美しい海やグルメ、自然を活かしたアクティビティと、ここでしか味わえないローカル文化。魅力がいっぱいの沖縄では、どのようにして観光コンテンツが作られているのでしょうか?
今回は、沖縄生まれ・沖縄育ちで、大学で観光について学ぶ学生3人が「観光コンテンツ」作りに挑戦!
地元愛あふれる彼女たちに立ちはだかったのは、“売れる”という条件。観光業界の第一線で働くプロである沖縄JTB株式会社(以下、沖縄JTB)の社員にアドバイスをもらいながら見えてきたのは、沖縄の魅力をビジネスに変えるために必要な力でした。
【学生プロフィール】
比嘉 心和さん
沖縄キリスト教学院大学 人文学部観光文化学科2年。ツアーコンダクターになるのが夢。平和研究にも興味あり。趣味は早朝ランニングで、週に3回ほど那覇市から北谷町までの距離を往復している。
嘉数 桜さん
沖縄キリスト教学院大学 人文学部観光文化学科2年。沖縄の北部が好きで、天体観測や自然鑑賞が趣味。子どもの頃の夢が水族館の飼育員だったことから発展し、今では観光業に興味がわいている。
金城 涼加さん
沖縄キリスト教学院大学 人文学部観光文化学科2年。趣味は旅行で、国内外の観光地をめぐっている。得意な英語を活かし、将来は沖縄の観光発展や海外との橋渡しに貢献したいと考えている。
まずは沖縄JTBを知る!地域の魅力を形にする仕事とは
観光コンテンツ作りを教えてくれたのは、沖縄JTB 総務企画部 総務課の中島さんと比嘉さんです。
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本日はよろしくお願いします!観光コンテンツ作りの前に、まずは弊社の業務内容をご紹介させてください。 |
JTBグループの歴史は1910年代までさかのぼります。
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1910年代から1960年代前半までは交通や宿泊券の代売が主な収入源でしたが、1960年代後半から1990年代にかけてはパッケージ旅行の開発・販売が事業の柱となりました。そして2000年代以降は、旅行者の満足や法人の課題解決のために幅広い商品とサービスを提供しています。 |
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時代に合わせてビジネスモデルが進化しているんですね。 |
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そうなんです。現在のビジネスモデルでは、多彩な旅行商品の提供に加えて、地域や観光事業者、旅行者との「つなぎ手」となりながら、魅力的な観光エリアの創造にも力を注いでいます。 |
なお、JTBグループは47都道府県に354拠点を構えていますが、旅行事業を中核としながら独立した株式会社として運営しているのは沖縄JTBだけなのだとか。
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沖縄JTBでは、どのような取り組みをしているんですか? |
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一例を挙げると、北部エリアにおいて訪問者目線に立った観光ストーリーを構築し、活性化に寄与する取り組みを実施しています。 |
良いアイデアだけでは売れない?観光ビジネスの考え方を学ぶ
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ここからは実際に「売れる観光コンテンツ」を作っていただきます。 今から“沖縄JTBの社員”として、アイデアを考えてみてください! |
さっそく話し合いを始めた学生たちは次々とアイデアを思いついた様子。
しかし、次に中島さんから投げかけられた質問に対して、3人はハッとした表情を浮かべます。
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それ、売れますか? |
中島さんは「良いアイデアが必ずしも売れるとは限らない」と指摘。「事業として稼ぐには、企画段階でビジネスモデルをきちんと設計することが欠かせない」と解説しました。
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ビジネスモデルには「顧客価値」「マネタイズ」「価値を生み出す仕組み」の3つの要素が必要です。それらを導き出すため、こちらのシートを埋めていきましょう。 |
学生たちに配られたのは、ビジネスモデル・キャンバス。「顧客セグメント」「価値提案」「チャネル」「顧客との関係」「収益の流れ」「主なリソース」「主な活動」「主なパートナー」「コスト構造」の9つの項目で構成されています。
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なんだか難しそう……。 |
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すべてを埋めるのは難しいので、今日はビジネスモデルの軸となる「誰に、どんな価値(どんな商品)を提供するのか」を考えてみましょう。 |
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それならできそう!さっそく考えてみます! |
ワークに挑戦!ビジネスモデル作りで見えた課題と発見
まずは個人ワークからスタート。学生たちはスマホで情報収集をしながらペンを走らせていました。
その後、中島さんに加えて比嘉さんもサポートとして参加し、グループワークへ。
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個人ワークの内容をそれぞれ発表したうえで、アイデアをひとつに絞っていきましょう! |
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私は沖縄独自の「パーラー※」をめぐるツアーを企画しました。ローカル文化なので、現地の暮らしを体験できるのがこのツアーの価値です。 |
※軽食やドリンクなどを販売する簡易店舗
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私は大好きな北部エリアでのナイトツアーを考えてみました。8月には天の川と流星群の共演が見られて感動的なんです!スマホだけできれいな星空が撮れるので若者にも受けるのではないかと思います。 |
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私は沖縄のローカルなスーパーをめぐるツアーを提案します。地元ならではの食文化を伝えれば、ディープでコアな沖縄を知りたい人はもちろん、健康志向の高齢者や料理が好きな人たちの興味も引けそうです。 |
3人のアイデアを聞いた沖縄県外出身のマイナビニューススタッフたちが、聞き馴染みのない「パーラー」のワードに反応。 この様子を見てニーズを感じ取った学生たちは、「パーラーめぐり」の案を深掘りすることにしました。
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パーラーは手作りのおにぎりやお弁当、ソーキそば、沖縄ぜんざいなどがリーズナブルな価格で楽しめる軽食スタンドです。ローカルエリアに点在していて、地元の人々に愛される親しみやすさがポイントだと思います! |
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沖縄のおじぃ・おばぁが営んでいるところも多いから、近い距離で会話を楽しめるのもパーラーならではだよね! |
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昔ながらのレトロなパーラーからおしゃれな進化系パーラーまでさまざまな雰囲気のお店があるので、めぐれば楽しんでもらえると思います! |
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いいアイデアですね!ただし、旅行者にパーラーに行ってもらうだけでは利益になりません。価値を提供する中でどのようにして利益を出すのか、その視点を忘れないようにしましょう。 |
ここでいう「利益」は、単に企業が収益を上げるためだけのものではありません。観光コンテンツを長く続け、地域のお店や事業者にも価値を還元していくためには、旅行者・地域・企業のそれぞれにメリットがある仕組みが必要です。
頭を悩ませる学生たちに対し、酒蔵をめぐってスタンプを集める周遊企画「パ酒ポート」の事例が紹介されました。 集めたスタンプの数に応じてプレゼント企画に応募できたり、対象の酒蔵で「パ酒ポート」を提示すると特典がもらえたりといった、お得なスタンプラリー帳です。
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同じ仕組みにするなら、特典にJTBで使えるポイントを付ければメリットにならないかな? |
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アプリを作れば気軽に利用してもらえそう! |
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となると、アプリの開発費を回収できるかが課題となってきそうですね。セグメントも意識してさらに詰めていきましょう。このツアーはどんな顧客に刺さると思いますか? |
パーラーめぐりの本質的な価値に立ち戻り、ローカルな魅力を誰に提供するのか、学生たちは「顧客セグメント」の設定に苦労していました。
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沖縄県内の方々に魅力を再発見してもらう……?年配の方の散歩ルートとして活用してもらうとか。 |
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パーラーを知らない県外の観光客のほうが、新しい体験として興味を持ってもらいやすいかも。 |
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パーラーは朝早くから営業している店舗もあるから、朝食に利用してもらうのはどうかな? |
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朝食は昨今のニーズに合う良いアイデアだと思います!特に外国人観光客は朝から好きなものを自由に食べたいと考える方が多く、ホテルの素泊まりプランが人気なんですよ。 |
比嘉さんのアドバイスをもとに、「素泊まり観光客の朝食需要に応える『早朝パーラーツアー』とし、パックツアーのオプショナルサービスとして提供する」という案で最終的にまとまりました。
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皆さん、ワークお疲れさまでした!沖縄の魅力をビジネスに変える難しさを感じていただけたのではないかと思います。でも、だからこそ、大きなやりがいがあります。 |
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自ら企画したツアーが実現し、お客さまから好評を得られたときや、事業を通して沖縄の経済発展に貢献できたときの喜びはひとしおです。仕事を通して経験や知識が積み重なり、成長も実感できますよ。 |
「ビジネスを考えるときには、このビジネスモデル・キャンバスをすべて埋めてから検討することが重要」と2人は力を込めました。
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時間があるときに、他の項目についてもぜひ考えてみてください。例えば、どういう手段を使って販売するのかを決めれば、収益の流れがわかってコスト構造も見えてくるはずです。 |
沖縄観光の仕事は“AIでは代替できないビジネス力”が身につく!
就職イベントも随時開催!
頭を終始フル回転させてワークに挑んだ3人。最後に参加した感想を改めて聞きました。
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大学の授業でツアープランを考えることがありますが、それを商品として売りに出すためには「戦略」が必要なんだと気づかされました。 |
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「沖縄の魅力を知ってもらいたい」と強く思いますが、その熱意をビジネスにするのは簡単ではないと思い知されました。 |
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私も何度か沖縄観光のプランを考えたことがありますが、商品として世に出すことを考えると、アイデアだけでは通用しないと分かり、新たな発見につながりました。 |
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「沖縄が好き」「沖縄に貢献したい」という気持ちを持っていることはとても大切なことです。当社にも皆さんのように好奇心が強く、チャレンジ精神が旺盛な社員がたくさんいます。 |
観光資源が充実している沖縄。ただ、それらを「売れる観光コンテンツ」に仕上げるには、確かな戦略が求められることがわかりました。その力は、まちを歩き、人と話し、情報を収集してこそ培われるのかもしれません。それは、AIでは代替できないビジネス力ともいえるでしょう。
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Photo:photographer_eringi
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