日夜、孤軍奮闘するひとり情シスを応援するメディアとして開設した「ひとり情シスチャンネル」。その特集の一つとして、ひとり情シスとしてさまざまな取り組みをしているソフトクリエイトホールディングスの情報システム部部長、長尾聡行氏へのインタビュー第3回をお届けする。

これまで、「ひとり情シス」でもできる働き方改革や、中小企業でも実践できるセキュリティ改善について紹介してきた。しかし、こういった取り組みは経営者の理解無しに進めることはできない。「情シスの地位向上」はどうすれば可能となるのか。その糸口を紹介する。

社内のITの立ち位置を明確にする

社内のPC端末やシステムをすべて管理するという大きな責任を負っているにもかかわらず、権限にとぼしく、軽んじられているのが情シスだ。勇気を振り絞って社長にセキュリティ改善を提案しても、理解もされず突っぱねられてしまう。こんなケースは往々にしてあるだろう。

いったいどうすれば、情シスは経営者に認められる存在になるのだろうか。それにはまず、経営者がITをどのように捉えているか、知る必要がある。

もし経営者が「しかたなくPCを使っているだけ。情報システム部門の担当者はパソコン教室の先生役でいればよい」と考えているならば、この企業における情シスがめざす成果は「従業員のPCリテラシーを上げること」だ。

「PCは文房具の延長だから各自が使えて当然。そんなところに時間を割いていないで、売上増・コスト削減の仕組みをつくることが情シスの仕事」と考えているなら、この場合は「生産性をいかに向上させるか」が情シスの成果の指標だ。

いずれにせよ、「この会社における情シスの役割は何か?」「何をすれば情シスの成果になるのか?」ということを経営者と明確にしておくことが重要だ。

ソフトクリエイトホールディングス 情報システム部 部長 長尾聡行氏

ソフトクリエイトホールディングス 情報システム部 部長 長尾聡行氏

とはいえ、人事考課の際に『パソコンのお守り役』だけとなっている情シスに高い評価してくれる企業は少ないだろう。

「本人がいくら頑張ってもその成果は認められず、失敗したときだけ責められる。こんな中小企業のシステム部門のありかたを、私はなんとかしたいと思っています。どうすれば経営者に信頼されるのか。『情シスの地位向上』についてこれからお話ししていきます」(長尾氏)

他部門と連携できる情シスへ

情シスの地位向上のために、まずは「社内に仲間を増やすこと」が先決だと、長尾氏は語る。

「ひとり情シスがまずやるべきことは、既存のシステムのUIを使いやすくしたり、利便性を向上させることによって『この人は自分たちの仕事を効率化してくれるんだな』と思ってもらうことです。利用者の使い勝手や効率を考えずに、一方的にシステムや機能を増やせば、それが必要なものだとしても、利用者からは『やることを増やさないでよ』と思われてしまいます。そう思われることが続いたら、ひとり情シスはさらに孤立してしまい、なにかやろうとしてもすぐに反対されてしまうでしょう。さらに言えば、はじめのうちは、“マウスを直した”レベルでいいかもしれませんが、最終的には、個人的なトラブルではなく、組織としての改善を示すことが重要です」(長尾氏)

他部門の仲間と連携できるようになれば、会社としてより大きなことができるようになる。自身も「ひとり情シス」である長尾氏が、他部門と連携してワークフローを改善した取り組みの一つが「退職者アカウント処理の改善」だ。

「従来は退職者が出た場合、現場に削除申請書を発行してもらってから対応していました。セキュリティの観点から、退職者のアカウントはなるべく早く削除すべきですが、普段やらない申請なので現場が忘れてしまい、放置されていることもありました。そこで、『現場は申請する必要無し』としたんです。退職情報を持っている人事部門と連携して、退職日に合わせて情シス側で処理するようにしました。これは情シスがルール変更を提案することによって、組織としての業務を効率化できた一例です」(長尾氏)

また、業務をより便利にしていくためには、情シスが管轄していない「シャドーIT」も積極的に利用していくべきだと長尾氏は続ける。

「そもそも『シャドーIT』が責められるのはおかしな話です。従業員は遊んでいるわけではありません。生産性が向上するからこそ、LINEやGoogleドライブを使っているのです。とくにスマホの操作にはみんな詳しくなっていますから、こうした動きを活用しない手はありません。シャドーITではなく日の当たる所に出して、スマホも仕事に使えるようにすれば良いのです」(長尾氏)

スマホの業務利用について、ソフトクリエイトHDの場合はeラーニングの実施に大きな効果を感じたという。

「eラーニングをスマホに対応したところ、受講率が圧倒的に伸びたんです。PCの場合はわざわざ操作マニュアルを作って配布して、何回もやるように言う必要があったのですが、そんなことは一切していません。ただスマホ用のURLを告知しただけです。ちょっと空いた時間を活用できるスマホの便利さに、改めて気づくことができました」(長尾氏)

  • まずは仕事を効率化してくれると思ってもらう

戦略部門になるために時間の確保を

利便性の向上、セキュリティの堅牢化、コミュニケーション改善などシステム部門が果たすことのできる役割は大きい。スマホを使ってGoogleハングアウトでテレビ会議をできるようにするだけでも、仕組みがなかった頃に比べれば、生産性が格段に高まる。社内で目に見える効果をもたらせばもたらすほど、経営者は情シスに一目置くようになる。

しかし、どれだけ簡単に見える仕組みでも、まったく新しいことを組織に導入することは容易ではない。ルールをつくり、やり方を伝え、初期のトラブルに対応しなければならない。戦略的なシステム改革になればなるほど、自社の現状を把握し、予算計画を立案し、経営者に提案して、納得してもらう必要がある。

つまり、情シスには考えて、調べる「時間」が必要だ。

時間を確保するにはアウトソースやクラウドシフトなどの手段がある。ヘルプデスク対応や障害対応などのノンコア業務は、アウトソーシングする。クラウドに移行すれば、社内サーバーの保守にかかる手間を大きく省ける。そうして初めて、情シスは「攻めのIT」に取り組むことができる。

もちろん、こういった手段も経営者の理解が必要だ。「最終的には、『働き方改革』という言葉を突破のために使いましょう」と長尾氏は強調する。

「自社の改革は自社の情シスしかできません。他社の人間では、ソリューションの提案はできても、100%社内の事情を理解したうえで、必要なものを見極めることは難しい。自社に合わせたITを駆使して、人の動きをどんどん潤滑にして、ITOサービスプロバイダーなどに頼れるところは頼ってしまって、会社のパワーを高める。これこそが情シスの真の役割だと思います。ぜひ、社長が理解できる成果を挙げていってください」(長尾氏)

  • ソフトクリエイトホールディングス 情報システム部 部長 長尾聡行氏

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