いかもしれない。

●information
京都市「屋外広告物条例・規則・告示及びガイドライン」