Texas Instruments(TI)は5月25日、都内で自社アナログ半導体のグローバルおよび日本市場に関する事業戦略の説明を行った。同社は2011年にNational Semiconductor(NS)を買収しており、今回の説明はNSの買収背景などを含めたものとなった。

アナログ半導体事業は同社の売り上げの約50%を占めており、同社の成長基盤の1つとなっている。また、市場全体としてもエネルギー分野やモバイル機器などの新たなアプリケーションの登場、電気自動車や電動ドリルなどの電子化などが進んでおり、成長が期待される分野でもある。

Texas Instrumentsのシニア・バイス・プレジデント アナログ事業統括のGregg Lowe氏

「Silicon Valley Analog(SVA:旧NS)の買収もこうした市場ニーズに対応するためのもので、これによりポートフォリオは約45000以上に達し、より多くのサポートを提供することが可能となった。さらに、旧NSのFabとパッケージング工場も入手しており、より多くの価値をカスタマに提供できるようになった」(Texas Instrumentsのシニア・バイス・プレジデント アナログ事業統括のGregg Lowe氏)という。

この45000以上のアナログ製品の分野としては、「データコンバータ/アンプ」、「インタフェース/クロック」、「バッテリ/パワーマネジメント」などがあり、これらをサポートするためのデザインシミュレータ「WEBENCH」の提供も行っており、これらの取り組みにより、「LED照明や電気自動車、計測器など幅広い分野での採用が進んでいる」(同)とした。

TIとNS(現SVA)の統合により、アナログ半導体のポートフォリオは45000以上となった

また、TIとNSの組み合わせにより、プロダクトの提供ではなく、「ソリューションとして75以上のアプリケーションの提供が可能となった。これにより、市場導入期間の短縮やシステムの小型化など多くの利点をカスタマは享受できるようになった」ということを強調する。

さらに、アナログ半導体に関する投資を継続して行っていくことも強調した。世界各地でラボの開設を進めている(旧NSのヘッドクォーターもシリコンバレー・ラボとして2012年3月に変更された)ほか、モータドライブ製品などの新たな分野に向けた研究開発も強化を行ってきているという。

旧NSのヘッドクォーターオフィスは2012年3月にシリコンバレー・ラボへと変更された

加えて、過去3年間で3つの工場(テキサス、会津、中国)も新たに稼働を開始しており、生産能力の拡大も進められている。「生産能力、ポートフォリオ、営業およびアプリケーションエンジニアといったさまざまな側面の規模の拡大がカスタマに向けたサービスの向上につながる。Fabを300mm化したこともそうしたことの一環だ」(同)とのことで、今後も規模を追求したビジネスを推し進めていくとした。

日本テキサス・インスツルメンツ執行役員 営業・技術本部 本部長の田口倫彰氏

一方の日本市場としては、2009年より地域営業拠点の拡充を進めてきており、現在11営業拠点を有するまで拡大してきている。旧NS(日本法人ナショナル・セミコンダクター)のスタッフも2011年11月の組織統合により、これらの営業拠点への再配置がなされたという。また、海外の営業拠点とも連携を強化しており、「これにより中国やインドなどのアジア市場に向けた事業展開を図りたい日本のカスタマと密接な連携とサポートが可能となった」(日本テキサス・インスツルメンツ執行役員 営業・技術本部 本部長の田口倫彰氏)という。

日本TIとして注力するアプリケーション/ITソリューションは「センサ」「LEDライティング」「車載」「ワイヤレス給電」「DLPの応用」の5つ。

センサ分野は加速度、ジャイロ、Eコンパス向けが伸びており、アナログtoデジタルのシグナルコンバータや信号処理製品などをソリューションとしての提供を進めており、具体低にはジャイロ、圧力、磁気、加速度などとMSP430を組み合わせた評価キットという形での提供を推進しているという。

センサ市場とTIが提供するセンサ市場向けソリューションの例

また、車載分野はEV/PHVに市場が向かっていることもあり、車体の軽量化とネットワーク化が課題になってきていることを指摘。ネットワーク化としては、エンタテイメント関連の機器の搭載が進んできているほか、バックサイドカメラなどの搭載義務化などが米国で進むなど、より多くのデータを処理する必要がでてきており、旧NSが提供していたLVDS製品とTIの製品であるDSPやARMプロセッサによる処理を組み合わせたソリューションを提供することで対応を図っているとする。

車載向けソリューションの例

そしてワイヤレス給電は、TIとSVAの製品を柔軟に組み合わせることで、さまざまなニーズに向けたソリューション構築の支援が可能となっているほか、DLPではこれまでデジタルシネマやプロジェクタ向けだったのが、車載機器としての適用を目指しているという。

ワイヤレス給電向けソリューション例

FPDを速度メータなどに適用する提案はすでにあったが、DLPを使うことでより高解像度のデータ表示を曲面やフロントガラスなど、高い自由度で表示することが可能になるとのことで、現在、WVGAに対応するチップセットを2013年に提供することを目指して開発が進められているという

DLPを活用することで、フロントガラスや曲面部分に高精細な画像表示を行うことが可能となる

なお、TIではBCPに対しても強力に推進しているとしている。「一般的にBCPはBusiness Continuity Planだが、我々はそれを実行するということで、Business Continuity Programとしている」(同)とのことで、実際の工場の稼働状況と災害発生時にはそのマップを重ね、どういうアクションをとるべきかを365日24時間モニタしているほか、オペレーションセンターに駐在している専門スタッフが、実際に災害発生時、現地に赴き、現地スタッフと一緒に迅速な復興をどうすれば実現できるかのプランニングを行うなどの人的リソースの拡大のほか、複数Fabでの製品製造、ダイバンクによる在庫確保などの強化を進めており、「製品ポートフォリオの拡大だけでなく、BCPの展開も併せて行っていくことで、全世界のカスタマのビジネスの拡大に向けたサポートを強化している」(同)とした。