本連載では、ネットワーク構築に必須となるLANスイッチについて、動作や仕組みを解説しながら実際の設定例を示し、ネットワークを身近に感じていただける事を目的としています。第六回では、リンクアグリゲーションについて解説しています。

第五回までに、LANスイッチの概要や種類、ポート関連の機能等について解説しました。第六回の本項では、複数のポートを1つのポートのように扱えるリンクアグリゲーションについて、動作や仕組み、スマートスイッチでの設定方法等を解説します。

1. リンクアグリゲーションとは?

LANスイッチ間を接続し、複数のパソコンやサーバで通信を行った場合、輻輳が発生する事があります。

LANスイッチ間に通信が集中するためです。このLANスイッチ間の接続を増やす方法があり、リンクアグリゲーションと呼ばれます。

LANスイッチ間を複数のポートで接続するとループ構成になります。ループを回避するためスパニングツリープロトコルを利用すると、フォワーディングポートとなる1つのポートしか使えませんが、リンクアグリゲーションを利用すると複数のポートが同時に使え、フレームは複数のポートに分散されます。上の図では、ポート7とポート8で分散しており、最大で2ポート分の通信量を賄えますが、論理的には1つのポートとして扱われます。このため、リンクアグリゲーションとスパニングツリープロトコルを併用する事も可能です。

一般的に、リンクアグリゲーションでは3つ以上のポートを含める事もできます。また、1つのポートが障害で通信できなくなると、残りのポートだけで通信を継続できます。

このため、輻輳が発生しない場合でも、リンクアグリゲーションを使えば経路の冗長化ができます。

2. リンクアグリゲーションの設定例

ネットギア製品のスマートスイッチでは、ログイン後に「Switching」→「LAG」→「Basic」→「LAG Membership」を選択する事でリンクアグリゲーションを有効にできます。

デフォルトでLag1、Lag2等のリンクアグリゲーションを識別するLAG IDが何個か登録されているため、設定するLAG IDを赤枠部分で選択します。青枠部分をクリックするとポート一覧が表示されるため、緑枠部分のようにリンクアグリゲーションに含めるポートを選択し、「APPLY」をクリックすると設定が反映されます。1つのリンクアグリゲーションに含める事ができるポート数はスマートスイッチの機種によって異なり、4ポートや8ポート等です。また、異なるLAG IDそれぞれにポートを割り当てる事で複数のリンクアグリゲーションを構成可能です。例えば、Lag1にポート1と2、Lag2にポート7と8を割り当てる事が可能です。

赤字部分のように、対向するスイッチ間でLAG IDが一致していなくても問題ありません。LAG IDに対する設定は、「LAG Configuration」で変更できます。

赤枠部分で変更したいLAGを選択すると設定ができるようになります。右にスクロールさせて表示される緑枠のLAG Typeは、StaticとLACP(Link Aggregation Control Protocol)から選択できます。Staticは必ずリンクアグリゲーションを構成しますが、LACPは自動判定です。接続先のLANスイッチがLACPの時はリンクアグリゲーションを構成し、接続先がStaticやリンクアグリゲーションでないポートの場合はリンクアグリゲーションが有効になりません。このため、接続するLANスイッチ間で設定が一致している必要があります。デフォルトはStaticです。黄色枠部分には、このLAGに属するポートが表示されます。図ではポート7と8がLAG1に属しています。「APPLY」をクリックすると設定が反映されます。

フレームが設定したポートへ正常に分散されているかは、「Monitoring」→「Port Statistics」で確認できます。

赤枠部分は受信、または送信したフレーム数です。上記ではポート7と8で正常に分散されている事がわかります。

2. おわりに

第六回では、リンクアグリゲーションの動作や設定を解説しました。リンクアグリゲーションを利用すると、複数のポートを1つのポートのように扱え、賄える通信量を増やすとともに経路の冗長化もできます。また、ポートではなくリンクアグリゲーションにVLANを割り当てる事ができる等、様々な機能でリンクアグリゲーションを論理的なポートと扱い、設定ができます。例えば、「第三回 VLANとは? 」で説明した、「Port PVID Configuration」の画面下でLAGSを選択すると、ポート一覧の代わりにLAG一覧が表示されるため、LAGを選択してVLANの設定が可能です。

次回は、MSTP(Multiple Spanning Tree Protocol)の動作や設定、スパニングツリープトロコルにおけるオプション設定をご紹介します。

のびきよ

2004 年に「ネットワーク入門サイト」を立ち上げ、初心者にも分かりやすいようネットワーク全般の技術解説を掲載中。著書に『短期集中! CCNA Routing and Switching/CCENT教本』、『ネットワーク運用管理の教科書』(マイナビ出版)がある。

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