自然あふれる環境で、のびのび学ぶ小学校の最初のコロナ対応は「学習課題の郵送」

いいづな学園 グリーン・ヒルズ小学校は、長野県長野市の飯綱高原に位置する小学校である。現在は全校で22名の生徒が在籍しており、2学年を1学級とした複式学級編制で、中学校も併設されている。算数や国語(同校では「かず」「ことば」と呼ぶ)といった基礎学習だけでなく、飯綱高原の恵まれた自然の中で児童生徒自身がテーマを見つけて自律的に学ぶプロジェクト型学習や自治活動を組み合わせた特徴的な教育を行っている。

  • 左から直江 鉄平 氏(1・2年担任)、島田 和加子 氏(5・6年担任)、尾形 望 氏(3・4年担任)

自律性を育むことを目指し、自然の中で実際にいろいろなものに触れることや、自分や周囲との対話を重視した教育を行ってきた同校では、ICT活用にそれほど重きを置いていなかったという。

「学校全体でICT活用を推進する流れはあまりなく、校内にデスクトップPCが数台設置されていて、必要に応じて利用できる程度でした。プログラミング教育が始まるにあたり、どのようにICT環境の整備を進めていくかを考えているところでした」と語るのは、グリーン・ヒルズ小学校教諭で3・4年生クラス担任の尾形望氏だ。

ICTに関わる環境整備が進められていない中でコロナ禍に見舞われ、2020年3月から4月にかけて休校、5月は分散登校となったため、3カ月にわたって通常授業が行えなくなった。休校期間中に学びを止めないために、まずは課題を各家庭に郵送することから始めたという。「もともとこの学校には宿題がなかったので、個々の学習状況を考慮して課題を送るなど個別対応をしていました」と尾形氏は語る。

休校期間中の児童との交流にZoomを利用したのがICT活用の第一歩

「Zoom」を使い、朝のホームルームや、郵送した課題に取り組む際に接続し、質問があった際にリアルタイムで対応できる環境を構築したという。「ICTに詳しい教員がいない中、休校期間中も子ども達の学びを止めないようにと考えながらICT活用をスタートさせましたが、まずはZoomを使って担任が6~7人の児童とやりとりをすることにしました。子どもたちの方が新しいツールに馴染むのが早いので、今後もさまざまな場面でICTを活用できれば、学びの幅が広がる可能性を感じました」と尾形氏。

この時点では家庭が所有するPCやタブレット、スマートフォンを利用してZoomの接続を行っていたが、スマートフォンやタブレットを使いこなしている児童もいれば、ふだんは全く触れない児童もいる。各家庭の方針による使用頻度の違いや、新しいものに慣れ親しむまでの速さなど端末を扱うスキルに差がある中、特に低学年ではZoomを起動してホームルームに参加するだけでも保護者のフォローの必要性を実感していたという。

「家庭ごとの環境がそれぞれ違うため、学校として統一したものを貸与することで家庭学習でも平等な環境で学習が進められるようにすることが重要だと感じました」と尾形氏は環境整備へ向けて動き出すきっかけを語る。

コストと使いやすさでG Suite for Education+Chromebookを採用

校内には専任技術者どころか、ICTに詳しい教員もいない状況だったので、パンフレットやインターネットを利用して導入製品や導入ベンダーを検討することを始めたという。手探り状態で進められた導入準備だが、G Suite for EducationとChromebookの組み合わせは長野県内で地域全体での導入が進んでいる事例があるうえに、児童にとって使いやすい端末であり、コストメリットもあることから、これらの導入が決断された。

「サテライトオフィスに導入サポートをお願いしたのは、G Suite for EducationとChromebookを一括で導入できることと、IT知識がない中でG Suite for Educationの設定や導入後のサポートが受けられることにメリットを感じたからです」と尾形氏はサテライトオフィス選定の理由を語った。

「小学校低学年は指で操作できるタブレット端末の方が親しみやすいのですが、中学生になっても使うことを考えると、レポート作成やPowerPoint利用が増えるので、キーボードは必須です」と語った尾形氏。機種の選定では、予算オーバーではあったものの全学年が無理なく利用できることを考慮したうえで、ペン入力が可能な「ASUS Chromebook Flip C214MA」を採用した。

Chromebookを活用した体験的学習や遠方の学校間交流を実施

グリーン・ヒルズ小学校が、サテライトオフィスの無料導入支援でG Suite for Educationの導入を行ったのは5月末のことだった。当初は予算の都合から中学生と小学校高学年の利用に限定して16台の端末が導入された。通常登校が開始された6月からChromebookの利用が開始され、現在は授業や外部との交流に活用されている。

「授業での活用方法としては、毎月実施している学校周辺の生き物を探して歩く授業で、撮影してきた写真の動植物を調べるために利用しました。ペン入力対応端末を採用したことで、キーボード入力ができない児童も無理なく利用できたのはよかったですね。また、福岡の小学校とZoomで交流することができました。これは従来思いつきもしなかったことですが、ICT活用をきっかけに実現できたので、来年以降もいろいろな活用例を参考にしながら活用の幅を広げたいと考えています」と尾形氏は語る。

今後は高学年のレポート課題提出などでClassroomの活用を検討しているという。さらに11月には、国の補助金を利用することで予算面の課題を解決し、低学年向けに10台の端末追加導入を行うなど全面的な活用に向けて歩み始めている。

「ふだん端末を使用していない授業でも、端末を使いたいと児童が声を上げる場面が増え、使用頻度も多くなっています。好奇心で使っているうちにペン入力やGoogleスライドを使いこなす生徒が出てきたり、黒板からノートをとるのが苦手な生徒に対し、クラウドを活用した画面共有や入力作業といった協同作業をしたりなど、自然と活用の幅が広がっています」と尾形氏は手応えを語ってくれた。

外部交流や学習で積極活用中! 森の中での利用や低学年での活用は今後の課題

自然の中で体験を重視した教育においてのICT活用も、今は手探りの状態だ。特に森の中では通信環境がないことから、森の中での端末を利用した学習はまだ実現できていない。「森に端末を持ちこんで、気づいたことを全て記録して発表するというような使い方がしたいのですが、どのように通信環境を整えるのかは検討中です。見たものや感じたことをたくさんの人に伝えるためにICTをよりよく使っていきたいと考えています。また、端末導入前の低学年に対して、どのようにICTを活用して自然を活かした課題に取り組むかも今後の課題です」と尾形氏。

グリーン・ヒルズ小学校では、森が一般の学校でいう校庭にあたる場所であり、校内を散策する感覚で森に入って行くほど身近な場所だ。ネットワーク環境の整備や、オフライン環境での活用は同校の独自の課題となりそうだ。一方で、すでにさまざまな活用も始まっている。

「学校が市街地と離れているので、町の人にインタビューしたいときには車で30分以上かけて移動するか電話で話すしかなかったのですが、Google MeetやZoomを活用したインタビューができるようになったのはいいことだと思います。また、従来はプロジェクトの発表手段として作文や演劇、音楽などが使われることが多かったのですが、今後はChromebookを活用した新たな発表手法に期待を寄せています」と尾形氏は語る。

自然環境を活かした教育方針とICT活用は一見するとあまり結びつかないように思えるが、コロナ禍による休校を契機に1人1台のChromebook配備とG Suite for Education活用を開始し、学びの幅を広げることができた。今回は手探り状態から本格導入に至ることができたが、その経験を通して、相談できる相手と共有されるノウハウの少なさを痛感したという。

「相談できる相手が少なく自力で情報収集するしかありませんでしたが、うまく情報共有できれば導入もスムーズに進められますし、どの学校でも、どんな状況になっても子供たちはICTを使って学びを進めることができるのではないでしょうか。教員同士もネットワークがあれば助け合えるので、サテライトオフィスを通して、ユーザー校同士での交流や検討中の学校が先行校に相談できるなどの機会を持てたら嬉しいですね」と尾形氏は期待を語ってくれた。

監修:原口 豊(はらぐち・ゆたか)

大手証券会社システム部に在籍後、1998年、サテライトオフィス(旧ベイテックシステムズ)を設立。2008年、いち早くクラウドコンピューティングの可能性に注目し、サービスの提供を開始。Google Workspace(旧称:G Suite)の導入やアドオンの提供で、これまで実績4万社以上。「サテライトオフィス」ブランドでクラウドサービスの普及に尽力している。

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