新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐために緊急事態宣言が発令された2020年前半、多くのIT部門では開発や運用の作業をリモートで行うこととなった。しかし、緊急事態宣言下においても現場での人手による作業に頼らざるを得なかったIT領域がある。それがデータセンター等に設置されている物理的な機器の運用だ。

第1回の記事で募集したアンケートの結果でも「システム構築・運用業務を『リモート』で行う方法を知りたい」という声が数多く寄せられた。

深刻な人材不足という課題も抱えるデータセンターの課題解決の糸口を探るべく、日本電気(NEC)サービス&プラットフォームSI事業部のプロジェクトマネージャー、吉田 功一氏とセイコーソリューションズ 戦略ネットワーク本部の中山真一氏による対談を行った。

  • 日本電気株式会社 サービス&プラットフォームSI事業部 プロジェクトマネージャー 吉田 功一氏

    日本電気株式会社 サービス&プラットフォームSI事業部 プロジェクトマネージャー 吉田 功一氏

  • セイコーソリューションズ株式会社 ネットワークソリューション本部 NS開発部 NS開発4課 中山真一氏

    セイコーソリューションズ株式会社 戦略ネットワーク本部 STN開発部 STN開発1課 中山真一氏

緊急事態宣言下で見えてきたリモートワークの課題とは?

吉田:緊急事態宣言下でIT部門はどのように自らの使命を全うしたかの一例として、まず我々のケースからお話すると、いくつかのプロジェクトはリモートワークを許可しませんでした。そうした場合は対面で業務を継続したり、プロジェクト自体を延期や中止せざるを得なかったです。また許可したプロジェクトでは、パニックオープン的にVPN等の手段で業務を継続させたものの、本当にそれで良かったのか課題を残しました。

緊急事態宣言下での働き方を振り返りますと、最も大きな課題として、そもそもリモートワークであろうとなかろうと、平時から開発や運用、システム構築等における情報を管理しノウハウを蓄積できていれば、セキュアかつスムーズにリモートワークに移行できたと分析しています。つまり、潜在的な課題が緊急事態宣言を受けて顕在化したと考えています。

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吉田:さらに問題点を掘り下げたところ、「管理不足」と「属人化」という2つが浮き彫りになりました。この2つの問題を解決しなければ本質的なリモートワークは難しく、我々としても取り組むべき最大のテーマは、これまでアナログで取り扱われてきたシステム情報をデジタル化して、一元管理する仕組みをつくることだと認識しています。そしてこれは我々に限らず、多くの日本企業が抱えている課題でもあるのではないでしょうか。

中山氏:私はネットワーク機器の開発をしていますが、基本的にソフトウェアの開発のため、リモートから打ち合わせを行ったり、ソフトウェアのコーディングをしたりということはできました。しかしどうしても物理的な部分についてはリモートからの開発ができませんでした。

あと、検証作業を行うための環境を整えたりするのも、現地にいるメンバーに対応してもらうことがありましたが、多くの場合やはり現地に赴いて自分のPCを機器に接続して設定しないとなかなかスムーズに行えません。ただ、自分自身の開発業務に関しては、チームメンバーを含めて比較的柔軟にリモートワークに対応できたかなと思っています。

吉田氏:そうですね。我々も自社で完結しているプロジェクトについては比較的スムーズにリモートワークに移行できたと考えているのですが、どうしてもリモートを許可できなかったのが、なかなかクラウドで管理し辛い機密データを取り扱うようなプロジェクトでした。

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データセンターの課題解決のキーワード「ZTP」について

吉田氏:システム運用におけるリモートワークにはもう1つ別の観点からの課題があると考えています。それが、企業・組織における情報システム/ネットワークの拠点であるデータセンターに設置されている物理的な機器の管理です。ご存じのようにデータセンターにはサーバーやネットワーク機器をはじめとしてさまざまな機器が集約されており、その稼働のために空調や電源も整えられています。

それでも24時間365日の運用を続ける中で、いつ故障などが発生するかわかりません。しかも長い間、人材不足が課題となっている領域でもあります。データセンターの機器で、たとえば内蔵されているファンに物理的な故障が生じてしまうとリモートワークでの対応が難しいというのが現実です。機器交換するとエンジニアが再設定することになりますが、通常データセンターにエンジニアは常駐していません。ルーターやスイッチといったネットワーク機器の場合、交換直後は管理IPアドレスがアサインされておらず、遠隔からの再設定は難しいです。

  • ネットワーク機器の故障時は、エンジニアが現地で設定を行う必要がある

    ネットワーク機器の故障時は、エンジニアが現地で設定を行う必要がある

吉田氏:このような状況がリスクファクターであることは緊急事態宣言の前から指摘されており、データセンターの人材不足の問題と合わせて、できる限り省力化できるよう「ZTP(Zero Touch Provisioning)」の実現が求められてきました。それがコロナ禍となってあらためて深刻な課題として顕在化しています。

中山氏:当社としてもデータセンターをはじめとした「ネットワーク機器のリモート運用」という切り口に注力しています。「SmartCSシリーズ」という多機能コンソールサーバーを提供しており、各種ネットワーク機器のコンソールポートを統合・収容して、ネットワーク障害発生時でも確実に対象機器にアクセス可能なライフラインを容易に構築できます。現在その拡大に努めているところですが、やはりいまお話されたようなデータセンターにおける機器故障などに対応する際の現地作業については、多くのお客様から課題として聞きますね。

そのため、遠隔から障害対応できるようSmartCSを提供しているわけですが、ただ最近の運用の仕組みはより複雑になっており、ひとつひとつのツールが単独で動くのではなく、それぞれが連携して動作するようになっています。そこで昨年から注力しているのがコンソールサーバーであるSmartCSのRed Hat Ansible Automation Platform(以下、Ansible)対応です。そしてそのなかで昨年に出会ったのが、システム情報の一元管理に特化したソリューションである「Exastro IT Automation」をはじめとした「Exastro Suite」です。

Exastroで管理する機器コンフィグやパラメータをAnsible+SmartCSでコンソール設定できるようになったことで、IPリーチャビリティがない領域まで構成管理の対象にできるようになったと考えています。その結果として、いまお話されたZTPの実現性が見えてくるのです。これまでのお客様とのお話などからも、ZTPの実現のためにさまざまな機器やツールを用意しなければならないという課題がありました。それがExastro+Ansible+SmartCSという組み合わせによって、必要最小限の構成かつこれまでIPリーチャビリティがなかったところに対しても、遠隔でリーチできるようなソリューションを提供できるようになりました。

ZTPというのは、エンジニアが現地まで行かずとも、ネットワーク機器の交換や初期設定などができるようになり、省力化が実現できるというところに意義があるのではないでしょうか。

  • エンジニアが現地に向かわずともネットワーク機器を復旧

    エンジニアが現地に向かわずともネットワーク機器を復旧

日本中のデータセンターの課題解決のために

吉田氏:ZTPを実現するソリューションの提供というのは、まさにいまデータセンターが抱える課題の解決に大いに貢献すると思います。そもそもデータセンターの課題は、先述したようにIPリーチャビリティがない領域が多々残っていることと、慢性的な人材不足にあります。データセンターのネットワーク機器が故障して交換となると、ネットワークエンジニアが現地に行ってコンソール経由で作業して復旧しないといけません。

そしてデータセンターが人材不足にある理由として、多くの機器を少人数で管理しなければならないという事実があります。そうした人々は機器の交換の仕方などを学んでいますが、スキルやノウハウが属人化しているため他の人材への替えも効きません。このように属人化した仕事を少数の人材で賄っているわけですから、もしもそこでパンデミックが起きようものなら、そのデータセンターのITインフラ上で動いているすべてのシステムが停止してしまうことにも繋がりかねないでしょう。

しかしデータセンターのネットワーク機器といった今なお残る物理リソースを、クラウドの世界のようにすべてIPリーチャブルにできてしまえば、省力化さらには自動化まで実現できるはずだと、当社もセイコーソリューションズさんと共に取り組んでいるところです。

中山氏:SmartCSを利用いただいているお客様にも、非常に大規模なデータセンターを少人数で運用しているケースが多いです。そうしたところの定型的なオペレーションをなるべく自動化できるようなソリューションを提案し、提供するのが私達の使命なのでしょうね。

吉田氏:そのとおりだと思います。データセンターの現地で行わねばならない作業がなくならないのは事実です。しかし、Exastro+Ansible+SmartCSのようなソリューションを活用することで、ネットワーク機器に故障などが生じても、現地では機器の入れ替えと結線等の最小限の作業を行うだけでよく、ネットワークエンジニアも現地に行かずにリモートで対応できるようになる、というのが最大のポイントといえます。

日本中のデータセンターの課題解決のためにも、より一層強いパートナーシップのもと取り組んでいきましょう。

中山氏:そうですね、ぜひよろしくお願いします。


--いかがだっただろうか?「データセンター等のネットワーク機器の運用」は、緊急事態宣言下においても現場で人手に頼らざるを得ないIT領域であり、課題の背景には「管理不足」と「属人化」の2つがある。これらを解消するには、ZTPのような自動化を実現するソリューションが求められるというわけだ。

次回の記事では、ITの自動化に向けて障壁となる「古いままのシステム」という課題について解説していこう。「2025年の崖」をどのように超えていくべきなのか……悩みを抱えているIT担当者は多いのではないだろうか?

  • セイコーソリューションズと日本電気

自動化を実現するソリューションについて
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