この連載では、ネットワークカメラのセットアップ方法を解説すると共に、利用方法や使い勝手についてもレポートしていきます。第三回は、Panasonic製ネットワークカメラのBB-ST162Aをセットアップする方法について解説しました。第四回の本稿では、BB-ST162Aの利用方法について解説します。

1.BB-ST162Aの使い方

 BB-ST162Aの映像を見る場合、パソコンのInternet Explorerが利用できます。InternetExplorerのアドレス欄にIPアドレスを入力し、ユーザー名とパスワードを入力するとBB-ST162Aにログインできます。IPアドレスがわからない場合、第三回で説明した「IP簡単設定ソフトウェア」を利用して検索できます。ログイン後は、現在カメラで映しているライブ映像が表示されます。

  • カメラで映しているライブ映像

ライブ映像では、本体のマイクから拾える音も聞こえます。操作は、拡大・縮小、カメラ方向、明るさ調整等すぐ実行できるようになっています。赤枠の「一覧/再生」と黄枠の「マルチスクリーン」では、以下が可能です。

・一覧/作成 録画の一覧が表示され、削除が可能です。また、録画した時間をクリックすると、ライブ映像画面が再生画面に切り替わるため、再生したりパソコンにダウンロードしたりできます。

  • 録画した時間をクリックすると、再生したりパソコンにダウンロードしたりできます。

・マルチスクリーン 最大16台のカメラを登録して同時に表示できます。登録は、「設定」→「マルチスクリーン」で行えます。

iPhoneやAndroidが無線LAN経由でST-BB162Aと通信できる場合、アプリの「Panasonic Security Viewer」を使って映像を参照する事もできます。

2.イベント動作

 人の動き等を検知して録画を開始する事もできます。設定は、「設定」→「かんたん設定」→「イベント動作」を選択して行います。

  • 人の動き等を検知して録画を開始する事が可能

 「次へ」をクリックした後、表示される画面に従って設定を行います。アラーム条件を設定する画面で「動作検知アラーム」をonにすると、動作検知が有効になります。また、アラーム動作を設定する画面の「動作条件」は、以下から選択します。

・FTP転送 → 録画をFTPサーバに転送。 ・SD録画 → 録画をSDカードに保存。電源を切っても録画は消えない。 ・内部メモリー録画 → 録画を本体に保存。電源を切ると録画が消える。

FTP転送は別途サーバが必要で、SDカードは別途購入が必要です。内部メモリーを使用する場合、設定後に以下のように表示されると動作検知が有効になっています。

  • 検知する何秒前から録画する、何秒後まで録画する、検知した時メールする等の設定も可能

検知する何秒前から録画する、何秒後まで録画する、検知した時メールする等の設定も行えます。また、イベント動作条件で「スケジュール」を選択すると、録画する曜日や時間等を設定できます。

3.シーン選択

 撮影シーンによって画質を変更する事もできます。シーンは、「設定」→「かんたん設定」→「シーン/画質設定」で選択できます。

  •  撮影シーンによって画質を変更する事も可能

シーン選択で「カラーナイトビューモード:on」にしておくと、夜間照明を切った状態でも以下のように明るく撮影できます。

  • 「カラーナイトビューモード:on」にしておくと、夜間照明を切った状態でも明るく撮影できる

4.インターネットからの利用

 一般的に、家庭内や企業内のネットワークはインターネットから利用できなくなっています。このため、インターネットからBB-ST162Aの映像を見るためには、インターネットからの通信を透過できるようにする必要があります。

  • インターネットからの通信を透過せずに、クラウド経由でライブ映像や録画を見る事も可能

また、インターネットからの通信を透過せずに、クラウド経由でライブ映像や録画を見る事もできます。クラウドとは、インターネットにあるサーバ等の事で、パソコンやスマートフォンを利用してインターネットから簡単に利用できます。BB-ST162Aでは、Panasonicが提供しているクラウドの「みえますねっと」が使えます。以下は、「みえますねっと」を利用する時の料金例です。

項目 容量追加(5GB) 録画あり(3GB) ライブ専用 保存容量 最大8GB 3GB - 価格(税抜) +800円/月 +500円/月 980円/月 (データは執筆時点のものです)

  • 「みえますねっと」 料金例

    (データは17年12月時点のものです)

 ライブ映像だけを見る場合、月額980円です。録画を3GBまで保存する場合は500円プラスとなり、月額の合計は1,480円です。保存するデータが3GBを超える場合、5GB単位で800円プラスとなります。例えば、8GBでは月額2,280円(980+500+800)です。

5.Arlo Q Plusとの比較

ネットワークカメラは、必要なスペックや利用シーン等に応じて選択が必要です。第一、二回で扱ったネットギア製Arlo Q Plusと比較したスペックは、以下の通りです。

  • BB-ST162AとArlo Q Plusとの比較

Arlo Q Plusには、以下の特徴があります。 ① 簡単に設定できる。 ② クラウドが最大1GBまで無料で使え、インターネットからすぐ利用できる。 ③ 標準で無線LAN対応。 ④ 標準で双方向通話が可能。 ⑤ 実売価格1万円~2万円と比較的安価。

 設定が簡単で、クラウドが1GBまで無料で利用できるため、パソコンやスマートフォンを利用してインターネットからすぐ利用できるメリットは大きいと思います。また、無線LANにも標準で対応しています。この事から、Arlo Q Plusは家庭や小規模な事務所、商店向けと言えます。

  • Arlo Q Plus 利用シーン

BB-ST162Aは、以下の特徴があります。 ① 詳細な設定が可能。 ② 機能が豊富。 ③ 最大16台のカメラ画像を確認出来ます。 ④ 明るさの補正や顔検出等で映像を見やすくできます。

アラームを検知した際、何秒前から録画する、何秒後まで録画する、画質を細かく調整する等かなり詳細な設定ができます。パン(横回転)・チルト(縦回転)も可能で、画角以上の広い範囲を監視できます。

  • BB-ST162Aは詳細な設定が可能

また、アラームを検知すると指定した方向を向いたり、外部機器と連動したりできます。外部機器との連動では、例えばサーチライトで照らしたりする事が可能です。この事から、BB-ST162Aは本格的な監視カメラとして活用する事ができます。したがって、複数のカメラを配置する中規模の工場、事務所、商店向けと言えます。

6.ネットワーク展開

 中規模の工場等で複数のカメラを配置する場合、ネットワーク構成や電力供給について検討する必要があります。組織内のネットワークは、中心となるコアスイッチにエッジスイッチが接続され、その先にパソコン等が接続されている構成を多く見かけます。コアスイッチやエッジスイッチは、通信を中継する装置です。

  • 通信を中継する装置(コアスイッチ、エッジスイッチ)

BB-ST162Aは、PoE(Power over Ethernet)に対応しています。PoEとは、通信で使うツイストペアケーブルを利用して電力を供給する仕組みです。このためエッジスイッチがPoEに対応していれば、BB-ST162Aをツイストペアケーブルで接続するだけで通信と電力の供給が可能になります。エッジスイッチがPoEに対応していない場合、GS108EPPやGS408EPP等のPoE対応LANスイッチを使います。PoE対応LANスイッチをエッジスイッチに接続し、BB-ST162AをPoE対応LANスイッチにツイストペアケーブルで接続します。

  • BB-ST162Aは、PoE(Power over Ethernet)に対応

ツイストペアケーブルは、最大100mまでの距離を接続できます。このため、GS108EPPやGS408EPP等のPoE対応LANスイッチを設置するだけで、電源コンセントがない広い範囲にBB-ST162Aを設置可能になります。

7.おわりに

今回の記事を執筆するに当たり、BB-ST162AをLANスイッチGS108EPPとGS408EPPに接続して検証を行いました。BB-ST162Aを何か所かに設置しましたが、電源の心配をする事なく設置できるのは便利です。次回は、AXIS製P1364のセットアップについて解説します。

のびきよ

2004 年に「ネットワーク入門サイト」を立ち上げ、初心者にも分かりやすいようネットワーク全般の技術解説を掲載中。著書に『短期集中! CCNA Routing and Switching/CCENT教本』、『ネットワーク運用管理の教科書』(マイナビ出版)がある。

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