仮想通貨ブームによってブロックチェーンという技術は広く世の中に浸透しました。これをきっかけとし、ブロックチェーンを用いたトークン エコノミー (仮想通貨による経済圏) も、その認知を広めています。これらの技術は社会を変革する可能性を持つといわれていますが、多くの方にとって、ブロックチェーンやトークン エコノミーは "証券取引" というイメージに閉じてしまっているのではないでしょうか。ブロックチェーン、トークン エコノミーは本来、証券取引に留まることなくあらゆる分野で適用されるべき技術です。そしてこの可能性が今、様々な領域で花開き始めています。一例として挙げられるのが、位置情報やゲームとの連携です。

トークン エコノミーでは、トークンを得ることを動機付けにして、人に特定の活動を喚起させることができます。ここに着目し、"リアル (位置情報)" と "バーチャル (ゲーム)" を融合させた取り組みを進めているのが、リアルワールドゲームス (以下、RWG) です。RWG では現在、高い市場価値を持つ地図データを創り出すための取り組みに取り組んでいます。位置情報ゲーム「ビットにゃんたーず」をプラットフォームに、"出歩く"、"スポット情報をアップする" といったユーザーの行動に応じてトークンを発行する。こうした仕組みによって、地図データの創出を消費者とともに進めているのです。同サービスの核となるブロックチェーン基盤は、Microsoft Azure (以下、Azure) が、セキュアで安定した稼働を支えています。

トークン エコノミーが社会を変える

貨幣の価値は、発行数や取引数、そして貨幣を得るために費やされたコスト (工数) によって左右されます。従って、これらが第三者によって記録されなければ価値を持つ「代替貨幣」を生み出すことはできません。なぜブロックチェーンが今日注目を集めているかというと、同技術の持つ "偽造や改ざんがきわめて困難な形で情報を記録、保管できる" という特徴が、代替貨幣をやり取りする場として極めて有効に機能するからです。事実、ブロックチェーンによって、トークンと呼ばれる価値を持った代替貨幣が生まれ、またこれを利用した新たな経済圏であるトークン エコノミーが既に形成されています。

トークン エコノミーでは、トークンを得るのに費やされる工数、コストを下にしたマイニングが、代替貨幣としての価値を決めます。マイニングという活動が持つ価値が、トークンの貨幣としての交換価値を支えるのです。このトークン エコノミーは、社会にどのような変化をもたらすのでしょうか。"リアル" と "ゲーム"、そしてブロックチェーンをかけ合わせたサービスを展開するリアルワールドゲームス株式会社 代表取締役社長の清古 貴史 氏は、次のように語ります。

「トークンは貨幣との交換価値を持ちます。ユーザーにとっては、トークンを得られることが、マイニングに該当する活動を行う動機となります。"正当な対価がある活動" としてマイニングの内容を設計すれば、特定の活動を活性化させることができるわけです。これは、社会をよりよいものにする大きな原動力になり得ます。例えば、当社では『ビットにゃんたーず』という位置情報ゲームを提供しており、ユーザーの "出歩く" という活動に価値を与えることでこれを活性化させています。"出歩く" という活動だけをみても、これが増えることは健康課題の解消や経済の活性化などに繋がります。このように特定の活動を促すことのできるトークン エコノミーは、社会を変える力を有していると言えるでしょう」(清古 氏)。

いかにして、"出歩く" という活動に価値を持たせるか

「ビットにゃんたーず」は、ユーザーが "地図に独自のスポット情報を追加する" ことで報酬を得ることができる位置情報ゲームです。ユーザーはゲーム内に用意された "歩く目標物(ネコスポット)” と現実世界にあるスポットとを照合、撮影し、その写真を紹介文とともに申請します。これが審査を通れば、ネコスポットに申請したスポット情報が追加され、ゲーム内ポイントである「ネコイン」が手に入ります。「ネコイン」はトークン エコノミーで取り扱われるトークン「ARUK」へ変換可能なため、これを増やすことが 1 つの動機となって "出歩く" というユーザーの活動が喚起されるわけです。

  • 「ビットにゃんたーず」は2018 年よりフィールド テストを重ね、2019 年 3 月に正式にリリース予定。
  • ユーザーは同サービスにスポット情報を申請することで、トークンである「ARUK」を得ることができる。
  • リアルワールドゲームスではトークン入手の為に移動して体脂肪を燃焼することを「Proof of Walk」と呼び、これを切り口に、エコで健康的な仮想通貨を流通させることを目指している
  • 「ビットにゃんたーず」は2018 年よりフィールド テストを重ね、2019 年 3 月に正式にリリース予定。ユーザーは同サービスにスポット情報を申請することで、トークンである「ARUK」を得ることができる。リアルワールドゲームスではトークン入手の為に移動して体脂肪を燃焼することを「Proof of Walk」と呼び、これを切り口に、エコで健康的な仮想通貨を流通させることを目指している

ただ、「ARUK」が代替貨幣としての価値を持たないのであれば、ユーザーはこれを集めようとはしません。RWG ではどのようにして、「ARUK」の価値を高めているのでしょうか。

世の中には数多くの地図データが存在しています。しかし、その多くは計測車両でサーチした情報を基に作成されたものです。徒歩移動で得た情報を基とする地図データは、世界を見渡してもほんの僅かしか存在しません。

ユーザーが自らの情報を持ち寄って最新の地図を創っていく、これによってユーザーが徒歩で得た情報に基づく地図が完成していく――「ビットにゃんたーず」でのユーザー行動は、世の中に数少ない "徒歩に最適な、最新の地図データ" を創りあげることにつながります。これが、「ARUK」の価値を支えているのです。

清古 氏は、「『ビットにゃんたーず』で作成された地図データは、観光をはじめとする様々な産業において高い価値を持ちます。当社では、これを作成するための正当な対価として『ARUK』を用意することで、"出歩く" という活動に価値を持たせました。私たちは事業会社ですので、地図データを提供して収益を上げていくことも勿論目指しています。ただ、運動不足は世界的な社会問題となっていますから、『ビットにゃんたーず』をきっかけにして、運動に無関心な方々が積極的に外を出歩くような社会にしていきたいという思いもありました。」と述べます。実際、RWG は 2018 年にケイスリー株式会社と業務提携の下で官民連携による「健康増進プログラム」を推進するなど、社会課題の解消に向けた活動も積極的に取り組んでいます。

早期からのブロックチェーンへの取り組みやサービスの信頼性が、Microsoft Azure 採用の決め手に

マイニングに該当する活動に価値を持たせられるかどうか、これによってトークンの持つ価値は大きく上下します。しかし、他にもトークンの価値を引き下げる要因があります。インシデントの発生です。

巨額の不正流出事件が相次いで起こったことで、近年、仮想通貨に対する社会の信頼が揺らぎつつあります。トークンの価値を保ち続ける上では、セキュアにこれを流通させ続けることが前提となるのです。

RWG ではゲーム内コインをトークンへ変換するためのブロックチェーン基盤を Azure で構築しています。この背景には、先のセキュリティへの配慮があったと言います。リアルワールドゲームス株式会社 取締役で CTO も務める岡部 典孝 氏は、詳細をこう説明します。

「ブロックチェーンの基盤は、セキュアかつ安定してトークンへ変換できることが何よりも求められます。Azure はエンタープライズ用途の実績が多いため、市場にあるサービスの中でも特に信頼性に優れているだろうと期待しました。また、マイクロソフトはブロックチェーンへの対応をいち早く進めており、開発用のテンプレートも随時拡充しています。実際に私たちがこれを利用した時も、イーサリアムに対応した機能が用意されていることで構築した環境を簡単にデプロイできました。高い信頼性を持ち、ブロックチェーンに対する強力なコミットもある。Azure の有するこうした強みは、当社にとって非常に心強かったのです」(岡部 氏)。

  • リアルワールドゲームス株式会社 清古 貴史 氏、岡部 典孝 氏1

こうしたプロダクトとしての優位性以外にも、RWG が Azure を選定した理由はあります。RWG は 2018 年、世界最大級のグローバルピッチコンテスト・カンファレンス「スタートアップワールドカップ」の日本最終予選に登壇し、見事マイクロソフト賞を受賞しています。そして、これをきっかけにスタートしたマイクロソフトとのパートナーシップが、導入の大きな決め手となったのです。

「Azure の一番の優位性は何かと問われれば、それは手厚いサポートだと言えます。例えば導入を決定する前、マイクロソフトより、基盤に必要な機能やアーキテクチャ設計を議論して POC まで行うハックフェスを実施頂きました。クラウド ベンダーは比較的ドライな企業が多く、普通は導入前にここまでしてくれません。マイクロソフトの場合、プロダクトを提供するだけでなく我々の事業やビジョンにまで踏み込んで一緒にその実現を支えてくれるのです。マイクロソフトと協働すれば私たちがしたいことを確実に実現できる、そんな手応えを感じました」(岡部 氏)。

「特に期待したのは、マイクロソフトの持つブロックチェーンに関する深い知見です。当社は位置情報技術とゲーム技術を強みとして創業したため、この双方については紛れもないプロフェッショナルだと言えます。ただ、ブロックチェーンについては、"新しい技術" ということもあって技術の習得から開始せねばなりませんでした。マイクロソフトはブロックチェーンの研究開発に積極的に投資しています。そんな同社のサポートを得ることで、ビジョンの具体化に欠けていたピースを埋めることができたのです。結果として、きわめて信頼性の高い基盤が用意できました」(清古 氏)。

  • RWG では、マイクロソフトと協働して「ビットにゃんたーず」のブロックチェーン基盤を構築

    RWG では、マイクロソフトと協働して「ビットにゃんたーず」のブロックチェーン基盤を構築。岡部 氏は、「ブロックチェーン関連のインシデントの多くは、特定のサーバーで保持していた『秘密鍵』の漏洩が原因です。サーバーの存在自体がセキュリティ リスクになると考え、我々の環境では可能な限り仮想マシンを使用しないサーバー レスな設計を採っています。 NoSQL の Azure CosmosDB や 特定処理を行う Azure Functions など、こうした設計に有効 な PaaS を数多く備えることも Azure の利点です。」と、アーキテクチャの特徴を述べた

"Azure上にはブロックチェーン関連のテンプレートが充実しており、これを利用することで仮想マシンの台数を限りなく少なくすることができました。日々こうしたテンプレートが増えていますから、近い将来サーバー レスを実現できると考えています。"

-岡部 典孝 氏: 取締役CTO
リアルワールドゲームス株式会社

世界をフィールドに、"徒歩に最適な、最新の地図データ" を創りあげていく

RWG は、2018 年 9 月に「ビットにゃんたーず」のフィールド テストを開始し、同年 12 月にはイーサリアムのメイン ネットで「ARUK」を発行。2019 年 3 月に「ビットにゃんたーず」の正式リリースを予定しています。

「ARUK」を得るためのマイニングが正当な対価を持ち、トークンを支えるブロックチェーン基盤も高い信頼性が確立されている。「ビットにゃんたーず」の有するこうした強みは、市場から高く評価されています。清古 氏と岡部 氏は、笑顔でこう語ります。

「『ビットにゃんたーず』では各地域の道しるべとなる情報が数 10m 間隔で掲載されており、ここまで細かな粒度を有する地図データはあまり例が無いと思います。正式リリース以降ユーザーは着実に増えていますので、スポット情報は今後より充実していくでしょう。こうした "徒歩に最適な、最新の地図データ" が注目され、オープン テストから今に至るまでに観光産業など多くの企業、自治体から問い合わせを頂いています。位置情報ゲームは競争の激しい市場ですが、お客様の反響から、日本だけでなく世界でも戦えるサービスにしていけると感じています」(清古 氏)。

"お客様から信頼を得る、そしてサービスを世界に広げていく――これは、"信頼されるサービス" でなければ成し得ないと考えています。基盤やサポートという形でサービスの後ろ側にマイクロソフトがいることは、この信頼性を得る意味でも有効だと思います。"

-清古 貴史 氏: 代表取締役社長
リアルワールドゲームス株式会社

「現在、ゲーム基盤と位置情報基盤は同一のプラットフォームで構築しています。ただ、今後当社の位置情報をお客様へ提供していく上ではプラットフォームを分離した方が良いと考えています。近いうちにこの基盤を Azure へ移行する予定です。位置情報基盤には、お客様のサービスと API で連携する仕組みが必要になりますが、Azure API Management などを利用すれば、こうした環境も早期に用意できると考えています」(岡部 氏)。

清古 氏も述べたように、「ビットにゃんたーず」は 2019 年内で世界へとそのサービス領域を広げることが計画されています。サービスを利用するユーザーが増えるに連れて、"徒歩に最適な、最新の地図データ" を活用した取り組みや人々の "出歩く" という活動が活性化していくことでしょう。位置情報とゲーム、ブロックチェーンを組み合わせた RWG の試みは、様々な社会課題や企業ニーズに応える可能性を秘めています。

  • リアルワールドゲームス株式会社 清古 貴史 氏、岡部 典孝 氏2

[PR]提供:日本マイクロソフト