この連載では、クラウド経由でネットワークの運用管理を行えるNETGEAR Insight (以下、Insight)アプリの紹介と、Insightに対応したLANスイッチの設定方法や管理方法について説明していきます。第二回では、NETGEAR Insightの使い方を説明しました。連載の最終回となる本項では、Insightを利用したLANスイッチの設定方法について説明します。

1.これまでの設定方法との違い

LANスイッチを設定する場合、通常は事務所にいる時にパソコンからWebなどで接続して設定を行います。

急に外出先から設定変更する必要に迫られた場合、以下の手順を踏む事になります。

(1) パソコンを起動
(2) インターネットに接続
(3) VPN(Virtual Private Network)で事務所のネットワークに接続
(4) LANスイッチと接続

外出先ではパソコンを起動する事が難しい時もあるため、急な設定変更に対応できない事もあります。このような時、Insightであればスマートフォンだけで設定が可能なため、急な設定変更でも対応が可能です。

Insightは専用アプリのため、スマートフォンからでも簡単に設定できます。また、クラウド経由で設定が反映されるため、VPNで接続する必要もありません。

次項からは、Insightを使ったVLAN(Virtual Local Area Network)とリンクアグリゲーションの設定方法を説明します。

2.VLANの設定

VLANとは、LANスイッチのポート(ケーブルを接続する口)をグループ分けし、同じグループ間だけ通信できるようにする仕組みです。VLANを使うと、インターネットと通信できる機器、通信させたくない機器を、同じLANスイッチに接続して使う事ができます。

上図ではVLAN 1とVLAN 10とありますが、これがグループ分けに利用するVLANのIDです。同じIDを設定したポート間であれば通信可能で、異なるIDのポート間は通信ができません。初期値は、全てのポートにVLAN 1が割り当てられているため、特に設定しなくても全てのポート間で通信可能です。

Insightを使ったVLANの設定手順は、以下の通りです。手順の番号は、画面の番号に対応しています。

(1) 「Devices」を選択後、設定対象の機器をタップします。
(2) 「VLANs In Use」をタップします。
(3) 右上の「+」をタップします。

(1) VLANの名前と、VLAN IDを入力します。VLANの名前は32文字以内でわかり易い名前を自由に付けられます。
(2)画面を下にスクロールさせ、「Port Members」で0の所をタップします。下にポートの一覧が表示されるため、VLANを割り当てるポートをタップし、表示された選択で「Untag」をタップします。画面では、ポート5にVLAN 10を割り当てています。他のポートにも同じVLANを割り当てる場合、同様の操作を繰り返します。
(3) VLANを割り当てる全てのポートにUntagを設定後、「SAVE」をタップします。これで、送信時のVLAN設定が完了しました。VLANは送信時、受信時の設定が必要です。

(1) 受信時のVLAN設定は、②の画面まで戻って「CONFIG PORTS」で行います。
(2) 設定するポートを全てタップします。
(3) 画面を下にスクロールし、「Default VLAN(PVID)」をタップします。表示される一覧の中から、割り当てるVLANを選択し、「SAVE」をタップします。

説明した画面通りに設定すると、ポート5から8がVLAN 10に設定されます。ポート1から4は設定していないため、初期値のVLAN 1が割り当てられています。このため、ポート1をインターネットと通信できるネットワークに接続すると、ポート2から4に接続した機器はインターネットと通信可能になります。ポート5から8に接続した機器はインターネットと通信できず、ポート5から8に接続した機器との間だけ通信可能になります。

3.リンクアグリゲーションの設定

リンクアグリゲーションとは、2本のケーブルを論理的に1本のように扱う仕組みです。

1本のケーブルで1Gbpsの速度が利用できた場合、2本のケーブルでは論理上2Gbpsの速度を使えます。1本のケーブルが抜けた場合でも、残った1本で通信を継続可能なため、通信できなくなる可能性も低くなります。

Insightを使ったリンクアグリゲーションの設定手順は、以下の通りです。なお、設定する時は1本だけケーブルを接続し、設定後にもう1本接続してください。

(1) 「Networks」を選択後、「Wired Settings」をタップします。
(2) 「LAG」をタップします。
(3) 「ADD NEW LAG」をタップします。

(1) リンクアグリゲーションを設定するLANスイッチにチェックを入れた後、「NEXT」をタップします。
(2) リンクアグリゲーションの名前(LAG Name)を入力後、各装置でリンクアグリゲーションに組み込むポートにチェックを入れ、「SAVE」をタップします。これでリンクアグリゲーションの設定は完了です。
(3) 「Devices」から装置をタップすると、リンクアグリゲーションを設定したポートには「L」が表示され、リンクアグリゲーションが有効になっている事が確認できます。

説明した画面通り設定すると、2台のLANスイッチは共にポート2と3がリンクアグリゲーションに設定されます。

4.おわりに

三回にわたり、NETGEAR Insightのメリットや使い方、Insightを利用したLANスイッチの設定方法について解説してきました。SOHO(Small Office & Home Office)や小規模事務所でネットワークを構築する場合、アプリ&クラウド機器を導入する事で、Insightから簡単にネットワークの運用管理が行えます。

アプリ&クラウド機器とInsightの組み合わせは、新しいネットワーク運用管理のソリューションです。これまでネットワークの運用管理は難しいと諦めていた方も、このソリューションを使って気軽にネットワークの運用管理を始めてみてはいかがでしょうか?

のびきよ

2004 年に「ネットワーク入門サイト」を立ち上げ、初心者にも分かりやすいようネットワーク全般の技術解説を掲載中。著書に『短期集中! CCNA Routing and Switching/CCENT教本』、『ネットワーク運用管理の教科書』(マイナビ出版)がある。

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