本連載は、ネットワーク構築に必須となるLANスイッチについて、動作や仕組みを解説しながら実際の設定例を示し、ネットワークを身近に感じていただける事を目的としています。

第五回までに、LANスイッチの概要や種類、IEEE802.1X認証等について解説しました。第六回となる本稿では、接続先の情報を簡単に取得できるLLDP(Link Layer Discovery Protocol)と、動画等を参照する時に使うIGMP(Internet Group Management Protocol) スヌーピングについて解説します。

1.LLDP

LANスイッチ間が、どのポートで接続されているか確認したいとします。接続しているケーブルをたどれば確認できますが、距離が離れていたり床下に配線されていたりすると困難です。LLDPを利用すると、どのポートにどのホスト名のLANスイッチが接続されているのか簡単に確認できます。ホスト名とは、LANスイッチの名前です。

LLDPは、LANスイッチのホスト名やポート番号等を一定間隔で送信します。LLDPを受信したLANスイッチは、隣接装置のホスト名やポート番号等を表示できます。また、どのポートで受信したのかも表示できます。

2.LLDPの確認例

ネットギア製品のスマートスイッチでは、LLDPはデフォルトで有効です。このため、設定しなくても使えます。受信した情報を参照するには、ログイン後に「System」→「LLDP」→「Advanced」→「Neighbors Information」を選択します。

各項目の意味は、以下の通りです。

つまり、画像の情報からは、以下の事が読み取れます。

1.ポート番号2はtest2(2C:30:33:9E:54:FF)のポート番号1に接続
2.ポート番号6はtest3(DC:EF:09:E3:BB:9C)のポート番号8に接続

なお、「MSAP Entry」欄のリンクをクリックすると、更に詳細な情報を確認できます。

3.IGMPスヌーピング

動画の配信は、大量のフレームが送信されます。このため、動画を参照するパソコン1台1台にフレームを流すと、輻輳が発生して通信が遅くなったり、フレームが破棄されたりする可能性があります。通信が遅くなったりフレームが破棄されたりすると、動画が途切れたり止まったりします。これを防ぐためにマルチキャストといって、同じ動画は1台分のフレームで送信できる仕組みがあります。

マルチキャストを利用しない場合、1,000台のパソコンで同時に動画を見ると1,000台分のフレームが流れて正常に動画が参照できない可能性があります。マルチキャストを利用すると1台分のフレームで済むため、正常に動画を参照できる可能性があります。マルチキャストによる動画配信は、例えば239.255.0.1を送信先にしたフレームで配信します。239.255.0.1はマルチキャストアドレスと呼ばれ、グループを示すIPアドレスです。マルチキャストアドレスの範囲は、224.0.0.0~239.255.255.255です。パソコン上の動画参照ソフトウェアでアドレスを239.255.0.1に指定すると、239.255.0.1グループへの参加を通知します。この参加通知は、IGMPと呼ばれます。

このように、IGMPで参加通知があった時だけ動画が配信されるようになっています。この時、途中にLANスイッチがあり、動画を参照するパソコンと参照しないパソコンが接続されていたとします。デフォルトの状態では動画を参照しないパソコンも含めて、LANスイッチは全てのポートに動画を転送してしまいます。このため、動画を参照していないパソコンでは無駄な通信を受信してしまいます。これを防ぐ仕組みとして、IGMPスヌーピングがあります。IGMPスヌーピングは、IGMPの参加通知を受信したポートを覚えておき、そのポートだけにフレームを送信します。

IGMPスヌーピングを利用すると、不要なポートにはフレームを流さなくなるため、通信量を抑える事ができます。

4.IGMPスヌーピングの設定例

IGMPスヌーピングは、「Switching」→「Multicast」→「IGMP Snooping」→「IGMP Snooping Configuration」で有効にできます。

赤枠部分でEnableを選択し、「APPLY」をクリックすると設定が反映されます。「IGMP Snooping State」は、IGMPスヌーピングを有効にする設定です。「Block Unknown Multicast Address」は、IGMP参加を受信していないポートにはフレームを送信しない設定です。デフォルトはどちらもDisableのため、無効です。IGMPスヌーピングを利用するVLANは、「IGMP Snooping VLAN Configuration」で設定します。

赤枠部分でIGMPスヌーピングを利用するVLANを入力し、「ADD」をクリックすると追加されます。VLAN単位ではなく、ポート単位で設定したい場合、「IGMP Snooping Interface Configuration」で行えます。g1、g2等のポート番号を選択し、Enableにします。また、IGMPスヌーピングの確認は、「IGMP Snooping Table」で行います。

赤枠部分のように、どのポートからIGMPを受信したか表示されます。上記では、ポート番号3からIGMPの参加通知を受信した事がわかります。この場合、動画はポート番号3だけに配信されます。

5.おわりに

本稿では、LLDPとIGMPスヌーピングの機能と設定について解説しました。IGMPには参加通知だけでなく、脱退を通知する仕組みもあります。例えば、動画の参照をやめると脱退通知が送信され、動画のフレームが流れて来なくなります。IGMPの参加通知をIGMP Join、脱退通知をIGMP Leaveと言います。
次回は、小規模ネットワークの構築例をご紹介します。

著者:のびきよ
2004年に「ネットワーク入門サイト」を立ち上げ、初心者にも分かりやすいようネットワーク全般の技術解説を掲載中。著書に「短期集中! CCNA Routing and Switching/CCENT教本」、「ネットワーク運用管理の教科書」(マイナビ出版)がある。

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