折からのインバウンド需要の高まりや、2020 年に向け、さらに増加が見込まれる訪日外国人に対応するため、各業種・業界で外国人向けサービスの拡充や品質の向上を目指す取り組みが盛んに行われています。そんな中、近年注目を集めているサービスの1つがDiDi モビリティジャパンの手掛けるタクシーの配車アプリ「DiDi」です。日本でのサービス開始にあたっては、今後もますます見込まれる訪日外国人の増加に対応するため、翻訳機能が実装されているのが特長で、この機能により、乗客だけでなく、運転手が運転に集中できる環境を提供します。そして、この環境を実現するため、マイクロソフトの学習済みAI、Cognitive Services のTranslator Text が採用されました。

タクシー市場で起きていた“コミュニケーション・ロス”―AI を活用したプラットフォームで解消に挑む

2012 年に創業された「DiDi」は、AI(人工知能)を活用した高度な分析・予測テクノロジーにより、乗客とドライバーのマッチングを最適化するタクシー配車プラットフォームサービスです。現在は、グローバルでのユーザー数5.5 憶人、年間の乗車回数が100 億回を記録する規模のサービスにまで成長し、業界においてプレゼンスを高めています。

アプリでユーザーが行き先と乗車地点を入力すると、距離や交通状況などを考慮して最も速く到着できるタクシーが呼び出される仕組みで、タクシーが到着するまでの時間や位置情報をリアルタイムに確認でき、目的地へ到着後もアプリに登録したクレジットカードやPayPay で決済ができるなど、タクシーのスムーズな乗降をサポートします。

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「冬の屋外が-10℃にもなる北京では、タクシーを呼んでも来ないというのは、生死に関わるほどの問題です。こうしたニーズに応えるためにDiDi がスタートしました」とサービス誕生の経緯を語るのは、DiDi モビリティジャパンの事業開発本部で本部長を務めるエリック・ウェイ 氏。サービス開始以後も、プロダクトの革新を度々重ね、進化し続けるDiDi が日本に進出したのは、2018 年6 月末。中国本社とソフトバンクによる出資で、日本法人の合弁会社が設立されました。その後、まずは大阪のタクシー会社と提携し、同年9 月末には大阪でのサービスが開始され、2019 年11 月現在、東京、京都、兵庫、北海道、福岡、広島、青森、愛知、沖縄、山口、宮城、新潟、千葉、埼玉、大分、群馬の16 エリアでサービスを提供しています。さらに、2019 年までにエリアを20 まで拡大予定です。

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    DiDiモビリティジャパン
    事業開発本部 本部長
    エリック・ウェイ 氏

ウェイ 氏によると、最初に大阪でサービスを開始した理由は、インバウンド需要の高さと地理的な特徴から。「東京に仕事で来て、関西方面へ観光で、という訪日外国人が多いです。中でも、観光地である京都、神戸に挟まれた大阪は特に需要が高く、これをどのようにマッチングさせたら良いかといった分析や、配車効率を向上するために不可欠なデータの蓄積には、碁盤の目のように整備された大阪の道路環境はとても相性が良かったので す」と説明します。

サービス開始当初は、日本においてタクシー配車サービス自体が珍しいこともあり、「ニーズを作ることから始める必要があり苦戦しました」と語るウェイ 氏。しかし、その後の大規模なキャンペーンや広告活動などにより、大阪では4 人に1 人が認知するサービスとなり、初乗り料金無料などの様々なキャンペーンやサービス提供エリアの拡大を契機に日本人ユーザーが急増しているとのことです。また、ウェイ 氏によると、日本におけるDiDi のサービスは、実は中国とはまったく違うアプローチで技術を日本向けにローカライズして展開していると言い、その理由を次のように明かしました。

「中国のイベント期は、乗客の半分ぐらいが中国人旅行者になります、彼らの多くが"白タク"が日本では違法だということを知らずに利用してしまったというケースが少なくありません。一方で、日本のタクシードライバーは世界の中でもズバ抜けてサービスがよく、例えば扉を自動で開けてくれるなどというのは他の国にはないものです。そうした日本のタクシー事情やマナーなどの文化的な違いを、DiDi では“Tips”としてプラットフォームを通じて日本への旅行前から告知しています」

外国人旅行者とドライバーの需要と供給を結びつける上で、もう1 つ大きな障害となっているのは、やはり言語の問題が挙げられます。車内はもちろんのこと、配車に至るまでの過程においても意志の疎通が図れずに、乗車の機会を逃すといった損失もあったと聞いています。

一方、日本では少子高齢化の影響でドライバー不足や高齢化も進んでいるのが現状です。直近の問題としては、2020 年に向け、運転手にも語学力の強化・向上を求める施策を政府も進めてはいるものの、簡単には解決できない課題だと認識しています。

そこでDiDi で提供するのが、タクシー会社側へのソリューション。高齢のドライバーの利用を意識して、タブレットで見やすく簡単に操作ができるアプリケーションを開発し注文の受付から乗客の乗車位置までのルート案内、決済までの一連の手続きをドライバーがタブレット上でガイドに沿って簡単に行うことができるシステムです。乗客とは、アプリ上でメッセージをやり取りすることができ、接客もスムーズに行えます。

アプリ上での乗客との会話は、配車時によく使われる用語が厳選して搭載されており、例えば、待ち合わせのシーンを想定した会話文をドライバーは日本語で選ぶことができます。それが相手側には翻訳されて表示され、反対に乗客側からの会話は、ドライバー側には日本語に変換されて表示される仕組みです。

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「今までは電話越しに『交差点を渡っていただけますか?』とか、やりとりする必要があったのですが、DiDi を使うとすべてお互いの言語で会話文を選択するだけで済み、コミュニケーションが円滑になります。キャンセルする場合にも、直訳ではなく、例えば“申し訳ありません”の一言を添えるなど、心地よいコミュニケーションができるようにマナーの要素をアプリ側で補足したりもしています」

円滑なコミュニケーションのためにはスピードが重要―正確さだけでなく、 レスポンスの速さを重視し、Cognitive Services「Translator Text」を選定

「日本での展開においては、インバウンド、ローカルユーザーを両方取り込みたい」という戦略的な理由から導入されています。

そして、機能を実装するにあたっては、「できるだけ早く、精度の高い翻訳機能を実装するために、サードパーティの機能を採用するという結論に至りました」とウェイ 氏は明かします。

そこで比較されたのが複数の翻訳サービス。具体的には、翻訳自体の質そのものに加えて、DiDi で用意している数千にも及ぶ配車に関してよく使われている用語への対応状況や精度をスコア化し、その上でそれに対するレスポンス速度やタイムアウトなどの複数の項目が比べられたそうです。

その結果、「一番優れた評価が得られ、弱点というべき点も見当たらなかった」という理由から、最終的にCognitive Services の「Translator Text」を選択しました。

「他のサービスと比較した際、Translator Text の長所だと言えるのは、まず"スピード" です。3 社以上を比較検討しましたが、レスポンスのタイミングがコンマ数秒速く、トータルでの一連のやり取りの中ではこの差は非常に大きいと感じました。また、Translator Textは、” 学習済みのAI”ということで、スピーディに導入できたことも評価した点の1 つです」とウェイ 氏は振り返ります。

乗車機会の創出と支払い時のトラブル発生も未然に防止―ドライバーが本業に集中でき、サービス品質も向上

日本在住歴15 年で日本語も堪能なウェイ 氏ですが、自身も台湾出身で学生時代に観光で度々来日していた当時は、「地下鉄の複雑な路線や乗り方など、日本特有の交通事情に困惑することが多かったです。タクシーに乗ろうとした際にも、言葉が通じないゆえ、乗車を断られることも実際にありました」と自らの経験談を語ります。同じようにDiDi を利用するドライバーからも、「DiDi を導入したことで、" 流し"の時に比べたら、そういう経験が改善された」という声が実際に多く寄せられていると言います。

また、待ち合わせの際に、うまく出会えなくて結局キャンセルに至ってしまうというようなケースにも「翻訳機能を介してドライバーとの連絡や、コミュニケーションできるようになった」という乗客側からの声も多いと言い、「DiDi によって配車効率が改善され、タクシー会社の売上のみならず、ドライバー一人ひとりの収入増にもつながり、結果として若い人がドライバーになりたがらないという課題の解決にもつながると思います」と期待を語ります。

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さらに、タクシーにおけるよくある事例としてもう1 つ挙げられるのは、クレジットカードによる支払いの可否。しかし、4 割ほどのタクシー会社がクレジットカードに対応していないというのが実情で、タクシー会社にとってはこれも乗車機会の損失につながっていると言います。こうした状況に対してもDiDi ではソリューションを提供しています。

「来日したばかりの外国人が現金で大量の日本円を持っているということはそんなにないと思います。タクシー会社に訊くと、実際、目的地に行って支払えないというケースはよくあるそうです。日本人であれば途中で降ろしてもらってATM で現金を引き出して支払うということもできますが、外国人だとそういうわけにもいきません。やむを得ず、料金を回収できず、“ 泣き寝入り”といったケースも少なくはないようです。ドライバーによっては、自前で翻訳機を購入して持っている人もいるようですが、翻訳機能も提供しているDiDi を使えば、乗客と乗車前にうまくコミュニケーションが取れるようになり、支払いに関するトラブルを防ぐことにもつながります。言葉がわからないという理由だけで、無為に断らないで済むため、“お客様を目的地まで安全に届ける”という本来の業務に安心して集中できると評価をいただいています」

また、「運用面においても、Translator Text を高く評価しています」とウェイ 氏。「導入から今まで、翻訳サービスのシステムダウン、故障等のトラブルが一度も起きていません。システムが万が一ダウンしてしまうと、タクシー会社にとっては、その日は外国人のお客様の利用を停止してしまうくらいの大打撃になってしまいますが、毎日順調に稼働しています」と、安定したシステムへ信頼を寄せています。

音声によるリアルタイム翻訳、ボットの開発、多言語対応で、さらなるサービス品質の向上を目指す

現在は文字のみで行われるDiDi のリアルタイム翻訳機能ですが、今後は音声によるリアルタイム翻訳への対応を目指しているとのこと。「理想は、電話で会話するような感じです。音声によって会話ができるようになると、待ち合わせの問題を今よりずっとスムーズに解決できるようになると思います。高齢のドライバーの方も多いので、文字による入力よりも音声入力の方が一層便利だと思います」とウェイ 氏。

また、日本においては、現在、24 時間対応のカスタマーサービスを提供しているDiDi だが、現状対応している言語は日本、中国の2 ヶ国語。将来的には多言語での展開を目標として掲げています。

「カスタマ―サービスにはいろいろな言語での問い合わせがあります。すべての言語に対応できるのがベストですが、人材を揃えるというのは現実的には難しい。そこで、複数のオペレーターを配員するのではなく、多言語のツールを用意することで対応していきたいと思っています。数十秒の会話をメッセージでやりとりするというのでは、時間もトータルで数分かかってしまうので、チャットボットによる対応も考えています。これらを開発する上でも、マイクロソフトの協力は欠かせません。他にもモビリティのビックデータとAI を掛け合わせることで何か新しいものを世の中に送り出すことや、ハードウェアとプラットフォーマーの連携を強化することにより、BtoB 向けの新規事業にもつながるような協力関係を築いていけることを期待しています」

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[PR]提供: 日本マイクロソフト