少子高齢化に伴い、今後、国内の生産年齢にあたる人口は減少の一途を辿ることが予測されています。"画一的な働き方" を継続していては、いずれは企業としてのサステナビリティ (持続可能性) を維持することが困難となるでしょう。国際的な市場競争も激化する中、いかにして多様な人材全てが活躍する環境を整備するか、これによって企業としての生産性を最大化するかが求められているのです。

ただ、"働き方を変える" という掛け声けが先歩きしては、管理部門と事業部門との間にギャップが生じる恐れがあります。社員 1 人ひとりの意識変革無しに生産性向上は果たせません。仮にビジネス現場の理解が得られなければ、取り組みは大きな意味を持たないのです。楽器や音響機器、IT機器など様々な領域で確固たるプレゼンスを堅持するヤマハは、管理部門と事業部門の双方が足並みを揃えた取り組みによって、着実に働き方改革の歩みを進めている企業です。

同社は、場所や時間が制限されている、仕事が部門内に閉じている、こうした働き方を "画一的な働き方" と捉え、この限界を打破するツールとして 2014 年に Office 365 を導入。同ツールが備える各機能を特別な制約を設けず社員へ展開することで、"強制的" ではなく "自然発生的" にこれが活用される環境を作ってきました。そして社内浸透が概ね完了した 2017 年より、「働き方改革プロジェクト」を設置しテレワークや短時間フレックス、異なる職種間がコラボレーションするような取り組みを試験的にスタート。社員が自ら率先して働き方を変えていくという風土の下、同取り組みを加速させているのです

※本事例に登場する所属先名称は、全て取材当時のものとなります。

グローバル規模で、業務や働き方を変えていく

1887 年の創業以来、ヤマハでは「音・音楽」を中心とする多様な製品・サービスの下、顧客の期待を超える数々の "感動" を世に生み出してきました。これから先もこの "感動" を創出し続ける、人々のこころ豊かな生活に貢献し続ける。そのために、ヤマハでは現在、「なくてはならない、個性輝く企業」になることが目指されています。この歩みを着実に進めるべく同社が取り組むのが、"真の働き方改革" です。

2019 年 4 月に施行される労働基準法の改正を背景とし、残業時間の削減を目的に働き方改革に取り組む企業は少なくありません。しかし、残業時間だけに注視しては、企業全体の生産力や競争力を引き落としかねません。ヤマハが進める "真の働き方改革" では、仕事の本質を突き詰めて無駄な仕事を排除する、限られた時間の中で仕事の効果を出す、職種をまたがった協創を加速する――これによって社員 1 人ひとりの創造性が発揮され、共鳴された結果「なくてはならない、個性輝く企業」になることを目指しています。

  • ヤマハが掲げる "真の働き方改革"

    ヤマハが掲げる "真の働き方改革"

"真の働き方改革" を推進するためにヤマハでは、2017 年 5 月に「働き方改革プロジェクト」を設置。同年よりテレワークや短時間フレックスを試験的にスタートするなど、本格的に取り組みを加速させています。

唐突にこうした取り組みがスタートしても、働き方は簡単には変わらないものです。同社がユニークなのは、プロジェクトよりも以前から、様々な部門が "真の働き方改革" に向けたステップを経てきたこと、それによって取り組みから間もなく大きな変化が生まれていることにあります。例えば IT 部門の場合、遡ること数年前から「Global One IT : グローバルでのIT連携」を掲げ、その一環としてオープンにコミュニケーションができるような場を整備してきました。そして、社員の利用を浸透させるとともに、職場の風土も変革するステップを重ねてきたのです。ヤマハ株式会社 情報システム部 部長の徳弘 太郎 氏は、この狙いについて次のように述べます。

「ヤマハでは現在、各国の拠点の業務や働き方を統合することによる『グローバル事業運営の基盤強化』を進めています。業務を行うにあたり、今や IT は欠かせない存在です。まず IT 基盤を統合してグローバル事業運営に向けた歩みを牽引していく、そのための 1 つの取り組みが、オープンなコミュニケーションの場の整備でした。グローバル規模で情報共有基盤を標準化するために、当社ではグローバル スタンダードなサービスである Office 365 Enterprise E3 (以下、Office 365) を導入し、2014 年からこの利用をスタートしています」(徳弘 氏)。

"逆順の導入" で Office 365 の各機能をリリースすることが、事業部門の働き方を自然発生的に変える

ヤマハが導入した Office 365 では、オンライン会議の Microsoft Teams (以下、Teams) や情報ポータルの SharePoint Online、クラウド ストレージの OneDrive など、業務上で有効なあらゆるコラボレーション ツールが、デバイス問わずいつでもどこからでも利用することが可能です。

複数の情報系サービスを含有することが Office 365 の利点といえますが、多くの企業では、こうしたサービスの展開にあたって、各機能の検証を行い、用途や利用ルールを定めたうえで段階的にリリースするというプロセスを経ます。一方、ヤマハでは展開当時、先に各サービスをリリース。各サービスがそもそも必要とされているのかを見極めるとともに、必要となるルールや運用設計を後から用意する "逆順の導入" を行いました。

徳弘 氏は、「Teams など Office 365 の備える各サービスは、情報共有基盤として適切に設計されています。UI も直感的でユーザーの混乱を招かないため、"逆順の導入" が可能だと判断しました。」と述べ、これによって一般的な導入にありがちな "使えるサービスの導入が遅くなり機会損失が起こる" といった課題を解消することができたと語ります。

また、ヤマハの採った "逆順の導入" は、オープンなコミュニケーションの場が事業部門に浸透するまでのスピードを早める上でも有効だったといいます。適切に設計されている情報共有基盤を、現場が自由に使うことができる。これによって "業務を変えられる" という手応えが事業部門に生まれ、自然発生的にオープンなコミュニケーションが広がっていったのです。ヤマハ株式会社 情報システム部 戦略企画グループ 主事 矢嶋 洋志 氏は、このように述べます。

「Office365 導入により、チャット ベースでの手軽なコミュニケーションが行えるようになりました。従業員同士の距離が大きく縮まっていくのを感じています。特に Teams は、国をまたがったコラボレーションでよく利用されていると感じます。時差があるためなかなか電話ができない、複数メンバーが参加するプロジェクトのためメール ベースでは意思統一に不足が生じる、こうした課題について事業部門が自らが "Teams ならば解消できるのではないか" と気づいたことが、活用が広がっている理由でしょう」(矢嶋 氏)。

  • ヤマハ株式会社 情報システム部 徳弘太郎氏、矢嶋洋志氏

こうしたアプローチは、事業部門側にはどのように映ったのでしょうか。例えば、音声コミュニケーション機器の商品企画部門では、矢嶋 氏も触れたように、導入から間もなく Teams の利用が浸透したと言います。ヤマハ株式会社 音響事業統括 UC推進部 UC商品企画グループ 大泉 好史 氏は、Teams の活用が一挙に広がったエピソードに触れながらこう述べます。

「メールやポータル、文書管理などは以前から利用してきたサービスだったので、Exchange Online、SharePoint Online はすぐに使いこなすことができました。驚いたのは、これまでは無かった Teams のようなツールも、展開後すぐに利用が浸透したことです。Office 365 の各ツールは統一した GUI を備えているため慣れるまで早かったこともあるかもしれません。ただ、何よりも、これまで Office 365 を利用する中で社員のほぼ全員が顔写真をプロフィールに登録していたことが大きいと思います。Teams では在席確認ができるのですが、部門内の誰かが "顔写真と在籍状況の紐づき" がコミュニケーション上で有効と気付いた途端に、急速かつ自然発生的に、"Teams の在籍状況をしっかり更新しよう" という動きが進んだのです。ものの 1 か月で、部門内の全員が常に Teams にログインするようになりました」(大泉 氏)。

続けて、音声コミュニケーション機器のマーケティングを担当する、ヤマハ株式会社 音響事業統括 UC推進部 UCマーケティング&セールスグループの西 和子 氏は、同氏の部門でも同じようにツールの浸透が進んだと説明。さらに、これによって部門内の風土も変わりつつあると語ります。

「これまで社内連絡はメールや内線が主だったのですが、Teams へのログインが浸透して以降、ここでチャットしたり電話会議を行ったりする風景が自然に生まれるようになりました。在席しているのですぐにレスがくるだろう、今なら少し電話会議しても良いだろう、こうした心理をもたらす環境が、Teams でのコミュニケーションを自然に加速させたのだと思います。特に良いと感じたのは、"対面でなくても一緒に作業ができる" という考えが部門の中に浸透したことです。かつては誰かが出張したり休養したりといった場面で "いなくてどう作業するんだ" "仕事が進まないじゃないか" と声があがるなど出社を前提とした風土がありましたから、これは劇的な変化だと感じます。私の部門は製品開発を行う商品企画グループや海外の開発拠点、販売拠点と連携しながら業務を進めることが求められるのですが、この連携にあたっても、Teams は非常に有用だと感じます」(西 氏)。

  • ヤマハ株式会社 音響事業統括 UC推進部 大泉好史氏、西和子氏
  • 1 対 1 で会話しながら作業を行う1
  • 1 対 1 で会話しながら作業を行う2
  • 複数人で電子会議を行う
  • 1 対 1 で会話しながら作業を行う (上)、複数人で電子会議を行う (下) など、Office 365 の展開から早期に、Teams の利用は浸透したという

"創造性を発揮しよう" という動きが生まれる

大泉 氏、西 氏ともに、2016 年中には Teams の業務利用が部門内において徐々に浸透したと述べます。そして、各事業部門のこうした動きを 1 つの背景として、人事部門主導でも「働き方改革プロジェクト」が 2017 年に設置されたのです。

同プロジェクトでは、2017 年 10 月 ~ 12 月、2018 年 10 月 ~ 2019 年 3 月の期間限定で、「勤務ルールの柔軟化施策」を実施。2017 年は一部部門に制限し、2018 年はこれを全社に適応する形で、週 2 回まで利用可能なテレワークや個別の申告手続きを不要とする短時間勤務フレックスが実施されました。

大泉 氏は、既に先述した風土が形成されていたこともあり、積極的にこれを利用する動きが部門内で生まれたと述べます。

「当部署の場合は特に Teams が浸透していたこともあって、"何があっても出社すべき" という雰囲気は既に無くなっていました。ですので、人事部門が主導するこうした制度をみんな積極的に利用しています。"今日だれだれさんテレワークなんだ" という風に、出社しているメンバーも抵抗なくこれを受け入れています。現在私の部門では Teams にメンバー全員が参加するグループを用意していますが、何か質問すれば誰かしら回答してくれる風土ができていますので、場所を問わず全員がお互いを補完しながら業務を進められていると感じます」(大泉 氏)。

続けて西 氏は、風土や業務環境、制度という様々な軸から働き方が変わってきたことで、創造性を発揮しようという動きも生まれてきたと説明。テレワークを利用する社員の姿を例に、こう語ります。

「2018 年に実施されたテレワークでは、希望者に対して当社製品のポータブル スピーカーフォン『YVC-200』の貸し出しが行われたのですが、全体の半数以上がこれを使ってテレワークを利用したと聞きました。Teams での会話がよりクリアに聞こえる、子どもの世話で PC から離れていても会話に参加できるなど、『YVC-200』自体の有用性もこの背景かと思いますが、"自社の製品をもっと知ろう" "実際に使って他にどんな価値が提案できるか考えよう" と考える社員が増えつつあることも理由ではないかと思います」(西 氏)。

  • 実際に「YVC-200」を利用してテレワークを行ったヤマハ社員の様子
  • 職場とテレワーク先とのコミュニケーションをより円滑化することができる
  • 実際に「YVC-200」を利用してテレワークを行ったヤマハ社員の様子 (上)。職場とテレワーク先とのコミュニケーションをより円滑化することができる

「なくてはならない、個性輝く企業」に向けて

事業部門における業務環境、風土の変化と足並みを揃えた取り組みによって、ヤマハは "真の働き方改革" の実現に向けた歩みを着実に進めています。

徳弘 氏は、こうした取り組みを進める上で Office 365 はきわめて有用なサービスだと評価。そして、この浸透が進んだ今、ルールやリテラシーの標準化に着手すべきフェーズに差し掛かっていると述べます。

「各国で働く社員1 人ひとりの個性が発揮され、これをうまく組み合わせて結集することで "ヤマハの個性" を強固なものにしていきたいと考えています。Office 365 は仕事の在り方を変えるために有効なツールが一通りそろっている点で確かに重要です。ただ、属人的な利用が進んでしまっては、社員の仕事内容はブラック ボックス化するでしょう。"ヤマハの個性" を作り上げるためには、コミュニケーションの全てを企業全体の集合知にしていくことが必要です。事業部門での活用が浸透したことを受け、次に進めるべきはルールとリテラシーの標準化だといえます。エンタープライズ用途に適している Office 365 には、こうしたガバナンス管理の面でも期待しています」(徳弘 氏)。

ヤマハは 2019 年 3 月、「勤務ルールの柔軟化施策」による成果を社内で検証することを計画しています。ここでの成果を受けて、翌年度ではより働き方改革が加速していくことでしょう。兼ねてより続けてきた同社の取り組みの下、ヤマハの社員は 1 人ひとりが個性を高めています。今後、この個性が集結していくことによって、同社は近い将来に「なくてはならない、個性輝く企業」を体現するに違いありません。

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