インサイドセールスは非対面で顧客対応を行う営業手法であり、電話対応もそのコミュニケーションツールの一つに挙げられます。
そのため、架電営業という意味でしばしばテレアポと混同されることがありますが、インサイドセールスの役割はテレアポとは異なります。今回はインサイドセールスとテレアポの違いについて、詳しく解説します。
目次
インサイドセールスとは?
インサイドセールスとは内勤営業とも呼ばれ、非対面で顧客とコミュニケーションをとる営業手法です。
営業方法は一般的に架電やメールが主体となり、場合に応じて顧客管理ツールや商談ツールを利用しながら新規リードの獲得やナーチャリング(顧客育成)、契約後のフォローアップなどの対応を行います。インサイドセールスは近年注目を集めており、企業によってはフィールドセールスの人員を削減しインサイドセールスに注力する場面も増えています。
インサイドセールスは訪問などを行わない分、1人における顧客対応件数がフィールドセールスよりも格段に多く、効率的な顧客対応ができることも魅力の一つです。
インサイドセールスとテレアポの違いは3つ
インサイドセールスとテレアポの違いは、目的、目標指標、時間軸(効果測定期間)の3つです。
インサイドセールスは、電話を利用したコミュニケーションも行う点からテレアポと同様の業務内容と誤解されることがありますが、それぞれの役割は異なります。
| インサイドセールス | テレアポ |
目的 | 顧客育成 | アポ獲得 |
目標指標(KPI) | 条件を満たすアポ獲得件数 など | アポ獲得件数 |
時間軸(効果計測期間) | 長期 | 短期 |
上記の表は、インサイドセールスとテレアポにおける電話営業の役割を書き出した物です。ここからは、それぞれの項目について違いを見ていきましょう。
1.目的の違い
テレアポは顧客とのアポイントを獲得する目的で電話をかける業務ですが、インサイドセールスで架電をする際の目的は顧客育成(ナーチャリング)であることが一般的です。
インサイドセールスは通常の営業と目的に違いはないため、最終目標はアポイントの獲得や契約獲得が目的です。
しかし、テレアポと違い電話だけでその目的を達成することを目指さず、あくまでも顧客との関係性を構築することを重要視したコミュニケーションを行う場合が多いです。
また、通常のフィールドセールスとの違いは移動時間や交通費の削減がインサイドセールスでは可能であることや、フィールドセールスでは属人化しやすい営業のノウハウなどを社内に共有しナレッジとして蓄積しやすい点などがあげられます。
2.成果指標の違い
インサイドセールスとテレアポでは成果指標も異なります。一般的にテレアポは「電話業務の中で何件アポを取れたか」を成果指標として設ける場合が多く、質の良し悪しではなく量が評価軸になります。
なぜならテレアポはドアノック営業の要素が強く、顧客の検討ステータスに関わらず多くのリストに対してアプローチし、短期間で興味を引き出し成果に繋げることを目的にしているためです。
一方、インサイドセールスは顧客の検討ステータスが明確である場合が多く、成果指標もアプローチする顧客の状況ごとに変わります。
例えば、すでに具体的な提案をしている顧客に対してアプローチする際は、契約獲得が成果指標になり、契約締結後の顧客へのコミュニケーションをする場合は契約の継続やアップセルが成果指標になるでしょう。
3.時間軸(成果検証期間)の違い
インサイドセールスとテレアポでは、その施策によりどれだけの成果が上がったかを検証する期間についても異なります。
テレアポでは1週間や1日単位など短期的にアポの獲得件数を検証し、トークスクリプトの改善や架電リストのブラッシュアップを行うことが一般的です。テレアポのPDCAサイクルが短いのは、テレアポの施策が電話をかけてから切るまでの時間で成果が決まるため、検証するための情報が短期間で蓄積されやすいからです。
一方、インサイドセールスは長期的な目線で顧客育成に取り組むため、その場の電話営業だけでは契約やアポなどの成果に直結しない場合が多いです。そのため、成果を検証する期間も短くても1ヶ月単位で行われ、長ければ半年〜1年単位で効果を検証するケースもあります。
インサイドセールスはテレアポを混同した時に起きる失敗例
前述の通り、インサイドセールスとテレアポには明確な違いがあります。しかし多くの企業では、市場の変化に合わせてインサイドセールスを立ち上げたものの、管理者や責任者の認識の誤りからテレアポ部隊化してしまうケースがあります。その理由や対策方法を紹介します。
指標設定が誤り、迷惑電話になることも・・・
インサイドセールス部門における評価軸などの指標を、アポ獲得件数やコール数、商談数などの行動数で設定してしまっているケースが多くあります。
これらの指標だけを評価軸に設定すると、所属メンバーはインサイドセールスの本来の目的を忘れ、ヒアリング内容や質にこだわらなくなり、コール数や行動数をこなすことに注力するようになります。
最終的には、指標を達成するために受注確度の低い案件なども強引にアポを取るようになり、結果的にフィールドセールスも質の低いアポイントメントや商談に振り回され、非効率な業務フローが生まれてしまうのです。
顧客にとっても無駄な時間を割くことになり、会社の評判を下げてしまう迷惑な営業電話になってしまいます。
指標設定が誤っているときの対策
このようなケースを防ぐためには、指標を設定する際にアポ数や行動数だけに注目せず、見込み度を段階的に評価した指標を取り入れると良いでしょう。
たとえば「潜在層→顕在化→アポ見込み→アポ獲得」といったようにアポ獲得までの指標を段階的に表現し、顧客をどこからどこまでステータスアップさせたのか、という視点で評価を行います。
指標は自社内で独自に設定することもできますが、マーケティングオートメーションツールなどに汎用的なステータスがテンプレートとして初期設定されているものもあるため、参考にするのも良いでしょう。
参考記事:インサイドセールスのKPI・目標設定と効果を最大化するポイントとは?メリット、デメリットも併せて紹介
適切なヒアリングができていない
テレアポと同一認識されている部門や組織では適切なヒアリングができていない可能性があります。
具体的には、電話でのヒアリングにおいて、トークスクリプトなどにまとめられている質問の内容が「はい(Yes)」と「いいえ(No)」で答えられるようなクローズドクエスチョンになってしまっているということです。
たとえば、「自社の○○という商品に興味はございますか?」「弊社の広告はご覧いただけましたでしょうか?」などです。このような質問だけでは、見込み顧客が抱えているニーズを引き出すことは難しいでしょう。
適切なヒアリングができていないときの対策
インサイドマーケティングには、オープンクエスチョンが必須です。
たとえば、「自社の○○という商品にはどのような印象をお持ちですか?」「弊社の広告ごご覧いただいた感想はいかがでしたでしょうか?」など、相手が自由に回答できる質問を投げかけ、その回答に合わせてトークを掘り下げることで、見込み顧客の現状や課題を汲み取ります。
また、ヒアリングを行う上では、「BANT情報」と呼ばれる情報を収集することで、潜在層の見込み度合を判断できます。
- 【B】Budget:予算はあるか、どのくらいか
- 【A】Authority:決定権を持つのは誰か
- 【N】Needs:企業としてニーズを感じているか
- 【T】Timeframe:具体的にいつごろ導入したいか
情報を漏れなく聞き出すためには、事前に質問内容をまとめたヒアリングシートなど用意するのも良いでしょう。テレアポ部隊になることを防ぐためにも、BANT情報についても知識をつけておくことをおすすめします。
参考記事:インサイドセールスのヒアリング項目設計は?アポ獲得率の上げ方は?受付突破方法は?段階別に課題と対策を紹介
インサイドセールスにおける架電のコツは顧客理解と話し方
- 商材とターゲットのマッチポイントを理解する
- マッチするリストを作る
- CTIを導入しておく
課題の顕在化を支援するための「SPIN法」を用いる
- 無理に粘らない
商材とターゲットのマッチポイントを理解する
最終的に売る想定の商材と、ターゲットの抱える悩みの合致するポイントを、営業担当や製品開発担当にヒヤリングし、いくつかの具体的な条件・キーセンテンスを理解しておきましょう。事前に理解しておけば、相手が話してくれた際、その条件やキーセンテンスにマッチする言葉が出たか否かで判断できます。
顧客理解と同時に、瞬発的な対応が求められる電話では、事前準備が重要です。
マッチするリストを作る
前述のマッチポイントに沿ったリストを作成しましょう。
例えば”「競合会社の商材Aの〇〇という弱みが顧客の××という悩みを作っている。自社の商材ではそれを□□で解決できる」といった場合、競合会社のWebサイトにある事例から、リストを作る”といった形です。
CTIを導入しておく
CTIとは、Computer Telephony Integrationの略称であり、電話機能にCRM(顧客管理システム)やMAツールと連携させることで、電話業務を効率化するツールです。
例えば、電話機能がCTIを搭載していると、顧客の電話番号をキーとしてCRMからキーに適合した顧客情報を画面に映し出すことができます。つまり、インサイドセールスにおいて重要な要素である顧客情報を見ながら電話対応が実現できます。
また、CTIには電話応対品質向上を目的とした録音・着信履歴の確認機能や、一人のオペレーターに応対の負担が偏らないようにする電話制御機能もついています。そのため、導入の際は電話業務の効率化だけではなく、オペレーターの応対品質向上や心理的負担の軽減も見込めます。
参考記事:インサイドセールスツール6種!目的別のおすすめ理由|SFA、MA、CTI、ABM、名刺管理…必要なのはどれ?
課題の顕在化を支援するための「SPIN法」を用いる
ナーチャリングをする際は具体的に「相手にどこに興味をもってもらいたいか?」を定め、イベント参加者リスト、資料請求リスト、問い合わせリスト、過去クライアントリストなど、数ある種別のリスト毎に使い分けましょう。
顧客の潜在的なニーズを知るためには、SPIN法が有効です。
SPIN法とは、Situation ・Problem・Implication・Need-payoffの4つの質問にそってヒアリングを行うことです。
- Situation Questions=状況質問(顧客の現状を把握する)
- Problem Questions=問題質問(顧客に問題に気づかせる)
- Implication Questions=示唆質問(問題の重要性を認識させる)
- Need-Payoff Questions=解決質問(理想のあるべき状態をイメージさせる)
顧客が感じているニーズを表面的に理解するだけではなく、現状の課題を聞き出すことで潜在的なニーズまでも引き出すための営業方法です。
無理に粘らない
上記の「先方のYesを重ねる」を行った際、顧客が否定的な反応を示す時があります。
むしろ、そういったケースの方が多く、インサイドセールスを担当される方はうんざりするかもしれません。
しかしそういった場合は、ネクストステップの提示をしても失敗するでしょう。その場合は無理に粘らず、可能であれば否定的である理由を聞き出し、トークスクリプトや再アプローチのタイミングを測る情報の獲得をして電話を切りましょう。
拒否反応が大きい場合は、無理に会話を続ける必要はありません。
参考記事:インサイドセールスを内製化して育成・教育するポイントまとめ 担当採用・業務分掌や外注との比較まで解説
インサイドセールスにはどんな人が向いてる?
実際に「インサイドセールス 辛い」で検索する人が多い事実もある通り、インサイドセールスは業務の特性上、向き・不向きがあります。
インサイドセールスに向いている人として、以下の4つの特徴が挙げられます。
- 電話・メール・Zoomを使ったコミュニケーションスキルが高い
- 楽観主義でめげず、チャレンジ・継続する精神力がある
- 業務・タスクの処理スピードが速い
- 事実ベースで報告できる
相手の顔が見えない電話やメールにおいては相手との会話のテンポを合わせ、内容を簡潔に伝える能力が必要です。Zoomなどオンラインで顔が見える場合は多少コミュニケーションスキルのハードルは低くなりますが、画面越しでの表情や声のトーンなど、相手に受け入れやすいものにする必要があります。
また、インサイドセールスは相手と連絡が取れなかったりクレームを受けたりする場合があります。そのため、心折れるような出来事が起こった状況でも楽観的に捉えられ、次のアプローチを行えるチャレンジ精神が求められます。
他にも、多岐にわたる業務が発生するため、効率よく処理するスピードの速さが求められ、数多くの業務を行うと同時に事実ベースで報告できる能力が必要です。
参考記事:インサイドセールスに向いている人、向いていない人の特徴まとめ 体制構築・採用で抑えるべきポイントとは?
インサイドセールスが注目される理由
インサイドセールスは昨今新型コロナウイルスの拡大によるリモートワークの推進も後押しし、企業での導入が増えている営業手法です。
また、以下の調査結果にもあるとおり、買い手・売り手それぞれが考える「好ましい営業スタイル」におけるリモート営業の割合が増えていることがわかります。
※参照:HubSpot Japan実施『日本の営業に関する意識・実態調査』より
インサイドセールスはマーケティング部門とフィールドセールス部門の架け橋となる部門のため、顧客にとっては訪問営業だけの営業よりも売り手との接点が増え、細かなヒアリングを行ってもらえる点が好意的に感じられるでしょう。
また、営業としてもマーケティング部門が獲得したリードを効率的かつスピーディに対応できる部署として重視される場面が増えていると考えられます。実践する企業が増えている背景には顧客側の情報量拡大に対処する必要性や、従来の分業制の限界などいくつかの要因があります。
マーケティングと営業という従来の分業の限界
インサイドセールスが求められる背景には、従来のマーケティング部署と営業部署では顧客対応が立ち行かなくなっている現状が挙げられます。
インターネットの普及により、商材やサービスに関する情報が得られやすくなったため、顧客が持つ情報量も拡大傾向にあります。
結果として、顧客の数が多い会社であればあるほど、データ分析やキャンペーン施策を顧客に一斉に実施するマーケティング部署と、フィールドセールスで時間をかけて少ない顧客にじっくりと対応する営業部署だけでは顧客のニーズや疑問に細かく対応することが難しい状況に陥っています。
これらを解決するためには、マーケティング部署と営業部署の間に細かい問い合わせの対応や、フィールドセールス後のフォローアップを補完するインサイドセールス部署が必要不可欠になっているのが現状です。
フィールドセールスとの連携で短期、長期双方の売上見込みが立てられる
また、インサイドセールスがあることで顧客とのコミュニケーション方法に幅を持たせることができ、短期と長期それぞれの視点から売上見込みを立てられます。
これは、インサイドセールスで顧客と継続的かつ細かな接点を持つことで、今まで得られなかった顧客の検討ステータスをより具体的に把握することができ、それぞれの顧客に対する長期的な営業戦略を立てるヒントになるためです。
このようなインサイドセールスの特性を活かしつつ、フィールドセールスと連携することで長期的な顧客育成の計画をもとに、検討ステータスが上がってきた顧客に対してはフィールドセールスでしっかりとクロージングを行えます。結果として顧客の状況に応じた効率的な施策を打ち出せ、営業効率の向上に繋がります。
参考記事:インサイドセールスのやり方・設計方法 成果につながる目標・シナリオ設計・支援ツールの運用
まとめ
インサイドセールスの役割はテレアポと違い、電話営業により顧客との関係性を構築する目的が主体となり、ただアポイントを獲得するだけではありません。
この役割の違いから、テレアポを行う部署とインサイドセールスの部署が分かれて組織されている企業もあります。本稿を参考にしていただき、テレアポとは異なるインサイドセールス部署が行うべき役割を理解しましょう。