初めての妊娠。右も左も分からない。そんななかで、人はそれぞれの悲しみや不安、楽しみや喜びを経験していく。本連載は、初産を経験したママやパパの”妊娠中期・後期”にフォーカスを当て、ひとりひとりのトツキトオカに迫る企画です。「仕事」「夫婦関係」「メンタル」の面から見える、それぞれの妊娠中の心の動き。第6回は、公務員として働く中村美千代さんにお伺いしました。

  • 中村美千代さん プロフィール
    東京都町田市環境資源部環境政策課にて、総務を担当。環境やごみ問題などを扱う一方、課内の人事や予算などの庶務にも携わっている。

妊娠を言い出せず、精神的にも体力的にも疲れてしまった

現在の部署へ異動して間もなく、妊娠がわかった中村さん。その頃は食べづわりがひどく、何かを食べていないと気持ち悪くなってしまう状態だったとか。

「職場の休憩室で間食をして、仕事を続けていました。マドレーヌなど小さくてお腹にたまるお菓子などを選んで食べていましたが、どうしても離席が多くなってしまって……。妊娠を報告する前だったので、周囲にどう思われているのか考えるたびに、心苦しかったです」

あとから、職場の人に「気にならなかった」と聞きホッとしたものの、その当時は異動したばかりで妊娠を言い出すことができず、周囲の反応を不安に思うことしかできなかったといいます。

  • 食べづわりよりもずっと、周囲の目が気になることが苦しかったと中村さんは話します

また、つわりが治まった後も、「安定期までは……」と、中村さんは上司や同僚にも妊娠を報告しませんでした。しかし、結婚式を数ヵ月後に挙げる予定だったため、仕事は通常通りのまま、式の準備に忙しくなり、疲れがたまってしまいました。

「妊娠前と同じように予定を組んでしまい、キャパオーバーになりました。疲労がたまって動けなくなり、夕方からずっと横になっていたなんてことも……。普段ならこなせることも、妊婦だと疲れやすいんだと気づきましたね」

このタイミングを機に、中村さんは職場に妊娠を報告。妊婦が混雑する時間を避けて通勤できる職場の制度を使い、朝の出勤時間を遅らせてもらったことで、働きやすくなったそう。

「異動後、なんとなく妊娠を報告するのが後ろめたい自分がいたんです。今思えば、もっと早く言っておけばよかったですね」

職場に妊娠を伝えられない人へ
職場での不安を乗り越えた先に

職場で過ごしやすくなったものの、仕事を覚えている最中だった中村さん。産休前は、「いなくなったら迷惑をかけてしまう」という不安より「戻ってくる席がないんじゃないか」という不安が大きかったといいます。

「産休に入る前に職場で激励会を開いてもらい、『待っているからね』と言葉をかけてもらいました。おかげで、復帰の不安も払拭され、安心して産休に入ることができました。」

妊婦の大変さを理解して、サポートしてくれる夫が嬉しかった

妊娠がわかってから旦那さんと一緒に住み始め、中村さんは「やっと一緒に住める」という喜びと安心感でいっぱいだったといいます。しかし、式の直前は険悪になることもあったのだとか。

「妊娠7ヵ月目に結婚式をあげることが決まっていたのですが、式の1ヵ月前は準備が本当に大変で……。夫からは『ぜんぶ好きにしていいよ』と言われていたのですが、招待状や当日の進行、席決めなど、考えることがたくさんあり、負担が多いと感じてしまいました。」

  • 結婚式のビデオレターは旦那さんが、それ以外は中村さんが担当することになり、忙しい毎日を送ることになったのだとか

なんとか仕事をしながら準備を進め、式は無事に終了。落ち着いてみると、周囲や夫に対して感謝の気持ちが生まれてきたといいます。

「ひとりで大変な思いをしている気がしていましたが、みんなに支えられていたとわかって。『自分ばかり』は思い込みで、夫も十分手伝ってくれていたんだと後から気づきました。」

こうして、旦那さんとの関係も良好にもどった中村さん。妊娠中、旦那さんにしてもらって嬉しかったことは「妊婦健診に何度も一緒に行ってくれたこと」なんだとか。

「『健診について来てもらった方がいいよ』と友達からアドバイスをもらったことがあったので、夫に話してみるとすんなり受け入れてくれました。おかげで、子どもが生まれる実感や、親になるという当事者意識も生まれてきたのかなと思います」

  • 旦那さんは、時には平日に休みをとり、健診についてきてくれたといいます

それからというもの、病院からもらったマタニティ向けの情報誌を読み込んでアドバイスをくれたり、赤ちゃんの成長がみられるアプリを入れて情報共有をしてくれたりと積極的にサポートしてくれるようになったそう。

「あとは、もともと肩こりが激しい私に、よくマッサージしてくれました。健診で助産師さんに『奥さんにマッサージをしてあげた方がいいですよ』と言われたことや、病院主催の『パパママクラス』で妊婦の大変さを感じたことで、『自分にできること』を考えてくれたのかなと……。気持ちよくてありがたかったです」

想像できない帝王切開が不安で、泣いた日もあった

妊娠中、メンタルはそれほど不安定ではなかったものの、逆子と診断され帝王切開が決まったときは、とても落ち込んだのだとか。

「ギリギリまでどっちつかずで、帝王切開を決めるべきときに逆子だったんです。知人で帝王切開で出産した人がいて『痛くて怖い』と聞かされていたのでとても不安で……。夫に不安な気持ちを伝えて『帝王切開の人はたくさんいるんだから大丈夫だよ』と励まされ、少しずつ覚悟が決まっていきました」

徐々に気持ちも安定し、出産後の赤ちゃんグッズを買いに行くことが楽しみになりはじめた中村さん。お休みの日には電車で行ける範囲のところに外出し、リフレッシュするように心がけていたといいます。

  • 義理の妹さんに子どもがいたので、聞きながら必要なものを揃えていったんだとか

そうして迎えた妊娠37週目、赤ちゃんの向きが変わり、逆子ではなくなったそう。急遽普通分娩になり「何とかなるだろう」と思ったものの、想像よりもずっと大変だったといいます。

「予定日を過ぎても何の音沙汰もなく、10日を過ぎてから促進剤を打つことになりました。それでもなかなか生まれず、3日間促進剤を打ち続け、やっと出産しました。ずっと帝王切開で産むと思っていたので、促進剤のことや呼吸法など、普通分娩に関する情報をあまり調べていなくて後悔しましたね」

帝王切開が不安でこわい
いつも笑顔の私が泣いた日のこと

異動したばかりの部署で、結婚式の準備もしながらの妊婦生活。帝王切開への不安と、突然の普通分娩への転向。たくさん不安がある中で、少しずつ乗り越えていき、多くの気づきを得た中村さん。この先、大変なことがあっても、自分なりに答えを探しながら、前へ前へと進んでいけると思います。

最後に、前回インタビューした松木仁美さんの質問「妊娠中、一番大変だったマイナートラブルはなんですか?」に答えていただきました。

「食べづわりです。ひたすら食べ続ける生活が1ヵ月は続きました。あんかけ焼きそばやラーメンなど、脂っぽくてのど越しがいいものをよく食べていました」

中村さんが次の方に聞きたい質問はこちら。

  • 「役に立ったマタニティグッズは何ですか?」

こちらの質問は、次回の方にお聞きします。第7回の連載をお楽しみに!

※本記事はオンライン取材をさせていただき、写真は町田市様にご協力頂きました


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