[取材先]株式会社リエイ(千葉県)
本記事は2026年4月時点の情報に基づいて作成しています。

千葉県浦安市に本社を置くリエイグループは、企業の社員寮や学生寮などの福利厚生施設の管理運営を受託する「ライフサービス事業」、給食や催事弁当など食に関わる多様なニーズに対応する「フードサービス事業」、そして“癒しと食”に定評のある介護施設の運営・居宅介護支援を行う「介護サービス事業」を中心に展開しています。

創業以来、一貫して大切にしてきたのは「食とホスピタリティ」。食事の提供にとどまらず、時代や顧客ニーズの変化に対応しながら事業領域を広げ、全国に拠点を展開してきました。

本記事では、創業者である代表取締役 社長執行役員 椛澤 一氏に、創業から現在に至る事業多角化の歩み、生活サービス事業者として独自のポジションを築くに至った要因、そして深刻化する人手不足時代を見据えた次世代のビジネスモデルについて、オリックス 千葉支店の荒木 祐作が伺いました。

縁と運が導いた、「人に喜んでもらう仕事」で起業

株式会社リエイ 代表取締役 社長執行役員 椛澤 一氏

……まず、創業の経緯と初期の事業展開についてお聞かせください。

椛澤氏:学生時代から、企業に就職するイメージを持っていませんでした。関心があったのは音楽のみ。銀座のレストランクラブで弾き語りのアルバイトをするなど、音楽活動に力を注いでいました。しかし仕事を通じて、自分は表現者としてよりも、場を運営し、人に喜んでもらう仕組みをつくることに適性があるのではないかと感じるようになりました。

そうした中、勤務先のオーナーから店の経営を引き継がないかと打診を受けました。当時は自己資金が乏しかったのですが、父の知人の紹介で信用金庫から保証金と運転資金を借りることができ、1972年、24歳でレストラン経営を始めました。

当時はまだカラオケが普及していなかったため、お客さまの歌に私がギター伴奏を付けるといった独自のサービスが支持され、事業は銀座で3店舗まで拡大しました。元来「人に喜んでもらう仕事」が性に合っていたのだと思います。

その後、さらに生活に密着した領域で事業を行いたいと考え、1980年に現在の事業の前身となる会社を設立しました。

……そこからフードサービス事業および施設管理運営サービスへ進出された背景と目的をお聞かせください。

椛澤氏:まずフードサービス事業について、これも人との縁が出発点でした。当時は公共事業が活況を呈し、建設業界にも強い追い風が吹いていました。そうした中、知人の業界関係者から「作業員宿舎での食事提供には需要がある」と勧められたのです。

銀座の飲食店と宿舎給食とでは、業態も顧客層も大きく異なります。そのため当初は戸惑いもありました。しかし、食を通じて人を支えるという本質は共通しています。未知の領域であっても挑戦しなければ可能性は開けない。そう判断し、参入を決めました。

その後は、高速道路建設に従事する作業員宿舎向けの食堂運営を中心に業績を順調に伸ばしました。一方で、収益が建設業界の動向に大きく左右される事業構造は、中長期的に見れば経営上のリスクになり得るとも認識していました。

そこで既存事業を、単なる給食サービスではなく「福利厚生施設を支える生活サービス」と再定義し、他業界への展開を進めました。そして社員寮や保養所など企業の福利厚生施設を対象に、給食に加え、施設管理やメンテナンスまで支援する事業へと領域を拡大していきました。

「食とホスピタリティ」のノウハウで介護サービス事業に参入

……2000年の介護保険制度開始時、比較的早い段階で介護サービスに参入されています。なぜ介護に注目されたのでしょうか。

椛澤氏:実のところ、最初から介護分野に強い関心があったわけではありません。制度開始を前に、周囲から「生活サービスを手がけてきたリエイに適した領域ではないか」と助言を受けたことが出発点です。たしかに、利用者の年齢層や生活環境は異なるものの、安心してくつろげる場をつくるという点において既存事業と本質的に共通していると思い、参入を決断しました。

……貴社の介護サービス事業の強みはどこにありますか。

椛澤氏:介護保険制度の開始当初は、多様な業種から新規参入が相次ぎました。そうした中で当社の強みとなったのは、創業以来、一貫して大切にしてきた「人を喜ばせたい」という考え方です。当社では、介護は利用者に快適さや安心を感じていただくサービスであるべきだという考えから、「快護」という言葉を用いています。

中でも大きな強みとなっているのが、既存のフードサービス事業や施設運営を通じて培ってきた「食とホスピタリティ」のノウハウです。特に、高齢者施設で生活される方々にとって、食事は日々の大きな楽しみの1つです。当社では、薬膳理念を取り入れた献立や各国料理の企画など、食べる喜びを感じていただくための工夫を重ねてきました。「医食同源」という言葉がありますが、当社では「癒食同源」というコンセプトのもと、人のぬくもりや癒しを感じられるおもてなしを大切にしています。

また、「食」の強みと並び、もう一つの柱となっているのが「癒し」のサービスです。これは、アーユルヴェーダ理念に基づくもので、2004年にタイ保健省直轄機関から日本初の普及権を得たセラピーを高齢者向けにアレンジした「タイ式フットケア」やインド式のヘッドケアなどを含め、独自のリラクゼーション「ロイヤルセラピー」として構築し、社内教育制度も含めて体系化しています。

現在は、国内介護施設を47カ所運営しています。かつて施設数の拡大を重視した時期もありましたが、過度な規模拡大はサービス品質の低下や、業界内における人材獲得競争の激化を招くおそれもあります。そのため現在は、採算性と継続性を重視し、安定的な運営が見込める案件を厳選しています。

人手不足時代を見据えた、新たなビジネスモデルへの転換

……既存事業の深耕に向けた今後の戦略についてお聞かせください。

椛澤氏:食材費や人件費の上昇が続く中、当社のように多くの人手を必要とする企業が今後も持続的に成長していくには、従来と同じやり方だけでは限界があります。そこで現在進めているのが、「新たなマンパワー事業モデル」の構築です。

その中核となるのが独自の提供モデル「オールマイティ・キッチン」です。具体的には、現場で調理を完結させる従来型に加え、現場調理と冷凍食品を組み合わせるハイブリッド型、さらに温め・配膳・片付けを中心に運用できる冷凍食活用型という3つの提供モデルを用意しました。顧客の予算や人員体制、求める品質に応じて、最適な形を選択できるようにしています。

加えて、グループ会社が保有する山梨県の冷凍食品工場を活用し、自社運営施設向けだけでなく外部向け供給も視野に入れています。また、間接業務の効率化に向けて、DXを支えるソフト開発にも取り組んでいます。

こうした「人」と「冷凍食品」、そして「DX」を組み合わせることで生産性を高めながら、現場では個々の接遇やコミュニケーションに、より注力できる体制を目指しています。現場の業務を再設計し、人にしか担えない価値の提供に人材を集中させることが狙いです。例えば、現在は約4,400人規模で600カ所を超える事業所を支えていますが、将来的には同程度の人員で約1,200カ所を支えられるモデルを構想しています。

……近年、M&Aにも積極的に取り組まれています。

椛澤氏:M&Aは、単なる規模拡大ではなく、サービス領域の拡充とグループシナジーの創出を目的に進めています。

2025年3月にはカフェ事業を展開するストックホルムローストがグループに加わりました。これにより、従来の社員食堂受託運営に加え、カフェラウンジのような空間提案まで含めたサービス展開が可能になりました。働く場や暮らす場に求められる価値が多様化する中で、提供できる選択肢を増やすことは重要だと考えています。

2025年5月に旗艦店となる日本橋兜町店をリニューアルオープン。天井が高く、植栽のグリーンを用いた明るい店内が特徴

グループ再編で次世代の経営体制による成長を目指す

……創業55年目を迎えた今、経営者として、これまでとこれからをどのように捉えておられますか。

椛澤氏:当社は長年にわたり、労働集約型の事業を追求してきました。大きな理念を前面に掲げるよりも、まずは現場で働く一人ひとりが長く活躍できることが、会社の基盤になると考えてきました。そのため、介護休業や男性育児休業の取得推進など、仕事と私生活の両立を支える制度整備にも取り組んできました。現在も70代以上の従業員が数多く活躍しています。

2032年の創業60周年に向けては、6カ年計画を策定し、2026年4月には全国の拠点長や介護施設長ら約200人を集めたキックオフ会議を開催しました。創業以来、毎年増収を継続してきましたが、今後は新たなマンパワー事業モデルの実装などを通じて、グループ売上高300億円超を目標に掲げています。

同時に、2026年4月1日付でグループ再編を実施し、統括会社リエイを含む、国内主要7社体制へ移行しました。次世代の経営を見据えた組織設計を進めている段階です。

苦い経験や失敗も含め、事業の転機には常に人との縁があり、それらが今の経営を形作っています。現在、業務の効率化を進めていますが、「AIが人の仕事を奪う」と言われる今だからこそ、人にしかできない仕事をより一層大切にしていきたいと考えています。サービスの現場を支えるのは、やはり人の温かみです。これからも、そのホスピタリティを忘れることなく、「人が中心にある経営とサービス」を軸に持続的な成長を目指します。

<取材を終えて>
オリックス株式会社 千葉支店 荒木 祐作

取材を通じて強く伝わってきたのは、事業の広がりの背景にある「人に喜ばれること」を大切にする姿勢の一貫性でした。効率化やDXといったテーマにおいても、人にしかできない価値をどう残すかを軸に据えている点が印象的です。事業の深化とホスピタリティの両立——その考え方こそが、リエイの強みであり続けていると感じました。

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