本稿からさかのぼる事約3年前、クラウドサービス黎明期から日本における代表的なクラウドサービスのひとつであった「ニフティクラウド」をエンジニア目線で試すという企画「【コラム】現役エンジニアが本音で試すニフティクラウド」に取り組んだことがある。それから数年が経ち、いま、クラウドサービスはクラウドサービスは本当の普及期に入ったといえるが、ニフティクラウドはどのような進化を遂げたのだろうか。

本企画は、数年前の企画のリバイバルになるが、今なお高い評価を得ているニフティクラウドについて、エンジニア目線から本音ベースでの体験レポートをお届けしていきたい。なお、前回の連載企画時には取り上げなかった機能や、新たに追加された機能も出来るだけ紹介してみたいと思う。

ニフティクラウドNAS登場

2016年よりニフティクラウドが提供を開始しているストレージサービス「ニフティクラウドNAS」。同サービスは2つのタイプを備えており、様々な用途で活用することができる。いったんクラウドサービスの利用をはじめてからディスク容量が足りなくなることはよくあることなので、このサービスはこれまでニフティクラウドを使ってきたユーザーにとっても嬉しい機能追加だろう。

• 標準タイプ 100GB(以降、100GBごとに追加可能。最大1TB)
• 高速タイプ 1TB(以降、1TBごとに追加可能。最大10TB)

詳細:http://cloud.nifty.com/service/nas.htm

「ニフティクラウドNAS」の最大の特徴は複数のサーバーから同時にマウントできる点にある。しかも、プライベートネットワーク内部のサーバのみならず、外部のネットワークからもマウントできる。たとえばプライベートネットワーク内ではセットアップしたサーバー間で共有して、さらに会社の作業マシンからも利用するといったことが可能だ。

プロトコルはNFSv4とCIFS(SMB2.0)に対応。LinuxやFreeBSDなどで利用するならNFSv4、WindowsやMac OS Xから利用する場合にはCIFSを選ぶのが簡単だ。NASごとにプロトコルを混在することはできないので、どちらかに揃えておく必要がある。サーバー作成時にLinuxやFreeBSDを選んだ場合にはNFS、Windows Serverを選んだ場合にはCIFSということになるだろう。

共有、静的コンテンツ配信やログ集積などの用途に最適

ニフティクラウドNASで提供されるストレージは、サーバーにアタッチする標準の増設ディスクよりは読み書きの性能が低い値になるのは致し方ないだろう。また、同時に複数箇所からマウント(アクセス)できる反面、多重マウントした場合はさらに、性能低下が顕著となるのだが、このあたりは利便性と性能のトレードオフの関係にある。

読み込み時の速度性能が高く、書き込み時の速度性能が低いのは、標準の増設ディスクでもニフティクラウドNASでも変わらない傾向である。しかし、標準の増設ディスクとの速度差が特に大きくなるのは、ランダム読み込み時であり、それ以外の読み書き(シーケンシャル・ランダム)では6~8割程度の速度がでているという。ニフティクラウドブログの記事でベンチマークの取得結果が公開されていたが、筆者が試してもほぼ同じような傾向が見られた。

デフォルトで割り当てられる標準の増設ディスクはそもそも最大容量が1TBと少ないので、ここに大量のデータを蓄積していくことには無理がある。複数のサーバーに大量ディスク領域が必要な場合・前記のような速度差を許容できるならばニフティクラウドNASを利用することで大きな利便性を得ることができるのではないだろうか? こうした特徴から、サーバー間で共有する必要のあるデータの保管場所、静的Webコンテンツの配信、大容量データの格納場所、ログデータの格納といった用途がニフティクラウドNASに向いているだろう。

NASのクラウド側セットアップは簡単

それでは、ニフティクラウドNASを実際に使っていきたい。セットアップは簡単だ。最初にアクセス許可を設定するファイアウォールを設定し、次にNASの作成を行う。NFSv4を使う場合にはこのフィルターがアクセス規制の基本となるので、あまりザルになる設定はしないことが大切になる。

ニフティクラウド左上のメニューをクリックし、展開されるメニューからNASを選択

左のメニューからファイアウォールを選択して、新規作成ボタンをクリック

名前を付けてファイアウォールを作成

作成したファイアウォールにアクセスを許可するサーバーやPCのIPアドレスを追加していく(CIDRで指定する必要がある)

ちなみに、NASを作成してからファイアウォールを作成しても大丈夫だ。いずれにせよ、ファイアウォールを設定してアクセスを許可しないとマウントもアクセスもできない。よって、NASの作成とファイアウォールの作成、この2つの結び付けの作業が必要になる。ファイアウォールを後から作成した場合は、NASの設定画面を開いて作成したファイアウォールを設定しておく。

NASを作成

最初にタイプとプロトコルを選択

名前やサイズなどを指定。すでにファイアウォールを作成してある場合にはここで選択しておく

作成内容の確認

作成されたNASストレージ

ちなみに作業を行う際、ブラウザーによってはいつまでたってもNASが作成中のままになる(ように見える)ことがある。そんな場合にはブラウザーをページごとリロードしてみよう。作成が終わっていればステータスが変化して、作成中のプログレス表示からオンラインという表記に変わるはずだ。

NASストレージの利用は、サーバーの設定の方が迷うかも

ニフティクラウドやニフティクラウドNAS側のセットアップや設定は簡単だ。類似のクラウドサービスと比較した場合、ニフティクラウドの利点はわかりやすさにある。海外ベンダーのクラウドサービスはUIが基本的に英語だし、UXもあまり馴染まない部分がある。ニフティクラウドはその点国内で開発されており、日本語環境に慣れたユーザーにとって馴染みやすい。

ストレージにNFSを選んだ場合でもCIFSを選んだ場合でも、問題になるのはむしろマウントする側だろう。たとえばこれまでNFSマウントをしたことがないなら、その設定に迷う可能性が高い。マウント方法はオペレーティングシステムごとに違うのでそれぞれのディストリビューションに合わせて作業して欲しいが、注意すべきことを箇条書きにしておこうと思う。

・オペレーティングシステムが提供しているNFSの機能を有効にする
・オペレーティングシステムが提供しているファイアウォールの内容を確認するなど、NFSが利用できる状況になっていることを確認する
・ニフティクラウドはNFSv4である必要がある。NFSv3やNFSv2は利用できないので要注意
・NFSv4を適切に利用するには複数のサービスが動作している必要がある。そのあたりの設定も確認しておく

サーバー001からNASストレージをマウント

サーバー002からNASストレージをマウント

上記はニフティクラウドにセットアップしてある2つの異なるサーバーから作成したNASストレージをマウントしたものだ。同時にマウントできていることを確認できる。ためしに、サーバー001からデータを書き込んで観ると、サーバー002から書き込まれたデータを確認できる。

サーバー001から10GBほどデータを書き込んで観る

サーバー002から同じデータを確認できる

サーバーを再起動しても自動的にマウントされるようにするには、/etc/fstabなどに設定を追加する必要がある。書き方はオペレーティングシステムごとに異なるので、それぞれの設定に合わせて追加してもらえればと思う。

ニフティクラウドではない他の場所に存在するサーバーからニフティクラウドNASをマウントしてみたが、そちらも同じように利用できた。グローバルネットワークにアクセスしてマウントできるのでかなり便利だ。

もし社内の作業マシンなどからマウントできないのであれば、ニフティクラウドNASの設定よりも、社内のルーターの設定を疑った方がよい。厳しい設定をしているルーターではこうしたパケットは通らない設定になっているので、マウントはできないことが多い。その場合にはネットワーク管理者に相談してパケットが通るようにしてもらってから作業を行う必要がある。

ニフティクラウドNAS -まとめ

ニフティクラウドNASはセットアップも設定も簡単でわかりやすい。ディスクストレージの残りに不安があるとか、複数のサーバーで同一のデータを参照する必要があるといった場合にはぜひ利用を検討してもらえればと思う。

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