この連載では、ネットワークカメラのセットアップ方法を解説すると共に、利用方法や使い勝手についてもレポートしていきます。第五回は、Axis製ネットワークカメラのP1364をセットアップする方法について解説しました。連載の最終回となる本項では、P1364の利用方法について解説します。

1.P 1364の使い方

 P1364の映像を見る場合、パソコンのInternetExplorerが利用できます。InternetExplorerのアドレス欄にIPアドレスを入力し、ユーザー名とパスワードを入力するとP1364にログインできます。IPアドレスがわからない場合、第五回で説明した「AXIS IP Utility」を利用して検索できます。ログイン後は、現在カメラで映しているライブ映像が表示されます。

音声を有効にしていると、本体のマイクから拾える音も聞こえます。操作は、停止、スナップショット、全画面表示、ミュート等がすぐに実行できるようになっています。iPhoneやAndroidでは、アプリの「AXIS Companion」を使って映像を参照する事ができます。

2.イベント動作

 P1364は、音声や動きを検知して録画を開始できます。動きを検知(動体検知)するには、アプリケーションを動作させる必要があります。アプリケーションは、「設定」→「アプリケーション」→「Motion Detection 3」→「Settings」で動作させます。

赤枠の「開始」をクリックすると、AXIS Video Motion Detectionが動作します。検知する内容や検知した時のアクション(動作)は、「イベント」→「アクションルール」で設定します。

赤枠の「追加」をクリックすると、以下の画面が表示されます。

赤枠部分のトリガーで「アプリケーション」を選択すると、先ほど動作させたAXIS Video Motion Detectionによる動作検知でアクションが開始されます。トリガーで「検知」を選択し、下に表示されるプルダウンから「音声検知」を選択すると、音声を検知してアクションが開始されます。トリガーで「時間」を選択すると、スケジュール(毎日何時開始等)に従って録画する事も可能です。スケジュールを正確に動作させるには、日時を「基本設定」→「3 日付と時刻」で合わせる必要があります。青枠部分は、検知した時のアクションを設定します。録画やメール、静止画像を送信する等、様々な動作ができます。

3.デイナイト機能

 P1364は、かなり暗い状態でもカラーで映像を映す事ができます。

これより暗い状態になると自動的にナイトモードになり、高画質の白黒映像で対象を識別しやすくします。

4.インターネットからの利用

 一般的に、家庭内や企業内のネットワークは、インターネットから通信できません。このため、インターネットからP1364の映像を見るためには、インターネットからの通信を透過できるようにする必要があります。

インターネットから通信する際は、ブラウザのアドレス欄で指定するURLをIPアドレスに変換する必要もあります。例えば、URLでexample.comを指定した場合、IPアドレスの203.0.113.1等に変換して通信を行います。この変換は、DDNS(Dynamic Domain Name System)という仕組みにより実現可能で、Axisは無料でサービスを提供しています。サービスの利用は、「システムオプション」→「ネットワーク」→「TCP/IP」→「基本」で行います。

赤枠の「設定...」をクリックした後、「登録」ボタンを押してアカウント登録等を行うと、DDNSが利用できます。また、クラウド経由でライブ映像や録画を見る事もできます。クラウドを利用するには、Axis製ネットワークカメラをサポートしているクラウドサービスに申し込みが必要です。

5.Arlo Q Plusとの比較

ネットワークカメラは、必要なスペックや利用シーン等に応じて選択が必要です。第一、二回で扱ったネットギア製Arlo Q Plusと比較したスペックは、以下の通りです。

水平画角とは、カメラで映せる横の範囲です。Arlo Q Plusの方が一度に広い範囲を映せます。Arlo Q Plusには、以下の特徴があります。

① 設定が簡単にできる。
② クラウドが最大1GBまで無料で使え、インターネットからすぐ利用できる。
③ 標準で無線LAN対応。
④ 標準で双方向通話が可能。
⑤ 実売価格1万円~2万円と比較的安価。

 設定が簡単で、クラウドが1GBまで無料で利用できるため、パソコンやスマートフォンを利用してインターネットからすぐ利用できるメリットは大きいと思います。また、無線LANにも標準で対応しています。この事から、Arlo Q Plusは家庭や小規模な事務所、商店向けと言えます。P1364は、以下の特徴があります。

① 詳細な設定が可能。
② 機能が豊富。
③ 中~大規模向けビデオ管理ソフトウェアに対応。
④ 逆光や低照度等で撮影条件が悪い場合でも、より精細な映像を実現。

一般的なネットワークカメラでサポートされていない高度な機能や設定もあります。今回ご紹介した機能や設定は、ごく一部と言っていい程です。ビデオ管理ソフトウェアは、小規模向けのAXIS Companionから中・大規模向けのAXIS Camera Stationがあり、複数台のカメラをまとめて管理・監視できます。価格も8万円以上しますが、警備員が常駐しているような本格的な監視にも対応できるため、中~大規模な工場、事務所、商店向けと言えます。

6.ネットワーク展開

 中~大規模の工場等で複数のカメラを配置する場合、ネットワーク構成や電力供給について検討する必要があります。組織内のネットワークは、中心となるコアスイッチにエッジスイッチが接続され、その先にパソコン等が接続されている構成を多く見かけます。コアスイッチやエッジスイッチは、通信を中継する装置です。

P1364は、PoE(Power over Ethernet)に対応しています。PoEとは、通信で使うツイストペアケーブルを利用して電力を供給する仕組みです。このため、エッジスイッチがPoEに対応していれば、P1364をツイストペアケーブルで接続するだけで通信と電力の供給が可能になります。エッジスイッチがPoEに対応していない場合、GS108EPPやGS408EPP等のPoE対応LANスイッチを使います。PoE対応LANスイッチをエッジスイッチに接続し、P1364をPoE対応LANスイッチにツイストペアケーブルで接続します。

ツイストペアケーブルは、最大100mまでの距離を接続できます。このため、GS108EPPやGS408EPP等のPoE対応LANスイッチを設置するだけで、電源コンセントがない広い範囲にP1364を設置可能になります。

7.おわりに

本連載は、ネットギア製Arlo Q Plus、Panasonic製BB-ST162A、Axis製P1364のセットアップと利用方法について解説してきました。各製品の特長を簡単に示すと、以下の通りです。 ・Arlo Q Plus:無料でクラウドが使えるため、すぐにインターネットから利用できます。 ・BB-ST162A:設定を簡単にしつつ、本格的な監視にも対応できるカメラです。 ・P1364:使いこなすには知識が必要ですが、細かな要件にも対応できる本格的な監視カメラです。

 「ゼロから始めるネットワークカメラ」は、今回で最終回です。本連載を通して、ネットワークカメラを身近に感じていただけるきっかけになればと切願しています。ご愛読ありがとうございました。

のびきよ

2004 年に「ネットワーク入門サイト」を立ち上げ、初心者にも分かりやすいようネットワーク全般の技術解説を掲載中。著書に『短期集中! CCNA Routing and Switching/CCENT教本』、『ネットワーク運用管理の教科書』(マイナビ出版)がある。

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