「顧客に価値を提供し続ける」。多くの企業に共通するこの使命は、長期的な経営戦略なしでは実現が困難です。しかし、市場や経営環境が目まぐるしく変わる今日においては、変化に対応する「柔軟性」を持って経営戦略を進めることが強く求められます。これは、経営戦略上で重要なウェイトを占める "攻めの IT" を進めるうえでも同様です。重電インフラの建設保守ソリューションを展開する東京エネシスは、時勢を見据えた IT 戦略を進めることで、過渡期を迎えるエネルギー産業の中で高いプレゼンスを堅持し続けている 1 社です。

SAP ERP の本番稼動環境としてクラウドを検討。クラウドは信頼性においてもオンプレミスを凌駕している

2016 年 4 月にスタートした電力小売全面自由化を受け、エネルギー産業は今、過渡期を迎えています。新規プレイヤーの市場参入により、企業間の競争は激化。既存プレイヤーには従来以上の価値を提供していくことが強く求められているのです。これを見据え、東京エネシスでは 2015 年より、2 つの軸のもとで IT 戦略を進めてきました。株式会社東京エネシス 情報システム部 部長 栗原 幸宏 氏は次のように説明します。

「従来のサービス展開のままでは、いずれ顧客要求に応えることが難しくなります。"サービス品質向上、工事高度化" を実現するために、当社では IoT やドローンなどの先進 IT を活用した POC、実証実験を進めています。当然、こうした取り組みは予算、人員といった原資を必要とします。これを捻出すべく、現在、オンプレミスにあるレガシー システムの最適化にも取り組んでいます。先進 IT の活用と既存 IT の最適化、この 2 つを戦略的に進めるために、2015 年には 10 か年のロードマップを策定しました」(栗原 氏)。

IT 技術は目ざましい速度で発展しています。たった 3 年先であっても、未来の IT を予測することは容易ではありません。栗原 氏は「単に計画どおりものごとを進めるのではなく、時勢を常にリサーチし、新たな技術、知見を取り入れながら取り組んでいます」と、実行の方針を説明。これは同社が進める既存 IT の最適化においても見て取ることができます。

東京エネシスが旧来の IT 基盤で抱えていた課題は、機器更新やメンテナンスに要する「コスト負荷」、システム老朽化に伴う「性能減」、経営スピードに IT が追従するための「拡張性の確保」など、多くが「オンプレミスであること」を起因とするものでした。これを解消すべく、東京エネシスは現在、マイクロソフトのクラウド サービス Microsoft Azure へのシステム移行を進めています。しかし、当初のロードマップには、クラウドの活用について計画されていませんでした。株式会社東京エネシス 情報システム部 マネージャー 松橋 幸太郎 氏は次のように語ります。

「仮想化環境を拡張して集積率を高めるなど、当初はオンプレミスを踏襲しながらレガシー システムの最適化を進めることを計画していました。というのも、10 か年計画を策定した 2014 年、世の中にはまだエンタープライズ用途のクラウド実績が少なく、信頼性に懸念が残っていたのです。しかし、わずか数年を経た今、その評価は逆転しています。限られた人員で管理するオンプレミスよりも、堅牢なデータセンターのもと専任の技術者によって運用されるクラウドの方が高い信頼性が期待できるようになったのです。これは技術の発展もさることながら、ユーザーである我々の理解が進んだことも大きいでしょう。計画に固執するあまりに本質たる『経営戦略の実現』を見失っては、本末転倒です。最善策で進めるべきだと考え、2016 年の頭にて、クラウドの活用を方針に定めました」(松橋 氏)。

"わずか数年先であっても、IT のありようを推測することは困難です。10 か年という長期ロードマップを進める場合、物理的な制約があるオンプレミスを利用し続けることにはもはや限界があると考えました"
-マネージャー 松橋 幸太郎 氏:情報システム部 株式会社東京エネシス

データセンターを見学し、Azure の厳格な運用ポリシーを実感。重要なデータを預けるに足ると判断し、採用を決定

先の方針を決定後、東京エネシスでは試用も兼ねて、いくつかのシステムを対象とし、DR 用途でクラウドの利用を開始。サーバー立ち上げの迅速性、優れた拡張性といった有効性が認められた同年夏、初の本番環境のクラウド適用事例として、SAP ERP のクラウド移行を検討します。

10 か年計画の策定時、同システムはハードウェアが EOSL を迎える 2016 年度にて機器更新が予定されていました。しかし、株式会社東京エネシス 情報システム部 情報システムグループ 主任 堂園 真人 氏は、保守契約を 1 年延長してでもクラウド化を進めるべきだったと説明します。

「機器の老朽化が、性能劣化やディスク障害による動作不安定を引き起こしていました。障害時には、データセンターの往復やディスクの差し替え、保守用部材の調達など、丸 1 日の作業を要するため、運用工数も増える一方です。たとえ機器を更新したとして、数年後には同様の状況になることが推測されます。当社の IT 部門は決して人数が多いわけではありません。SAP ERP は当社において『止まることが許されないシステム』であり、限られた人員で安定稼動を継続し、なおかつ利便性を高めていくには、クラウド化を進めることが不可欠でした」(堂園 氏)。

東京エネシスでは、MM (購買管理) や SD (販売管理)、FI (財務会計) といった基本モジュールに加え、HR (人事管理)、PS (プロジェクト管理) など、SAP ERP が備えるほぼ全てのモジュールを使用しています。施工、経理だけでなく、人事や営業などあらゆる部門の従業員が利用する同システムは、堂園 氏も触れたように「止まることが許されないシステム」だといえました。

しかし、松橋 氏は「5 年前に SAP ERP の導入を支援いただいたベンダーに問い合わせたものの、ミッション クリティカル性を鑑みるとオンプレミスで運用すべきだという回答でした」と、容易にはこれを進めることがかなわなかったと説明。続けて、そうした状況の中で Azure の採用に至った理由について、次のように明かします。

「拡張性に富んだクラウドは、既存 IT の最適化だけでなく先進 IT の活用においても有効です。本番稼動環境としてのクラウド適用は、ノウハウを蓄積する意味でも早期に果たしたいと考え、検討を続けました。そんな折、電通国際情報サービス (ISID) が主催する『SAP on Azure』のセミナーを受講したところ、ミッション クリティカル性が高い用途の採用事例が紹介されていました。Azure を活用すればクラウド活用を進められると期待して、ISID へ相談を行いました」(松橋 氏)。

東京エネシスでは以下の 3 点を主要件に、ISID へ可否に関する相談を実施。そしてこれらの要件がクリアになった 2016 年 12 月、SAP ERP 環境の Azure 移行を決定します。

1.稼動性 停止してはならないシステムゆえ、事業者の定期メンテナンスが存在する中であっても 365 日 24 時間の稼動を担保しなければならない
2.性能 全従業員が利用するため、性能低下は全社規模で業務に悪影響を及ぼす。ネットワーク設計を工夫するなど、性能の担保が必要
3.セキュリティ 外部攻撃を遮断するだけでなく、内部オペレーションの徹底により従業員の個人情報や顧客情報が堅牢に守られることを確認しなければならない

マイクロソフトと SAP on Azure のパートナーシップを締結する ISID は、Azure における SAP HANA の動作検証を国内で初めて行うなど、多くの実績を有しています。ISID 側でプロジェクトに携わった 1 人である、株式会社電通国際情報サービス 小枝 康二 氏は、SAP ERP を Azure 上で運用するメリットについて、次のように説明します。

「まず性能については、これまでの実績からオンプレミスと同等以上の成果を出すことができると考えています。今回のケースでも事前にマイクロソフトと共同で POC を行いましたが、そこではオンプレミスよりも性能が向上することを示すことができました。次に稼動性ですが、クラウド サービスゆえにメンテナンスによる停止はどうしても発生します。しかし、Azure は東日本と西日本にデータセンターを有しているため、物理的に冗長構成をとり本番機がメンテナンスで稼動しないタイミングにスリープ環境へ切り替えることで、SLA の担保が可能です」(小枝 氏)。

また、セキュリティについても、Azure は高く評価されました。マイクロソフトは外部認証の「CS ゴールドマーク」を国内で初めて取得した事業者であり、世界有数のセキュリティ水準を備えています。セキュリティに関する情報は、なかなかその実態をつかむのが難しいものです。そうした中、東京エネシスでは Azure の国内データセンターを見学した際、まさにこの高い水準を実感したといいます。

「守秘義務があるため詳細をお話することはできませんが、データセンターの見学で第一に感じたのは、『太い筋のとおった運用ポリシーが実践されている』ということです。稼動性やセキュリティを担保するには、厳格な運用ポリシーを定め、そしてそれを実践し続けることが求められます。見学ツアーではまさに、厳密な運用ポリシーが徹底されていることを見て取ることができました。オンプレミスでの運用よりもはるかに高い信頼性のもとサービスを提供でき、なおかつ、コスト、性能、拡張性といった従来の課題もクリアできる。今後の IT 戦略において Azure の活用は間違いがない判断だと確信し、採用を決定しました」(栗原 氏)。

"Azure のデータセンターを見学した際、セキュリティと稼動性を堅持するために厳格なポリシーのもとで運用管理されていることを実感しました。十分な信頼性を有していると判断し、採用を決定しました"
-部長 栗原 幸宏 氏:情報システム部 株式会社東京エネシス

運用コストは 5 年間で約 30% 減を見通す。パフォーマンスも向上し、業務効率化を実現

東京エネシスは 2017 年 8 月より、Azure 上での SAP ERP を稼動開始しています。採用決定から半年ほどでサービス インを果たした同取り組みは、ERP 環境の構築というプロジェクト規模を考えた場合、スピード感のある構築といえるでしょう。事実、過去の SAP ERP 関連のプロジェクトと比較するときわめてスピーディにプロジェクトを進めることができたと、堂園 氏は評価します。

「5 年前の SAP ERP 環境構築やその後の定期開発など、これまでにいくつか SAP 関連のプロジェクトを進めてきましたが、どれもスムーズに進行したとはいえない状況でした。今回、ハードウェアの EOSL が控えていたため 8 月のサービス インをターゲットに定めて作業を開始しましたが、経験上、後ろにずれることを覚悟していました。ですが結果として、予定どおりに移行を完了することができました。当社で行わなければならないことやその期限などの交通整理を ISID に綿密に実施いただいたこと、そして ISID 側の作業を遅延なく進行いただけたことが、大きな要因と考えています」(堂園 氏)。

このプロジェクトをリードしたのは、株式会社ISID-AO 青柳 光輝 氏です。同氏は、迅速かつスムーズに作業を進めることができた背景には、マイクロソフトによる支援の存在もあったと明かします。

「これまで数多くの SAP 案件に携わってきたため、アプリケーション構築においては、不安はありませんでした。ただクラウドの場合、どうしてもプラットフォームとの相性を理由に作業が難航することがあります。今回マイクロソフトには、仮想マシンだけでなく OS のレイヤーからも、迅速かつていねいにサポートいただきました。例を挙げると、並行稼動のフェーズで名前解決関連の不具合が発生したのですが、Azure 以外のマイクロソフト製品も含めワン ストップでサポートいただいたおかげでスムーズにこれを解消することができました。当社の SAP に関する知見、マイクロソフトの支援の双方が機能し、結果として短期間でのクラウド移行が実現できたと考えています」(青柳 氏)。

"仮にオンプレミスで運用上の障害が発生する場合、データセンターに移動して問題を特定する、場合によってはものを調達する…と作業している間にすぐ 1 日が過ぎてしまいます。Azure 移行はこうした運用上のトラブルを迅速に解消できる面でも有効だと感じます"
-主任 堂園 真人 氏:情報システム部 情報システムグループ 株式会社東京エネシス

稼動開始からまだ間もないながら、クラウド移行に期待したコスト、性能といった効果も既に現れているといいます。「現在の運用コストから計算した数字ですが、オンプレミスと比較すると 5 年間で約 30% のコストを削減できる見通しです。これは、Azure の移行に際して SAP ERP の DBMS に利用している SQL Server のライセンスを旧環境のライセンスのままで利用可能な点も大きく貢献しているでしょう。性能も POC どおりのパフォーマンスが出ており、ユーザーからは『業務効率が上がった』とうれしい声が届いています」と、松橋 氏は笑顔で語りました。

フル クラウド化を見据え、攻めの IT を進めていく

ミッション クリティカルなシステムの本番環境にクラウドを適用した今回の取り組みは、東京エネシスが今後進める IT 戦略に好影響をもたらすことでしょう。その範囲は既存 IT の最適化に留まりません。先に栗原 氏が触れたように、スケーラビリティが特に有効に機能する「先進 IT の活用」という領域においても、同社は Azure の活用を方針に掲げています。

ここに向け、周辺システムの Azure 移行やネットワーク基盤の強化などに今後取り組んでいくと、栗原 氏は語ります。

「先進 IT についてはまだ研究開発段階ですが、これを本格的にサービス化する場合には『いかにして既存システムと連携するか』が鍵となります。その際、物理リソースに制限があるオンプレミスにシステムが残っていては、先進 IT の可能性を阻害してしまうでしょう。段階的にはなりますが、フル クラウド化をゴールとし、オンプレミスにあるシステムを今後、順次 Azure 上へ移行していく予定です。これと並行してネットワークやクライアント環境も整備を進め、IoT、ビッグ データ、AI といった先進 IT の本格活用、ひいては当社サービスの品質向上に、IT 部門としてアプローチしていきます」(栗原 氏)。

市場環境が大きく変化する中、経営戦略に則った IT 投資を進めることで、業界での存在感を強め続けている東京エネシス。そう遠くない未来に提供されるであろう従来以上に高度化された同社のサービスに、今から期待が高まります。

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