オイルレスベアリングと免震、制震装置のトップ メーカーとして、ワールドワイドなビジネスを展開するオイレス工業株式会社。世界に 10 か所以上の拠点を持つ同社にとって、全拠点における業務とワークフローを標準化する ERP は、きわめてミッション クリティカル性の高いシステムとなります。

オイレス工業株式会社

この ERP の安定稼動を維持すべく、オイレス工業株式会社はこれまでオンプレミスで本番機と開発検証環境を運用してきました。しかし、膨大な運用負荷を背景に安定性が、そして拡張性が物理リソースに制限される背景でアジリティが、それぞれ課題化していました。この状況を打破すべく、同社はパブリック クラウドの活用を選択肢に据えた ICT 基盤の移行を計画。高い信頼性を評価し、ERP の開発検証環境を Microsoft Azure へ移行し、オンプレミスに残すシステムの DR サイトとしても Azure を活用しています。さらに 2019 年には BO 環境の Azure 移行を、そして 2025 年までには ERP の本番機を Azure へ移行すべく、現在そこへ向けた検証が進められています。

プロファイル

1939 年 (昭和 14 年) 創業のオイレス工業株式会社は、オイルレスベアリングと免震、制震装置のトップ メーカーです。軸受機器、構造機器、建築機器の 3 つを事業の柱とし、「摩擦」「摩耗」「潤滑」「振動」のコントロールをテーマに製品開発に取り組む同社は、全世界に 10 か所以上ある拠点をもって、ワールドワイドなビジネスを展開していきます。

導入の背景とねらい
ミッション クリティカル性の高い SAP ERP の安定稼動を維持すべく、クラウド移行を検討

優れた耐摩擦性と耐焼き付き性を持つことで、機器の高性能化とメンテナンス フリーな運用を実現するすべり軸受「オイルレスベアリング」。同製品を主力とし各種産業機械などで幅広い採用実績を持つオイレス工業株式会社 (以下、オイレス工業) は、ワールド ワイドにビジネスを展開する総合メーカーです。

同社は、世界に 10 か所以上ある全拠点で業務とワークフローを標準化すべく、基幹システムと分析システムに SAP の「SAP EHP 7」および「SAP BO/HANA」を採用しています。特に ERP に関しては、同社にとって「これがなくては全世界の業務が停止してしまう」というほどミッション クリティカルなシステムであり、きわめて高い安定性が求められます。また、グローバル ビジネスを展開する以上、ERP 上では頻繁にシステムの統合や機能拡張が発生します。これらに柔軟に対応し、高いビジネス スピードを維持するためのアジリティも、同システムには求められます。

これまでオイレス工業はオンプレミスでこのシステムを運用してきました。しかし先の安定性とアジリティという観点から、従来の運用に限界が生じていたと、オイレス工業株式会社 企画管理本部 情報システム部 部長 加藤 謙一 氏は説明します。

オイレス工業株式会社
企画管理本部
情報システム部
部長
加藤 謙一 氏

「事業の拡大に伴い、SAP EHP 7 の機能拡張やシステム統合といった要望が増加していました。『連結会計のしくみが構築できないか』『特定の国の法制度に則した請求書発行の機能が設けられないか』といった要望へ迅速に対応するには、従来のオンプレミス環境では拡張性の面に課題があったのです。また、これまでは海外のデータセンターを用いて DR サイトを運用していましたが、ハウジングのため管理性は高くなく、運用負荷とコストも問題でした。特に、過度な運用負荷はシステムの障害リスクを内包するため、安定性に悪影響を及ぼしかねません。これらを解決すべく、パブリック クラウドの活用も選択肢に据えた ICT 基盤の移行を検討しました」(加藤 氏)。

加藤 氏が語るとおり、オンプレミスの場合その拡張性は物理リソースによって制限されるため、アジリティの確保が難しいといえます。また、SAP EHP 7 のソフトウェア保守期限である 2025 年までに少なくとも 2 回はハードウェアのリプレースが発生するため、コストのインパクトも無視できなかったのです。

しかし、ミッション クリティカルなシステムゆえ、パブリック クラウド上で ERP を本番稼働するには、信頼性の面で懸念が残りました。そこで同社は、ERP の本番機はこれまでどおりオンプレミスで運用し、開発検証環境をクラウド基盤へ移行することでアジリティの向上を計画。また DR サイトも同様にクラウドへ移行することで運用負荷とコストの削減を目指す、ハイブリッド クラウドを採ったシステム構築を立案します。

システム概要と導入の経緯、構築
高い信頼性とハイブリッド クラウドとの親和性を評価し、Azure の採用を決定

オイレス工業では 2016 年 9 月に控えた SAP EHP 7 のハードウェア リプレースまでにこの計画を進めるべく、2015 年 6 月よりプラットフォームの選定を開始しました。先のとおりこの段階では本番機へのクラウド採用の計画はなかったものの、同計画の検証結果によっては本番機への採用も視野に入れることを考えたといいます。

そのため、プラットフォームの選定においては、何よりもまず信頼性を求めたと、オイレス工業株式会社 企画管理本部 情報システム部 IT企画課 杉崎 智史 氏は語ります。

オイレス工業株式会社
企画管理本部
情報システム部
IT企画課
杉崎 智史 氏

「海外、国内問わずさまざまなクラウド サービスを比較検討しました。開発検証環境といえど、システムの停止は大きなビジネス リスクを引き起こします。本番機としての採用可能性を見定めるうえでも、プラットフォームにはまず信頼性を求めました。また、DR サイトとしての活用も計画したため、ハイブリッド クラウドとの高い親和性を持つことも、重要な比較項目でした」(杉崎 氏)。

オイレス工業がハイブリッド クラウドとの親和性を重視した背景には、マルチ ベンダー化を避け、システムとサポートをシンプルにしたいという考えがあります。オイレス工業ではこれまでも、よりシンプルなシステムを目指し Windows Server へのプラットフォーム統合を図ってきました。クラウドへの移行後もオンプレミスで運用するシステムが多く存在するため、これまでの運用体制を維持したままハイブリッド クラウド環境へ移行できることが求められたのです。

比較検討の結果、加藤 氏はマイクロソフトの提供する Azure が、同社の求める要件に適合していたと続けます。

株式会社クニエ
シニアテクノロジーアーキテクト
野瀬 隆志 氏

「Azure の SLA は 99.95% と非常に高く、東西 2 か所の国内データセンターでも冗長化されるため、信頼性については問題がありませんでした。また、『System Center』を利用することでオンプレミス環境も含め統合的かつシンプルな管理が可能です。さらに、ハイブリッド クラウド ストレージ『StorSimple』や、自社内でクラウド基盤を構築できる『Azure Stack』など、Azure ではハイブリッド クラウドを前提とした機能、製品が豊富に提供されています。今後本番機や BO 環境のクラウド移行を目指すうえで、Azure であれば ICT 基盤の発展と運用のシンプル化が両立できると考え、採用を決定しました」(加藤 氏)。

加藤 氏が語るとおり、同プロジェクトにおいては BO 環境をはじめとした、他システムの移行も含むロードマップを敷く形で、Azure の採用が決定されています。このロードマップについて、オイレス工業の ICT 構築と運用を支援するコンサルティング会社の株式会社クニエ (以下、クニエ) シニアテクノロジーアーキテクト 野瀬 隆志 氏は、次のように説明します。

「オイレス工業様における重要な ICT 基盤は、大きく『ERP 環境』『DR サイト』『BO 環境』の 3 つに分類できます。まずは ERP の開発検証環境と DR サイトへのクラウド適用が先決でしたが、2015 年に Azure の採用を決定した段階で既に、ERP の本番機と BO 環境の Azure 移行も視野に入れていました。具体的にいうと、まず BO 環境については 2019 年にハードウェアのリプレースを控えており、ERP の場合 2025 年までにソフトウェア リプレースを行う必要がありました。そこでのクラウドの採用は、コスト メリットはもちろんですが、アジリティの飛躍的な向上も期待できます。これを目指し、まずは今回のプロジェクトで Azure の有効性を検証するという意図をもって、長期的なロードマップを策定したのです」(野瀬 氏)。

2012 年作成時の、ERP/BO/DR 環境のクラウド移行に関するロードマップ (左) と Azure を用いた基幹システム全体のイメージ (右)

導入ソフトウェアとサービス

  • Microsoft Azure

  • Microsoft Windows Server

  • System Center

導入メリット

  • ERP の開発検証環境と、全システムの DR サイトへ Azure を採用したことにより、トータルで 50% 以上のコスト削減効果を生み出した

  • 高い信頼性と優れた利便性を持つ Azure を採用したことで、システム稼動の安定性を向上することができた

  • Azure への移行でアジリティが向上し、また運用負荷も軽減できたことで、"攻めの ICT 活用" を実現できる土壌が築けた

導入の効果
削減されたコストと運用負荷を割り当てることで、"攻めの ICT 活用" が実現できるように

プラットフォームへの Azure 採用を決定後、オイレス工業は 2016 年 2 月~ 5 月にかけて Azure 上に開発検証環境を構築。同年 9 月には、オンプレミスの本番環境の移行を完了しています。さらに 2016 年度中には、Azure 上での DR サイトも稼動を開始する予定です。

この取り組みは、開発検証環境のリプレース単体でみても、次のハードウェア リプレースまでの 5 年間で約 40% ものコスト削減効果を生み出しています。さらに DR サイトの移行も含む場合、トータルで 50% 以上のコストが削減できる見通しです。また、Azure は Web 上に各種ドキュメントが充実しており、ハードウェアの運用負荷が削減されたこともあって、運用負荷も大幅に圧縮されたといいます。

杉崎 氏は、こうした Azure が備える運用面の利点によって、"攻めの ICT 活用" が目指せるようになったと、笑顔で語ります。

「運用する人的リソースも含めてシステム稼動の継続性を捉えた場合、管理方法が属人化することは避けなければなりません。IT 部門のメンバーの知見や管理方法を均一化するためには、これまで研修などを開催する必要がありました。Azure や System Center はまず管理画面の使い勝手が非常によく、そこではオンプレミス、クラウドを意識せず運用管理できます。また、Web 上には各種ドキュメントが豊富に取り揃えられているので、研修を開催せずともメンバーそれぞれが独自で運用管理に必要な知見を身に付けられます。これは、属人化を排除しシステム稼動の継続性を高める意味で、非常に有効だと感じています。また、Azure の採用で削減できたコストや工数は、本番機の機能拡張やリソース増強へ割り当てられるため、これまで以上の環境も目指せるようになりました。いわゆる "攻めの ICT 活用" を実現できる土壌が築けたのです」(杉崎 氏)。

さらに加藤 氏は、Azure への移行でアジリティが向上したことにより、この "攻めの ICT 活用" をより高いスピード感をもって進められるようになったと続けます。

「これまでは限られた物理リソース内で、容量のバランスを見ながら開発を進める必要がありました。それを気にせず進められるようになったのは、大きな効果といえるでしょう。たとえば Azure への移行後、マイ ナンバー関連で人事部から急遽『SAP サンドボックス環境の構築』の要望を受けましたが、本番データに近い環境が即時に構築でき、検証から実装までをスピーディに行えました。Azure の採用で人的リソースに余裕が生まれたこと、アジリティが獲得できたことは、当社全体のビジネス スピード向上の後押しとなります。今後この基盤を活用することで、事業拡大に貢献していきたいですね」(加藤 氏)。

加藤 氏が語るように、グローバル ビジネスに求められる事業スピードを確保するには、ICT 側もその速度へ追従する必要があります。既存システムのアジリティ確保という観点でもその重要度は高いですが、昨今は従業員個々人の業務スピードを高めるべく企業のモバイル活用も加速しています。そのような場面においても、マイクロソフトの提供するエンタープライズ モビリティ スイート「Enterprise Mobility + Security」や「Office 365」と連携することによって、シングル ベンダーのもとでデジタル トランスフォーメーションを進めていくことが可能です。こうしたクラウド プラットフォーム以外のソリューションと連携できることも、Azure を採用した大きな利点といえるでしょう。

今後の展望
BO 環境の Azure 移行を計画。将来的には SAP S/4HANA の本番機としての活用も目指す

オイレス工業では、2016 年度内に Azure 上での DR サイト稼動を予定しています。長期的なロードマップに沿い、今後 BO 環境についても Azure への移行を計画しています。そこでは、本番機と開発検証環境の両方が Azure 上へ移行される予定です。

こうしたプロジェクトの中で信頼性の検証を進めていき、最終的には ERP の本番機も Azure へ移行したいと、加藤 氏は意気込みます。

「次世代ビジネス スイート『SAP S/4HANA』には大きな魅力を感じています。しかし、そこにはかなりのハードウェア要件が求められ、慎重なサイジングが必要です。オンプレミスの場合、そこに膨大なコストと工数、そして時間がかかることは避けられないでしょう。クラウドであればサイジングといったフローは割愛できるため、負担を劇的に減らすことが可能です。当社のあらゆる業務が ERP に紐づいており、いつシステムが停止しても世界中のどこかの拠点でビジネスへの大きな支障が発生してしまうため、現在の SLA 状況では本番機の移行はできません。たとえばデータセンター間がハイブリッド化し完全無停止が実現できる、といったことが Azure 上で実装されれば、ERP の本番稼動も前に進めることができます。こうした発展を、今後 Azure には期待したいですね」(加藤 氏)。

続けて杉崎 氏も、「加藤も触れたとおり、将来的には ERP の本番機においても Azure の活用を構想していますが、そこでは信頼性だけでなく、性能検証なども不可欠となります。現在プレミア サポートでマイクロソフトには多くの相談をさせていただいていますが、こうした検証作業や、モバイル活用といった全社的な ICT の発展を図るべく、今後も手厚く支援いただきたいです」と、マイクロソフトへの期待を語ります。

Azure へのシステム移行を通じ、"攻めの ICT 活用" を実現したオイレス工業。BO 環境の Azure 移行をはじめとするロードマップの実践を経ることで、Azure 上のシステムは、今後同社がグローバル ビジネスを継続する中で優位性を生みだす大きな武器となっていくことでしょう。

ユーザー コメント
「これまでは限られた物理リソース内で、容量のバランスを見ながら開発を進める必要がありました。それを気にせず進められるようになったのは、大きな効果といえるでしょう。たとえば Azure への移行後、マイ ナンバー関連で人事部から急遽『SAP サンドボックス環境の構築』の要望を受けましたが、本番データに近い環境が即時に構築でき、検証から実装までをスピーディに行えました。Azure の採用で人的リソースに余裕が生まれたこと、アジリティが獲得できたことは、当社全体のビジネス スピード向上の後押しとなります。今後この基盤を活用することで、事業拡大に貢献していきたいですね」

オイレス工業株式会社
企画管理本部
情報システム部
部長
加藤 謙一 氏

パートナー企業

  • 株式会社クニエ

(マイナビニュース広告企画:提供 日本マイクロソフト)

マイクロソフト法人導入事例サイトはこちら

[PR]提供: