ITの急速な進化によって、あらゆる業種のビジネスにおいて“スピード”と“柔軟性”が重要視されるようになり、クラウドサービスの業務利用は当たり前のものとなった。複数のクラウドサービスを組み合わせた、“マルチクラウド”環境を構築している企業も増えてきたが、運用管理や、データ活用でさまざまな問題が噴出し、期待していた効果が得られていないケースも多いのが現状だ。本連載では、今後のITで避けては通れない、マルチクラウド/ハイブリッドクラウドの現状と、理想の環境を構築するために有効なソリューションについて3回にわたって詳しく解説。第1回は、日本企業のIT部門担当者を対象に行った、クラウドサービスに関する読者アンケートをもとに、マルチクラウドの現状と課題について考察していく。

インターネット・モバイル・SNSといった、消費者に向かい合ったデジタルテクノロジーが、ビジネスのスピードを加速させたことで、企業における業務プラットフォームのあり方も大きく変わってきている。消費者やパートナー企業との、より密接なつながりが必要となり、最新テクノロジーが活用可能なクラウドを利用したプラットフォームの構築はもはや不可欠といえる。クラウド導入から一歩進んで、オンプレミスとクラウドの併用や、複数ベンダーのクラウドを利用する企業が増えてきた。こうした状況のなか、日本国内でも多くの企業がマルチクラウド/ハイブリッドクラウドの導入・運用に取り組んでいるが、数々の課題を抱えて悩んでいるというケースも少なくない。

とはいえ、さまざまなビジネスシーンで破壊的な変化が起きており、デジタルテクノロジーを活用した新たなサービスによって、既存のサービスが駆逐されるケースもあとを絶たない。現代の企業がこうした激動の時代を勝ち抜くには、現在のビジネスを再定義して、本来の自分たちの専門領域、スキルをより高め、今まで活用し切れていなかった自社固有のデータを活用していくことが必要。そのためには「消費者(顧客)とつながりながら、パートナーと連携できる、新しいプラットフォーム」を作って いくことが求められる。

それでは、こうしたプラットフォームをどう構築すればよいのか、その鍵を握るのが“クラウド”だ。従来型のオンプレミスのシステムから、今やクラウドを活用して消費者、パートナーとのスピーディな接点を確保する時代になってき ており、その傾向は調達にも現れている。

  • クラウド化へのアプローチ

    クラウド化へのアプローチ

そこで今回は、IT部門の担当者を対象にクラウドサービスに関する読者アンケートを実施。日本アイ・ビー・エム株式会社 IBMクラウド事業本部の上野 亜紀子氏と、同社グローバル・テクノロジー・サービス事業本部の島野 貞純氏に話を聞きながら、今後のビジネス展開に必須となる“マルチクラウド”の現状を分析していく。

クラウド導入は進み、今後はマルチクラウド化が進行する

グローバル市場に比べると出遅れはしたものの、日本においても数多くの企業がすでにクラウドサービスを導入・運用しているのが現状だ。アンケートでの『クラウドサービスを業務に利用している場合、いくつのクラウドプロバイダーを採用していますか』という質問に対しては62.4%が「1つ」と回答しており、まずはコアとなるクラウドプロバイダーを決めて、クラウドの効果的な運用を模索している企業が多いことがうかがえる。とはいえ、回答者の30%以上は2つ以上のクラウドを利用しているとしており、5.8%が「5つ以上」のクラウドサービスを利用するなど、実に約30%の企業がマルチクラウドを採用している。

「私たちのお客様でも、まずは1つのクラウドに注力して、そこから第2、第3のクラウドを検討していくというケースは増えてきています」(島野氏)

  • クラウドサービスを業務に利用している場合、いくつのクラウドプロバイダーを採用していますか

それでも、世界の他の国々と比較すると、今回のアンケート結果における日本のマルチクラウドの割合はまだ低いという。「グローバルでみると、マルチクラウドはもっと進んでいます。ある調査では70%の企業が複数のクラウドを使っているという結果も出ています」と上野氏。今回のアンケートの『利用している業務用クラウドは、どのようなサービス形態ですか』に対する回答でパブリッククラウドとプライベートクラウドを採用するケースが多いことから、ハイブリッドクラウドの導入はすでに始まっており、今後はグローバルと同じようにマルチクラウド化が進むのではないかと予測する。

  • 利用している業務用クラウドは、どのようなサービス形態ですか

また、日本においてはクラウドの導入に慎重な企業が多かったため、最初のクラウド導入に至るのはグローバル環境に遅れをとったが、一度クラウドを導入・運用することで苦手意識が払拭され、2つ目、3つ目のクラウドサービスをすぐに導入するといったケースも多い。日本でのマルチクラウドの普及が、今後はかなりのスピードで進むのではないかと島野氏は語る。

マルチクラウドの課題を確認して理想の環境を構築する

クラウドの導入に対する企業の評価も、アンケートの結果から見えてくる。『クラウドサービスを実際に利用して、どのような効果を実感しましたか』という質問には「ハードウェアコスト削減」「業務効率化」「可用性向上」が上位に並び、期待した効果を得られている企業がいる反面、『クラウドサービスを実際に利用して、期待と異なった点はありますか』に対しても「業務効率性」「コストがかかる・予測できない」を挙げる回答者が多く、クラウド活用に成功している企業、失敗している企業があることがうかがえる。

  • クラウドサービスを実際に利用して、どのような効果を実感しましたか
  • クラウドサービスを実際に利用して、期待と異なった点はありますか

さらに、『複数のクラウドサービスを利用している場合、IT管理者がそのすべてを把握・管理できていますか』という質問に対し、67.8%が「できていない(わからない)」と回答していることから、実際にはより多くの企業がマルチクラウドを採用しているが、IT担当者がすべてを管理できておらず、シャドーITが蔓延しているケースも多いと考えられる。『複数のクラウドサービスを利用している場合、それぞれのクラウドスキルを持つ要員を確保できていますか』という質問に対しても、実に72.2%が「できていない(わからない)」と回答しており、マルチクラウドを効率的に運用・管理するための仕組みを構築できないまま、導入が進んでいる企業が多いことがわかる。

  • 複数のクラウドサービスを利用している場合、IT管理者がそのすべてを把握・管理できていますか
  • 複数のクラウドサービスを利用している場合、それぞれのクラウドスキルを持つ要因を確保できていますか

マルチクラウドの運用・管理に成功している企業では、既存のプラットフォームとクラウドの連携、いわゆるハイブリッドクラウドも含め、企業のプラットフォーム全体をしっかりとデザインしているケースが多い。そのためには、クラウドスキルを持った要員の確保が必須といえ、72.2%の回答者がクラウドスキルを持つ要員を確保できてないと答えた現状には課題が多い。アンケートでの『クラウドサービスの運用管理に関して、どのような課題がありますか』の回答で「クラウドスキルを持つIT要員の不足」がトップとなるなど、人材不足はあまりに深刻だ。

  • クラウドサービスの運用管理に関して、どのような課題がありますか

このように、マルチクラウド化が急速に進行している現在のエンタープライズITにおいて、ほとんどの企業が実現できていないマルチクラウドの管理と運用の課題を解決するためには何が必要なのだろうか。第2回では、日本アイ・ビー・エムが提供するマルチクラウド/ハイブリッドクラウド環境でのアプリケーション・プラットフォーム「IBM Cloud Private」を中心に、理想のマルチクラウドを実現するためのソリューションについて確認していきたい。

【クラウド 業務利用者限定】クラウドに関するアンケート
調査方法:マイナビニュース インターネット調査
調査期間:2018年10月1日(月)~2018年10月10日(水)
調査対象:マイナビニュース会員(IT担当者限定) 男性・女性205名
調査主体:マイナビニュース調べ

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※この記事は2018年10月時点の情報をもとに作成しています。

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