企業の DX やそれに伴うクラウドの利用といったテーマは、今や至る所で聞く言葉になりました。IT 部門にはより一層の期待が寄せられる一方で、IT 部門が既存の環境や文化を変革していくことは容易ではありません。課題感はあるので、“DX”という言葉を使うも、何をするのか具体性に欠ける“デジタル変革”が世の中には多く存在するのも一般的な話になりつつあるのではないでしょうか。

そんな中、IT 部門がクラウドを活用した自己変革を果たし、その波を企業全体にも広げていった事例があります。内田洋行グループにおける情報関連事業の中核企業として、民間、公共、福祉、文教分野で製品やサービスを展開する内田洋行ITソリューションズです。

内田洋行ITソリューションズでは、内田洋行グループが展開する統合基幹業務(ERP)パッケージ「スーパーカクテル」や介護システム「絆(きずな)」、内田洋行ITソリューションズの自社開発である建設工事業で 350 社を超える実績をもつ「PROCES.S(プロセス)」、マンション管理業で日本トップクラスの「マンション21Smaw(スマウ)」などのサービスを顧客のニーズを受けて、新しい製品・サービスの開発に積極的に取り組んでいます。

「重要なことは、ただ単にシステムを刷新するというのではなく、プロセスや組織、企業文化まで含めて継続的に変えていく仕組みを作ることです」と担当者はいいます。

このことを体現するため、Microsoft Azure をどのように使い、アジャイル・スクラム開発の方法論を取り入れたのかご紹介しましょう。

流行に乗ってクラウド化しようと思ったものの、レガシーアプリケーションをそのままリフト&シフトしたことで生まれた「ひずみ」

内田洋行ITソリューションズの技術推進課は、既存の製品やサービスを開発提供する部署から切り離して、最新技術に関するさまざまな取り組みを社内横断的に行っていく部署です。業務としては、最新技術の調査研究から、レガシーシステムのモダナイゼーション、デジタルトランスフォーメーション(DX)のための技術開発などがあります。

ただ、このような独立した組織に変革していくのは簡単な道のりではありませんでした。

内田洋行ITソリューションズではもともと、自社プロダクトを開発するための環境をオンプレミスに構築し、ウォーターフォール型開発を中心とした開発に取り組んできました。システムの多くはクライアントサーバ型アプリケーションで、開発環境も Visual Basic や .NET が中心でした。

クラウドが日本でも本格的に普及し始めたことを受け、2015 年頃から既存のシステムを Web アプリケーションへの移行を試みるようになります。しかし、さまざまな課題に直面したといいます。まず課題となったのは、開発体制です。

株式会社内田洋行ITソリューションズ アドバンステクノロジーセンター 技術推進課 課長 金沢 達嵩 氏

株式会社内田洋行ITソリューションズ
アドバンステクノロジーセンター
技術推進課 課長
金沢 達嵩 氏

「Angular を使って Web アプリケーション開発を進めたのですが、ウォーターフォール開発が中心だったこともあり、テスト環境の構築やリリース管理、バージョンアップなどが大きな課題となりました。Web 開発の難しさに直面し、疲弊していました」(金沢 氏)。

また、インフラの構築や運用管理も課題だったといいます。

「オンプレミスを単に IaaS にリフト&シフトしただけではコストメリットが得られないことがほとんどでした。お客様の運用環境をクラウド化したことで、VPN などのネットワークやセキュリティの設定が複雑になり、レイテンシーが発生することもありました。流行に乗ってクラウド化しようと思ったものの、レガシーアプリケーションをそのままリフト&シフトしたことで、ひずみが生まれていたのです」(金沢 氏)。

とはいえ、クラウド化とレガシーなアプリケーションのモダナイゼーションは、将来的なビジネスを展開するうえで避けて通れない課題でもありました。チームメンバーの多くが、新しい取り組みをしたいのに、うまく実践できずくすぶっている状態だったと金沢 氏は振り返ります。

そんななか転機となったのが、2016 年 5 月に参加したマイクロソフトの開発者イベント「de:code 2016」でした。

「Azure Web Apps を中心とした PaaS の仕組みを知り、衝撃を受けました。IaaS のようなインフラ管理は一切必要ありません。Azure SQL Database と Web Apps さえあれば、Web アプリケーションが非常に簡単に構築できてしまう。当社が抱えていたレガシーシステムやオンプレミスの課題もうまく解決できることに興奮を覚えました」(金沢 氏)。

サービスを迅速に開発することはきわめて難しいものでした。それを実現できるようにしてくれたのが、Microsoft Azure(以下、Azure)とアジャイル・スクラム開発でした。

今では、Agile に MVP (Minimam Viable Product) 作成を年間 20~30 ペースで実施

株式会社内田洋行ITソリューションズ アドバンステクノロジーセンター 技術推進課 大川 貴志 氏

株式会社内田洋行ITソリューションズ
アドバンステクノロジーセンター
技術推進課
大川 貴志 氏

内田洋行ITソリューションズはすぐに Azure を開発基盤として採用することを決め、あわせて、アジャイル・スクラム開発を本格的に推進していきます。アジャイル・スクラム開発を導入するきっかけは、ソースコード管理の課題だったといいます。

「当時社内では、Visual SourceSafe(VSS)や Subversion(SVN)ベースでソースコードを管理していて、Git の文化もありませんでした。リポジトリが壊れたり、バージョンアップにともなってサーバ管理が必要になったりと、大変な手間がかかっていたのです。クラウドに移行するとともに Git を活用するようになり、ツールをモダナイズしていく過程で、テスト駆動開発(TDD)、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)、DevOps などの方法論を学んでいきました」(大川 氏)。

自分たちでアジャイル開発を実践しながら、アジャイル・スクラム開発のリーダーやエバンジェリストらを招いた研修を行ったり、ハッカソンに参加したりして、社内に知見やノウハウを蓄積していきます。2018 年に Azure DevOps Services が正式リリースされると、本格的にクラウド環境での開発に移行し、マイクロソフトのアドバイスや技術支援を受けながら、アジャイル・スクラム開発の取り組みを加速させていきました。

関連資格の取得にも積極的に取り組みました。大川 氏は Web アプリケーション開発に関するマイクロソフトの認定資格を複数取得しているほか、Microsoft MVP(Office Development)も受賞しています。アジャイル開発に取り組みはじめた当初は、金沢 氏と大川 氏含め 3 名ほどのチームでしたが、2020 年にはチームは 13 人規模にまで拡大し、マイクロソフト関連の有資格者数も延べ 40 人、認定スクラムマスターも 10 数人規模に拡大しています。

「最初は自主的に始めた小さな取り組みに過ぎませんでしたが、Azure Web Apps や Azure DevOps を使ってさまざまなサービスを開発し社内や社外向けに提供していくなかで、だんだんと社内からの評価を獲得していくことができるようになりました。何かニーズがあったり、必要だと感じたりしたときは、すぐに MVP を作成して効果を確認し、改善してサービスインするという流れを作ることができています」(金沢 氏)。

  • 社内システム
  • 社内システム(パイプライン)

PoC は年間 20~30 件ペースで実施しているといいます。そのなかでも、商用サービスとしてリリースされ、アジャイル・スクラム開発の評価を高める大きなきっかけとなったのが 「UC+(ユクタス)クラウドバックアップ(以下、UC+)」となります。

UC+は、内田洋行ITソリューションズが開発したハードウェアのシステム障害や地震、水害、火事などの緊急事態に備える BCP 対策として安心・安全・安価に、お客様の大事な基幹システムのデータを自動的にバックアップするソリューションです。

UC+ のなかには基幹システムのデータをバックアップするサービスがあります。UC+ を利用すると、スーパーカクテルなどの ERP データをクラウド上にバックアップし、ユーザー自身がバックアップ状況をリアルタイムに確認できます。汎用的なデータベース向け BaaS(Backup as a Service)としても活用でき、ハードウェアの障害や自然災害などの不測の事態に備える BCP 対策としても有効です。

開発スピードと拡張性を向上し、DX 推進に向けて組織文化の変革に取り組む

UC+ の基本機能は、Azure Web Apps、SQL Database、Azure Backup をベースにしたシンプルな仕組みで構成されています。そこに、ユーザー管理や受注/請求管理のための Azure Active Directory (Azure AD) 、顧客管理のための Azure AD B2C、アラート/通知のための Azure Functions、データ格納先としての Azure Storage を組み合わせることで、安全性や利便性を保ったシステムに仕上げています。

  • UC+バックアップシステム構成

大川 氏は、Azure とアジャイル・スクラム開発の導入効果として、開発スピードと拡張性の向上を挙げます。

「特に認証系はこれまでのインフラ管理のあり方を一変させるものだと感じました。認証系の仕組みは、ユーザー用のマスターテーブルの作成から、ログイン画面の開発、セキュリティ設定と運用まで、非常に複雑で面倒な作業が発生します。Azure Active Directory(Azure AD)を利用することで、そうした管理の負担が一切なくなり、PaaS を採用することでスケーラブル基盤を簡単に構築することができました」(大川 氏)。

「UC+ は、コンセプトの検討から商用サービスの提供まで数カ月ほどでリリースしました。従来のようなウォーターフォール型開発では決して実現できなかったスピード感です。また、PaaS や FaaS を活用しているのでインフラ管理の手間もなく、サービスの拡大に応じて、システム全体を簡単にスケールさせることができます。開発も Azure DevOps を使ってクラウドで行っていますから、必要なときにどこからでもサービスをアップデートすることができます」(大川 氏)。

UC+ の管理は社内ポータルで行っていますが、この社内ポータルから利用するサービスについても必要に応じてスピーディーに開発しています。たとえば Azure 利用コストの分析や工数管理、予算管理などです。利用している外部サービスにセキュリティリスクが発見された場合などに、代替手段となるサービスを素早く開発して、ユーザーに提供するといったことも行っています。

金沢 氏は、DX を推進するうえで、開発運用のあり方が変わったことによる効果は大きいと指摘します。

「レガシーシステムをクラウドに移行して終わり、アプリケーションをモダナイズして終わりでは、DX が成功したとは言えないと思います。その場合、5 年後のシステム更新ライフサイクルに合わせて基盤を変えたり、新機能を追加したりすることになります。環境やニーズの変化に柔軟に対応することはできないままです。重要なことは、ただ単にシステムを刷新するというのではなく、プロセスや組織、企業文化まで含めて継続的に変えていく仕組みを作ることです。Azure とアジャイル・スクラム開発は、そのための基盤になるものです」(金沢 氏)。

内田洋行ITソリューションズでは今後、アジャイル・スクラム開発のメンバーを拡大し、PaaS/FaaS を中心とした Azure の活用、さらなる DX の推進に取り組んでいきます。内田洋行ITソリューションズとして、固定観念を変革し変化に迅速に適応し続けることで、お客様の発展と社会への貢献、企業価値の向上を目指しています。DX 推進のポイントとして金沢 氏は「危機感を持つだけでなく、開発者がいかに楽しくなれるかどうか」を挙げます。マイクロソフトに対しても「開発者が楽しくなるような機能とサービスを提供し、良きパートナーとして伴走していってほしい」と期待を寄せています。

  • 株式会社内田洋行ITソリューションズ アドバンステクノロジーセンター 技術推進課 課長 金沢 達嵩 氏、大川 貴志 氏

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