これからの文化や消費を担うと言われている、1996~2015年ごろに生まれた「Z世代」(ジェネレーションZ)。デジタルネイティブである彼らは、ミレニアル世代ともまったく異なる価値観を持っています。

彼らは何を思い、どんなものを好むのでしょうか。アンケート調査や座談会を通してZ世代の特徴を知り、彼らに向けたマーケティング戦略のヒントを探るこの連載、最終回では「Z世代のアンテナに刺さったコンテンツやアイテム」、そしてZ世代のインサイトをまとめて紹介します。

今回も、マイナビニュースで広告プランニングやZ世代に向けたマーケティング業務を行うプランナー/マネージャーの桑野好絵さんと、自身もZ世代であるプランナー・山崎珠里さんの二人に話を聞いていきます。

桑野 好絵(右)
マイナビニュース コンテンツメディア事業本部 プランナー/マネージャー
2007年、マイナビ入社。女性メディアの広告営業、広告制作、編集、分析リサーチなど、あらゆる畑を経験。現在、マイナビニュース・マイナビウーマンの広告プランナーとして活躍、年間200件以上の企画プランニングを手がける。小学5年生男児の母。
山崎珠里(左)
マイナビニュース コンテンツメディア事業本部 プランナー 新卒3年目の24歳でZ世代。2020年9月までマイナビニュースの営業として若年層マーケティングに関わり、現在はプランナーとしてインサイトや市場の分析を担当。Twitterアカウントを7つ保有。趣味はエンタメ鑑賞。

Z世代がフィルムカメラに魅力を感じるワケ

今はスマホでなんでも写真が取れますが、最近またインスタントカメラが流行ってましたよね。私からするとかなり懐かしいです。さて、ここでZ世代に「一周してアナログなものに魅力を感じる?」というアンケート調査を行った結果を見てみましょう。


68%の方が「魅力を感じる」と答えました。インスタントカメラやフィルムカメラを使って何か撮りたいなと考えたことがある人も多いようです。


物心ついた時から身近にスマホのカメラやデジタルカメラがあって、誰でもすぐにきれいな写真が撮れる世界で生きてるのに、アナログカメラが魅力的に感じるんですね。


現像するまで写りがわからないのも面白いですし、人とは違うものが撮れるんじゃないかなという期待感が楽しいんですよ。とはいえ、絶対に失敗できない写真はやっぱりスマホのカメラで撮るので「きれいに残す必要はないけど、これしかない写真」を撮りますね。


以下はアンケートで寄せられたコメントですが、不便なものへの憧れや、不便さによる体験が魅力になっていることが分かります。目が大きくなったり足が長くなるプリクラやアプリがスタンダードの世代は、そこから一周回って時代を感じるものや不便なものにエモさを見出し、感情が動かされるようです。


たしかに、ワクワク感を引き延ばすためにフィルムカメラを使っている感じはありますね。


こういったZ世代の意見を見ると、今後切り口にエモさや情緒を組み込むプロモーションも増えてきそうですね。また、現状コロナ過で制限はありますが、実店舗などで体験を提供するマーケティングはZ世代に楽しんでもらえる可能性があるのかもしれません。


あとアナログなものと言えば、座談会では「純喫茶店」もあげられていました。メロンソーダとかはInstagramに投稿したら映えますし。あとは古着、レコード……


最近は、2000年代初頭のアイドルファンを描いた映画の影響で、VHSビデオテープも話題になっていますよね。


アナログとは少し変わりますが、Z世代が子供だったころにやっていた作品のリメイクも増えてます。Z世代が社会人になり始めて、お金を使えるようになってきたので、そこをターゲットにしたコンテンツも増えてきたんだと思います。


流行ったものは見たい、その取捨選択は素早くしたい

話は変わりますが、アメリカで発表された文献(※)で、ミレニアル世代の集中力は15秒、Z世代は8秒という結果が出ています。


※次世代を担う「ミレニアル世代」「ジェネレーション Z」 -米国における世代(Generations)について-JETRONEWYORKより

私もZ世代ですが、短いですね(笑)


こんなに集中力が短い理由は、同時に使える端末の数にあるようです。ミレニアル世代の同時に使える端末の平均は3つ、Z世代は平均5つと言われています。
例えばテレビでドラマを見ているとき、興味を持った情報をスマホで調べつつ、SNSでドラマの感想を見つつ、チャットで友人とやりとりするそう。色々なものを並行して使うから、ひとつの物事に対する集中力が8秒しかない。


確かにそういう視聴のスタイルはしていますね。もうひとつ、"ヒットチャートの前奏が年々短くなっている"という話もこれと関係がありそうです。


今はサブスクリプションでいくらでも音楽が聴けるので、ザッピング的に曲が消費されがちです。曲の冒頭で視聴者の心をつかむためすぐ歌いださないといけないんですよね。


興味のあるアーティストの曲や、映画館で見る映画はもちろん集中して視聴しますが、知らないアーティストや映画だったら盛り上がる部分が最初に来てほしいですね。


8秒では体験まではいかないし、まずはいっぱい視聴したい、という気持ちが強いのかもしれません。


サブスクが増えたことで、人から薦められたコンテンツを気軽に視聴しやすくなっている環境もあると思います。薦められたら一度チェックしてみたいですし。でもその作品が自分に合うかどうか、取捨選択は素早くやりたいんですよね。


Z世代の情報収集は「リアルを求める」

最後に、Z世代の情報収集について見てみましょう。1回目の記事でもあった通り、Z世代は複数のSNSアカウントを使いこなし多くの情報に触れています。買い物をするときなど、何で調べているのかアンケートを見てみましょう。「購入するものによって意思決定の時に見るSNSや口コミは変えていますか?」という質問を聞いてみました。


TwitterにInstagramにWebメディアに……さまざまな情報源がありますが、約7割の方は「購入するものによって見る先を変えている」ことが分かります。しかしコメントを見てみると、メディアが異なっても情報を集めるときのスタンスは常に同じで、「リアルな情報しか求めていない」、もっと言うと「リアルに飢えている」印象です。


何でもスマホで調べられますけど、失敗もしてるんです。なので「これはプロモーションではないか?」と感じると、純粋な口コミなのか広告なのか疑って冷静にチェックします。
失敗例だと、海外のハンバーガーチェーンが「商品写真と提供される商品が全然違う」と批判を受けたニュースもありました。これはZ世代が嫌がりそうなことですね。


ネットショッピングも当たり前なZ世代は、よく下調べをしてから買い物をするので衝動買いもあまりしない様子。だからこそ、実物より良く見せたり、ウソに対する拒否感は強いようです。ちなみに、インフルエンサーマーケティングはどう感じますか?


100万フォロワーがいる人がやっていることは、事象としては受け入れますね。世の中で流行っているのか、へ~、以上。みたいな感じです。


コメントでも「自分と同じイエベのYouTuberを一番信用してる」とか「自分と限りなく近い環境なのに一歩先を行くようなインスタグラマーを参考にする」という意見がありました。自分に近くて、ちょっと先にあるリアルな情報を求めていることが見て取れます。


面白ければPRでもいいけど、正直であってほしい

「これはプロモーションじゃないかと疑う」という話だと、Twitterで盛り上がった漫画が終わった瞬間に「映画化!」「書籍化!」「コラボイベント開催!」と"ビジネス展開"が一気に発表され、反発が起きたコンテンツも話題になりました。プロモーション的には、一番注目度が高い最終回で告知するのが良いんでしょうけど……


面白いコンテンツを商業化するのは良いと思いますが、後からPRが絡んでいたと知ると「最初から後ろで大人が噛んでいたのか」と騙された気分を感じて冷めちゃうんですよね。「もてあそばれた感があった」とか「余韻がなかった」という感想はよく聞きました。


例えば「何日後に映画化する」みたいに正直に書いていたら、「映画まで楽しみだからマンガ読まない」とか「マンガ読んでから見に行く」とかまた盛り上がったのかもしれませんね。


リアルさとともに、正直さも重視しますね。


まとめ Z世代のインサイト

ここまで4回の連載でZ世代のインサイトを紐解いてきましたが、最後にポイントを紹介します。


ひとつめは「整理されていない情報はスルー」。TwitterもInstagramも、引き出しを作るように趣味ごとにアカウントを分けて情報を発信・収集しています。


2つめは「本物志向が強く、作りこまれたニセモノの情報を嫌う」ということ。買い物も体験もリアルさを求めていますね。


3つめは「個人情報リテラシーが高く、SNSキャンペーンやロイヤルカスタマー戦略は難しい」ということ。個人情報の大切さは、親からも学校からも教え込まれて育っているのでガードは硬いです。またSNSをかなり細分化して使っているため、SNSを使ったキャンペーンやプロモーションは、ターゲットを間違えないようにする必要があります。


全4回のZ世代のインサイト解説、いかがでしたでしょうか? ぜひ、参考にしていただければ幸いです。


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