日本最多の乗降人員を数える新宿駅、東京都政の中心である東京都庁などを構える新宿区は、国内有数の規模を誇る大都市です。少子高齢化が問題視される中、新宿区の14歳以下の人口は増加している現状があります。新宿区では「新宿区教育ビジョン」を策定し、「自ら学び教えて行動する自立した子どもたち」を育むためさまざまな教育施策に取り組んでいます。 情報化社会の進展とともにさらなるICT教育の充実が求められる中、新宿区は2017年度の ICT 環境刷新に際して、マイクロソフトのSurface Pro 4約2,600台を、児童生徒と教員が利用する教育用タブレットPCとして新宿区の小中学校全校に導入。 授業のインタラクティブ性を高めたことで、児童生徒がこれまで以上に主体的に授業へ取り組めるようになり、さらに、児童生徒と教員の学びが広がり深まることで、教員の授業力が向上することも期待されています。

  • 新宿区立愛日小学校

    新宿区立愛日小学校

プロファイル

東京に23ある特別区の1つである新宿区。新宿駅や東京都庁舎、新宿副都心など近代的なイメージが強い新宿区ですが、住宅地もいまだ多く、大学のみならず、明治時代から続く歴史ある区立小中学校の多い地域でもあります。こうした新宿区の小中学校では、従来、時代ごとの最先端の教育を実践してきました。子どもたちの"学び"を広げ、教育を一歩先へ進めるための取り組みとして、新宿区では現在、ICT環境とそれを有効活用できる人材の育成を進めています。

導入の背景とねらい
情報化する社会に必要な資質、能力の育成を図り、児童生徒と教員の学びを広げ、教員の授業力の向上を目指す

情報化が進み、社会が急速に変化する現代。その次代を担う子どもたちには、受動的に生涯を過ごすのではなく、激変する社会を自らで切り拓いていく能力が求められています。この能力を培ううえで学校教育が重要となるのは言うまでもありません。

近年、多くの自治体や教育機関が、子どもたちを「自立した人間」へと成長させるための取り組みを進めています。中でも、新宿区は10年近くも前からこの取り組みに力を尽くしてきました。その始まりとなったのが、2009年3月に掲げられた「新宿区教育ビジョン」です。

新宿区教育ビジョンには、新宿区が目指す教育として「3つの柱と14の課題」が明確化されています。新宿区はこれに加え、具体的な計画として27の「基本施策」を立案のもと、教育施策を実行しているのです。

  • 新宿区の教育ビジョン画像

    新宿区教育ビジョン 施策の体系図 (引用: 新宿区教育ビジョン 概要版と平成 29 年度主要事業)

少子高齢化が深刻な社会問題となる中、2017年現在の新宿区の子ども(0~14歳)の人口は、2009年時点比で約6%伸張しています。

さまざまな教育施策を推し進める新宿区。その中でも「教員の授業力の向上」は、近年ひときわ重要度を高めていると、新宿区 教育委員会事務局 教育支援課 指導主事 三谷 純子氏は語ります。

三谷 純子氏画像

新宿区 教育委員会事務局 教育支援課 指導主事 三谷 純子 氏

「社会の変化に対応しなければならないのは子どもたちだけではありません。教員もまた、時代の変化に呼応して授業の質を高めていく必要があるのです。2020年度からプログラミング教育が小学校で必修化するなど、近年、教育の情報化が加速しています。新宿区教育ビジョンの柱の1つにある『時代の変化に対応した、子どもが生き生き学ぶ教育環境の実現』においては、情報化への教員側の対応を進めて、いかにして『教員の授業力の向上』を図るかが、重大なテーマとなるのです」(三谷氏)。

教員は「授業のプロ」です。教員には、自身で構想した指導コンセプトのもと方法論を考案し、それを実践することが求められます。ICTについても、「コンセプトの実現に必要」という、教員自らの判断のもとで活用されて初めて有効に機能するのです。

こうした背景から、新宿区は先の教育ビジョンを掲げた2009年度より、「誰もが、いつでも、簡単に使用できるICT環境」を目指し、区立の小中学校の全教室に対して区独自に考案した「新宿版教室のICT化」を行い、日々の授業でICTが簡単に活用できる環境を整備しました。さらに全教員へ校務 PC を配付し、校務支援システムも整備することで、業務を通じて無理なく教員のICT活用能力が向上するしくみづくりも進めたのです。

  • ICT化の画像
新宿区 教育委員会事務局 教育支援課 教育活動支援係 倉坪 耕作 氏

新宿区 教育委員会事務局 教育支援課 教育活動支援係 倉坪 耕作 氏

2011 年度までに整備が完了した同取り組みは、教員の ICT 活用が一般化するなど、大きな成果を生み出しました。しかし、「教員の授業力の向上」にはまだまだ改善が必要だと、新宿区 教育委員会事務局 教育支援課 教育活動支援係 倉坪 耕作 氏と三谷 氏は語ります。

「全教員へ校務 PC を配付し、全教室を『新宿版教室の ICT 化』するこれらの取り組みは、日々 ICT を利用する中で、教員が自ら ICT 活用のアイデアを生み出し、それを利便性の高い教室で実践する、というサイクルの発出をねらいとしていました。事実、95% の教員が 1 日 1 回以上授業で ICT を活用するようになるなど、大きな成果を上げたと考えています。しかし、子どもたちが ICT を利用する場合は、PC 教室で利用するか、可搬性が決して高くはないラップトップ型 PC を教室に運ぶ必要がありました。用途もキーボード入力に限られるため、子どもたちの授業での ICT 活用はなかなか広がりませんでした」(倉坪 氏)。

「主体的、対話的で深い学びの重要性が高まる中、『教員の授業力の向上』を果たすうえでは、いかにして授業にインタラクティブ性を持たせるかが課題となります。インタラクティブ性を持った授業は、子どもたちの学習意欲を高められるという意味できわめて有効です。われわれに求められたのは、各学校の ICT 環境を、これまで以上に場所と時間を限定しないものへと変えること。つまり、『"学び" を広げる』環境へと発展させることだと言えました」(三谷氏)。

システムの概要
児童生徒と教員がお互いに学び合う姿を実現すべく、双方が利用する教育用タブレット PC の統一を検討

2016 年 4 月、新宿区は「ICTを活用した教育環境の充実」という事業を立案のもと、ICT 環境の発展に向けた検討を開始。主に以下の 3 点を必要事項として定め、「"学び" を広げる」環境づくりを進めました。

  • 学びを広げる環境整備の要項

この内、児童生徒が ICT に直接触れるデバイスとなる (2) は、特に大きな役割を担うこととなります。新宿区では、この (2) のデバイス、そして教員が利用する (1) のデバイスともに、同一機種を選定する方針で検討を進めます。その理由について、倉坪 氏は次のように語ります。

「大多数の教員が 1 日 1 回以上 ICT を授業に活用しており、授業を行ううえで、ICT が欠かせない存在となりつつありました。ここで懸念されるのが、ICT の不具合などで機能しない場合に授業が停止するというリスクです。子どもたちと教員の PC を統一しておくことで、仮に授業で使う PC の台数が足りない、故障したという場合でも、相互の予備機などで補完し合いながら授業を継続することができます。物理的に壊れない ICT 機器は存在しません。万が一の事態でもバックアップ可能な環境を考慮すると、機種を統一することが望ましかったのです」(倉坪 氏)。

  • 「ICT を活用した教育環境の充実」事業では、教育ネットワーク システムの再構築も実施された。児童生徒と教員が同一のネットワークへアクセスし、ログイン ユーザーによって使用可能なフォルダーやアプリケーションを切り分ける構成を採用。これにより、教員向けタブレット PC と児童生徒向けタブレット PC が相互補完できる環境を整備した

また、機種を統一することは、教員が ICT 活用の新たなヒントを得やすくなるという点でも有効でした。児童生徒が ICT を活用する姿は、教員にとって、ICT 活用のヒントとなります。「児童生徒から教員が学びを得て、それが教育の質を高める」ことも、学校現場では往々にして起こるのです。

「この場合、機種を統一した方が、教員もアイデアをすぐに転用しやすいと考えました。また、子どもたちはいわゆるデジタル ネイティブ世代にあたります。タッチ操作へのなじみが深いため、タブレット PC を配付すればすぐに活用をしてくれるでしょう。子どもたちと教員との学び合いを早期に生み出し、そして教員の授業力を高めていく。そこに向けては、タッチ操作が可能なタブレット PC に機種を統一することが最適と言えました」(三谷 氏)。

新宿区では教育用タブレット PC の機種を統一する方針のもとで、製品の検討を開始。性能やバッテリー劣化時の交換、起動時間といった細かな要件を指定した機器仕様書を作成し、プロポーザル方式で構築事業者を選定しました。そして 2017 年 3 月、選定した構築事業者が提案していた Surface Pro 4 の導入を決定しました。

新宿区 教育委員会事務局 教育支援課 教育活動支援係 土井 遼 氏

新宿区 教育委員会事務局 教育支援課 教育活動支援係 土井 遼 氏

新宿区が作成した機器仕様書には、要件を満たす「参考品型番」として、Surface Pro 4 の名が明記されていました。新宿区 教育委員会事務局 教育支援課 教育活動支援係 土井 遼氏は、「機器仕様書の中では、性能や重量、インターフェイスといった基本スペックを指定し、基本構築仕様書の中で『1 分程度でのログインを可能とすること』といった細かい条件も指定しました。最終的に導入した Surface Pro 4 は、こういった条件を満たしており、また 5 年以上のサポートにも対応していたため、過不足のないタブレット PC と言えました」と、参考品型番に Surface Pro 4 を明記した理由を説明しました。

導入効果
授業のインタラクティブ性が高まり、児童生徒が主体的に授業へ取り組むように

新宿区は構築事業者を選定した後、すぐに約 2,600 台の Surface Pro 4 を調達しました。その後、教育用ネットワーク システムのサーバー環境構築、Surface Pro 4 のマスタ構成の設計を行い、2017 年の夏休み期間中に全教室の無線環境の更新工事、普通教室のプロジェクター更新工事と並行して、Surface Pro 4 の展開と教員向け導入時研修を実施。夏休みが明けた 2 学期より新たな ICT 環境の運用を開始しています。

夏休み期間中に教員を対象とする研修を実施できたこと、また多くの教員が既に教育現場で積極的に ICT を活用していたことから、新たな環境は早期に教員へ受け入れられました。そして同環境は、児童生徒と教員の双方で積極的に活用されていると、三谷 氏と土井 氏は語ります。

「これまで教室に常設していた教育用ノート PC は、複数の教員が共有して使っていました。今回の刷新ではこれが教員個人に割り当てられるようになり、自分自身でカスタマイズが可能となっています。ログイン時間の短縮や性能面の向上もあり、新たな ICT 環境は教員から『使いやすい』と好評です。まだ稼働したばかりにもかかわらず、授業では既に多くの教員が、児童生徒用の Surface Pro 4 とプロジェクターを活用したインタラクティブな授業を実践しています」(三谷 氏)。

  • 授業風景
  • 教室の画像
  • 機器の保管庫画像
  • Surface Pro 4 とプロジェクターを活用してインタラクティブ性をもった授業を実践する様子 (左)。児童生徒の Surface Pro 4 は、PC 教室 (真ん中) に設置されたキャビネット (右) から持ち出して利用する

「こうしたインタラクティブ性をもった授業では、子どもたちが積極的に授業へ参加し、学習意欲が高まっているようすがひと目でわかります。また、Surface Pro 4 という新しいタブレット PC への関心もあってか、子どもたちが Surface Pro 4 をきっかけに学びを深め合う姿も見られます。協働学習においては特に顕著です。Surface Pro 4 は、子どもたちの『"学び" を広げる』ことに大きく貢献していると感じます」(土井 氏)。

  • 授業風景

    協働学習のようす。児童生徒は Surface Pro 4 に高い関心を寄せながら、学びを深め合っていた

新たな ICT 環境は、児童生徒だけでなく教員の「"学び" を広げる」ことにも貢献していると言います。倉坪 氏は、児童生徒が ICT を利用する姿から得た発見を例に、これを説明します。

「新宿区では、直感的な操作性と可搬性を重視してタブレット PC を採用しました。子どもたちはペン入力やタッチ操作などで積極的に Surface Pro 4 を利用しています。また、当初は想定していませんでしたが、子どもたちはキーボードとタッチ操作を合わせて使って授業に臨んでいました。こうした、さまざまな形で ICT を活用する子どもたちの姿は、教員のアイデアの種となるでしょう。新たな ICT 環境がこういったアイデアの種を生み出す、そしてそれを子どもたちと同じ環境で教員が実践する、というサイクルが生まれることで、教員の授業力の向上につながることを期待しています」(倉坪 氏)。

  • ICT化の画像

今後の展望
教育課題研究校の実践事例を横展開して、全校的な活用促進を図る

Surface Pro 4 を採用した ICT 環境の整備によって、児童生徒と教員の学び合いをこれまで以上に深めることが定着しつつある新宿区。新宿区が目指す「教員の授業力の向上」に向けた歩みは、大きく加速されたと言えます。新宿区ではこの環境がさらに有効活用されるよう、各学校に向けた研修等の活用推進を計画。現在、ICT の活用状況に関するモニタリングが進められています。

「新宿区にある小中学校の ICT 環境は、現時点では、国内の区市町村の中で最先端の環境だと言えると思います。ただ、ICT を有効に活用するためには、単に ICT 環境を用意するだけではなく、研究、実践および支援が大切だと考えています。現在、新宿区では教育課題研究校として小学校で 2 校、中学校で 1 校を指定し、研究と実践を進めており、各学校の ICT 活用状況の可視化にも取り組んでいます。将来的には、教育課題研究校や活用を推進している学校を例として横方向に展開していきたいと考えています。また、常設の 2 名のヘルプ デスクと学校を巡回訪問する 6 名の ICT 支援員を中心とした支援も行っています」(倉坪氏)。

倉坪氏が語るように、新宿区では教育課題研究校を中心に研究、実践を進め、全校の活用レベルを高水準なものへ引き上げていくことを目指しています。また、運用保守事業者を通じ、学校単位で Surface Pro 4 のログイン回数やアプリケーションの使用率などを調査し、全校の利用状況の可視化にも取り組んでいます。

「『教員の授業力の向上』は、単に ICT 環境を整備するだけでは実現できません。"どの学校、どの授業で、どのように ICT を活用すればよいのか" という細部にまでブレイク ダウンして、その実践を促していく必要があるのです。理想的な教育として、これからも『"学び" を広げる』活用の形を追求していきたいと考えています」(三谷 氏)。

一歩先を行く教育の充実を目指す新宿区。新宿区の取り組みが、全国の区市町村や教育機関から注目されています。

  • 集合写真の画像

「新宿区では、直感的な操作性と可搬性を重視してタブレット PC を採用しました。子どもたちはペン入力やタッチ操作などで積極的に Surface Pro 4 を利用しています。また、当初は想定していませんでしたが、子どもたちはキーボードとタッチ操作を合わせて使って授業に臨んでいました。こうした、さまざまな形で ICT を活用する子どもたちの姿は、教員のアイデアの種となるでしょう。新たな ICT 環境がこういったアイデアの種を生み出す、そしてそれを子どもたちと同じ環境で教員が実践する、というサイクルが生まれることで、教員の授業力の向上につながることを期待しています」

新宿区 教育委員会事務局
教育支援課
教育活動支援係
倉坪 耕作 氏

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