みなさんは「STEM」という言葉をご存じでしょうか? Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとった言葉で、先進国のなかでも、日本はSTEM分野の仕事に携わる女性が圧倒的に少ないと言われています。
そこで、企業のSTEM分野で活躍している方々との交流を通し、「STEMの仕事をもっと身近に感じてほしい」「将来の選択肢を広げてほしい」という想いから企画されたのが、東京都主催の“女子中高生向けオフィスツアー”です。

第8回は、コンサルティング企業のデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社(以下、DTFA)で開催したツアーの様子をお届けします。

DTFAの
コンサルティングの仕事とは?
DTFA オフィスツアープログラム
一面芝生の床に泉のステージ! ここが会社!?
床一面を覆う芝生、ステージの床には水面の映像が流れ、まるで泉のよう――。ここは、「Deloitte Tohmatsu Innovation Park(デロイト トーマツ イノベーションパーク)」内にある講堂エリア。デロイト トーマツグループがプロデュースする次世代ビジネスを全方位で支援するための新しい活動拠点です。斬新な会場に足を踏み入れた約40名の参加者の皆さんは、一様に驚いている様子。会社紹介のムービーを交えながら、同社のシニアアナリストである髙橋悠紗子さんによる企業説明が行われました。

Deloitte Tohmatsu Innovation Park(デロイト トーマツ イノベーションパーク)に集まったツアー参加者
「デロイトトーマツグループは世界の150を超える国で事業を行っています。国内には約30都市に拠点があり、メンバーは全国に2万人。あらゆる企業の経営にとって必要な監査やコンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務、法務などの専門サービスを提供している『日本最大級のプロフェッショナルファーム』です。そして、本日皆さんがオフィス見学をするDTFAは、企業買収や再編などにおける経営の重要課題解決を専門的に支援しています」

シニアアナリスト 髙橋悠紗子さん
デジタルテクノロジー領域での女性活躍を増やしたい『Women in Tech』
同社が「日本最大級のプロフェッショナルファーム」と称する理由は、AIについて最先端の研究をしている人や、医師や看護師の資格取得者、会計の専門家など、さまざまな分野のプロが在籍しているため。プロジェクトごとに問題解決をするのにふさわしい専門家がチームを組んで、クライアント(顧客)の経営課題に合わせた解決策を提供しているのだそう。
プロジェクトの第一線では、従来から女性も多数活躍しています。しかし、デロイトトーマツグループでは、「テクノロジー領域を志向する女性をさらに増やしたい」という思いで、2021年から新たな試みを開始。学生からキャリア層まであらゆるステージにおいて、活躍の幅を広げる女性たちをテクノロジーの知見を活かして支援する『Women in Tech』という活動をスタートさせ、ワークショップや講義、講演会を積極的に行っています。

真剣に話を聞く参加者たち
「日本には、理系の仕事やSTEM領域で活躍する女性がまだまだ少ないのが現状です。ライフスタイルやビジネスを変化させるデジタルテクノロジーの分野で、女性がますます活動していけるよう、デロイトトーマツグループは応援を続けたいと思っています」(髙橋さん)
アイディアをカタチにする現場「スマートファクトリー」で、最新デジタル技術を体験
事業内容や理念の説明の後は、7つのグループに分かれて、理系学部出身の女性社員との座談会。「理系に進もうって決めたのはいつですか?」「やりたいと思ったことと、実際の仕事内容とでギャップがあったりしますか?」と、どのグループも和やかながらも真剣な雰囲気で、進路や勉強のこと、仕事内容など、さまざまな話題で盛り上がりました。
デロイト トーマツ グループが提案する製造業の新しい未来
続いては、デロイト トーマツ グループが企業に提案する”アイディア”を実際に体験するツアーへ。デジタルをフルに活用した「製造業の将来のオペレーションの姿」を実際に見て触れる施設「スマートファクトリー」を訪れました。
最初は「工場の生産デモライン」を見学。ここは、「企業の工場がこのような仕組みになると、効率的なのでは?」という発想で、デロイト トーマツ グループが企画構想したものです。

デロイトトーマツグループが企画構想した工場の生産ラインのデモ機
「次世代の工場の生産ラインではミスがないかAIが自動で監視し、実際に作業が必要な場合は人が出動して修理などを行うようになる可能性があります。最新のデジタル技術と人の知識や経験を融合させることで、生産ラインを進化させていく。この考え方やプログラム、構想を、クライアントに提案し販売しています」(IP&C 渡部秀博さん)
「モノではなく“考え方”を売っているんですね!」と、参加者はコンサルティングの仕事を理解し興味を深めた様子でした。

実際の製造工場データを活用したデモラインの仕組みを説明する渡部さん
AI×メタバース技術で場所にも、時間にも、空間にもとらわれない
仮想空間上で製造業のトレーニングを行える「メタバース」のコーナーでは、参加者自身がVRヘッドセットを装着し、仮想空間を体験しました。ヘッドセットを身に着けるやいなや「あっ、何かある!」

「本当に目の前に装置があるみたい」と驚く参加者
そこには、半導体の製造装置が見えています。デバイスを通して現実にそこにあるように映像が投影される仕組みで、作業を行う人が現場に行く前にこれを使って仮想空間でトレーニングを行えば、実際の作業時間が節約できます。作業時間を効率化することで、製造業の人手不足問題を解消するのが目的です。
また、「メタバース」にはAIが搭載されているため、トレーニングの最中に疑問を抱いたらAIに質問することも可能で、仮想空間で技術を上達させることができます。

製造業における「メタバース」の活用方法を解説する前田さん
「日本の労働人口はとても減ってきています。その解決策として、AIに家庭教師になってもらえば仕事を効率的に進められます。ただ、こういう技術がどんなに進んでも、ビジネス上一番大事なのは”人”です。相手の心を動かさないとビジネスは成立しません。それはデジタルでは不可能な部分なので、覚えておいてほしいです」(Customer Strategy & Operations 前田翔平さん)
参加者は、「『AIが人間を支配する時代がくる』と言われることもあるけれど、やはり人が大切なんですね」と、深く納得していました。
STEM領域出身の女性社員が伝授! 自分にピッタリの将来をみつけるコツ
座談会と「スマートファクトリー」の見学を終えると、シニアマネジャーの羽場俊輔さんの進行のもと、理系学部出身の女性社員の方々によるパネルディスカッションが行われました。登場したのは、医学部卒で大学院では脳梗塞の研究をしていた奥野藍海さん、園芸学部出身で国際開発と計量経済学のゼミを専攻していた中村彩乃さん、工学部卒で機械知能や航空工学の勉強をしていた高橋祐佳子さんの3名です。

左から高橋祐佳子さん、中村彩乃さん、奥野藍海さん、羽場俊輔さん
- Q.
-
大学で学んだことが仕事においてどのように活きているか教えてください。
- A.
-
私は人体や人の健康に興味があったので医学系を専攻し、大学院を卒業後は再生医療のベンチャー企業に就職しました。デロイト トーマツには昨年(2023年)12月に入社して、医療系の専門性を活かしながら仕事ができていると感じています。ですが、実務では、大学で学んだことが仕事に必ずしも直結するわけではありません。学生時代は、その時に興味があることに取り組むといいと思います。(奥野さん)
奥野さん「実務では、専門知識以外のことが必要な場面も多くあります」
- A.
-
大学では農業経済を学び、開発途上国で農業に従事する人たちの収入を上げるにはどうすればいいか、という研究をしていました。今は大学で勉強したことをベースに、国際開発の事業を担当しています。もともと国際開発に興味があったのですが、大学のオープンキャンパスで農業経済学という分野からのアプローチに出会っていなかったら、違う道を歩んでいたかもしれません。(中村さん)
中村さん「やりたいことへ通じる道はひとつではないので、いろいろな角度から考えてみるといいと思います」
- A.
-
大学では機械知能や航空工学について勉強し、研究室時代は年に3回ほどは学会に参加して自分の成果を発表していました。その経験は今、自分の作業を周囲に伝える際にとても活かせています。また数値実験を行い、数字からどのように結論付けるかという分析力が付いたことは、現在の業務で財務数値を見る際に役立っていますね。(高橋さん)
高橋さん「研究室時代とは違って、短期スパンで変化を感じられるのが今の仕事の魅力だと感じています」
- Q.
-
職場では、男性と対等に働けていますか? また、女性ならではの困難なことはありますか?
- A.
-
メンバーそれぞれが専門性を持ちながら働いているので、男女対等にやりがいをもって働けていると思います。
女性ならではの困難なこととしては、ワークライフバランスでしょうか。私は昨年出産をして現在は育児中です。仕事上では不満は特にないですが、今は育休を取って子育てをする男性が増えているとはいえ、育児では女性がメインになる場面がやはり多いように思います。育児と仕事のバランスを取ることには、難しさを感じています。(奥野さん)
- Q.
-
中高生の頃にやっておけばよかったことや、やってよかったと思うことを教えてください。
- A.
-
文化祭の実行委員をしたのは、良い思い出です。どんなことでもいいので、一所懸命に熱中できるものがあるといいですね。(高橋さん)
参加者からの質問に、自身の体験を交えながら真剣に回答してくれました
- A.
-
今回のようなイベントを含め、自分の周りにいる大人以外の人と触れ合える機会を得られれば良かったと思います。そうすれば新鮮な物の見方ができるようになって、考えが変わるきっかけになったかもしれないです。(中村さん)
海外に住んでいた際に、孤児院でのボランティアなど学校外での活動をしたことは貴重な経験です。アメリカの大学に進学した際には入学より卒業するほうが大変で、中高のときにもっと勉強していればよかったと思いましたね。(奥野さん)

最後の質疑応答では多くの手が挙がり、参加者の意欲的な姿勢が印象的でした
コンサルティングの仕事とはどういうものなのかを知り、そこで考案されている最新のテクノロジーを体験した参加者の皆さん。そして第一線で活躍している女性社員の方々の考えに触れたことで、進路の心配や不安が少なからず解消された様子でした。
参加者の感想は?

ここに来るまでは、将来の目標をきちんと決めて、それに対して一直線に頑張っていかなければいけないと思い込んでいました。でも社員の皆さんから、自分が興味のあることに少しずつ取り組んでいけばいいんだよと教えていただき、とても参考になりました!

私は、理系分野の調査や分析、国際系の仕事に関心をもっています。海外と接点があるという意味で、こういう会社で働く手もあるのだなと思いました。これからは、大学の見学や学校以外の活動など、自分にできることを始めてみようと思います。
オフィスツアーを担当したセクションから 中高生に向けてのメッセージ
社会的に女性活躍が叫ばれる中、女性活躍を自分達のビジネスの成長に不可欠な戦略と位置づけ、取り組みを始めた私たちは、これからの時代を創るために大きな威力を発揮するとされるSTEM領域を志向する女性が少ないことを知りました。
デロイト トーマツ グループでは、クライアントと共に彼らの未来を創造するお手伝いをするための様々なサービスを提供しています。その内容は多岐にわたり私たちはクライアントと共に今とは違う未来を考え、実践していくことにやりがいを感じています。
これから進路や職業を選ぶ女性の皆さんには、STEMはもしかしたら想像するよりもっと楽しいものだということを是非お伝えしたいです。今回のイベント参加から何かを得て、将来どこかで輝くお手伝いができたら幸いです。(シニアマネジャー 羽場俊輔さん)
次回のオフィスツアーは「グーグル合同会社」お楽しみに!

オフィスツアーレポート一覧
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