その薬は、本当に安全なのか――。医療ミステリーの名手・久坂部羊の同名小説(幻冬舎文庫)を原作にした『連続ドラマW MR -医薬情報担当者-』がWOWOWにて10月4日(日)午後10時より放送・配信スタートする。
今作は向井理演じる製薬会社のMR(医薬情報担当者)を主人公に、製薬業界の闇と葛藤を描く社会派ヒューマンドラマ。徹底して"患者ファースト"で動く紀尾中正樹(向井理)とビジネス至上主義のライバルMRの対立を軸に、製薬業界と医療現場にうずまくリアルな人間ドラマを展開する。"新たな社会派医療ドラマ"として注目を集める本作には、どんな魅力が詰まっているのか。エンタメライターの視点から、そのみどころを深堀りしていく。
医療の現場を知る名手・久坂部羊が描く、製薬業界の"光と影"
『連続ドラマW MR -医薬情報担当者-』の原作は、医療ミステリーの名手・久坂部羊による同名小説『MR』(幻冬舎文庫)だ。医師として医療の現場に携わってきた久坂部氏は、その経験を生かして医療の現場が抱える深いテーマに踏み込んだ作品を数多く執筆。2014年には『悪医』で第3回日本医療小説大賞を受賞するなど、その作品性は高く評価されている。映像化された作品も多く、WOWOWでは、2009年に黒木瞳主演で『ドラマW 第三のミス〜まず石を投げよ〜』、2019年に安楽死をテーマにした『連続ドラマW 神の手』を椎名桔平主演でドラマ化。今年5月には、老齢期医療をテーマにした衝撃的な作品『廃用身』が染谷将太主演で映画化され話題となった。
MRとは――知られざる製薬業界のリアルと、命に向き合う人々の葛藤
2021年に発売された『MR』は、製薬業界の光と影を描いた医療ビジネス小説。医師などの医療従事者に対し、自社の医薬品の有効性や安全性などの情報を提供・収集するMRという職業にスポットを当てることで、知られざる製薬業界のリアルを浮き彫りにしている。
製薬会社のMRと医師の関係は深い。製薬会社が扱う薬は、薬局などで利用者が直接手にする「OTC医薬品(市販薬)」と、病院で医師が処方する「医療用医薬品」に分類される。その中で、売上の9割を占めているのは「医療用医薬品」だ。日本の製薬業界の市場規模は約10兆円。しかし、新薬の開発には数千億円が投じられる一方、その成功確率はおよそ2万5千分の1という世界である。
そのため、製薬会社は、開発に成功した新薬を高く評価される製品へと育て、国内市場で大きなシェアを獲得することを目指す。さらに世界で年間1000億円規模を売り上げる「ブロックバスター」へと成長させ、大きな収益を生み出すことが次の新薬の開発につながるのだ。
その大きな動きの中で、医師や薬剤師などの医療従事者を訪問し、新薬を含む医療用医薬品の情報提供、情報収集を行うのがMRだ。開発側として医薬品の情報を届ける一方、実際に患者へ投与された際の反応や有効性、安全性について医師から情報を受け取る。医師との情報交換を重ねることで、薬の安全な使用と普及を支えていく存在なのだ。普段は見えないMRという職業を知ることで、身近な病院や医薬品への視点も変わってくる。そんな新しい発見に出会えるのも、このドラマの魅力だ。
"患者ファースト"か、それとも利益か――命とビジネスのはざまで揺れるMRたち
本作の主人公となるのは天保薬品のMR・紀尾中。効果的であれば他社の薬を勧めることも躊躇しない"患者ファースト"の信念の持ち主だ。その背景には、あるトラウマがある。一方、ライバル社タウロスのMR・鮫島淳(要潤)は徹底的な営利主義者で、自社薬のブロックバスター化のためなら手段を選ばない。
天保薬品は、糖尿病の画期的な新薬「パンセル」の開発に成功し、まずは国内市場独占を目指していた。ライバルとなるのはタウロスの新薬。天保薬品の新薬が高く評価されるためには、医師による新薬の有効性を認める論文や治験結果が必要という場面だ。
手段を選ばない鮫島は、自分に都合の良い論文を発表するよう、ある医師に持ちかける。診療ガイドラインでの評価をめぐる市場規模は大きいだけに、そこに関わる医師を動かすための金も大きくなる。そこには、富や名誉を求めて動く医師も……。そんな思惑が交錯する医療の世界だからこそ浮かび上がる、生々しい人間ドラマこそが本作の大きな魅力のひとつだ。医療の現場をリアルに知る久坂部氏だからこそ描ける、きれいごとだけではない人間模様に引き込まれる。
一方で、紀尾中は肺がん治療薬「ノベルマ」の普及に奔走していた。しかし、これまでに報告のなかった安全性への疑惑が浮かび上がり、事態は一変する。医師からの追及、患者の不安、そして会社側の思惑。それぞれの立場が交錯するなか、紀尾中は"患者ファースト"を貫くことができるのか。
薬をめぐってのリアルなやりとりと緊迫感に引き込まれる本作。多くの登場人物が抱えるそれぞれの事情や、いくつもの問題を深く描きながら、物語は予想外の方向へと展開していく。その濃密なドラマを全5話に凝縮し、息つく間もなく駆け抜けるスピード感も見応えたっぷりだ。
向井理×要潤×正門良規×豊原功補ら、実力派キャストが織りなす濃厚な人間ドラマ
濃厚な人間ドラマを生み出しているのは、実力派俳優たちの存在も大きい。主演は、ラブストーリーからシリアスな作品まで幅広い演技で魅了してくれる向井理。仕事に対する情熱が人一倍ありながら、冷静で知的に立ち振る舞う紀尾中はハマり役だ。利益重視の世界で"患者ファースト"を貫くというヒーロー的な役を、体温を感じる存在として描き出している。「私の大学時代の同期の多くがMRに就いていました。だからこそ、その重要性や職業上の秘匿性は理解しているつもりです。大学時代の経験が少しでも生きればなと、少し運命めいたものを感じました」とコメントしているように、彼自身が近い分野の研究をしていた経験も生きているのだろう。
そんな紀尾中の背中を見ながら成長する新人MR・市橋役は正門良規(Aぇ! group)。WOWOWドラマ初出演となる正門は、2019年の『連続テレビ小説 スカーレット』出演で注目を浴び、ドラマ『和田家の男たち』などの話題作にも出演。舞台でも活躍する演技派だ。
紀尾中のライバルで、徹底的な営利主義者の鮫島役には要潤。一見、私利私欲のために動いているように見えるが、その目的の根底にあるのは、新薬を生み出すための資金を確保するという製薬会社の現実だ。鮫島と手を組む俗物教授・八神には酒向芳。くせ者を演じることも多い酒向が、八神の俗物ぶりを存分に引き出している。
また、韓国のメディカルセンターの院長役に知英が登場。韓国の医療業界を担う人物が物語に加わることで、国際市場を視野に入れる製薬会社の姿にリアリティーと広がりを感じさせる。天保薬品の常務取締役には渡辺真起子、役員には豊原功補と名バイプレイヤーも揃っている。
登場人物にそれぞれの信念があり、その立場が交錯したとき、物語は大きく動き出す。そんな人間模様も、本作の大きな見どころだ。
重厚な物語をさらに引き込む、注目のスタッフ陣にも迫る
物語の重厚感と疾走感をドラマに昇華したスタッフ陣も注目だ。脚本は香坂隆史。2014年にWOWOW『ドラマW 埋もれる』で脚本家デビューし、近年ではドラマ『ハヤブサ消防団』の脚本を担当。久坂部羊原作のドラマ『無痛〜診える眼〜』の脚本にも参加している。
監督は、話題作となったNetflixドラマ『スキャンダルイブ』を監督したほか、東野圭吾原作の映画『殺人の門』が来年公開予定の金井紘。長回しによる緊張感や、後半にかけてのスピード感など、物語の緩急を巧みに生かし、見る者の心をじわじわと引き込んでいく。
また、音楽はNHKドラマ10『テミスの不確かな法廷』やドラマ『推しの殺人』のサウンドトラックも手掛けたjizue。京都を拠点に活動するインストゥルメンタル・バンドのサウンドが、静と動のコントラストを彩っている。
原作、物語、キャスト、スタッフ――さまざまな魅力が重なり合って生まれた『連続ドラマW MR -医薬情報担当者-』。その世界は、いよいよ10月4日(日)に幕を開ける。
第1話は無料放送・配信も!『連続ドラマW MR -医薬情報担当者-』(全5話)放送・配信情報
10月4日(日)午後10時より、 WOWOWプライムとWOWOWオンデマンドで放送・配信スタート(全5話)。第1話は無料放送・配信!
2話以降は、毎週日曜日午後10時に放送・配信。
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