みなさんは「STEM」という言葉をご存じでしょうか? Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとった言葉で、先進国のなかでも、日本はSTEM分野の仕事に携わる女性が圧倒的に少ないと言われています。

そこで、企業のSTEM分野で活躍している方々との交流を通し、「STEMの仕事をもっと身近に感じてほしい」「将来の選択肢を広げてほしい」という想いから企画されたのが、東京都主催の“女子中高生向けオフィスツアー”です。

東京都主催中高生向けオフィスツアー

第5回は、文具やオフィス家具の製造・オフィスの空間設計を手掛ける「コクヨ株式会社」での様子をお届けします。

文具だけじゃない!
オフィス家具製造や空間設計やIoT事業も手掛ける「コクヨ株式会社」

コクヨの女性社員は、どんな働き方をしているの?

女子中高生向けオフィスツアーも中盤を迎えた今回は、学生のみなさんにとって馴染みのある文具メーカー、コクヨ株式会社を訪問! 抽選で選ばれた40名の中高生が、女性社員のみなさんの話や社員の方々が空間設計を手掛けているという素敵なオフィスの見学に胸を躍らせました。

「多くの人に文具の価値を届ける」仕事への想い

まず、最初に4名の女性社員による自己紹介がありました。はじめに登壇したのは、文具のダイレクトマーケティング部門に所属する武市陽子さんです。武市さんは、多くの人に「文具の価値」を届けることを目的として、SNS(Instagram/X/TikTok)の戦略立案や運用、新規アカウント立ち上げ、また、文具が好きな生活者を集めたファンミーティングの運営などをしています。

オフィスツアーの様子

文具のダイレクトマーケティング部門に所属している武市陽子さん

高校~大学時代に「場づくり」や「コミュニケーション」について、授業やゼミのフィールドワークはもちろん、有志団体の学外活動やワークショップ、サークルでのものづくり活動などさまざまな実践を通して学んだという武市さんは、学生時代からアンテナを張ることの大切さも伝授。
「学校は狭いです! 親や先生以外の大人と話せる場に行こう。人よりスイスイできちゃうジャンルを探し当てよう! 質問力を鍛えよう! 問いを設定する力があると、学生生活にも社会人生活にも活きます」

オフィスツアーの様子

今回の参加者は約40名!社員が空間設計を手掛けるCOMMONSと呼ばれる開放的な空間で話を聞きます

次は、文具の開発部門に所属している木下郁さんが登壇。高校時代は、一生の仕事にしたいと思えるほど好きだと自信を持っていえるものがなかったという木下さん。色々な分野に興味が分散するタイプでした。大学では建築の勉強をしましたが、コクヨへの就職活動の際は、改めて幅広い分野の経験を積もうと、建築系ではなく、あえて技術系コースにエントリーしたそうです。

オフィスツアーの様子

文具の開発部門に所属している木下郁さん

現在は、文具領域以外での商品企画や開発も担当。「理系出身者は専門職に進むと思われがちですが、複数の専門を経験して多角的な視点で物事をバランスよく見たり、分野を横断した複合的な提案を得意としたりする開発者もいます」と木下さん。
さらに、参加者の中高生に対し、「今日ここに来てくれている行動力が、まずは素晴らしい! 迷うときにはいろんな情報に触れに行ってみて」とエールを送りました。

「何をしているときの自分が好きか、ぜひ深堀りを!」

デザイン部門に所属している金子眞央さんは、現在オフィスを中心に、空間デザイン・設計を行っています。大学では工学部建築学科を専攻し、学科での勉強以外に、大学近くの工作室のスタッフとして活動。街の人たちと一緒に木工やレーザー加工機を使ったものづくりや、ワークショップの開催を通してものづくりを楽しむという経験をしました。その上で、「自分はメガスケール(大きな建築)よりヒューマンスケール(身近に感じるもの=内装)の作業がやりたい」と気づき、コクヨへの入社を決めました。

オフィスツアーの様子

オフィス構築の空間設計やデザインを担当している金子眞央さん

いざ仕事を始めてみると、苦手な作業に直面することもあるそうですが、「空間設計やデザインは、自分の一番好きなことだから乗り越えられる」と、金子さん。「みなさんも、何をしているときの自分が好きなのか、深堀りしてみてください!」
最後に登壇したのは、コンサルティング部門に所属する五反田萌さん。設計の前段階の業務を担当していて、「働き方や働く場を変えること」が仕事。オフィスを作る際、依頼主の「在りたい姿」や課題を整理し、その上で企画を作り上げています。

オフィスツアーの様子

オフィス構築のコンサルティング部門に所属している五反田萌さん

学生時代は数学が苦手だったという五反田さんですが、1年の浪人を経て、大学の建築学科に入学。インテリアが好きだったことをきっかけに「ひとの創造性と空間」について研究したほか、研究室の活動でコンペや展示会企画の手伝いを行い、休日には建築巡り旅行と、実に多忙な学生時代だったそうです。
「部活でも勉強でも趣味でも、何かに打ち込んで頑張り抜く経験は、いくらでもやるといいです。そこで、いろいろなことをクリアしていく筋肉が得られます!」

オフィスツアーの様子

社員のみなさんのお話に、熱心にメモを取る学生も

座談会では「アイディアの出し方」について質問も

次は、4グループに分かれ、中高生と社員のみなさんとの座談会がスタート。社員の方々にさまざまな質問が投げかけられました。

オフィスツアーの様子

各グループに、社員の方々が1~2名ついて座談会が進んでいきます

Q.

こちらのオフィスにある椅子はすべて同じではなく、いろいろなタイプを置いていると 聞きましたが、それはなぜですか?

A.

家具を扱っているメーカーということもあって、社員が様々な椅子に座れるようにしています。今、みなさんが集まってくれている“コモンズエリア”は、『いろいろな人が混ざり合う空間』というコンセプトがあるので、椅子もテーブルもあえて統一されていません。

オフィスツアーの様子

文具のダイレクトマーケティング部門に所属している武市陽子さんとお話を熱心に聞く中学生

Q.

学校で苦手な科目にどう取り組めばいいでしょうか?

A.

学校で習う授業って、社会に出て何の役に立つの? と思いますよね。正直すべての科目の内容が全員の役に立つわけではありません。ただ、たとえば苦手な科目のテストで赤点を取らないためにどうするか考え、試行錯誤して一生懸命頑張るという経験をすると、「自分なりに目標を設定し、努力をして結果を出す」という力が身に付きます。この力は仕事を始めてからも確実に活かせます。つらい山を登ることで得た体力が、結果的に将来役に立つこともあるんだな、と思ってもらえればいいかなと思います。

Q.

仕事へのアイディアは、どのように生み出しているのですか?

A.

入社して2~3年頃まではアイディア出しが苦手でしたが、経験を積むことで視野が広がりました。気になるお店に行っていろいろなものを見たり、雑誌に目を通したりするなど、アンテナを張って情報に触れる癖をつけておくと良いと思います。

Q.

仕事と家庭の両立はできますか?

A.

コクヨは育児や介護とキャリアの両立支援制度が充実しているなど、仕事と家庭の両立がしやすく、働きやすい会社だと思います。管理職を務める女性社員には育児中の人も多いんですよ。

まるでカフェ⁉ オシャレな椅子やブースがいっぱいのオフィス見学

座談会で社員のみなさんと交流したあとは、内装のすべてをコクヨが手掛けているというオフィスへ! 北棟と南棟を1時間に渡って見学しました。

まずは、北棟の3階と4階にあるショールームへ。こちらでは、コクヨが空間設計を行う際に使用している製品を、実際に体感できます。普段は、コクヨ製品を利用したいと検討している企業や団体向けに予約制で開放しているそうです。
オフィスといえば、グレーや白の机がずらりと並び、そこで社員がデスクワークをしているイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。しかし、最近は、カフェスタイルやリビングスタイルのオフィスが増えていて、木目調のデスクや椅子を使う企業が増えているのだとか。まるでカフェのようなスペースで、「今日はこちらの部屋で打ち合わせをしようかな」と、”選べる”オフィス空間を提案しているそうです。

また、新型コロナウィルスの流行以降、需要が増えているというクローズドブースにも案内していただきました。高い遮音性能を誇るブースはオンラインの打ち合わせに最適で、中高生のみなさんはブースのなかに実際に入り、外の音が聞こえづらい状態を体験。「本当に聞こえない。おもしろい!」と、最先端の製品に感激していました。

オフィスツアーの様子

社員の方が働く北館のオフィスへ。ショールームで体験した遮音性の高いブースが、実際に導入されています

ショールームには、コクヨで扱うオフィスチェアーやカジュアルなチェアー、会議用の椅子など、数多くのタイプの椅子が並び、使用感を試せるエリアがあります。ここでは、中高生のみなさんが3分ほど座り比べを行い、好きな椅子を見つけることに。あまりの座り心地の良さに、リラックスした表情を浮かべる参加者が数多くいました。

時代に合う働き方を実践。街に開かれた“パブリックエリア”も

続いて、コクヨのみなさんが実際に働いているエリアへ。「2名で軽く打ち合わせをしながら仕事をしたい」、「ひとりで静かに作業をしたい」など、その時の状況に合わせて、好みの席を予約できるスペースに案内してもらいました。みなさん、それぞれに集中して仕事をされています!
北館2階のレセプションは、コクヨの玄関口。ぐっと落ち着いた雰囲気のラウンジと、まるで劇場のような受付エリアが印象的です。受付の奥には、社内外向けにさまざまなイベントが催されるオープンコミュニケーションホール「CORE」があります。

オフィスツアーの様子

まるで劇場のようなオープンコミュニケーションホール「CORE」

次は、2階のレセプションから一旦外へ出て、橋を渡り南館に移動しました。この橋は、2021年にビルを改築した際に設置されたシンボル的存在です。

オフィスツアーの様子

北館から外に出ると、南館につながる橋が! 2021年にビルを改築した際に設置されたシンボル的存在になっています

南館に足を踏み入れると、まずはDJブースがあることに驚きました! ここは、ライブストリーミングやローカルラジオなどを発信するweb配信スタジオなのだとか。また、同フロアは「OPEN LAB.」と呼ばれる他企業とのコラボレーションの実験場になっていて、展示スペースもあります。街に開かれた場所というコンセプトをもつ「THE CAMPUS」らしく、訪れる人がワクワクできる雰囲気が満載です。

社員が働く現場を見学できる「ライブオフィス」には、働きやすくなる工夫が 満載!?

オフィスツアーの様子

社員の方が働く、南館の「ライブオフィス」。一般の方も、最先端のオフィスや働き方が見学できます

その後は、「ライブオフィス」の5階と6階へ。こちらは、コクヨ社員のみなさんが実際に働いている様子を見学。コクヨは、「新しい働き方を提案することも課題のひとつ」と捉えているため、仕事場をオープンにして、一般の方も見学できるようにしています。打ち合わせをしている方々からも笑い声が聞こえてきて、とても楽しそうに仕事をしている様子が伝わってきました。

オフィスツアーの様子

1階にあるショップとカフェスペース

1階にあるショップとカフェスペースは、誰でも出入りが自由で、コクヨの新製品を試せるほか、喫茶や軽食を気軽に楽しめます。
最後は、もう一度北館に戻り、2024年7月にリニューアルオープンしたばかりのエリア・「BOXX」で、コクヨのSDGsへの取り組みを伺いました。

オフィスツアーの様子

解体工事で出た廃材のうち、リサイクルできなかった素材はわずかこれだけ。96%が再利用されています

今回のオフィスリニューアルの際、解体工事で出た廃材のうち96%は再利用できたのだとか。それなら、今後は、コクヨで扱うものはすべてリサイクルできる素材にしようと、現在研究を重ねています。

参加者の感想は?

自由なスタイルで、創造する力を掻き立てられるコクヨのオフィスツアーを終え、どのような感想を抱いたのか。学生さんに聞いてみました!

参加者

もともと、オフィスの空間設計や文具のデザインに興味をもっています。私の今年のテーマは“積極性”なので、4名の社員の方々のお話は全部心に響きました。質問力や、楽しいことを見つける力に磨きをかけて、将来はコクヨに入りたいです!(笑)

参加者

どのスペースでも仕事ができるなんて、見学して衝撃的でした! STEM分野の女性人口を増やしたいという思いも自然と理解できました。参加できて良かったです

などという声が多く挙がり、大盛況でした。

オフィスツアーの様子

オフィスツアーを終え、感想を伝える学生のみなさん

コクヨを支える社員から 中高生に向けてのメッセージ!

コクヨは誰もが活き活きと、働き、学び、暮らす「自律協働社会」を目指しています。今回のオフィスツアーに参加されたみなさんが、ここで働く社員との交流を通して、今抱いている将来への思いを実現するイメージが持てたならうれしいです。(コーポレートコミュニケーション室 山形俊男さん)

次回のオフィスツアーは「NVIDIA」お楽しみに!

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