"お客さま第一主義" を掲げ、それを追求して実践しつづける、第一生命保険。同社では、1992 年に "お客さまの声" を経営に反映させる仕組みを構築し、DSR (Dai-ichi's Social Responsibility = 第一生命グループの社会的責任) 経営を推進することで、お客さまから高い評価を得ています。さらに 2018 年度には、従来行ってきた "お客さま満足度調査" を刷新。新たに構築した「フィードバック調査 (※)」のもと、1 日単位で統計と個別の各視点からお客さま満足度を把握できる仕組みへと変革することで、お客さまと接する生涯設計デザイナー®が日々お客さまに寄り添った対応を心掛ける環境を整備しています。同社の DSR 経営を一層発展させうるフィードバック調査は、Microsoft Azure と Power BI がその安定的な稼働を支えています。

※ 第一生命の既契約者に対して行っている「Webお客さまアンケート」のアンケート結果を個別かつタイムリーに営業現場等へフィードバックする調査

お客さま満足度のさらなる向上のために

ユーザーの多様化が加速する今日、自社サービスがお客さまや社会からどのような評価を受けているかを確認して絶えず事業へとフィードバックしていかなければ、"選ばれ続ける会社" となることは困難です。生命保険業界で圧倒的なプレゼンスを築いている第一生命保険は、1992 年に全国から "お客さまの声" を集積して経営に反映させる仕組みを構築するなど、早くからここに取り組んできました。

  • 第一生命保険では 1992 年より、"お客さまの声" を集積して経営に反映させる取り組みをすすめている

    第一生命保険では 1992 年より、"お客さまの声" を集積して経営に反映させる取り組みをすすめている

第一生命保険株式会社 DSR品質推進部 次長の東 佳弘 氏は、この仕組みについて次のように説明します。

「弊社では、コンタクトセンターへのお電話や、ホームページからのお問い合わせ、そしてお客さまのもとへ訪問する生涯設計デザイナー®に寄せられた直接のコメントなど、あらゆるチャネルから日々、"お客さまの声" を収集しています。そうして集めた声を『お客さまの声管理データベース』によって一元管理し、情報を分析して商品やサービスの改善に繋げてきました。1992 年に構築したこの仕組みのもとでお客さま満足度の向上に取り組んできた結果、当社サービスの品質は向上したと考えていますが、一層のお客さま満足向上に向けて既存の仕組みを補完するような施策に着手するべきであると考えました」(東 氏)。

「お客さまの声管理データベース」で一元管理されている情報は、自ら電話をかける、自らホームページへ投稿するなど主体的に意見や要望を寄せてくれるようなお客さまのものに限られます。「わざわざ電話してまでは……」というようなお客さまの要望までは収集できず、網羅性という面では補完すべき余地がありました。

そこで、第一生命保険では「お客さまの声管理データベース」とは別に "お客さまの声" を収集するために、年 1 回のアンケート郵送によるお客さま満足度調査を 1998 年より開始し、2014 年には郵送から Web での調査へ移行し、通年実施へと変更しました。さらに 2017 年度にはこのお客さま満足度調査をあらたな形式へと刷新。同取り組みの狙いについて、第一生命保険株式会社 DSR品質推進部で課長補佐を務める藤村 裕里 氏はこう説明します。

「2017 年度よりスタートした施策では、大きく 2 つのことに取り組んでいます。1 つは、外部調査機関によって、客観的に他社と比較して相対的な弊社のポジションを確認することです。そしてもう 1 つは、従来から行っていた弊社独自のお客さま満足度調査データを、お客さまとの接点となる支社や営業オフィス、生涯設計デザイナー® が活用できるような仕組みを整備することです。"お客さまの声" を活用するユーザーは、従来、支社長などの管理者層のみに限られていました。もちろん、そこで策定された改善案が営業現場へと落とし込まれていきますが、生涯設計デザイナー® は、直接はこのデータに触れられませんでした。よりパーソナライズ化したサービスを提供していくために、営業現場でも "お客さまの声" が活用されるようにしたいという思いがありました」(藤村 氏)。

この取り組みにあたって、第一生命保険では新たに「フィードバック調査」の仕組みを構築。これは調査で得られた結果 (お客さまが回答されたアンケート結果) を個別かつタイムリーに営業現場へフィードバックするものです。統計的な分析による課題の抽出、改善策の立案等に留まっていた従来のお客さま満足度調査と比べると、大きくグレード アップしたものだと言えます。

「2018 年度より全社稼働した『フィードバック調査』では、日々お客さまから寄せられる個別アンケート結果がタイムリーに管理者層経由生涯設計デザイナー® へ連携される "カスタマーレター" と、その集計結果が Web 上で把握できる "カスタマーレポート" の 2 つのツールを用意しています。営業現場では、"カスタマーレター" により、自身が接するお客さまからの評価を可視化。また、お客さまがアンケート回答された翌営業日には生涯設計デザイナー® へ情報が届くので、お客さま要望への迅速な対応が可能となり、1 人ひとりのお客さまのニーズをより意識しながら対応を行うことができます。支社等の管理者層も、"カスタマーレポート" により、タイムリーにお客さま満足度が把握できるようになるため、より精緻に戦略を立案することが可能になりました。管理者層と生涯設計デザイナー® の両軸でもっと "お客さまの声" を有効活用することにより、お客さま満足度の一層の向上を目指しています」(藤村 氏)。

  • 第一生命保険では 2017 年より、外部調査機関による統計調査を開始。翌年には「フィードバック調査」を完成させ、同取り組みを本格化している

    第一生命保険では 2017 年より、外部調査機関による統計調査を開始。翌年には「フィードバック調査」を完成させ、同取り組みを本格化している

  • 第一生命保険株式会社 東 佳弘 氏、藤村 裕里 氏

Microsoft Azure の PaaS を活用したサーバー レス設計を採ることで、わずか3 か月でサービス基盤を構築

「フィードバック調査」では、まずアンケート形式でお客さまの満足度を調査。ここで収集したデータをもとにして、"カスタマーレポート" では BI ツールをもってお客さま評価を可視化、"カスタマーレター" ではメール システムと連携して生涯設計デザイナー® を指導する管理者層等へメール送信する仕組みを採っています。

  • "カスタマーレポート" では、マイクロソフトの Power BI をもちいてデータを可視化。他支社との比較など、さまざまな視点からデータをみることで、市場やお客さま満足の洞察を得ることが可能だ。"カスタマーレター"には、個々のお客さまのアンケート回答情報を表示し、管理者を通じて担当の生涯設計デザイナーへと日次でフィードバック。これにより活動の振り返りや今後の改善点を指導する。

    "カスタマーレポート" では、マイクロソフトの Power BI をもちいてデータを可視化。他支社との比較など、さまざまな視点からデータをみることで、市場やお客さま満足の洞察を得ることが可能だ。"カスタマーレター"には、個々のお客さまのアンケート回答情報を表示し、管理者を通じて担当の生涯設計デザイナー® へと日次でフィードバック。これにより活動の振り返りや今後の改善点を指導する。

同サービスの提供基盤には、パブリック クラウドの Microsoft Azure が採用されています。東 氏は、パブリック クラウドを採用した理由として "スピード" を挙げ、Microsoft Azure の選択理由も交えて次のように説明します。

「ただ単に調査するのではなく、そこで得た情報を有効活用することも考えた場合、『フィードバック調査』のようなシステムの開発が不可欠と考えました。他社に先駆けてこういった取り組みを進めることは、結果として、当社のサービス価値をより高めることにつながります。であれば、早期にシステムを完成させたい。そのためにはオンプレミスではなくクラウドが有効だと判断しました。金融業界にはまだ、クラウドに対する抵抗感が存在します。実績のないサービスを採用する場合、これを使うべきかどうかという検討段階で多くの時間を費やしてしまうでしょう。Microsoft Azure はエンタープライズ レベルの信頼性を備えており、数多くの金融機関での実績も有しています。実際に当社でも、社内の一部システムで既に Microsoft Azure を利用していましたから、社内決裁までの期間が短縮されることを期待しました。また、今回インテージ社にシステム開発も委託しましたが、同社から、Microsoft Azure が備える拡張性を活用すれば開発期間も短期化できると伺いました。決裁、開発の双方でリード タイムを短縮できると考え、採用を決定したのです」(東 氏)。

第一生命保険が「フィードバック調査」のプロジェクトに着手したのは、2017 年 6 月のことです。9 月までに要件定義を完了させ、12 月には同システムのプレ稼働をスタートしています。構築に要した期間は実質 3 か月であり、きわめて短期間だといえます。短期開発が実現できた理由について、株式会社インテージ 開発本部の角川 孔一 氏と石田 篤史 氏は、次のように述べます。

「第一生命保険様に適格な要件定義をいただけたことがまず挙げられるでしょう。第一生命保険様には、"カスタマーレポート" で何の項目をどんな視点から、どのようにドリル ダウンして見ていきたいか、また "カスタマーレター" を誰にいつ、どのような体裁で配信したいか、これらについて、実際に使用する現場の意見を取り入れながら綿密に定めていただきました。そのため、プレ稼働まで手戻りなく作業が進められたと感じています。また、サービス基盤に Microsoft Azure を利用したことも大きなポイントでしょう。Microsoft Azure はこうしたデータ分析基盤に必要な各種機能を PaaS として豊富に取り揃えています。サーバー レス設計を採ることによって、構築に要する作業自体を減らすことができるのです」(角川 氏)。

「各種 PaaS にくわえて Power BI のような各種サービスも、Microsoft Azure ではシームレスに連携することができます。これは大きな優位性であり、短期構築にあたってきわめて有効でした。また、"カスタマー レポート" については、事業部門の要望に近いものを BI 上でダッシュ ボード化することが求められます。Power BI はこの作りこみが容易で、さまざまな視覚表現にも対応可能なため、要望に限りなく近いものをプレ稼働の段階で準備できました。Microsoft Azure は、こうしたデータ分析基盤として利用する場合にきわめて親和性が高いといえるでしょう。事実、プレ稼働後には細かな微調整しか発生せず、無事にサービス開始を果たせています」(石田 氏)。

つづけて、実際に構築作業を担当した株式会社インテージテクノスフィア ビジネスインテリジェンス第二本部 の鈴木 健吾 氏は、「フィードバック調査」のアーキテクチャ設計に触れながら、詳細を語ります。

「今回、"カスタマーレポート" と "カスタマーレター" のそれぞれで RDB (リレーショナル データベース) を用意するのではなく、共通の RDB 環境として、Azure SQL Data Warehouse へ一元的に調査データを集積しています。"カスタマーレター" の場合は Azure Web Job を経由してデータを取り込み整形後にメール配信システムと連携しており、"カスタマー レポート" では Direct Query を通じてシームレスに Power BI へデータを送信しています。この他にも認証基盤には Azure Active Directory Premium を、フロントの Web システムには Azure Web Apps を利用するなど、サービス基盤は仮想マシンをほぼ利用しないサーバー レス設計を採っています」(鈴木 氏)。

  • 「フィードバック調査」のアーキテクチャ設計

    「フィードバック調査」のアーキテクチャ設計

  • 株式会社インテージ 角川 孔一 氏、石田 篤史 氏、鈴木 健吾 氏

"お客さまの声" の活用により、生涯設計デザイナー® の行動意識が変わりつつある

既述のとおり、第一生命保険では 2017 年 12 月より、「フィードバック調査」のプレ稼働をスタート。細かな改修作業が進められた後、2018 年 4 月には正式にサービスを開始しています。同システムがもたらした効果について、東 氏と藤村 氏はこのように説明します。

「生涯設計デザイナー® が定期訪問した際、報告や現在の契約内容の会話に終始してしまい新商品の案内などを行えない場合が多くあります。これは長年ご契約をいただいているお客さまの場合に特に多く、『新しい提案は求められていないだろう』という生涯設計デザイナー側の心理によるものだと推測されます。ただ、長年ご契約を頂いているお客さまでも、新商品の案内を希望しているお客さまは数多くいらっしゃいます。事実、"カスタマーレター" では、長期契約のお客さまから定期訪問時に新しい商品を提案してほしいという声が少なからず挙がっているのです。これが生涯設計デザイナー® へフィードバックできるようになったため、これまで以上にパーソナライズ化したサービスが提供できるようになったと感じています」(東 氏)。

「当初、『フィードバック調査』を導入しても中々これが浸透しないのではないかという懸念がありました。ですが、東が話した『新たな商品提案』の例にあるように、"お客さまの声" には、今まで引き出せなかったお客さまの要望や、日ごろの営業活動に対するお褒めのコメント等があり、個別のお客さまの要望への迅速な対応が可能となり、また生涯設計デザイナー® のモチベーション アップに繋がっています。"お客さま一人ひとりに寄り添った対応" を意識する風土がこれまで以上に高まりつつあります」(藤村 氏)。

"現在、生涯設計デザイナー® が、お客さまと直接接点を持った際に、積極的にアンケートの協力を依頼しており、2018 年度のアンケート回答総数は 12 万件に達する見通しです。ここまで大きく伸長したのは、生涯設計デザイナー® がお客さまからより多くの声をいただき、そして改善につなげていこうと意識する、この風土が高まったことの表れだといえるでしょう。"

-東 佳弘 氏: DSR品質推進部 次長
第一生命保険株式会社

1 人でも多くのお客さまから "お客さまの声" を収集していく

"カスタマーレポート" についても、各支社で有効に利用されています。Power BI では支社長等の管理者層といったユーザーがそれぞれ独自の視点から、他エリアや競合と比較しながら自らの担当領域を分析していくことが可能。東 氏は「これによって戦略や戦術をより高度化できると期待しています」と笑顔をみせます。これに応えるように、角川 氏は、「現在、フリー アンサー形式の情報については羅列的な表示に留まっています。ですが、機械学習などを活用すれば、こうした情報も統計分析の対象にすることができるはずです。Microsoft Azure は機械学習の機能も豊富に揃えていますので、クラウドゆえのスケーラビリティを活用しながら、より有効にデータが活用できる環境を提供してまいります」と語りました。

最後に東 氏は、お客さま満足度情報の活用に向けた今後の展望を、次のように述べます。

「極論かもしれませんが、すべての "お客さまの声" を収集しなければ、本当の意味ではパーソナライズ化したお客さま対応は実現できないと考えています。幸いにして、生涯設計デザイナー® からは今回構築した仕組みへの支持が得られつつありますので、生涯設計デザイナー® やインテージの力をかりて、1 人でも多くのお客さまから "お客さまの本音の声" を収集していきたいと考えています。そうすれば、本システムはもっと高度に活用していけるでしょう」(東 氏)。

"選ばれ続ける会社" であるために、一歩先を行く取り組みを進めている第一生命保険。根幹にある一貫した "お客さま満足" への想いによって、同社のサービスはこれからも、消費者のニーズに応えていくことでしょう。

  • 第一生命保険株式会社、株式会社インテージの皆様

[PR]提供:日本マイクロソフト