30-60歳代の日本女性が罹るがんの第1位である乳がん。罹患率は年々増加傾向にあり、女性の生涯を通してみると、今や発症率は11人に1人にも上ります。しかし乳がんは、早期発見によって適切な治療を受ければ、ほとんどの場合生命に影響を及ぼさずに済むことが多いとも言われています。

今回は、乳がんの体験者でもあり、現在はピンクリボンアドバイザーとして乳がんの啓発活動に取り組む 認定NPO法人 乳房健康研究会 理事 栗橋登志さんに、乳房健康研究会およびピンクリボンアドバイザーの取り組みについて話を伺いました。

  • 認定NPO法人 乳房健康研究会 理事 栗橋登志 氏

    認定NPO法人 乳房健康研究会 理事 栗橋登志 氏

日本女性の乳がん検診受診率向上を目指して

米国では1990年代以降、乳がんの死亡者数は減少傾向にあります。その理由のひとつに、乳がん検診の普及や啓発運動によって早期に発見されるケースが多くなったことがあると考えられています。米国は、乳がんの啓発キャンペーンとして知られるピンクリボン運動発祥の地でもあり、乳がん検診の受診率は7-8割程度と高水準を維持しています。

一方で、日本は欧米に比べて乳がん検診の受診率が低く、現在でも乳がんによる死亡率は上昇しています。このような状況を打破しようと、日本の乳がんにかかわる医師たちが2000年に日本初の乳がん啓発団体として発足させたのが乳房健康研究会です。

乳房健康研究会の活動などにより日本における乳がん検診受診率は向上しつつあるものの、現状でも3-4割程度と欧米には到底及びません。では、日本で乳がん検診を受けている人たちは、何がきっかけとなったのでしょうか。乳房健康研究会が独自に行った調査では、調査に協力した半数近くの人が「友人や知人からの勧め」で乳がん検診を受けていることがわかっています。

そこで乳房健康研究会は、正しい知識を持って乳がん検診を勧められる人を増やすことで乳がん検診の受診率増加につなげていくため、2013年にピンクリボンアドバイザー制度を立ち上げました。ピンクリボンアドバイザー制度では、年に一度、乳がんや乳がん医療の知識を問う認定試験を実施し、ピンクリボンアドバイザーを認定します。ピンクリボンアドバイザーは、正しい知識を持って地域や職場などで乳がんの啓発活動をしていくことができます。

栗橋さんはピンクリボンアドバイザーの目的について「家族や友人と乳がんについて話したり、仕事仲間に検診を勧めたりと、日常会話のなかであまり意識しないで乳がんに対する正しい知識を普及していただくことが理想です」と話します。

子どもたちに待ち望まれていたがん教育の授業

ピンクリボンアドバイザーに認定された人たちは、日々の啓発活動やワークショップへの参加などさまざまな取り組みを行っていますが、昨年からは未来を担う子どもたちへのがん教育プロジェクトもスタートしました。

このプロジェクトは、がん経験を持ち、がん教育講師としての研修を修了したピンクリボンアドバイザーが、全国の中学校・高校に赴き、それぞれの経験談を通して検診の大切さや、がんの正しい知識を伝えていくことで、生徒の健康意識を向上させ、未来の検診受診率アップにつなげていこうというものです。また、授業を受けた子どもたちから上の世代へとがんの正しい知識や早期発見の重要性を呼びかけてほしいという思いも込められています。アジレント・テクノロジーをはじめとする複数の企業もこのがん教育プログラムに共感し、寄付を行っています。これまでに200名以上の子どもたちが、この授業を受けてきました。

「がん教育プロジェクトを立ち上げるにあたっては、医療関係者やピアサポートの関係者など有識者を交えて議論を行いましたが、『身近にがん治療を行う家族などがいる子どもや、自身ががんを経験したことのある子どもが傷ついてしまうのではないか』という意見もありました。また、年ごろの子どもたちが真剣に話を聞いてくれるかどうかということも心配でしたが、実際に授業を行ってみると、嫌な思いになった子どもたちはほとんどいなかっただけでなく、前のめりになって聞いてくれるような生徒もいました。家族をがんで亡くしてしまったり、がん治療中の家族がいたりする子どもは、がんについての正しい知識が得られる場を求めていたんです。がん治療中の自分の家族に対しては、直接聞きづらいことも多いのだと思います。そうした子どもたちの心配を解消するためにも、この授業はとても大切なんだと感じました」(栗橋さん)

標準治療は最善の治療法 - がん治療を理解しておくことの重要性

このようにピンクリボンアドバイザーは、検診の啓発はもちろん、乳がんをはじめとするがんの正しい知識を伝えていくという活動にも力を入れています。栗橋さんは「ピンクリボンアドバイザーの認定者であることによって、信頼して話を聞いてもらえるメリットがあります」と説明します。

認定NPO法人 乳房健康研究会 理事 栗橋登志 氏

「胸にしこりがあることに気づいているのに、病院に行く勇気が出ずに悩んでしまっているという方も過去にいらっしゃいました。情報と頼りどころがほしくても、医療関係者に相談するのはハードルが高く、どうしていいかわからなくなってしまう方もいます。ピンクリボンアドバイザーには、そうした人たちの背中を押す役割があります」(栗橋さん)

正しい知識を持つということは、がんの告知を受け、治療を受けることになったときのためにも大切です。乳がんの治療を受けるにあたって、患者として知っておくとよい知識について栗橋さんは「何よりも標準治療の重要性を理解しておいていただきたいです」と力を込めます。

標準治療とは、がん治療法の基準になるものです。乳がんの場合は、標準治療をもとに乳がんの病態やサブタイプ、ステージなどに合わせた最善の治療法が示され、患者の希望とすり合わせながら治療法を決定していきます。特に、薬物療法を行う場合は、がんのサブタイプや再発リスクなどによって使う薬が選択されます。

サブタイプとは、がん細胞がもつ遺伝子の特徴でがんを分類したもので、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2タンパク、Ki-67といったタンパク質の発現の有無を免疫組織染色という手法で調べることで判断されます。たとえば、HER2タンパクががん細胞表面に発現している乳がんの場合は、HER2タンパクの働きをブロックする分子標的薬の使用が有効である可能性が高いです。分子標的薬のひとつであるハーセプチンを投与するにあたっては、アジレントが提供する体外診断薬(ダコ HercepTestⅡ:販売名)などによって、その効果を予測します。

「サブタイプに関する知識がないと、他の乳がん患者さんと自分の治療法が違っているだけで不安を感じてしまいます。乳がんにはサブタイプがあり、それに合わせて治療法が決定されていることを理解していれば、安心して治療を受けることができます」(栗橋さん)

正しい知識を持って、がんと戦っていく

医療の発展により、がんと戦うための選択肢は増えつつあります。特に乳がんは、早期に発見し、適切な治療を受けることができれば、決して怖くない病気です。栗橋さんは「こうしたことをみなさんに理解していただけるよう、今後もピンクリボンアドバイザーとして活動を続けていきます」と語ってくれました。

"Fight against cancer"をスローガンに掲げるアジレントは、乳がん検診の普及活動や正しい知識の発信を担うピンクリボンアドバイザーの活動を支援しています。がんの教育から検診、診断・治療の現場まで、アジレントはこれからも総合的なアプローチでがんと戦っていきます。

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