AIの普及により、PCは作業道具から仕事や生活を支えるパートナーへ変わりつつある。この時代のPCに必要な条件とは何か? Snapdragon X搭載PCを試用した吉田和正氏に、PCの役割の変化、モビリティーや互換性、実利用で感じた価値を聞いてみた。
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株式会社マイナビ グローバル事業本部 顧問 吉田 和正氏/インテル株式会社前代表取締役社長兼インテル コーポレーション セールス&マーケティング統括本部 前副社長
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「dynabook XD/ZA」
「dynabook XD/ZA」は、8つのCPUコアと最大45TOPSのNPUを搭載する「Snapdragon X Elite X1E-78-100」を採用したAI PC「Copilot+ PC」だ。メモリは16GB、SSDは512GB。14型WUXGA液晶を備えながら約971gと軽く、堅牢性も確保されている。さらにユーザー自身で交換できる「セルフ交換バッテリー」機能に対応。USB4×2、USB Type-A×2、HDMI、有線LAN、microSDを備え、Wi-Fi 7とBluetooth 5.4にも対応と、拡張性、接続性にも優れている。
――AIの登場と普及によって、PCの役割はどのように変わってきていると感じますか?
吉田氏:私は、前職を含めて長くPCの世界に関わってきました。携帯電話が普及したあとも、個人の可能性や業務環境を支えるうえで、PCは重要な役割を担っています。
その中でも、ここ3~4年の生成AIの進化は激しいものがあります。結論から言えば、AIは「これ以上のパートナーはない」というレベルの存在になりつつありますよね。既に自分の分身に近いところまで来ていますが、数年後にPCと人との関係がどう変わるのかは興味深いです。
テクノロジーは、今できることだけでなく、1年後、3年後、5年後にどう進化するのかという視点で見る必要があります。ノートPCの可能性は、AIによって無限に広がったと思いますよ。
――これまでは「道具」だったPCが、相棒や分身に近づいているということでしょうか?
吉田氏:そう思います。数年後には、日々自分がしていることの半分以上をPCが処理してくれるかもしれません。自動化して結果だけを見る使い方もあれば、常に対話しながら、一緒に何かを作り上げる使い方もあるでしょう。
テクノロジーは、人間がしていた仕事の一部を置き換えてきました。今後は生活でもPCの役割が増えるでしょう。PCの中にもう一人の自分がいて、必要な業務を進め、自分は介入すべき部分だけを判断する。そうした使い方が一般的になるのではないでしょうか。
――AI時代において、従来のPC以上に重要になる機能は何でしょうか?
吉田氏:圧倒的にセキュリティだと思います。現在のAIは、何らかの情報を入力して初めて対応してくれるものです。AIは重要な情報を与えるほど、個人に合った対応ができるようになります。自分の分身やパートナーとして使うには、個人情報や業務情報を安全に扱える環境が欠かせません。
――NPUを使ってAI機能をオンデバイスで処理することには、どのようなメリットがあると考えますか?
吉田氏:現在のAIサービスは、クラウド側で処理するものが中心です。一方、オンデバイスAIでは、AI処理をPC上で直接実行できます。今後は、そのようなインターネットに接続できない環境でもAIを利用したい場面が増えていくでしょう。
CPU、GPU、NPU、メモリなどをひとつのシステムに高密度で集積することで、消費電力を抑えながら効率よく処理できるようになります。加えて、グラフィックス処理やAI処理をそれぞれGPUやNPUに分担することで、CPUだけに負荷を集中させることなく、より快適な動作が期待できます。こうした処理をオフラインで実行できることにも大きな価値があります。今後、オンデバイスAIの活用範囲はさらに広がっていくと思います。
――今回、Snapdragon X搭載PCを実際に使って、最初にどのような印象を持ちましたか?
吉田氏:最初に一番感じたのは、「使っていてまったく問題がない」ということです。動きが速いと感じました。スリープからの復帰も速く、バッテリーも長持ちします。Snapdragonがスマートフォンで培ってきた技術が、PCでも生かされているのでしょう。
PCではありますが、中身の考え方はスマートフォンで進化してきたモビリティーの延長線上にあります。駆動時間、ユーザビリティー、軽さは大きなメリットです。業務用の道具だけでなく、個人のパートナーとして使うPCに適していると感じました。
――吉田さんは、どのように使い分けていたのでしょうか?
吉田氏:私は用途ごとにPCを使い分けていました。会社支給の業務用PC、自宅で音楽やクリエイティブ用途に使う少しスペックの高いPC、そして今回のSnapdragon X搭載PCです。
会社のPCは基本的に会社に置いたままで、必要なときは外部からリモートで利用しています。そのため、普段持ち歩くのは今回のPCでした。本体は軽く、1日持ち歩いてもバッテリーは十分に持ちましたね。
ディスプレイを開くと、すぐ画面が表示される点もストレスがありません。顔認証を用いているため、パスワードを入力せず、開いてから3秒ほどで利用できる状態になります。
――起動や復帰の速さは、ほかのPCと比べても違いを感じましたか?
吉田氏:Snapdragon X搭載PCには業務用ソフトをほとんど入れていないため、会社支給PCとは単純比較できませんが、自宅の音楽用PCより速い印象で、体感では倍くらいかもしれません。
――Windows on Armでは、アプリケーションの互換性を気にする人も多いと思います。普段使うアプリで、動かなかったものはありましたか?
吉田氏:私が使った範囲ではありませんでした。現在使っているものは一通り動作したことはもちろん、アプリをダウンロードしたものも問題なかったです。
――AI機能そのものより、レスポンス、バッテリー駆動時間、軽さといった部分で価値を実感したわけですね。
吉田氏:そうですね。AIを中心に使うのであれば、必要なときにぱっと開けば応答してくれることが重要です。ネットにつながっていない場面でも内部で処理できる。そうした姿は、個人用PCとして私が求めているものに合っています。
業務環境では互換性やインターフェース、過去の資産との連携が重要になります。ただ、Windows on Armを取り巻く環境も急速に進化しており、対応アプリケーションは着実に増えていますよね。だからこそ、その人が何を重視するのかによって選び方も変わってくると思います。
個人のパートナーとして考えると、ローカルでタスクを処理できること、駆動時間が長いこと、持ち運びやすいことが重要です。その点で、Snapdragon X搭載PCは完成度が高いと感じました。
――どのような人に向いていると思いますか?
吉田氏:特に、駆動時間や軽さを重視する人には注目されると思います。私は実際に使って満足していますね。その理由は、やはり高いユーザビリティーとモビリティーです。今回の機種はよりコンパクトで、大きさと軽さのバランスがうまくまとまっていると思います。
――今回の体験を踏まえると、次にモバイルPCを購入するとき、Snapdragonを搭載しているかどうかは判断材料になりますか?
吉田氏:スマートフォン側の動きを見ながら判断すると思います。Snapdragonは長年、Armアーキテクチャーを採用し、スマートフォンに搭載されてきました。他社とは進化の道筋が異なり、スマートフォンで生まれた技術をPCへ取り込みやすいという強みがあります。
スマートフォンには、MEMS、GPS、アンテナ、バッテリー、GPU、NPUなど、多くの要素が小さな筐体に集積されています。PCより出荷台数が多く、新技術を低コストで統合しやすい点も強みです。スマートフォンで実用化された技術がPCへ入り、会話型AIを含む機能が増えれば、Snapdragon搭載PCの価値はさらに高まると思います。
――一方で、従来のWindows PCが必要な場面も残るということでしょうか?
吉田氏:もちろんです。業務用途では、互換性、インターフェース、レガシー資産への対応が圧倒的に重要ですね。その点では従来のWindows PCに大きな蓄積があります。
私は、すべてを1台へ詰め込む必要はないと考えています。業務はセキュアな環境で行い、音楽やクリエイティブな作業は専用の環境で行う。一方、Snapdragon X搭載PCは、自分のパートナーとして情報を入れ、対話する1台と考えています。用途ごとに環境を分けるほうが自然な場合もありますよね。
――最後に、これからPCを選ぶ読者は、何を重視すべきでしょうか。
吉田氏:これまではCPUを中心に、さまざまな環境やエコシステムが作られてきました。そこへ新しいアーキテクチャーが加わり、Windows PCの選択肢が広がっています。ユーザーにとって、選択肢が増えることは大きなメリットです。
今見えている課題だけで判断するべきではありません。1年後にはSnapdragonとWindowsの関係や、サードパーティー製ソフトのネイティブ対応がさらに進んでいるはずです。私たちは常に進化の途中にいます。
CPU性能、メモリ容量、ストレージ容量には余裕があるほうが安心ですが、突き詰めれば価格も上がります。重要なのは、その価格に見合う価値が自分にあるかどうかです。その価値は、その人がPCで何をしたいのかによって決まります。
互換性を重視するのか、消費電力やモビリティーを重視するのか。CPUブランドや数値だけでなく、自分がAIをどう使い、そのPCで何を実現したいのかを考えて選ぶことが大切です。
スペックだけではなく、「何ができるか」でPCを選ぶ。これからは、その視点がますます重要になると思います。
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PCが単なる作業ツールからパートナーへと進化していく中で、求められる価値も変化しつつあります。吉田氏が語った体験は、その変化を感じさせるものでした。AI時代の新たな選択肢として、Snapdragon X搭載PCの今後の展開に注目しましょう。
クアルコムは1985年の創業以来、移動体通信技術と半導体の研究開発を中核事業としてきた企業。スマートフォン向けプロセッサーで高いシェアを持ち、2007年からはAI技術の開発にも注力。そこで培った通信、半導体、AIの技術は、PC向けプロセッサー「Snapdragon X」シリーズにも生かされています。高い処理性能と省電力性を両立し、バッテリー駆動時でも性能が低下しにくく、長時間利用できる点が強みです。主要アプリとの互換性も向上しており、日常使いできるノートPCを実現しています。
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