みなさんは「STEM」という言葉をご存じでしょうか? Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとった言葉で、先進国のなかでも、日本はSTEM分野の仕事に携わる女性が圧倒的に少ないと言われています。
そこで、企業のSTEM分野で活躍している方々との交流を通し、「STEMの仕事をもっと身近に感じてほしい」「将来の選択肢を広げてほしい」という想いから企画されたのが、東京都主催の“女子中高生向けオフィスツアー”です。

第9回は、世界中でサービス展開するIT企業Google。イノベーションを⽣み出すための工夫が満載の職場で、楽しく気持ちよく働く社員たちにお会いしました! ⼥性エンジニアをはじめとする社員のみなさんの熱意ある話にも、女子中高生のワクワクが止まりませんでした。

検索機能、Googleマップ、YouTubeでおなじみのIT企業
Google オフィスツアープログラム
「理系は合わない」と思いこまず、この世界を見て聞いて!
Googleの日本法人では、10年前から女子中高生に技術分野の魅力を伝える「Mind the Gap」というプログラムを開催していて、毎年平均1,000名もの女子中高生が参加しています。今回のツアーでも、このプログラムと同様の内容を体験できるとのことで、女子中高生たちは楽しみな様子!
最初に、エグゼクティブビジネスパートナーの高嶋亜紀子さんによるプログラム内容の説明がありました。
「今日みなさんには、情報科学という分野、そしてテクノロジー業界という世界があることを知っていただきたいです。『自分には理系やプログラミングは合わないわ』という先入観をもたずに、『もしかしたら、ここで何かできることがあるかもしれない』と感じてもらえたら嬉しいです。どういう仕事をしている人がいて、どんな環境で働いているのかについて見て聞いてくださいね」(高嶋さん)

エグゼクティブビジネスパートナー 高嶋亜紀子さん

これから始まるGoogleのオフィス見学に女子中高生たちはワクワク
カフェテリアやクラブ活動、イノベーションを生み出すための環境が充実!
高嶋さんの説明を聞き終えると、早速オフィス見学に出発。エレベーターを降りフロアに足を踏み入れると、そこは社員食堂でした。カフェテリアになっていて、栄養バランスに配慮した食事が提供されているとのこと。
見学をしていると、すぐそばを外国籍の社員の方々が英語で談笑しながら通り過ぎていきます。「まさにグローバル企業」という光景に女子中高生たちは目を輝かせていました。
カフェテリアには畳のスペース「なごみ庵」があります。Googleには、社員のみなさんで結成されている任意のクラブが数多くあり、そのなかの一つ、茶道部の活動場所として使われているそうです。
クラブは、他にランニング部やカメラ部、ヨガ部、ダンス部、ゲーム部などがあります。クラブ活動を積極的に行っているのは、社員同士の交流を大切にしているため。普段の業務では関わらないけれど、クラブで知り合い、そこでの会話をきっかけに新たなアイディアが生まれたり、気軽に相談したりできると、社員の方がお話しされていました。

ボランティア社員の方から解説を受けながら、オフィス見学へ
また、社内には社員が活き活きと仕事をできる工夫がいたるところに仕掛けられています。チームビルディングなどのイベントでも活躍する卓球台や、音楽クラブの活動ができる防音室のほか、仮眠室も!「仮眠をとったほうが、生産性が上がる。プロジェクトの佳境で忙しい時も、無理するくらいなら一度頭を休めよう」という発想で作られたそう。
また、Googleは社員に対してだけでなく、社員のファミリーへの配慮も忘れません。社員の家族はオフィスを訪れることができ、自分のパートナーや親もしくは自分の子どもが、どのような環境で仕事をしているのかを体感できます。また、入室できる場所が限られているとはいえ、愛犬との出社も可能です。世界をリードするIT企業Googleのオフィスは、イノベーションを生み出す仕掛けや気持ちよく働ける工夫が満載でした!

Googleらしさが詰まったオフィスを見学した女子中高生たち
エンジニアは、スキルセットがあればどこでも活躍できる
すぐに決めきれなかった進路選択
魅力的なオフィス見学を終えると、次はソフトウェアエンジニアの栗本英理子さんのお話を伺うことに。テーマは、「情報科学の選択肢があるということ」。

栗本英理子さん
栗本さんは高校時代、数学や物理が好きだったものの、将来の道をなかなか決めきれず、大学は、入学後に進路を選べる教養学部に進学し、その上で理学部情報科学科を専攻。このころからプログラミングを学び始めたそうです。
そして、Googleの学生向けのインターンに応募。インターンとして経験を積み、同社への入社を果たしました。

「情報科学」の説明からお話が始まりました
「私は今、GoogleのブラウザであるChromeOSの基礎部分を作っています。課題改善のためには何が必要なのか、そして具体的にどうするかを考え、さらにプログラミングで実装して、テスト、維持や保全の仕事まで関わります。自分が取り組んだ仕事が、ユーザーに直接影響するというやりがいがあります」(栗本さん)

多くの人が使うChromeOSの基礎に関わるお仕事を担当されているとのこと
情報科学が活かせる職業は幅広い
「情報科学の職業はエンジニアだけではなく、ユーザーにとって使いやすいシステムやビジュアルを通じて顧客体験をデザインするUXデザイナー、プログラムマネージャー、研究者など多岐にわたります。コンピュータ関連の仕事は、今後ますます世界で必要とされるものになります。エンジニアはスキルセットをもっていればどこでも活躍できます!」(栗本さん)

コンピュータ科学を学ぶ意味を説明する栗本英理子さん
栗本さんの、こちらの気持ちに訴えかける話に、女子中高生はどんどん引き込まれていきました。
「高校時代の私は、『将来は一番好きな仕事に就かないと!』と思っていました。でも、実際には、自分から遠い職業だと思っていたエンジニアの仕事をしています。みなさんが将来のことで悩んでいるとしたら、『とりあえず決める』でもいいと思います。とりあえず始めてみて合わないのであれば、他のことに乗り換えればいい。ただ、嫌いなことはやめたほうがいいです。それがお金を稼げる仕事だとしても。好き、得意、インパクトが大きい、環境が良いなど、⼀番⼤事にしたいことは⼈それぞれ違うと思いますが、それが何かを考えて、総合的に自分が一番ハッピーだと思える道に進んでほしいです」(栗本さん)
学生時代に身に着けておきたい「考える訓練」と「調べる習慣」
プログラムの最後は社員の方との質疑応答の時間です。
登壇者
-
栗本英理子さん:ソフトウェアエンジニア
学生時代にインターンを経験したことがきっかけで入社。ChromeOSの基礎開発を担当。
-
弘田百合子さん:ウェブエコシステムコンサルタント
文系出身。新卒で入社後カスタマーサポート部署に配属、希望の部署に異動したい気持ちが募り、独学でプログラミングを習得。「大切なのは、目標が決まったらどうやってそこにたどり着くかだと思います」
-
岩井貴史さん:UXエンジニア
「Googleの面接プロセス4回目にして入社」という経験の持ち主。現在はGoogleマップの利便性向上を行う業務を担当。

(左から)栗本英理子さん、弘田百合子さん、岩井貴史さん
- Q.
-
学生のうちにやっておくべきことは、何ですか?
- A.
-
考える訓練です。新しい技術を、スピードをもって学ぶ。そういう訓練を積むと、周りと差がつくと思います(栗本さん)
わからないことがあるときに、調べる習慣をつけること。例えば、服のタグに記されているフォントを見て、なぜこのフォントを使ったのだろう?など。身近にある、気になることを調べるだけでも考える力は養われます(弘田さん)
質問に回答する弘田百合子さん(右)
- Q.
-
エンジニアの仕事はハードですか?
- A.
-
大変な場合もありますが、周りが助けてくれることが多いです。それに時間がかかっても問題は解けますし、達成感を得られます。ただ、アメリカの本社とは、時差があるので、早朝にオンラインミーティングをする際は寝不足です(笑) (栗本さん)
質問に回答する栗本英理子さん(左)
忙しいことはありますが、会社の雰囲気が良く、風通しの良い文化があるので周囲に助けを求めやすいです(岩井さん)
- Q.
-
アメリカ本社との違いを教えてください
- A.
-
オフィスのビルが複数あるアメリカと違い、⽇本はこの渋⾕オフィスが中⼼なため、社員同士の距離が近いです。交流する機会が多い点が良いところだと思います(弘田さん)
アメリカに留学していた時代、本社でインターンを経験しました。その時を思い返すと、仕事上の違いはそれほど感じません。個人的には、東京で世界規模の業務に関わる方が仕事をしやすいです。日本のオフィスは他の国から出張で来る社員にも人気ですよ! (岩井さん)
質問に回答する岩井貴史さん(右)
このツアーに参加できたのは
一生ものの経験!
終始、刺激と学びでいっぱいだったGoogleのオフィスツアー。参加した中高生は大興奮でした!

文系なので実はエンジニア職にあまり興味がなかったのですが、文系から独学でプログラミングを学んだ社員の方もいて、考えの幅が広がりました。このツアーに参加できて本当によかったです!

私は海外出身で日本の会社は合わないかもと思っていましたが、日本にもこんなに自由な働き方ができる企業があるのだと驚きました。社員のことを大切に考えていて、女性も活躍しているところが魅力的でした。今は数学に苦手意識をもっていますが、これからがんばって就職できたらいいな! と思います。
企業の女性活躍推進担当セクションから 学生に向けてのメッセージ
Mind the Gapの10年の節⽬を迎え、テクノロジー分野の⼥性をサポートし、⽀援するという私たちの取り組みへの想いは、これまで以上に⾼まっています。⼥性がコンピュータサイエンスの世界で活躍する機会を得られるよう、引き続き、必要な⽀援やサポートを提供していきたいと思います(Xinmei Cai Google Engineering Director)
第10回のオフィスツアーは「コニカミノルタ」お楽しみに!

オフィスツアーレポート一覧