Linus Torvalds氏は12月2日(太平洋標準時)、Linuxカーネルの新バージョン「Linux 2.6.32」を発表、翌3日に正式に公開した。仮想メモリの重複排除、ライトバックコードのリライトによる大幅なパフォーマンス向上、ATI R600/R700 3DおよびKMSのサポートなどグラフィック周りの向上、など多くの点で変更が実施されている。

2.6.12からの大きな変更として13項目が挙げられている。

  • ライトバックによるパフォーマンスの大幅な向上 … 各ストレージデバイスのダーティメモリを書き込む専用のカーネルスレッド"pdflush"
  • Btrfsの改善 … -ENOSPCのハンドリング、パフォーマンス向上、スナップショット/サブボリュームの適切な削除
  • Kernel Samepage Merging(KSM) … メモリの重複排除による仮想環境の大幅なパフォーマンス改善
  • グラフィック周りの改善 … Radeon(r600/r700 3D + KMSサポート、MSIサポートなど)、Intel(i965におけるGPUリセット、フレームバッファ圧縮など)
  • CFQローレイテンシモード
  • パフォーマンスを解析するperfツールの改善
  • 緩やかなメモリ制限
  • カーネルコンフィギュレーションの簡易化
  • 仮想環境の改善 … KVMの新高速IOメカニズム"ioeventfd"、1Gバイトページのサポート、x2apicサポートなど
  • ランタイムパワーマネジメント
  • S+coreアーキテクチャサポート
  • Intel Moorestown/SFI(Simple Firmware Interface)/ACPI 4.0のサポート
  • デバイスをブロックするためのNAPIライクなアプローチ

全体的にパフォーマンスの高速化に主眼が置かれたリリースとなっており、とくにライトバックによるダーティメモリの書き出しによる効果は大きく、あるベンチマーク結果では、XFSは40%、Btrfsは26%の高速化が実現しているという。

なお、Linus氏は「最も大きな変更は、新しいファイルシステムが今回は1つも加わらなかったこと」としている。