TVは顧客が生涯のうちに自社に与える利益を示す指標です。MAツールをはじめとするデジタルツールの発展やサブスクリプション型サービスの登場により、近年BtoBマーケティングではLTVの最大化が重要性を増しています。LTVを最大化するためには定期的なアプローチによる顧客との長期的な関係性の構築が重要です。この記事ではLTVの意味や算出方法、LTV向上のポイントや具体的な施策などについて解説します。
関連記事:インサイドセールスとは?役割やメリット、効率的な体制・目標設計・向いている人材から事例までわかりやすく解説
関連記事:BtoBのリード獲得方法11選 オンライン・オフライン別の顧客獲得施策を紹介
LTVとは?その重要性と算出方法
LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは?意味と定義
LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは、契約開始から取引終了までの間に顧客が自社にもたらす利益の合計を示す指標です。顧客生涯価値とも呼ばれています。
新規顧客の獲得には多くの時間とコストが必要ですが、さらに新規顧客との取引が一度限りで終わってしまうと得られる利益も少なくなってしまいます。収益性を高めるには、顧客との長期的な関係性の構築によるLTVの最大化が重要です。
特にBtoB市場では、取引市場が狭く顧客単価が高い傾向があり、新規顧客の獲得以上にリピーターの獲得や商品のアップセル・クロスセルによるLTVの向上が売上げに大きく影響するといわれています。
そのためBtoBマーケティングにおいては、はじめから高いLTVが見込める顧客にのみ集中してアプローチを行う「ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)」も注目されています。ABMではマーケティング部門と営業部門が最初から連携して企業単位でアプローチを行うのが特徴で、営業活動の効率化やコスト削減にも効果的です。
参考記事:ABMとは?意味・メリット ・考え方と具体的な手法をわかりやすく解説
LTVの主な計算方法の例
基本的なLTVの計算式は以下の通りです。
- LTV=購入単価×購入回数×契約期間
しかし、上記の計算式には顧客獲得までにかかった費用と顧客との関係維持にかかった費用が考慮されていないため、費用対効果が測定できません。顧客獲得コストを考慮する際は、下記の式が使われる場合もあります。
- LTV=購入単価×購入回数×契約期間-(顧客獲得費用+顧客維持費用)
収益性を高めるためには、売上げだけではなく粗利額を増やす方法もあります。粗利に着目する場合は下記の式を活用します。
- LTV=平均購入単価×平均購入回数×利益率
- LTV=(売上高-売上原価)×顧客数
自社の顧客の平均的なLTVを把握できれば、ABMでのターゲット設定に役立つでしょう。企業目線で顧客動向を知る場合には、下記の式で計算します。
- LTV=平均購入単価×平均購入回数
LTVが注目される理由と背景
競争の激化と新規顧客獲得コストの上昇
BtoB市場では近年、新規顧客の獲得するためのコスト上昇によりLTVが重要視されるようになりました。
新規顧客の獲得には既存顧客の5倍コストがかかるといわれています。その背景には人口減少やインターネットの普及に伴う市場飽和、顧客ニーズの多様化などによる競争の激化があります。利益を増やすためには、既存顧客のリピート購入やアップセル・クロスセルに伴うLTVの向上は不可欠です。
CRM・MAの普及がロイヤルカスタマー育成を促進
CRMツールやMAツールなどのデジタルツールの発展により精度の高い顧客分析やマーケティングの自動化が可能になったのも、LTVが注目されるようになった一因です。
CRMツールやMAツールなどの分析結果を活用することで、顧客のニーズに沿ったアプローチを行い、自社への好感度が高いロイヤルカスタマーへと導くことが可能となりました。
取引金額が高額になるケースが多いBtoB商材の場合は、そのサービスの投資対効果と満足度が取引継続に影響する傾向があります。そのため、導入後の顧客支援と信頼関係構築のプロセスが可視化しやすいデジタルツールの普及は、LTV向上にむけた打ち手増加に繋がり、LTVが注目される背景の一つとなっています。
参考記事:マーケティングオートメーション(MA)ツールでリード獲得とリードナーチャリングを実現する方法
参考記事:MA(マーケティングオートメーション)ツールとSFA・CRMの連携をどう進めるか?
MAとABM(アカウント・ベースド・マーケティング)の普及
LTVはもともとBotCとの関係が深い概念でしたが、MAツールやABMの普及によりBtoBでも注目されるようになりました。
その理由は、MAツールによる顧客分析データなどをもとに、高いLTVが見込める大企業や上顧客に効率的にアプローチできるABMが可能となったためです。
ABMは企業単位でのアプローチであるため、アップセルやクロスセルを狙いやすく、MAの普及とともに導入する企業が増えています。
サブスクリプションビジネスモデルの普及
LTVが注目されている背景には、定額課金制(サブスクリプションモデル)の普及もあります。
従来の買い切り型の営業モデルでは、新規顧客の獲得が重要でした。一方、サブスクリプションモデルの場合は、新規顧客を獲得できても継続利用につなげられなければ利益を創出できないため、既存顧客のLTVの向上が重視されています。
LTVを向上させる4つのポイント
POINT.1 価格を上げる
LTV増加の基本的な施策として、製品やサービスの価格を上げる「値上げ」があります。しかし、単なる値上げだけでは製品・サービスの利用料に対して顧客が感じる価値が相対的に低くなり、他社製品への乗り換えてしまうケースが増えるかもしれません。そのため、付加価値を高めて顧客満足度の向上を図り、エンゲージメントを意識した判断が重要です。
POINT.2 顧客の平均購入単価、購入回数を上げる
LTVを向上するためには、顧客満足度を低下させずに購入単価・回数を上げるための工夫も重要です。製品・サービスの利用体験が顧客の課題解決につながれば、製品のアップグレードや自社の別商品の購入といったアップセル・クロスセルによるLTVの向上につながります。MAツールやCRMツールの活用による顧客状態の可視化と適切なアプローチが重要です。
POINT.3 解約率を下げ、契約期間を長くする
解約率を下げ、サービス利用を長期化することはLTV向上につながります。解約率はSaaS型のサブスクリプションビジネスでは特に重要な指標です。
SaaSは気軽に導入できるメリットがある反面、顧客が他のサービスにメリットを感じれば簡単に乗り換えられてしまうリスクがつきものです。
POINT.4 新規顧客獲得と顧客フォローのコストを下げる
新規顧客獲得や顧客フォローにかかるコストを下げる施策も、LTV向上につながります。
インサイドセールスやデジタルマーケティングを導入すれば、従来の対面でのフィールドセールスに比べて短期間で多くのリードにアプローチできるため、効率的に新規リードを獲得できます。デジタルツールとの連携により顧客分析やリードナーチャリング、カスタマーサクセスの自動化も可能です。
営業部門が優先度の高い顧客に集中できれば、営業コストの削減だけではなく成約率の向上や売上げにもつながるでしょう。
参考記事:リード獲得とは?マーケティング方法と効果的な施策や具体例を解説
参考記事:コンテンツマーケティングとは? 必要とされる理由と実践手順をわかりやすく解説(図解あり)
LTV向上に有効な3つの施策
施策1.CRMとカスタマーサクセスによる既存顧客のフォロー
LTV向上には、商品の購買後のカスタマーサクセスが重要です。
カスタマーサクセスとは、顧客にとっての商品の有用性や顧客満足度の向上を目的とし、企業から顧客へ能動的にアプローチを行うことです。
参考記事:カスタマーサクセスとは?定義、カスタマーサポートとの違いや基礎知識と事例をわかりやすく解説
CRMによって顧客情報や今までの顧客へのアプローチ履歴を一元管理できていれば、顧客の課題やニーズを把握し最適なフォローを行えるため、効果的なカスタマーサクセスを実現できます。担当者にかかわらず一貫した対応が可能になり、顧客からの信頼を得やすい点もCRM導入のメリットです。
具体的には、解約率のモニタリングや顧客アンケートを実施しサービスの質を向上させ、顧客満足度の向上を目指しましょう。競合製品の情報収集や業界トレンドを把握することも重要です。
施策2.MAによる顧客行動のフォロー
MAツールの活用も効果的な手段です。MAツールは新規リードの獲得だけではなくリードナーチャリングやカスタマーサクセスにも利用できます。
顧客の購買意欲が高まったタイミングでの情報提供や、顧客からのアクションに対するお礼など、顧客一人ひとりに寄り添った対応がLTVの向上には欠かせません。しかし、多くの顧客への対応を手動で行うには限界があります。
MAツールのスコアリング機能やメール自動送信機能を活用すれば、顧客の状態に合わせた適切なアプローチを自動で行えるため、売逃しを防ぎ顧客をロイヤルカスタマー化できます。
施策3.「顧客のファン化」のための特別な施策
ファンマーケティングは自社のファンとなる顧客を創出するマーケティング手法です。自社製品・サービスのみならず、企業組織そのものに高い共感や理解を示す顧客を獲得すれば、長期にわたって継続的な利益の創出が実現できます。
近年は商品の購買時に口コミや他者の評価を参考にする顧客が増えており、自社ファンの獲得は新規顧客の獲得にもつながります。ファン化した顧客自らがイベントの主催やコンテンツの作成を行い、プロモーションに貢献するケースも少なくありません。
顧客のファン化のためには、SNSによるブランディングが有効です。SNSは拡散力が高く相互のコミュニケーションが可能なため、顧客との距離を縮めやすいといわれています。
ほかにも顧客限定のイベントやセミナーの開催、顧客同士のコミュニティの作成などの施策も効果的です。
LTVを重視した戦略の事例
事例1.キリンホールディングス株式会社の「Home Tap」
キリンビールのサブスクリプションサービス「Home Tap」は、月額7,500円で工場から届く生ビールを自宅のビールサーバーで楽しめるサービスです。
多様な顧客ニーズに応えるために、定番商品だけではなくクラフトビールなど多種多様なビールを提供している点が特徴で、購入単価の増加につながりLTVの向上に成功しました。
また、買い切り型のビジネスモデルが当たり前とされていたビールのサブスクリプションサービスの開始は話題を集め、認知度の向上と新規顧客の獲得にもつながりました。2017年に開始され、一時は新規登録が抽選になるほどの人気を博しています。
事例2.弥生株式会社の「やよいの青色申告 オンライン」
弥生株式会社が提供している「やよいの青色申告 オンライン」は年額制のサービスで、青色申告に必要な書類を作成できるサービスです。
MAツールを活用した施策によってリードナーチャリングやカスタマーサクセスを効率化し、アップセルや商品の継続利用によるLTVの向上に成功しました。
具体的には自社が提供している永年無料のサービスである「やよいの白色申告 オンライン」で書類を作成したユーザーに対して青色申告のメリットの案内を行い、「やよいの青色申告 オンライン」へのアップグレードにつなげています。また、確定申告の時期には機能の効果的な利用方法の案内メールを送信することで、サービスの有用性を高め顧客のファン化も実現しています。
まとめ
インターネットの普及やデジタルツールの進化により、近年はBtoB市場でも新規顧客の獲得だけではなくLTVの向上が注目されています。
効率的にLTVの高いリードを獲得するためには、MAツールやオウンドメディア、ホワイトペーパー、セミナーといった各種施策の連携が欠かせません。しかし、リード獲得に必要なナレッジが社内に蓄積されていない場合、各種ツールを導入した施策の効果が得られるまでには多大な手間と時間がかかります。工数をかけずにLTVの向上を実現するなら、代行委託も1つの選択肢です。
株式会社マイナビが提供中のサービス「TECH+ Lead Gen Category(LGC)」は、リード獲得に貢献できるオウンドメディア運用をサポートします。LGCは「定例MTG参加と意思決定」「CTA資料提供」「コンテンツ確認」のわずか3ステップでオウンドメディアを構築し、効率的にリードを獲得できます。デジタルマーケティングを活用したリード獲得に課題を抱えているのであれば、ぜひLGCの導入をご検討ください。