アイデアを事業化し、市場からフィードバックを受け取り、サービスを改善する。このライフサイクルは、かつては数年単位で回っていましたが、デジタル時代となった今では、早ければ数日間で継続的に回し続けることが求められます。

それはソフトウェアの開発においても同じです。変化の早い市場ニーズに合わせて、どれだけ柔軟に対応できるかが、競争力を左右するのです。開発の生産性と運用の効率性を可能な限り高め、新たなサービスリリースや機能追加を迅速に行っていかなければなりません。

デジタル時代の開発プロセスを模索してきた日立ソリューションズは、Microsoft Azure とVMware 社が提供するVMware Tanzu Application Service on Microsoft Azure を活用した「デジタルソリューション創出プラットフォーム」を構築しました。このクラウドネイティブなアプリケーション基盤へオンプレ版リシテアをリフト&シフトするノウハウによって、開発から実装までの期間を圧倒的に短縮することが可能となったのです。

同社は、人事総合ソリューション「リシテア」のインフラ基盤をこのデジタルソリューション創出プラットフォーム上へと移行したクラウドサービス化を皮切りに、デジタル変革への取り組みを加速させています。

社会の変化に対応したプラットフォームを求めて

日立ソリューションズは日立グループの情報・通信システム事業の中核を担うシステムインテグレーターです。その事業領域は、製造・流通・小売・卸売・通信・農林水産・健康・医療・教育と多岐にわたり、業務支援や空間情報活用、セキュリティ対策など、様々なソリューションを提供しています。

今の日本ほど、デジタル技術を駆使したソリューションが求められている時代はありません。厚生労働省が発表した『令和元年(2019)人口動態統計の年間推計』によれば、出生数は86 万4 千人と過去最低であり、1 年間で50 万人以上もの人口が減少しています。少子高齢化・人口減は加速の一途をたどっており、それによって労働力不足や経済成長 の鈍化、医療費の高騰といった課題が生じています。

こうした社会と企業が抱える課題に対し、日立ソリューションズが提供しているもののひとつが「リシテア」です。

リシテアとは、勤務管理や電子申請といった従業員のフロント業務から人事管理や給与計算といったバックエンドの業務までをサポートする人事総合ソリューションです。最初のモデルが販売されてから25 年以上かけて改善を重ね、法改正や複雑な勤務体系といった変化する時代に合わせた機能を持つようになりました。エンタープライズ企業を中心に、1,330社・186万人を超える導入実績を有しています(2019 年9 月末時点)。

  • 日立ソリューションズが提供する人事総合ソリューション「リシテア」

    日立ソリューションズが提供する人事総合ソリューション「リシテア」

人事において、近年のもっとも重要なトピックは「働き方改革」です。労働力が不足する中、仕事時間を適正化し、生産性向上と両立させる。あらゆる企業が取り組んでいるものの、この実践は容易ではありません。働き方改革という課題に対して、リシテアはどのような解決法を提示してきたのでしょうか。

「リシテア/ HR ダッシュボード」では残業時間や有給休暇取得などのデータをビジュアル化することにより、生産性の高いチームや負荷の激しい担当者をすぐに見極めることができます。また「リシテア/AI 分析」はストレスケアが必要な社員をAI が予測し、警告を発します。

さらに、働きがいのある環境整備や女性活躍の推進のために、勤務形態や就業ルールを多様化させる企業が増えてきていますが、「リシテア/就業管理」ならば各社の管理方法に合わせた個別の設定ができるようになっています。自分の就業時間の確認と上長への承認が素早く確実にできるようになるので、社員がみずからの勤務状況を把握し、働き方改革への意識向上に繋がるのです。

このように、時代の要請に応じるソリューションを提供してきたリシテアですが、「今後はさらに柔軟なサービス提供をしていかねばなりません」と、日立ソリューションズ ワークスタイルイノベーション本部 リシテアクラウド拡販推進センタ センタ長の中西 真生子 氏は語ります。

「2019 年4 月に『働き方改革関連法』が施行されました。時間外労働の場合ですと、大企業は2019 年から、中小企業でも2020 年から、月45 時間を原則とした上限規制が導入されます。つまり、大手だけでなく中小企業も厳密な勤怠管理が求められるようになるのです。これまでになくリシテアに対するニーズが高まるでしょう。大手だけでなく中小企業にサービスを拡げるためには、より細やかで柔軟な規模感の販売体制を築く必要があったのです」(中西 氏)

従来、リシテアを含め、日立ソリューションズの提供するソリューションの多くはオンプレミスが中心でした。拡張性と柔軟性を備えたサービス提供のための基盤として、クラウドの利用が検討されます。

「正直なところ、最初はクラウドに対する疑いもありました」と日立ソリューションズ ワークスタイルイノベーション本部 HR テクノジーセンター グループマネジャ 関澤 隆憲 氏は打ち明けます。

「人事は非常にセンシティブな情報を管理する領域です。また、勤務管理は会社毎の多様性が求められる領域です。このような領域に対して、果たしてクラウドを信頼してもらえるのだろうか?クラウドでリシテアの強みを生かせるのだろうか?と、確信が持てずにいました。ところが、最近は、逆にお客様から『クラウドで使えないの?』と必ず言われる時代です。Microsoft Azure とVMware Tanzu Application Service on Microsoft Azure をクラウドの基盤とすることで、セキュアで信頼性が高いサービスを早期にリリースできたことはやはり大きかったと思います。」(関澤 氏)

  • 株式会社日立ソリューションズ ワークスタイルイノベーション本部 中西 真生子氏、関澤 隆憲氏

スムーズな移行を実現させたSQL Server との親和性

リシテアのクラウド基盤移行プロジェクトは、2018 年春に始まりました。

「Microsoft Azure を選定した最も大きな理由は、SQL Server との親和性にありました」と、関澤 氏は説明します。

「プラットフォームを決める上では、費用面や運営面での負荷など、さまざまな角度から比較検討をしました。その中でもAzure は『Azure SQL Database』『Azure SQL Database Managed Instance』といったPaaS データベースの選択肢が充実しており、SQL Server を使っていたリシテアとの親和性や移行のしやすさが非常に魅力的に感じました」(関澤 氏)

Microsoft Azure は、SQL Server をベースにした様々な種類のサービスをPaaS で提供しています。可用性環境として構築済みであり、バージョンアップやデータベースのバックアップを利用者は気にすることなく利用することが可能です。

そのため、オンプレミス環境からのスムーズな移行はもちろん、運用面の負荷も大きく削減することができます。また、CPU やメモリといったリソースのスケールを柔軟に調整できるため、オンプレミスでは難しかった「拡張性」と「柔軟性」を備えたサービスに生まれ変わることが可能です。

また、Azure を選択した背景には、これまでのマイクロソフトとの協業関係、そこで得られた信頼感も大きかったといいます。両社のこれまでの関係について、日立ソリューションズ 営業統括本部 デジタルイノベーション営業本部 デジタルサービス営業推進部 部長代理の松山 一 氏は続けます。

「当社とマイクロソフトのお付き合いは20 年以上。エンタープライズ向けのビジネスを共に創りあげてきました。そのサポートの特徴は、なんといってもレスポンスの早さにあります。メールでの質問は早ければ2 時間以内に、遅くとも1 日以内に答えが返ってきます。オンプレミス時代でも、技術的な問題が生じた際は即座に助けていただきました。また相手が日本の方で、日本語でサポートいただけるというのも助かります」(松山 氏)

  • 株式会社日立ソリューションズ 営業統括本部 デジタルソリューション営業部 部長代理 松山 一氏

リシテアのクラウド移行プロジェクトは、2018 年9 月までにプラットフォームの選定、アーキテクチャの設計、運用方法の策定を終えました。その後、クラウドの利点を得るためのアプリケーション開発作法であるTwelve-Factor App への対応、段階的なSpringBoot 化、拡張性に係る負荷検証などを行った上で、3 ヶ月後の2018 年末に移行を完了させています。

Azure への移行は「記憶に残らないほどスムーズにいきました」と、プロジェクトを振り返った関澤 氏は笑顔をみせます。

「通信レスポンスや機能面でトラブルがまったくゼロだったわけではありませんが、オンプレミスでのSQL server の構成を、ほぼそのままクラウドに移行することができたのです。それがあまりにもスムーズにいったため、ほとんど記憶に残っていないほどです」(関澤 氏)

デジタルソリューション創出プラットフォーム「VMware Tanzu Application Service on Microsoft Azure 」の可能性

2019 年6 月3 日、日立ソリューションズが提供するクラウドサービスとしての「リシテア/就業管理」がリリースされました。少ない初期投資と簡単な初期設定で利用開始できるため、中小企業にとっても導入しやすいサービスとなっています。

実は、「リシテア/就業管理」は単なるクラウド移行プロジェクトではありません。Microsoft Azure をインフラとして活用しただけに留まらず、VMware Tanzu Application Service の採用による新時代の開発体制への道筋をも開いたのです。

  • Microsoft Azure上で稼働するVMware Tanzu Application Service環境で提供される「リシテア」の構成イメージ

    Microsoft Azure上で稼働するVMware Tanzu Application Service環境で提供される「リシテア」の構成イメージ

VMware Tanzu Application Service とは、VMware 社が提供するCloud Foundry ベースのPaaS サービスです。アプリケーションを実行・管理するためのクラウドネイティブなプラットフォームとして国内外数多くのエンタープライズ企業で採用されています。

現在のアプリ開発は、市場の声を聞きながら、テストし、リリースし、メンテナンスし、アップデートするライフサイクルを素早く確実に回し続けていかねばなりません。日本の「カイゼン」に学んだシリコンバレーのこうした方法は「アジャイル開発」と呼ばれます。

アプリの実行環境を自動化するVMware Tanzu Application Service ならば、エンジニアはアプリケーション開発に集中することができ、アジャイル(素早い)開発が可能となるのです。マイクロソフトは早期からVMware 社に統合前のPivotal 社(当時の製品名称はPivotal Cloud Foundry)が主催するCloud Foundry Foundation に参画し、同社と強固な関係を築いてきました。そのため、現在の「VMware Tanzu Application Service on Microsoft Azure」を利用する際にも、Azure の様々な他のサービスとシームレスに連携出来ることができます。

事業アイデアを短期間に実現し、改善を重ねていくためのアプリケーション基盤として、日立ソリューションズは、2018 年春、当時のPivotal 社のビジネスパートナー契約を締結しました。

日立ソリューションズ デジタルソリューション推進センタ 部長代理 小野 順也 氏はその背景を次のように語ります。

「まず前提として、サービス事業へのシフトという大きな流れがありました。リシテアのような当社サービス事業、そして、お客様との協創によるサービス開発を円滑に提供していくためには、共通化・標準化できる部分は集約し、共有して利用した方が効率的です。そこで、全社で統一した基盤を用意しました。基盤には、エンタープライズグレードかつセキュアなクラウドインフラとしてのMicrosoft Azure と、クラウドネイティブなアプリ実行基盤としてのVMware Tanzu Application Service を組み合わせ、日立ソリューションズの『デジタルソリューション創出プラットフォーム』とすることに決めたのです。そして基盤の利点を最大限に引き出すためには、クラウドネイティブ環境へのリフト&シフト、クラウドネイティブアプリの開発ノウハウを持つことが非常に重要です。」(小野 氏)

  • 株式会社日立ソリューションズ デジタルソリューション推進センタ 部長代理 小野 順也氏

デジタルソリューション創出プラットフォームとしての「VMware Tanzu Application Service on Microsoft Azure 」によるリシテアの提供は始まったばかりですが、「非常に安定した基盤であり、お客様のニーズに応えることができています」と中西 氏は言います。

「最近はお客様もチェックリストを準備されて、『データセンターの運用は?』といった具体的な質問を受けることが増えてきました。そこでAzure を使っているとお答えすると、安心していただけるケースが多いです。実際、基盤に影響するような障害はまったく発生していません」(中西 氏)

また、関澤 氏は次のような期待を寄せます。

「クラウドの一番の強みは柔軟性・拡張性だと思います。人事システムの負荷には波があり、締め日直前の数時間がピークです。平日は10%、締め日は80%、といったもったいないことが起きるのです。クラウドサービスならば利用率に合わせたサイジングが可能ですので、コストパフォーマンスを発揮していけることでしょう」(関澤 氏)

事業のサービス化とともに、協創の拡大を目指す

今後の日立ソリューションズの展望について、「VMware Tanzu Application Service on Microsoft Azure」を基盤として、様々なサービス化や協創を実現していきたいと小野 氏は語ります。

「当社にはリシテア以外にもいろいろなパッケージベースの商材がありますから、今後はそれらをサービス化していくことを計画しています。それだけでなく、お客様ごとの状況に合わせたサービスをデジタルソリューション創出プラットフォームの上に実現し、運用まで含めた提案を拡大していきたいと考えています」(小野 氏)

既に同社は、スマートフォンを用いた建築現場の測量システムや小口決済システム、作業員の安全モニタリングシステムなどを「VMware Tanzu Application Service on Microsoft Azure」上で提供しています。日立ソリューションズの事業ポートフォリオをデジタルソリューションへと変革する動きが、次々と生まれているのです。

企業や社会が抱えている課題を解消するための仕組みを、ソリューションと呼びます。日立ソリューションズは、Microsoft Azure とVMware Tanzu Application Service の組み合わせにより、人事総合ソリューション「リシテア」のサービス強化を果たし、変化の激しい時代の要請に応える体制を築き上げました。同社の取り組みによって、日本に新たな価値をもたらすデジタル変革が加速していくことでしょう。

  • 集合写真

[PR]提供: 日本マイクロソフト