石油製品の精製販売を基盤事業に、資源開発や高機能材料などの事業をグローバルに展開している国内屈指のエネルギー企業、出光興産株式会社。2019 年 4 月に昭和シェル石油と経営統合した同社は、統合によるシナジー効果を生み出すべくさまざまな取り組みを進めている。

国内石油需要の中長期的な減退や、全世界で取り組むべき気候変動問題など、同社の事業環境は多くの課題を抱えている。

しかしながら出光興産ではこれらの課題について、事業構造や仕事の進め方などを見直し変革する「好機」と捉えており、どのような環境変化に対しても柔軟かつしなやかに対応できる「レジリエントな企業体」となることで、今後もエネルギー企業としての社会的使命の継続を果たし続けたいと前向きな姿勢を打ち出している。

不透明な状況にあっても“変革のチャンスに”のマインド

出光興産株式会社 情報システム部 共通IT推進課長 澤井 隆慶 氏

出光興産株式会社 情報システム部 共通IT推進課長 澤井 隆慶 氏

そんな同社における共通IT推進課は、主に IT インフラやコールセンターを管轄(WAN、データセンター、基幹システムは除く)。複合機や無線 LAN の AP 機器など LAN に接続されている IT 機器もすべて同課が取り扱っている。さらに、Microsoft 365 をはじめとしたコミュニケーションツール類も同じく管轄下にある。

出光興産 情報システム部 共通IT推進課の課長、澤井 隆慶 氏は「最近注力している働き方の変革も当課が担う取り組みになります」と説明する。

この共通IT推進課は IT 活用の推進を担当するチームと、IT インフラを担当するチームの大きく 2 チーム体制となっており、社員 40 名以上、常駐する二次組織の社員まで含めると約 100 名という大所帯の部署となっている。

かつての RPA 適用に立ちはだかった費用対効果の壁

出光興産株式会社 情報システム部 共通IT推進課 チームリーダー 柴本 正和 氏

出光興産株式会社 情報システム部 共通IT推進課 チームリーダー 柴本 正和 氏

出光興産では以前、業務の効率化を目指して、とある RPA 製品を導入したものの、費用対効果の面で課題を抱えていた。当時直面していた課題について澤井 氏は次のように振り返る。

「基本的な我々のシステムの提供方針はウォーターフォール型です。まずどこをシステム化すれば効果がありそうかを調べたうえで投資の意思決定を行い、そこから開発が始まります。そしてシステムの導入に際し使用する現場に対しては、標準化したやり方に則って業務を行うよう周知することになります。RPA 製品も同じような経緯を踏んだのですが、これでは個人や一部の社員が苦労しているような業務だと、費用対効果が見込めず対応できないという問題に直面したのです」(澤井 氏)。

その RPA 製品はコストが高いため、個人もしくは比較的少人数の業務を自動化しようとすると、人間よりもロボットのほうが高くついてしまう。共通IT推進課のチームリーダー、柴本 正和 氏は言う。

「システムに合わせるために無理に業務を標準化しようとしても、どうしても標準化にそぐわなかったり、人の方が合わせにくい業務が生じてしまいます。これまでの経験から、過度な標準化は結果的にコストが高くつくことがわかっていました」(柴本 氏)。

澤井 氏も「たとえ個人の業務であろうと、苦労しているのであればそこまで救うことができなければ最終的な企業競争力は生み出せません。そのため、その隙間を埋めることのできる、より身軽な RPA 製品を取り入れることとなったのです」と続ける。

そこで調査会社のガートナーに相談すると、ユーザー企業の間で最近高く評価されている RPA 製品として紹介されたうちのひとつが、マイクロソフトの「Power Automate」であった。2020 年 5 月の個別セミナーで実際に触れてみたところ、使い勝手の良さを実感するとともに、もともと利用している Microsoft 365 との連携や、機能の豊富さ、コストの低さなどを高く評価するに至ったという。そのため早くも翌 6 月には採用を決定したのである。

「マイクロソフトさんがこの製品への投資に注力すると言っていたのも、将来的な活用拡大に向けて大いに期待できる判断材料でした。またクラウド型であり、オンプレミスの製品と比較して 10 分の 1 程度という低コストも大きな選定理由です」(澤井 氏)。

徹底した現場目線で少しでも多くの自動化ニーズに応えたい

出光興産株式会社 情報システム部 共通IT推進課 飯島 可織 氏

出光興産株式会社 情報システム部 共通IT推進課 飯島 可織 氏

澤井 氏が率いる共通IT推進課では、まず現場の声や課題を知ることを何よりも大切にしている。現場からの問い合わせや意見をすべてコールセンターに集約したのでは、現場との乖離が生じかねないという思いもあり、とにかく IT 部門から積極的に現場へと赴いて、現場の人々と一緒に業務改善を進めていくというスタンスを貫いているのである。

「標準化した仕事をどう自動化するかというよりは、現場の一人ひとりが苦労している仕事をどうやって助けるかが我々のコンセプトです。たとえばあるシステムを入れてこんなに便利になったという声が多く寄せられたとしても、現場でしっかり意見を聞くと賛否あることがわかりました。社員が自由に気持ちよく働ける環境を整えられるかどうかで組織の強さが変わってきますので、IT 部門としてもそうした環境を提供するよう努力は惜しまないつもりです。そしてそのための効果的なツールのひとつとなっているのが Power Automate なのです」(澤井 氏)。

Power Automate の導入にあたっては、以前から使っていた RPA 製品との使い分けに苦労したという。共通IT推進課の飯島 可織 氏は「しばらく併用することになったので、どういう業務では Power Automate を採用し、またどういう業務では以前の RPA 製品を使い続けるのか。まだ Power Automate の UI フローでどんなことができるのかよくわからなかったこともあって、苦労しました」と話す。

柴本 氏も「現場と一緒に歩みながらゴールしなければいけないので、共同歩調を取れるようになるまで苦労しましたね」と続ける。

しかしながら試行錯誤する中で、同社では基幹システム等からデータを落としてきて検索・加工するまでを Power Automate で行い、基幹システムへのフィードバックは以前からの RPA 製品で行うという棲み分けが定着していった。

「人間が行っている仕事を助けるのが Power Automate の役割であると次第に明確になっていきました。ただし今後は Power Automate もどんどんと変化し進化していくので、その役割はより拡がっていくものと考えています」(柴本 氏)。

現場からの高い評価とさらなる期待へ

まだ導入して間もないものの、既に 10 体ほどのロボットが Power Automate で稼働している。2020 年度中には 30 体ほどにまで拡大していく見込みだ。

「『短時間でここまでできちゃうんだ』など、現場からの評価はとてもいいですね。ふだんは怒られてばかりなので(笑)、我々としてもやりがいがあります。これまでのシステムで手が届かなかったところまで埋めていけるので、とても効果が出やすいツールだといえるでしょう。今はまず現場の困りごとを改善するところから始めているため、省力化や効率化の効果が大きいですが、将来的にはイノベーションにまで Power Automate の活用をつなげていくつもりです」(柴本 氏)。

さらに柴本 氏は「コーディングせずとも日本語による条件分岐などでロボットを作れてしまうので、以前からの RPA 製品と比べると一気に活用のハードルが下がりましたね。また、他のクラウド型 RPA と比べるとできることの範囲が広いのも魅力です」と評価する。

特に 3 人が評価するのが、SaaS 等のサービス同士を API 連携させる 「データコネクタ」の存在とその種類の豊富さだ。これにより、異なるシステム間の連携を効率的に自動化することができる。

「現場からはもっと Power Automate でできることを知りたいという声が寄せられていますし、我々としても機能の拡張と合わせてさらなる自動化を追求していきたいですね」(飯島 氏)。

こうした高い評価と着実な成果を受けて、出光興産では今後 Power Automate の活用を全社展開していく構えだ。

最後に澤井 氏は「どのような業務であっても、現場が困っているのであれば例外なく助けていく方針です。課題があればまず調査して、施策を組んでというアプローチは、もちろん良い面もありますがそれでしかスタートできないのはダメだと考えます。とにかく片っ端から現場の課題を解決しないといけませんし、またそうすることで我々 IT 部門としても現場の現実が見えてきて、さらなる課題解決に貢献できるのだと信じています」と力強く語り、話を締めくくった。

[PR]提供:日本マイクロソフト