国内ナンバー 1 のシェアを誇り、グローバルでもシェア 2 位に位置付けるなど、コマツおよびコマツグループ (以下、コマツグループ) は建設・鉱山機械 メーカーとして圧倒的な存在感を市場に築いています。同社の提供する建設・鉱山機械は、街づくりによって社会を発展させる、採掘したエネルギー資源によって社会に潤いをもたらす、こういった社会活動にあたって欠かすことができません。街づくりや採掘の現場で行われている作業は、社会を支える重要な要素だといえます。コマツグループでは、こうした現場作業でもっとも優先すべきものとして、安全を標榜。建械を操縦するお客さま、機械をメンテナンスするコマツグループのメカニックなど、あらゆる立場にある人の "現場作業の安全" を追求しています。コマツグループの安全にかける思いは、2019 年より実践している Microsoft Teams (以下、Teams) を利用した業務改善にも一端が表れています。

安全を担保するための徹底した危険予知。その水準をより高めるために

目もくらむような高所や足元のおぼつかない場所で作業を行う……建設や土木工事、採掘などの作業現場は、危険と隣り合わせの業務環境といえます。労働災害の発生をゼロに近づけて "現場作業の安全" を担保する。このことは、社会共通の優先課題です。

コマツグループでは、メーカーとして建設・鉱山機械を供給するだけでなく、販売やフィールド サービスを行うコマツカスタマーサポートをはじめとした「オールコマツ」のもと、"現場作業の安全" を追求しています。その核となる1 つの取り組みが、徹底した危険予知 (以下、KY) です。コマツカスタマーサポート 執行役員の鎌田 豊 氏は、このように述べます。

「コマツグループでは、『S (Safety:安全性)、L (Law:規制、法律、ビジネスルールの遵守)、Q (Quality:品質)、D (Delivery:納期)、C (Cost:コスト)』の順番で物事を判断しており、何よりも安全を最優先しています。私どもコマツカスタマーサポートでいえば、お客さまの作業現場でメカニックがメンテナンスなどを行う場合には、作業前に必ずメカニックと作業指示を出すフロント担当で KY を実施しています。作業現場にはどのような危険要因があるのか、天候など環境の変化がそこへ作用しないかなどを入念にチェックする。しっかりと危険要因を理解したうえでメカニックが作業を行う。メカニックは作業現場でお客さまと対話をしますから、入念な KY は結果として、当社の作業員とお客さま双方の安全につながるのです」(鎌田 氏)。

コマツカスタマーサポートで実施されている KY は、2019 年、Teams を利用した形へとその姿を変えました。メカニックは作業現場へ到着してまず、会社支給のスマートフォンで現場を撮影する。その後 Teams を通じて、作業指示者のフロント担当へ写真や動画を送付する。実際の作業現場の環境を両者が見ながら KY を行うことで、危険要因の把握漏れを大幅に減らすことができたといいます。

コマツ 建機マーケティング本部 国内販売本部 事業企画部 品質保証グループ GM の畑井 淳 氏は、従来の KY を振り返りながらこう語ります。

「これまでは、メカニックが作業現場やお客さまの元へ訪問する前に紙ベースで KY を実施していました。現場ではどんな作業が想定されるのか。どのような環境が想定されるのか。綿密に KY を行っていますが、想定がベースとなるために、作業現場へ訪問すると思わぬ危険要因や想定外の作業があったということがどうしてもあります。熟練のメカニックならば想定外の事象にも対応できますが、経験が浅い場合は作業を進めることができません。そのため、案件が持ち帰りになることもゼロではありませんでした。Teams では実際の作業現場をみながらリアルタイムに KY が行えます。安全性の水準を引き上げるだけでなく、作業完了までのリードタイムも短縮していると考えます」(畑井 氏)。

  • メカニックが撮影した作業現場の写真や動画を参照することで、フロント担当は危険要因を適切に判断して作業員に指示することができる。

  • 建設機械の写真を撮影すれば、メンテナンスの手順を指示することも可能。Teams に複数の専門家が集まることで、それぞれの知識やノウハウ総出で対応することができる。

"Teams を活用した業務プロセス" のマニュアル化が、活用を浸透させる

2020 年 4 月現在、コマツカスタマーサポートでは、全国 7 カンパニーで働く 4,000 人を超える社員の85% が、Teamsを利用した会議やチャットを利用しており、Teamsが日々の業務に馴染み始めてきています。ただ、社員の IT リテラシーにはばらつきがあり、Teamsを活用した業務改善に至るまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。

鎌田 氏は、「社員は必ずしも IT リテラシーが高いわけではありません。」と前置きし、そうした社員に対して活用を浸透させる上ではポイントがあると語ります。

「全国へアカウントを展開したとしても、社員はそれで何をすればよいのかわからないでしょう。普段あまり IT に触れないメカニックは特にそうです。そこで、まずは特定の拠点にのみ展開し、さまざまな活用アイデアを試す。ここで成功した例だけを集めて全国へ展開するというプロセスを採りました。成功例を生むのは簡単ではなかったですが、数多くのトライ & エラーを重ねるなかで感じたポイントが 2 つあります。"Teams の活用方法" ではなく "Teams を活用した業務プロセス" をマニュアル化すること、そしてこのプロセスを可能な限りシンプルにすることです」(鎌田 氏)。

業務プロセスをシンプルなものにすれば、使い慣れていないツールであっても社員はこれを活用して業務を進めてくれると、同氏は語ります。業務プロセスで問題点が生じた場合は都度これを解決していく。そうして作り込んだ業務プロセスを、成功例として全国へ展開する。コマツカスタマーサポートにおける Teams の高い利用率は、細かな積み重ねの賜物といえるでしょう。

畑井 氏は、「近畿四国カンパニー内の姫路サービスセンタをフィールドに、活用アイデアの実践と検証を進めました。当時私はコマツカスタマーサポートに所属しておりまして、旗振り役を担ったのも私になるのですが、活用を浸透させるために、"Teams を活用した業務プロセス" でなければ業務が進められない形にしました。ただ、これだけでは単なる強制となり、社員からの反感を買ってしまいます。そこで、新しいプロセスでどんな効果が得られるのかを、きちんと説得力を持つ情報として開示しました。現場が納得し、率先して業務を変えてくれる。そうして生まれた成功例ならば他の拠点に展開してもうまく機能すると、そう考えたのです。」と語り、細かな積み重ねの詳細を明かしてくれました。

安全性のみならず、品質や納期の水準も向上

今では全国の拠点で Teams の活用が浸透していますが、中でも実践・検証のフィールドに選定された姫路サービスセンタは、特にこれを有効活用して業務を進めています。実際にそこでは、どのようにして Teams が活用されているのでしょうか。

コマツカスタマーサポート株式会社 近畿四国カンパニー サービスセンタ 姫路サービスセンタ長の谷口 真一 氏は、「作業現場の風景をフロント担当が把握できる。それだけでも、KY の観点ではきわめて高い効果を生んでいます。」と言及。さらに、KY だけでなくお客さまに提供するサービス価値の向上、納期の短縮にも、Teams は大きく寄与していると述べます。

「メカニックだけでなくサービスリコメンド担当者などさまざまな部門で Teams を活用しています。例えばサービスリコメンド担当者ですと、お客さまの建設機械で補修部材などが必要になった場合、これまではまず故障箇所を確認し、会社に戻って関係各所と連携しながら必要な部材を整理する、その後見積を作成し、上長の承認を得てお客さまへ提出するといったプロセスでした。見積提出までに数日を要していましたが、今はサービスリコメンド担当者が故障箇所の確認をしながら Teams で上長、関係各所とコミュニケーションを行っています。その場で必要な部材を整理して見積の承認まで得ることができるため、作業現場の近くにあるコンビニでネットプリント サービスなどを利用すれば、即日で見積を提出することができます」(谷口 氏)。

異なる専門性をもった複数人が、Teams を介して同時に 1 つの案件に対応する。こういった業務の在り方は、部材供給のみならずメンテナンス作業それ自体をも高速化しているといいます。

フロント担当であるコマツカスタマーサポート株式会社 近畿四国カンパニー 姫路サービスセンタの田村 吉弘 氏は、「メカニックが作業現場に訪問し、その場でフロント担当やセンタ長、サービス部、工場と Teams で接続しながらメンテナンスを進める。音声やチャットを用いて関わるスタッフが総出になって作業に臨む。こうした体制により、今までにないスピードで修理対応ができるようになりました。」と語ります。これに同調するように、メカニックであるコマツカスタマーサポート株式会社 近畿四国カンパニー 姫路サービスセンタの谷口 和輝 氏は「口頭のみで行っていた従来と異なり、Teams では実物の情報を確実にフロントや関係各所に伝えることができます。メカニック担当として、より安全に、よりお客さまに評価いただける形で作業できるようになりました。」と述べます。

  • 姫路サービスセンタ 谷口 和輝 氏 (上)。Teams で作業現場のメカニックとセンタの各専門家をつなぐことにより、安全性だけでなく品質や納期の水準も向上している (下)。

「オールコマツ」のもと、現場作業をもっと安全なものにしていく

"現場作業の安全" を追求するための 1 つの施策として実施された、Teams による業務改善。鎌田 氏は、「KY の精度向上について、すべての拠点でこの効果が得られています。」と手応えを語りますが、一方で、品質や納期にまで好影響が出ているのは姫路サービスセンタなどまだ一部だと言及。「『SLQDC』のなかの S (安全性) についてはより高い水準へと引き上げることができました。今後は、Q (品質) や D (納期) の水準を全社的に引き上げられるよう、戦略的に取り組んでいきます。」こう構想を述べます。

この言葉を紡ぐように、畑井 氏は、「Teams を利用して各専門科が総出で案件に対応する姿は、他の拠点へ積極的に展開すべきモデルケースでしょう。既に行っていますが、Teams を介して拠点間でノウハウを共有し合うような試みを強化することで、1 つの拠点の業務を全社に標準化していきたいですね。」と語ってくれました。

複数人が総出になってことに取り組む。1 つの拠点のモデルケースを全社に展開する。こうした姿は、「オールコマツ」そのものだといえるでしょう。コマツグループが進める試みにより、現場作業がより安全なものになっていくことが期待されます。

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