埼玉県は、県内中小企業のサステナブル経営を促進し「日本一暮らしやすい埼玉」の実現を目指しています。令和7年度には高いレベルでサステナブル経営に取り組んでいる企業を、県が認証する「埼玉県サステナブル企業認証制度」を創設しました。今回は埼玉県の取組を紹介するとともに、認証企業に話を伺いました。
サステナブル経営に取り組む企業を県が認証
国内外でのSDGs の取組やESG投資の広がりに伴い、企業に環境・社会・経済の3視点を踏まえた持続的な成長が求められるようになっています。埼玉県はこれまでも多様なプレイヤーとの協働を通じ、ワンチーム埼玉で取り組む埼玉版SDGsを推進してきました。
令和7年3月に公表された「サステナビリティ開示基準(SSBJ基準)」が令和9年3月期から東証プライム上場企業に段階的に適用されることで、サプライチェーンを構成する県内中小企業への要請が強化される可能性も出てきました。そこで、この開示基準などを参考に、中小企業がより取り組みやすい審査項目(20項目)を示し、高いレベルでサステナブル経営に取り組む企業を県が認証する「埼玉県サステナブル企業認証制度」が創設されました。
サステナブル経営の取組を県が認証することで、企業の信用力向上、ひいては大企業との取引拡大にもつながることが期待されます。また、認証取得を通じて、社員のモチベーション向上や就職先として学生や求職者にも検討いただける要素の一部となり、企業の人材定着·確保の促進にもつながると考えられます。
埼玉県は「認証を機に、県内中小企業がより積極的にサステナブル経営に取り組み、未来に向けて持続可能な企業活動を推進していただきたい」と話します。今回は認証企業にも、どのような取組をしてきたのか伺いました。
認証企業の取組
伊藤鉄工株式会社(川口市)
当社は、マンホールや排水器具など、生活に欠かせないインフラ用の鋳物製品を、設計から製造まで一貫して手がけるものづくり企業です。認証取得を目指した理由は、これまで進めてきた環境への配慮や、社員が安心して働ける職場環境づくりが、埼玉県の客観的な基準でどのように評価されるかを確認し、今後の採用活動や会社の信頼向上に生かしたいと考えたためです。
これまで地道に続けてきた取組が「ゴールド認証」という形で県から評価されたことは、「これまでの方向性は間違っていなかった」と改めて確認する機会になりました。社員にとっても、少しずつ自信や日々の励みにつながっていると感じています。今後は、認証ロゴマークも活用し、官公庁や取引先の皆様に、当社の環境や働き方に関する取組を知っていただくことで、会社や製品に対する信頼の向上につなげていきます。
同時に、社員が安心して働ける環境を当社の強みとして、地元埼玉県や川口市で製造業に関心を持つ若い人材の採用と育成にも、これまで以上に力を入れていきます。
小川工業株式会社(行田市)
当社は、100年以上にわたり社会基盤の整備・維持に携わり、地域とともに成長しながら、信頼と共感を育む企業活動を続けてきた総合建設会社です。サステナブル企業認証は、これまで進めてきた社会・環境への取組を客観的に評価いただくことで、自社の現状を見つめ直し、さらなる改善につなげる機会になると考え、取得を目指しました。認証取得後は、社内全体で環境への意識が高まり、日々の業務の中でも環境を意識した取組が進んでいます。


現在、最も力を入れているのは、CO₂排出量の見える化を起点とした脱炭素経営です。当社理念「地域と共に、人と技術の力で持続可能で豊かな社会の実現に貢献します」のもと、環境負荷の低減を重要な経営課題と位置付け、電力や燃料使用量を継続的に測定・分析し、CO₂排出量の削減と効果検証を行っています。
今後も本認証を一つの契機として、持続可能な経営をさらに推進し、地域社会とともに成長する企業を目指してまいります。
株式会社日さく(さいたま市)
当社の経営ビジョン「社会に価値をもたらす企業として」を体現するため、申請いたしました。本制度における初代「ゴールド認証」をいただいたことで、対外的な信用向上に繋がると期待しています。
現在最も力を入れているのは、経営の要諦「ヒト・ヒト・ヒト」で推進する人財育成と健康経営です。人財育成では新たなメンター制度の導入に加え、既存の資格取得支援のさらなる充実を図ってきました。また、従業員の健康こそ持続可能な経営に不可欠と考え、再検査等の費用補助(最大3万円)、毎月22日の「禁煙の日」設定、各種オンラインセミナーの開催など心身両面で手厚くサポートしています。これらの結果、2015年度に18%台だった離職率が直近では6%台まで大幅に低下し、若手の定着率が着実に向上しました。


今後は災害用井戸(防災井戸)の設置(2030年3月期目標9本)等を通じ、国内外で気候変動や水問題の解決に取り組むことに加え、社会貢献をビジネスへと繋ぐ好循環を創出し、地域から“選ばれる”150年、200年企業を目指してまいります。
株式会社八洲電業社(さいたま市)
当社は、早い段階で「埼玉県SDGsパートナー」に登録し、環境・社会・経済の3つの視点から、自社の取組を見える形で発信し、SDGsを経営に落とし込んできました。認証取得後は、「続けてきたことが社外からも認められた」という実感が社内に広がったことに加え、地域に根ざしながらも、新しい技術と人を大切にする姿勢の両方を持った会社であると、より自信を持って発信できるようになりました。


現在、当社が最も力を入れているのは、DX・AIを活用した働き方改革です。自社独自の業務管理システム「TOMAS」による情報の一元化を進めるとともに、AIも活用しながら、より効率的で質の高い仕事ができる環境づくりに取り組んでいます。
建設業界は専門性が高い分、難しそうという印象を持たれることもありますが、当社では、若手でも挑戦しやすく、成長を実感しやすい環境づくりを大切にしています。AIやデジタル技術を取り入れることで、経験や勘だけに頼らない働き方を進め、次の世代が活躍しやすい会社へと進化していきたいと考えています。
古郡建設株式会社(深谷市)
私たちはこれまでも省エネ、廃棄物削減やリサイクル、地域貢献などに積極的に取り組んでおり、社員一人ひとりが「自分たちの仕事が環境や社会とどうつながっているか」を考える社風がすでに根付いていました。それらを第三者に評価してもらうことで、お客様や取引先との信頼を深めたいと考え、認証取得を決めました。そのため、今回のゴールド認証取得は私たちにとって「新たな挑戦」というより、「日々の取組が形として認められた結果」だと感じています。
また、ゴールド認証が会社の信頼性を示す証明となり、学生の皆さんをはじめ、お客様・取引先・地域の方々など、すべてのステークホルダーへの「安心」につながっていると実感しています。


近年、台風や大雨による浸水被害、地震、動物の疫病など、埼玉県内でも自然災害などのリスクが高まっています。地域の建設会社としてインフラ整備や災害対応という社会的使命を果たし続けることが私たちの根幹です。弊社の経営理念「地域社会に貢献し、必要とされる会社であること」が、私たちの一番の目標です。
和光紙器株式会社(川口市)
私たちは、持続可能な社会や持続可能な経営の実現に向け、私たちにできることを一歩ずつ積み重ねてきました。認証を取得して最も良かったことは、従業員たちの誇りにつながったことです。さらに、ご家族にも自慢できる会社として感じていただけることで、従業員エンゲージメントの向上にもつながっています。


現在、「私たちにできるSDGs」という取組に注力しています。私たちは、企業が成長し続けるためには、まず従業員一人ひとりが一人の人として成長し、進化し続けることが何より大切です。取組は社内だけにとどまらず、出前授業や職場体験の受け入れ、小学生向け工作教室、大学での講演など、地域や次世代へと活動の輪が広がっています。こうした活動を通じて従業員自身も多くの学びや気づきを得ており、その成長が環境に配慮した包装資材の開発や製造の仕組みなど、ものづくりの進化につながっています。この考え方や取組に共感し、ともに成長しながら進化し続けたいと思ってくださる方との出会いにつながれば、嬉しく思います。
※1 プラチナ認証企業は今回該当なし(紹介した企業すべて「ゴールド認証」)
※2 記載順は五十音順(上記企業のほか株式会社セイコーアドバンス【蓮田市】も認証企業)
埼玉県が目指す先
埼玉県サステナブル認証企業は、10年、20 年先を見据えた持続可能な経営に真摯に取り組む企業です。県内中小企業のサステナブル経営への取組が加速することで、サプライチェーン全体へのサステナブル経営の浸透が促進され、大企業との連携強化を通じた県内産業全体の競争力向上が期待されます。また、このような企業の取組の広がりは、地域における雇用の質的向上、人材確保・定着の促進、企業イメージの向上につながっていくことでしょう。
埼玉県では、「今後こうした企業をさらに増やし、積極的に応援していきたい」と考えています。皆さんも認証企業にぜひ注目してみてください。
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