尿石とは
尿石(にょうせき)とは、尿に含まれる成分が固まって石のようになったものです。
尿には水分以外にカルシウムなどのミネラル分や尿素が含まれており、これが原因で時間とともに固形化します。
例えばトイレの中に尿が残っていると、空気中や便器内の細菌が尿を分解してアンモニアという物質に変えます。
その結果、水がアルカリ性に傾き、尿に含まれていたカルシウム分が沈殿して固まります。こうしてできる黄白色の固い汚れが「尿石」です。
専門的にはリン酸カルシウムや炭酸カルシウムの結晶で、水あかの一種と考えるとイメージしやすいでしょう。
長期間蓄積した尿石は非常に硬くなり、普通のブラシ掃除では簡単には落ちなくなってしまいます。
尿石によるトイレトラブルの症状
尿石が便器や排水口にこびりつくと、次のようなトイレトラブルの症状が現れます。
- 水の流れが悪くなる
- 便器内に黄ばみや悪臭が発生する
これらの症状に心当たりがある場合、トイレ内部で尿石が蓄積している可能性があります。
水の流れが悪くなる
尿石が排水口やその先の配管内に蓄積すると、水の通り道が狭くなり、トイレの水を流したときの排水が弱くなります。
普段より水位が上がりやすかったり、流すときゴボゴボと異音がしたりする場合は要注意です。
軽度であれば水がゆっくり引いていきますが、ひどいと完全につまりかけて水が流れにくい状態になります。
放置すると最終的には水が流れなくなり、トイレが使えなくなる恐れもあります。
便器内に黄ばみや悪臭が発生する
便器のフチ裏や水たまり部分に落ちない黄ばみ汚れがあれば、それは尿石汚れの可能性大です。
尿石はアンモニアを含むため独特のツンとしたアンモニア臭の原因にもなります。
トイレを掃除してもなんとなく尿臭が残ると感じる場合、見えにくい場所(フチの裏や配管内部)に尿石が潜んでいるかもしれません。
黄ばみや臭いは見た目や衛生面でも不快なだけでなく、尿石がさらに蓄積していくサインでもあります。
早めに対処しないと臭いが酷くなるだけでなく、上述のように排水不良も引き起こしかねません。
尿石でトイレがつまる原因
ではなぜ尿石が溜まってしまうのでしょうか。尿石によるトイレつまりを招く主な原因として、次のような点が挙げられます。
- 掃除不足
- 水量不足
- 設備の劣化
掃除不足
トイレ掃除の頻度が少ないと、尿石はどんどん蓄積していきます。
特に尿が飛び散りやすい便器のフチ裏や排水口付近は、見えにくいこともあって掃除をさぼりがちな場所です。
このような部分に尿石が付きやすく、気づかないうちに厚く積もってしまうことがあります。
時間が経った尿石汚れは通常のトイレ用洗剤では歯が立たなくなり、ますます落としにくくなる悪循環です。
そのため定期的な掃除不足は尿石によるつまりの最大の原因と言えます。
水量不足
最近の節水型トイレや、小洗浄(小レバー)ばかり使っている場合も尿石ができやすい傾向があります。
少ない水で流す設計のトイレでは、便器の内側に尿の成分が残りやすくなり、その結果カルシウム分が付着して尿石化しやすくなるのです。
特に尿を流す水量が不足すると、尿がしっかり流れ切らずに配管内に留まったり、便器内に飛沫が残ったりします。
また、トイレの使用後に水を流すまで時間が空いてしまうのも問題です。
尿汚れは放置時間が長いほど固着して流れにくくなるため、使用後はできるだけすぐに水で流す習慣をつけましょう。
トイレ使用後は毎回、尿石がたまる前に洗い流すことが大切です。
設備の劣化
トイレ自体の経年劣化も尿石の蓄積に影響します。長年使った便器は表面の陶器コーティングが摩耗し、微細なザラつきが生じて汚れが付きやすくなります。
そのため古い便器ほど尿石がこびりつきやすく、掃除を怠るとすぐ黄ばみが定着してしまいます。
また、古い配管は内側に錆や水あかが蓄積して通路が狭くなっていることがあり、そこに尿石が付着すると頑固なつまりを起こしやすくなります。
さらにタンクや配管など設備の不具合で適切な水量が流れなくなっている場合も、尿石の原因となります。
設備の劣化による水流の弱まりや表面の傷みは、尿石蓄積の土台を作ってしまうのです。
尿石によるトイレつまりの解消法
尿石が原因でトイレがつまった場合、自分で試せる解消法がいくつかあります。
ここでは家庭で比較的簡単にできる代表的な方法を紹介します。
- 酸性洗剤を使う
- 重曹+クエン酸をつかう
- ラバーカップをつかう
軽度のつまりであればこれらの方法で改善することもありますので、焦らず試してみましょう。
酸性洗剤を使う
酸性洗剤を使用することで尿石を落とし、トイレつまりを解決することができます。
おすすめなのが「サンポール」という洗剤で、アルカリ性である尿石に対して効果を発揮します。サンポールを使用したトイレつまり解消法は以下の通りです。
- サンポールを便器内に投入する:サンポールに記載された推奨量(100~150ml程度)を尿石が付着している部分に注ぎ入れます。この際、必要に応じてブラシなどで軽く広げ、サンポール自体がしっかりと尿石に届くようにします。
- その状態で放置する:サンポールの説明書に記載されている放置時間(約10~30分程度)を守り、尿石が十分に溶けるのを待ちます。
- ブラシでこする:サンポールが尿石に届いたあとはトイレブラシを使い尿石部分をこすります。尿石部分をしっかりこすり、落としていきます。
- 水で流す:こすり終わったらレバーを引いて水で流してください。もしも落としきれない汚れがあれば、同じように再度掃除を繰り返してください。
なお、サンポールに関してはこちらの記事でも詳しくご紹介していますのでぜひ参考にしてください。

重曹+クエン酸をつかう
重曹(炭酸水素ナトリウム)は掃除に万能なアイテムで、尿石のつまり解消にも役立ちます。
重曹単体でも多少の洗浄作用がありますが、尿石落としが目的であればクエン酸やお酢と組み合わせて使いましょう。やり方は以下の通りです。
- 重曹と酢を投入する:まず便器の排水口付近に重曹をカップ1/4程度ふりかけ、その上からお酢(またはクエン酸を溶かした水)をカップ1/2ほど静かに注ぎます。重曹→酢の順番で入れるのがポイントです。すぐに泡が発生してシュワシュワと音がしますが、驚かなくて大丈夫です。
- お湯を注いで放置:次にぬるま湯(50℃前後)をゆっくり便器に注ぎ、便器内の水位を普段の半分程度まで上げます。その状態で1~2時間程度放置しましょう(可能なら一晩置くとより効果的です)。発生した泡と酸の力で尿石が少しずつ溶け、柔らかくなります。
- ブラシで擦って流す:十分に時間を置いたら、トイレブラシで排水口周辺を優しく擦ります。最後にバケツ一杯分の水を勢いよく流してみて、水の流れが改善するか確認します。重曹+酢の方法は即効性こそありませんが、環境にも優しく配管を傷めにくいので、軽いつまりには試す価値があります。
ただし、注意点として熱湯は便器を傷める恐れがあるため使用しないでください。お湯は手で触れる程度の温度(50℃前後)にとどめ、また作業時はゴム手袋の着用をおすすめします。
また、重曹とクエン酸やお酢を使用した方法は軽い尿石であれば落とせますが、頑固な尿石を落とすことができませんので、この方法で落ちない尿石に関しては別の方法を試してみてください。
ちなみに重曹を使ったトイレつまり解消に関してはこちらの記事でもご紹介していますので参考にしてください。

ラバーカップをつかう
トイレのつまり解消グッズとして真っ先に思い浮かぶのがラバーカップ(通称:スッポン)です。
ラバーカップは柄の先にゴム製のカップが付いた道具で、真空ポンプの原理でつまりを吸引・押し出すものです。
ホームセンターやネット通販で1,000円前後と安価に購入でき、一家に一本あると安心です。 ラバーカップの使い方は次の通りです。
- 水位の調整と準備:便器内の水位が高すぎると作業中に汚水があふれてしまう恐れがあります。まず灯油ポンプや柄杓などで水を汲み出し、水位を便器の縁から10cmほど下げておきます。逆に水位が低すぎるとラバーカップが密着しないため、その場合はバケツで適量の水を足しておきます。床や便座が汚れないように周囲に古新聞やビニールシートを敷いて養生しましょう。
- カップを排水口に当てる:ラバーカップのゴム部分を排水口にしっかりと被せ、空気が入らないように密着させます。和式トイレ用と洋式トイレ用でカップの形状が異なるので、ご家庭のトイレに合ったものを使ってください。
- ゆっくり押して素早く引く:密着させたら、最初にカップをゆっくりと押し込みます。このとき勢いよく押すと詰まっている物をさらに奥に押し込んでしまう可能性があるため、まずはゆっくり押して真空状態を作ります。次に勢いよくグッと引っぱって吸引してください。詰まりが軽ければこの動作でスコンと抜け、水位がスッと下がるはずです。何度か押し引きを繰り返し、詰まりが取れるまで続けます。
- バケツの水で流して確認:つまりが解消したら、バケツで水を少しずつ流して排水の様子を確認します。いきなりタンクの水を流すと、一度に大量の水が出てまだ詰まっていた場合にあふれてしまうため危険です。バケツの水が問題なく流れれば、つまりは解消されています。
ラバーカップでトイレつまりを解消する際のポイントは、押すよりも引くことをしっかり意識して行うことです。

ラバーカップは詰まってすぐの柔らかい汚物や紙つまりにも有効ですが、尿石など硬いものが原因の場合は何度か挑戦する必要があります。
無理に力任せにせず、数回トライしても効果がないときは他の方法に切り替えましょう。
注意点として洋式トイレで和式用ラバーカップを使用すると奥まで届かず効果が出ません。購入時には「洋式用」を選ぶよう注意してください。
ラバーカップに関してはこちらの記事でもご紹介していますので参考にしてください。

トイレつまり修理業者に依頼すべきケース
上述のようなDIYによる解消法を試しても改善しない場合、無理をせず水道修理のプロ(専門業者)に依頼することを検討しましょう。
特に次のようなケースでは、早めに業者に相談するのが賢明です。
- DIYで改善しない場合
- 排水管内部のつまりの可能性がある場合
DIYで改善しない場合
自分でできるトイレつまり解消法を試しても水の流れが改善しない、臭いが取れない、といった場合は自力での対処が難しくなっています。
尿石によるつまりは軽度であればDIYで対処可能ですが、長年蓄積した頑固な尿石は市販洗剤では落としきれないこともあります。
無理に作業を続けると便器を傷つけたり、状況を悪化させたりする恐れがあります。
特に「便器の奥深くまで黄ばみがこびりついている」「何度掃除しても尿臭が消えない」といった場合は、自力での除去は困難です。
そのようなときは無理をせず、専門の修理業者に状況を説明して助けを借りましょう。
プロであれば適切な薬剤や機材を用いて、安全かつ迅速につまりを解消してくれます。
排水管内部のつまりの可能性がある場合
尿石が便器内部だけでなく配管の奥深くで蓄積しているケースもあります。
何とか水が流れても再びすぐにつまってしまう、何度もつまりを繰り返す場合は、排水管内部に尿石の塊が残っている恐れがあります。
配管内にこびりついた尿石は表面がザラザラしており、そこにトイレットペーパーや汚物が引っかかって連鎖的につまりを引き起こします。
このような状態になると、ラバーカップで一時的に通水してもすぐまた紙が引っ掛かり再発することがあります。
配管内の尿石除去は難易度が高く、中途半端に削り取ると剥がれた尿石片が二次的なつまりを招く恐れもあります。
業者は内視鏡カメラで配管の様子を確認し、高圧洗浄機や専用の洗浄ノズルで管内の尿石を徹底的に除去してくれます。
自宅では扱えない高度な機器が必要になるため、配管内部で尿石が原因のつまりが疑われる場合は迷わずプロに任せましょう。
尿石によるトイレつまり解消費用相場
尿石が原因のトイレつまりを業者に依頼した場合、費用がどのくらいかかるのかも気になるところです。
修理費用は作業内容や地域、業者によって差がありますが、おおよその相場を把握しておきましょう。
一般的なトイレつまり除去の費用相場は、約5,000円~15,000円程度とされています。
これは軽度のつまりで、ラバーカップ等で解消できる場合や便器周辺の尿石除去作業が含まれるケースです。
実際には便器の状態やつまりの深刻さによって変動し、業者から事前に見積もりを取ることが推奨されています。
たとえば、排水口付近の軽いつまり除去だけなら5,000~8,000円程度で済むこともあります。
一方、配管奥の深刻なつまりで高圧洗浄機や特殊器具を使う作業になると、費用は20,000円前後からそれ以上かかる場合もあります。
もちろん実際の金額は状況次第ですが、目安として頭に入れておくと良いでしょう。
※深刻なつまりほど高額になりがちですが、放置すると便器交換が必要になるケースもあります。早めに対処して被害を最小限に留めることが結果的に節約にもつながります。
尿石の付着を防ぐメンテナンス方法
尿石によるつまりは、日頃の工夫で防ぐことができます。最後に、尿石を付きにくくするためのメンテナンス方法を紹介します。
- 定期的に掃除をする
- 専用洗剤や予防グッズの活用
- 適切な水量で流す
普段から少し意識するだけで、尿石知らずの清潔なトイレを保てるようになります。
定期的に掃除をする
尿石予防の基本はこまめな掃除です。尿石は付着してすぐであれば普通のトイレ用洗剤やブラシで簡単に落とせますが、時間が経つほど固着して落ちにくくなります。
黄ばみを見つけたら早めに対処することが肝心です。
便器内は少なくとも週に1回はブラシで擦り、できれば月に一度程度はフチ裏や排水口に酸性洗剤をかけておくと尿石の発生を抑えられます。
掃除の際、便器のフチ裏など見えにくい部分も忘れずに洗いましょう。
最近の便器はワンタッチで便座を外してフチ裏を掃除できるタイプもありますので、取扱説明書を確認してみてください。定期的な掃除習慣が、尿石蓄積を防ぐ一番の近道です。
ちなみにトイレ掃除に関してはこちらの記事で詳しくご紹介していますのでぜひ参考にしてみてください。

専用洗剤や予防グッズの活用
尿石対策には市販の専用洗剤や予防グッズも有効です。尿石はアルカリ性の汚れなので、クエン酸や塩酸など酸性の洗剤が効果的に分解してくれます。
ドラッグストアで手に入るトイレ用酸性洗剤の代表例として先ほど紹介した「サンポール」(塩酸9.5%配合)などがあります。
黄ばみが気になったときはトイレットペーパーに酸性洗剤を染み込ませて黄ばみに貼り付け、30分ほど放置してからブラシで擦るといった方法を試してみましょう。
頑固な尿石には業務用の尿石除去剤(たとえば和協産業の「デオライト」など)も市販されています。ただし酸性洗剤を使う際はゴム手袋と換気を忘れずに装着しましょう。
便器の樹脂部品や金属部(ノズルやセンサー)にかかると傷む恐れがあるため、取り扱い説明書を守って慎重に使ってください。
また、尿石防止グッズの利用もおすすめです。男性用小便器向けには設置するだけで尿石の発生を抑える「尿石防止剤ボール」や「バイオタブレット」といった製品があります。
家庭用洋式トイレ向けには、タンクに入れておくと流れるたび洗浄成分が広がるタイプの洗浄剤があります。
これらを使うと、毎回の洗浄で尿石が付きにくくなり清潔を保てます。ただしグッズに頼って掃除を怠ると本末転倒なので、あくまで補助的な対策として取り入れましょう。
適切な水量で流す
尿石を防ぐには、適切な水量でしっかり流すことも重要です。前述の通り、水量が不足すると尿石が発生しやすくなります。
用を足した後は大小にかかわらずケチらずに水を流しましょう。
特に節水モードのトイレをお使いの場合、「小」ボタンばかり使わず適宜「大」も使って十分な水で流すようにします。
また、トイレ使用後はできるだけすぐに水を流すクセを付けてください。時間が経つほど尿の成分は固まって流れにくくなるため、こまめに流すことで尿石の付着を防げます。
レバー式のトイレならしっかり最後まで倒して充分な水量を流すこと、タンクの容量を勝手に減らしたりしないことも大切です。
万一水圧が極端に弱くなったり、タンクの水が十分に溜まらなくなった場合は、トイレの給水系統に不具合がないか確認しましょう。
必要に応じてボールタップやフロートバルブなど部品の交換を行い、本来の適切な水量で流せる状態を維持することが尿石予防につながります。
まとめ
尿石によるつまりは、重曹+お酢で汚れを柔らかくしたり、ラバーカップで圧力をかけたりすることで自分で解消できる場合があります。
また、尿石を防ぐには、日頃からこまめな掃除と十分な水流しが一番です。酸性洗剤や洗浄剤グッズも活用し、尿石を「つけない」習慣でトイレを清潔に保ちましょう。
尿石によるトイレつまりは誰にとっても嫌なトラブルですが、正しい知識と対策で充分に防げるものです。日々の少しの工夫とメンテナンスで、黄ばみ知らずの快適なトイレ環境を維持していきましょう。
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