東京ガス グループにおける「安心、安全、信頼」のブランドを ICT の側面から支える、東京ガスiネット株式会社。グループの中核である東京ガスは現在、2016 年 4 月より開始された電力自由化への事業参入や、2017 年 4 月の都市ガス自由化に向けた取り組みなど、新たな挑戦を行っています。東京ガスiネット株式会社もまた同様に、ICT 分野におけるチャレンジとして近年、開発検証環境へ向けたクラウド活用を推進しています。

東京ガスiネット株式会社

旧来のオンプレミス環境は、プロジェクト開始までにリードタイムが発生する、急遽必要となったリソースが準備できないといった、アジリティ面の課題を抱えていました。この課題を解消すべく、同社は 2014 年より開発検証基盤として Microsoft Azure の活用を開始。エンタープライズ レベルのセキュリティとアジリティの双方が担保できる基盤を獲得しました。各システムの特徴や用途に応じて複数ベンダーのサービスを使い分ける「マルチ クラウド」を基本としていますが、汎用用途として使用されている Azure の稼動インスタンス数は、現時点で 130 にまで達しています。これまでの利用を通じて実感した確かな有効性を評価し、同社では今後、開発検証環境だけでなく B to C サービスの本番機としても Azure の活用を検討しています。

プロファイル

世界最大規模の都市ガス会社である東京ガス。そのグループ唯一の IT 企業として、東京ガス グループの「安心、安全、信頼」というブランド イメージを ICT の側面から支えるのが、東京ガスiネット株式会社です。新たに電力事業にも参入し、総合エネルギー企業として動き始めた東京ガス。その挑戦を支えるべく、東京ガスiネット株式会社でもまた、Azure の活用といったチャレンジを続けていきます。

導入の背景とねらい
旧態依然な環境からの脱却。アジリティを確保すべく、開発検証環境へのクラウド活用を検討

東京ガスの情報通信部門が独立する形で 1987 年に設立された、東京ガスiネット株式会社 (以下、東京ガスiネット)。同社は、東京ガス グループが持つ「安心、安全、信頼」というブランドを ICT の側面から支えている企業です。

社会インフラを安定して供給するうえでは、ICT もまた安定して稼動を続ける必要があります。同水準をさらに高めるべく、東京ガスiネットでは技術者トレーニングと開発環境の整備を推進。この取り組みと、東京ガス グループにおける ICT の標準化を担っているのが、東京ガスiネット内にあるアプリ基盤グループです。

東京ガスiネット株式会社 システム技術部 アプリ基盤グループ マネージャー 上田 志雄氏は、同グループの命題について次のように説明します。

東京ガスiネット株式会社
システム技術部
アプリ基盤グループ
マネージャー
上田 志雄 氏

「もともとアプリ基盤グループは、認証や帳票といったグループ内で利用する共通システムの標準化を推進する部署として設置されました。しかし近年、ICT は複雑化の一途をたどっています。当社に求められる技術レベルも日々高まっており、技術者が持つ IT アーキテクトとしての意識と技術力の向上、そしてそれを活かすための環境整備が、システム稼動の安定化における命題となっています。ICT の進化へ追従するには旧態依然としていてはならず、新たなチャレンジによる "攻め" で培った知見を、標準化という "守り" にフィードバックすることが求められるのです。そこで近年は、開発検証環境へのクラウド活用にも注力してきました」(上田 氏)。

同社の開発検証環境は、きわめて高いレベルのセキュリティと信頼性を求めるため、これまでは仮想サーバーで構築したオンプレミスの基盤上で同環境を運用してきました。しかし、これまでの環境では全体のプロジェクト スピードの向上を図るうえで限界があったといいます。

開発においてはまずサーバーを構築する必要がありますが、オンプレミスの場合そこでの作業量が多く、プロジェクト開始までにリードタイムが発生します。また、物理的なハードウェアの台数が足りていなければこうした作業を開始することすらできず、既に確定済みの年度予算で ICT 資産を調達することから「今日明日での調達」も行えません。企業としてのアジリティを高めるうえでは、まだまだ発展の余地があったのです。

東京ガスiネット株式会社
システム技術部
アプリ基盤グループ
栁瀨 尚史 氏

この点について東京ガスiネット株式会社 システム技術部 アプリ基盤グループ 栁瀨 尚史 氏は、次のように説明します。

「サーバー構築と一口にいっても、基本設計からソフトウェアのインストール、各種設定に至るまで、少なくとも 1 人月は要します。これはプロジェクト開始までのリード タイムという問題に加え、従業員の負荷増加や業務効率の低下も引き起こします。さらにこうした体制は、技術者が年度末に予算申請を行う際、『ある程度のバッファーを確保しなければ』という保守的な思考を生み、結果としてコストの最適化を阻む要因にもなっていたのです。この現状を打開し、企業としてのアジリティを確保すべく、2014 年よりクラウド活用という新たなチャレンジを開始しました」(栁瀨 氏)

システム概要と導入の経緯、構築
エンタープライズ レベルのセキュリティ、信頼性を備えるサービスは限られていた

東京ガスiネットの同取り組みは、すべての開発検証環境におけるクラウド活用を目指すのではなく、まずは「クラウドが本当に有用かどうかを検証する」という観点からスタートしました。

機密性の高いシステムの開発、検証を取り扱う背景から、クラウド サービスには「エンタープライズ レベルのセキュリティと信頼性」が求められます。しかしこの要件のもとで検討を進めたところ、数社しか候補が残らなかったと上田 氏は語ります。

「開発検証環境とはいえ、社会インフラに携わるシステムを扱うわけですから、そこには高いセキュリティと信頼性が求められます。国産のクラウド サービスはその水準に適合するものの、契約体系が『SI サービス』寄りで、コスト面とのバランスが難点でした。一方、開発基盤として実績の多い外資系サービスもありました。しかし、SLA の計算方式についてやメンテナンスの面で問題があるなど、日本のエンタープライズ レベルの用途には適さなかったのです。結果として、数社しか候補が残りませんでした」(上田 氏)。

こうした比較検討の結果、マイクロソフトが提供する Azure を含む限られた製品が候補に残りました。東京ガスiネットはその中でも Azure について、汎用的な用途での利用を目指し、実用へ向けた検証を第一に開始します。

Azure を第一に選んだ理由について、上田 氏はプラットフォームの信頼性と、国内ベンダーと同水準の安心感が期待できた点を挙げます。

「Azure は、マイクロソフトというグローバル レベルの技術力を有する企業のもとで提供されるため、セキュリティと信頼性の面では不安がありませんでした。また外資ベンダーではあるものの、日本の商習慣に合わせた契約体系を敷くほか、日本では特にニーズの高い専用線の提供も外資ベンダーの中では非常に早かったといえます。これらが、国内ベンダーと同水準もしくはそれ以上の安心感を持ってクラウドを利用できるという手応えにつながったのです。オンプレミスの開発検証環境に Windows Server ベースで構築した汎用の環境が多くあったため、スムーズに利用開始できると考えられたのもポイントですね。2014 年から技術者へ個別に紹介し、開発における活用と検証、標準化へ向けた所感のフィードバックを開始しました」(上田 氏)。

さらに栁瀨 氏は、Azure の利点について「当社のシステムの多くは OSS をベースに構築しているため、開発検証環境には当然 OSS との親和性が求められます。マイクロソフトは OSS とかけ離れているイメージがあるかもしれませんが、検討時に .NET のオープン化を発表するなど、事業全体として『オープン化』をひとつのテーマに据えていくことが期待できました。実際に利用する中でも OSS へのサポートが充実していると感じますし、2016 年には Red Hat と Azure が協業するなど、そのテーマは着実に具現化されています。当時はあくまで期待レベルでしたが、今になって考えるとここでの判断は間違っていなかったと考えています」と続けます。

導入ソフトウェアとサービス

  • Microsoft Azure
    - Virtual Machine
    - DevTest Labs

導入メリット

  • エンタープライズ レベルのセキュリティと信頼性を備える Azure により、開発検証環境におけるクラウド活用を推し進めることができた

  • これまで 1 人月を要していたサーバーの構築作業がわずか 5 分で完結。スケーラビリティも持つ Azure を活用することで、開発検証環境のアジリティが向上した

  • インスタンス数やリソースが青天井になりがちなクラウド活用について、Azure DevTest Labs を利用することで統制をきかせることができ、コストとリスクを削減

導入の効果
Azure DevTest Labs の活用により、アジリティの向上に加え、青天井になりがちなインスタンスの統制も実現

2014 年より開発検証基盤における一部案件への Azure 利用を開始した東京ガスiネット。2015 年からはこの取り組みをさらに発展すべく、クラウド利用に適合する多くの案件へ向けたエンドースメントを開始しました。同社は現在、各システムの特徴や用途に応じて複数ベンダーのサービスを使い分ける「マルチ クラウド」を基本としていますが、汎用用途でメインに使用される Azure の稼動インスタンス数は、現時点で 130 にまで達しています。

130 以上のインスタンス稼動を経て感じた Azure の利点について、栁瀨 氏は次のように説明します。

「Azure のポータル画面はたいへん優れており、他社製サービスでは 20 分を要するサーバーの立ち上げ作業をわずか 5 分で完了することが可能です。また、VHD ファイルのアップロード ダウンロード機能を備えており、当社が標準構成として用いる JBoss 構成をテンプレート化し横展開することで、プロジェクト全体の開始スピードは飛躍的に向上しています。これまで 1 人月を要していたリード タイムがわずか数分になったのは、劇的な効果だといえるでしょう」(栁瀨 氏)。

ところで、こうした利便性の高い環境を提供した場合、一般的には「インスタンスとコストの管理」が悩みの種となります。技術者が積極的に同環境を活用することはもちろんメリットですが、そこではどうしても、インスタンス数や使用リソースが青天井になってしまうのです。

上田 氏は、2016 年に登場した Azure DevTest Labs を活用することでこうした課題も解消できていると語ります。

「Azure DevTest Labs を利用することで、ユーザーごとで VM 数やサイズの上限を設定したり、自動運転設定によって本来停止すべきシステムの停止漏れを回避したりできます。これまで VM の自動停止処理には Windows PowerShell で組んだスクリプトを使用していましたが、Azure DevTest Labs であればポータル画面上の GUI からすぐに同様の処理が行えます。また、テンプレートとアーティファクトを使用すれば、プロジェクト全体の迅速化や無駄を最小限に抑えた、効率的な統制が可能です。アジリティの向上だけでなく、こうしたリソース、コストの最適化が図れたことも、Azure の大きなメリットでしょう」(上田 氏)。

青天井になりがちなクラウド上のインスタンスも、Azure DevTest Labs を利用することで統制をきかせることが可能

今後の展望
本番機での利用を含め、今後実績を積み重ねることで標準化を目指す

これまでのとおり、Azure は東京ガスiネットのシステム開発検証作業において多大な功績を残してきました。そこで実感した確かな有効性を評価し、同社では今後、開発検証環境だけでなく B to C サービスの本番機として Azure を活用することも検討しています。

Azure をはじめとしたクラウド活用の今後の構想について、上田 氏と栁瀨 氏は次のように説明します。

「全システムのクラウド化というのは現状考えていません。というのも、"守るべき領域" と "クラウド化していくべき領域" の区分は間違いなく存在するからです。後者で挙げられるのは、たとえば新サービスの提供基盤やワークスタイル変革基盤といった "先端のテーマ" での活用です。すでに Azure は、開発検証環境で利用した技術者から高い評価を受けています。今後も適用範囲を拡大することで、Azure を利用する技術者をさらに増やしたいと考えています。こうして技術者自身がノウハウを蓄積した Azure 環境を外向けサービスとして本番環境で利用すべく開発を進めていますが、まずはこうした先端のテーマにおける実績をしっかりと作り、クラウド化していくべき領域での標準化を進めていきたいですね」(上田 氏)。

「現在は IaaS での利用が主です。しかし上田が言う先端のテーマにおいては、たとえばサービス基盤であれば Web アプリケーション機能に Azure Web Apps を、ワークスタイル変革基盤であれば MDM や認証機能を持つ Enterprise Mobility + Security (EMS) を採用するなど、PaaS の活用も考えられるでしょう。PaaS は技術者の運用負荷を大幅に軽減できるため、積極的に活用し、その結果も標準化へ向けてフィードバックしていきたいと考えています」(栁瀨 氏)。

2014 年から取り組みを進めてきた Azure 活用というチャレンジが、今はっきりと成果を生み出しつつある東京ガスiネット。こうした "攻め" で培った知見が標準化されていくことで、東京ガス グループの ICT は今後、いっそうの発展を遂げていきます。

ユーザー コメント
「Azure DevTest Labs を利用することで、ユーザーごとで VM 数やサイズの上限を設定したり、自動運転設定によって本来停止すべきシステムの停止漏れを回避したりできます。これまで VM の自動停止処理には Windows PowerShell で組んだスクリプトを使用していましたが、Azure DevTest Labs であればポータル画面上の GUI からすぐに同様の処理が行えます。また、テンプレートとアーティファクトを使用すれば、プロジェクト全体の迅速化や無駄を最小限に抑えた、効率的な統制が可能です。アジリティの向上だけでなく、こうしたリソース、コストの最適化が図れたことも、Azure の大きなメリットでしょう」

東京ガスiネット株式会社
システム技術部
アプリ基盤グループ
マネージャー
上田 志雄 氏

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