働き方改革関連法案が成立し、労働時間にかかわる制度が大きく変わろうとしています。2019 年 4 月より、一部職種を除き、時間外労働の上限が月 45 時間、年 360 時間に定められるのです。生産年齢人口の減少も進む中、企業には本質的な働き方改革が求められているといえるでしょう。ここで懸念されるのが、勤怠管理の厳格化を背景に、申告時間と実際の勤務時間との間にギャップが生じてしまうことです。ユーザー申告に基づいた勤怠管理を進めるだけでは、本当の意味で生産性にメスを入れることはできません。従業員の勤務実態の把握は、働き方改革を本質的に進める上では欠かせないファクターなのです。

人材業界をリードするパーソルホールディングス (以下、パーソルHD) では、このような勤怠管理の現状を見定め、本質的な働き方改革を推進。グループ会社であるパーソルプロセス&テクノロジー (以下、パーソルP&T) が提供する「MITERAS 仕事可視化」で、健康経営に不可欠な "勤怠実態の把握" を実現しています。同システムは、強固なポリシーのもと運用される Microsoft Azure がその安定稼働を支えています。

働き方改革には、"勤務実態の把握" が欠かせない

社員が申告している労働時間と実際の労働時間は果たして一致しているのか。この疑問を抱きながら働き方改革を進めている企業は、決して少なくないでしょう。時間外労働は、労働基準法改正により月 45 時間、年 360 時間と明確に上限が規制され、違反には罰則が課されることになりました。この環境変化も相まって、法定労働時間を順守することはいまや、企業ブランドの失墜を回避する上で、重大な経営課題となっています。

しかし、単純に時間外労働時間を削減するだけでは、本質的な働き方改革は叶いません。パーソル総合研究所と中央大学の共同研究では、人口動態から予測される将来の就業者数と経済成長率が今後も維持されると仮定した場合、2030 年に 644 万人分の労働力が不足するというシミュレーション結果が報告されました。日本の労働生産人口は今後、確実に減少するのです。パーソルホールディングス株式会社 グループ人事本部の鈴木 光太郎 氏は、働き方改革の本質は、こうした社会の変化に企業を対応させることにあると述べます。

「労働生産人口が減少し、社員の多様性も進む。そうした中でも生産性を維持向上していく、これを目的として働き方改革は進めねばなりません。たとえば、これまでは定時に出社し長時間残業する社員が評価される風潮にありましたが、そうした働き方では子育て中の方やシニアなど、さまざまな事情からフルタイムでは働けない方々がはじき出されかねません。1 人ひとりが自分の価値観やライフスタイルに応じて多様な働き方を選択できる環境をつくらなければ、今後間違いなく、社員の不足や個のパフォーマンス低下などが生じます。旧来的な勤怠マネジメントのままでは、こうした多様な働き方に対応することは困難でしょう。当社では "いま" を勤怠マネジメントの変革期と捉え、本質的な働き方改革に着手しています」(鈴木 氏)。

鈴木 氏の触れた多様性への対応は、パーソルHD においては特に強く求められているといえます。同社は近年、M&A によって数多くの企業を吸収、合併してきました。様々な会社が 1 つに統合された結果、社員と組織風土の多様化が加速しているのです。ここに対応すべく同社が進める 1 つの取り組みが、「MITERAS 仕事可視化」を用いた勤務実態の把握です。「MITERAS 仕事可視化」は、PC のログ情報をベースにして "勤務実態の把握" と "仕事の可視化" を行う、労務の見える化支援ツールです。

  • 「MITERAS 仕事可視化」では、実態に即した労働時間が可視化できるほか、各社員がどの時間にどのような作業をしていたかという仕事内容も可視化することが可能

    「MITERAS 仕事可視化」では、実態に即した労働時間が可視化できるほか、各社員がどの時間にどのような作業をしていたかという仕事内容も可視化することが可能

従来、パーソルHD では自社開発のログ収集ツールを用いて社員の PC ログを収集、これを Excel で集計して勤怠管理システムに突合する形で、労働時間を管理してきました。しかし、このツールでは PC 上の全ての操作はログ化できず、また集計作業にも多くの労力を費やしていたといいます。鈴木 氏は、「旧システムには、ユーザーにとっての "抜け道" がどうしても存在していました。勤怠管理システムの打刻時間とログの時間が合っていても実態は乖離している、そういったケースはゼロでは無かったといえるでしょう。」と語り、働き方を根底から見直すためには、社員にとっての抜け道をなくして勤務実態を正確に把握することが求められたと述べます。

「『MITERAS 仕事可視化』を利用すれば、社員にとっての抜け道を無くすことができます。ただ、こういった勤務実態の把握は、パンドラの箱になりかねません。事業部門には少なからず "予算を達するためには多少労働時間を超過しても仕方がない" "余計なことをしないでほしい" という思いがありますから、勤務実態を可視化することがコンフリクトの原因にもなり得るのです。ですが、勇気をもってこの箱を開かなければ、根本的な解決は果たせないでしょう。当社では現在、グループ全体で『MITERAS 仕事可視化』を採用して "勤務実態の把握" に取り組むことを決定し、段階的ではありますがこれを進めています」(鈴木 氏)。

「MITERAS 仕事可視化」のように "勤務実態の把握" を支援するツールは、市場に数多く存在します。同社が様々なツールの中から「MITERAS 仕事可視化」を選択した理由は、どういった点にあったのでしょうか。鈴木 氏はこう説明します。

「多くのツールが人事会計部門での利用を前提にして作られている中、『MITERAS 仕事可視化』は、事業部門でも有効活用できるというユニークな特徴がありました。勤務の実情を把握してこれをもとに戦略を練る、ここまでは他のツールでも進めることができるでしょう。ですが、策定した戦略を具体化するのは、事業部門です。そして戦略の実践にあたっては、事業部門のマネジャーが、社員がどのような仕事にどれほど時間を要しているのかをしっかり把握していることが前提として求められます。いくつかの仕事可視化ツールを比較検討したものの、戦略策定を支援するだけでなく、事業部門が戦略を実践する上で必要な "仕事の可視化" まで一気通貫で支援する製品は、私の知る限り、検討当時には『MITERAS 仕事可視化』以外にありませんでした」(鈴木 氏)。

「MITERAS 仕事可視化」の持つ "唯一性" を、Microsoft Azure が支える

勤怠実態だけでなく仕事内容まで可視化できる。鈴木 氏も評価した「MITERAS 仕事可視化」の有する "唯一性" は、市場にまだ類似製品が存在しないということが大きなアドバンテージとなります。「MITERAS 仕事可視化」の提供ベンダーであるパーソルプロセス&テクノロジー株式会社 システムソリューション事業部の太田 誠 氏は、パブリック クラウドをサービス基盤に採用することで、2016 年という早期より同ツールを提供していること、そしてこれによって先の "唯一性" が得られたことを明かします。

「生産年齢人口の減少、法改正への対応など、人材にまつわる経営課題は山積みです。これらを解決するにあたり、近い将来で "仕事の可視化" を支援するツールが必要になるだろうと考えていました。これを見定めて当社は 2016 年に『MITERAS 仕事可視化』の開発を決定し、同年にはサービスを開始させています。Microsoft Azure が有するスケーラビリティや PaaS を活用することで、開発決定からリリースまでのリード タイムを最小化できたと考えています。これが結果的に、"唯一性" という『MITERAS 仕事可視化』の強みを生み出したといえるでしょう」(太田 氏)。

また、パーソルHD が「MITERAS 仕事可視化」を採用したのには、前述のマネジメント観点以外にも理由があります。鈴木 氏は「テレワークを行う社員の勤務が把握できることも大きなポイントでした」と述べ、こう続けます。

「『MITERAS 仕事可視化』はクラウドで提供されるため、インターネットを経由して、テレワーカーの勤務状況もリアルタイムで管理できます。社員の多様化が進む中では、物理的に離れた場所で勤務する従業員も適切にマネジメントせねばなりません。『MITERAS 仕事可視化』がテレワーク対応していたことは大きなメリットだといえました」(鈴木 氏)。

  • パーソルホールディングス株式会社 鈴木 光太郎 氏、パーソルプロセス&テクノロジー株式会社 太田 誠 氏1
  • "唯一性" や "テレワーク対応" が評価され、「MITERAS 仕事可視化」はサービス開始からわずかな期間ながら、東急ストアやレオパレス21 など、40 社以上にまで導入実績を増やしている。実際に導入企業からは、労働時間の削減で成果が上がったという声が寄せられている

    "唯一性" や "テレワーク対応" が評価され、「MITERAS 仕事可視化」はサービス開始からわずかな期間ながら、東急ストアやレオパレス21 など、40 社以上にまで導入実績を増やしている。実際に導入企業からは、労働時間の削減で成果が上がったという声が寄せられている

さらに、「MITERAS 仕事可視化」はセキュリティについても高水準な対策を講じています。同ツールでは社員番号や業務情報など個人に関わる様々な情報が取り扱わるため、サービス基盤にも当然、高い水準のセキュリティが求められます。この点について太田 氏は、「マイクロソフトには国内でもっとも早く CS ゴールドマーク (※) を取得したという実績がありますから、守るべき情報を十分なセキュリティ水準のもとで取り扱うことが可能です。」と述べました。

※日本セキュリティ監査協会JASA-クラウドセキュリティ推進協議会が策定したクラウド情報セキュリティ監査基準による監査、認定を行い、サービスのセキュリティが、国際的な基準 (ISO/IEC 27017) で求められる水準であることを示す認証

  • 2019 年現在の、「MITERAS 仕事可視化」のアーキテクチャ設計。PaaS を積極的に利用したサーバー レス設計により、早期開発だけでなくアップデートに要するリード タイムの短期化も可能にしている。また、サービス基盤からクライアントへ向けた通信をエージェント配付における SAS URL 取得時だけに制限するなど、セキュリティ面についてもアーキテクチャ レベルで配慮がなされている

    2019 年現在の、「MITERAS 仕事可視化」のアーキテクチャ設計。PaaS を積極的に利用したサーバー レス設計により、早期開発だけでなくアップデートに要するリード タイムの短期化も可能にしている。また、サービス基盤からクライアントへ向けた通信をエージェント配付における SAS URL 取得時 (SAS : Shared Access Signature によって Microsoft Azure のストレージ内リソースへのアクセス権を付与する時) だけに制限するなど、セキュリティ面についてもアーキテクチャ レベルで配慮がなされている

" Azure Function や Azure Database for PostgreSQL といった新しい機能もサービス基盤では積極的に取り入れています。Microsoft Azureはサポート ドキュメントが充実しており、新しい機能であっても容易に実装していける点は大きな魅力ですね。"

-太田 誠 氏 : システムソリューション事業部
テクノロジーソリューション統括部 MITERAS部 マネジャー
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社

"仕事の可視化" が社員の意識を変える

既述のとおり、パーソルHD ではグループ全体へ「MITERAS 仕事可視化」を導入することを前提にして、各社への展開が現在進められています。鈴木 氏がパンドラの箱と称したように、同取り組みはグループ内でコンフリクトが発生することも覚悟の上で決定されました。ですが、意外にも真逆の反応が各社から生まれていると同氏は語ります。

「導入が進むにつれて、未導入の企業から "うちにも早く入れてほしい" という声があがるようになりました。これは、先行導入した企業の中から、労働時間を減らしながら業績も伸ばす組織が出はじめたことに起因しています。実は導入当初、こういった効果はすぐには表れないだろうと考えていました。グループ全社の労働時間の実情を知ることが戦略立案には不可欠であり、この "勤務実態の把握" を取り組みの第一の目的に掲げていたからです。戦略立案から実行へとフェーズが移った際に効果は表れるものだと見通していましたから、早期から効果が生まれたことにはいい意味で驚いています」(鈴木 氏)。

仕事というのは、ほとんどの人にとっては早く終わらせたいものです。ではなぜ労働時間は減らないのか、太田 氏はその 1 つの理由として、社員の中にある "これだけのタスクがあってどうやって業務時間を減らせるのか" といった限界意識を挙げます。そして、「MITERAS 仕事可視化」の導入以降こうした意識に変化があったことを、パーソルグループの一員というユーザー目線からこう述べます。

「パーソルP&T は先行導入企業としてかねてよりこのツール利用していますが、作業内容やアプリケーション単位にまで業務を落とし込んでマネジメントするという文化が各チームで浸透しつつあります。驚くべきは、自然発生的にこうした動きが生まれているということです。細かな作業にまで分解して個々人の仕事が可視化されたこと、そしてこれが "労働時間を減らせるかもしれない" という気づきになったことが理由でしょう。パーソルグループは、現場社員が課題意識をもって積極的に業務に臨むというボトムアップの文化が強い企業ですから、ツールの有用性が周知されれば、各社での活用も一気に進んでいくでしょう」(太田 氏)。

もちろん、こういった事業部門独自の工夫による生産性向上には、限界があるものです。鈴木 氏が第一の目的に掲げる "勤務実態の把握" とこれによる戦略策定は、今後パーソルHD の働き方をより発展させていく上で不可欠といえるでしょう。同氏は、戦略を策定し、これを戦術に変えて、「MITERAS 仕事可視化」が備える "仕事の可視化" 機能も活用しながら本質的な働き方改革を進めていきたいと意気込みます。

「現在、グループ企業のうち約 30 社、テレワーカーを含む約 2 万人の社員が『MITERAS 仕事可視化』を利用しています。グループ全社への導入にはまだ至っていませんが、近い将来でこれを完了させ、働き方改革の戦略を策定していきます。これによって、多様な人材すべてが活躍できるような業務環境にしていけると考えています。また、そこでは『MITERAS 仕事可視化』の備える "仕事の可視化" 機能も、より有効に活用されることでしょう」(鈴木 氏)。

  • パーソルHD では今後、グループ全体の勤務実態をまず可視化し、これをもとに働き方を変えていくための戦略を策定していく

    パーソルHD では今後、グループ全体の勤務実態をまず可視化し、これをもとに働き方を変えていくための戦略を策定していく

"『MITERAS 仕事可視化』によって、マネジャーと社員との間で生産性に関するコミュニケーションが活性化したように思います。個人だけでなく組織全体が生産性への意識を高めることで、新しい働き方が推進していけると考えています。"

-鈴木 光太郎 氏: グループ人事本部 人事企画部 人事労務室 室長
パーソル ホールディングス株式会社

"勤務実態の把握" をもった戦略を実行して、生産性をいっそう引き上げていく

多様化は、働き方が過渡期を迎えている今日、対応 "しなければならないもの" としてネガティブにも捉えられがちです。ですが、社員の様々な能力を複合することでこれまでになかったような新たなイノベーションが生み出せる、この観点において、多様性は企業の大きな武器となり得ます。

「個に閉じた業務では生産性向上には限界があります。能力や考え方、場合によっては国籍も異なる人同士が一致団結してチームとして生産性を最大化していくことが、これからの社会では求められるのです。戦略の策定にあたっては、各社員の仕事が他の人材、組織のパフォーマンスにどのような影響を与えているのかといった相関性もみて、チームとして生産性を高めていくことのできる戦術を立案していきたいと考えています。そうすれば、まだまだ持続的成長を果たしていけるはずです」(鈴木 氏)。

「現在はまだ、『MITERAS 仕事可視化』単体ではこうした相関分析などは行えません。ただ、こうしたしくみを実装するのに必要な機能拡張の機能を、Microsoft Azure は PaaS として数多く備えています。ログ情報を分析して相関性を導き出したり業務のアドバイスを行ったりといったしくみも、近い将来で実装できるでしょう。お客様のニーズを常に見定め、クラウドならではの俊敏性を活用して早期にサービスへ反映することで、各社様の働き方を支援し続けたいと考えています」(太田 氏)。

生産年齢人口の減少が確実な未来としてせまるいま、社会制度の変化をきっかけとして旧来の働き方や固定観念を変革することが求められています。本質的な働き方改革へ向けたパーソルHD の取り組みが、今後、社会全体の働き方をリードするモデルケースとなることが期待されます。

  • パーソルホールディングス株式会社 鈴木 光太郎 氏、パーソルプロセス&テクノロジー株式会社 太田 誠 氏2

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