[取材先]三浦建設工業株式会社(青森県)
本記事は2026年3月時点の情報を基に作成しています。
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古くから鉄加工技術が発展し、港を通じて全国と交易を行ってきたものづくりの町・青森県八戸市。この地で1916年に創業したのが、老舗鉄骨ファブリケーターの三浦建設工業です。船舶金物から建築鉄骨へと事業領域を広げ、鉄骨事業を中核とする現在の体制を確立。高い技術力と、広大な敷地を生かした一貫生産体制を強みとし、地域と共に成長してきました。

2025年、経営のバトンを受け継いだのは、三浦 統巨社長と喬史専務の若き兄弟です。会計と営業、それぞれの専門性を掛け合わせ、「現場と経営の一体化」を旗印に、100年企業に新たな風を吹き込んでいます。

事業競争力をいかにしてさらに高め、地域と共にどのような未来を描くのか。代表取締役社長の三浦 統巨氏、専務取締役の三浦 喬史氏に、オリックス 青森支店の吉岡 隆太郎と佐護 秀行が伺いました。

技術力を軸に事業領域を拡張し、競争優位を確立

代表取締役社長 三浦 統巨氏

……まずは貴社の沿革についてお聞かせください。

統巨氏:当社のルーツは、八戸という土地の歴史と深く結びついています。かつて八戸藩は寒冷な気候で農業生産力は低かった一方、鉄鉱脈や良質な砂鉄といった天然資源に恵まれていました。その結果、鉄加工技術が発展し、八戸港を通じて全国と交易を行う「ものづくりの町」としての歴史が刻まれていったのです。

そうした土壌の中で、当社は1916年に三浦鉄工所として創業し、当初は船舶金物を手掛けていました。その後、戦後の社会インフラ整備や建設需要の高まりを背景に、国鉄関連のレール金物や建築金物へと領域を広げ、徐々に建築鉄骨へと軸足を移してきました。現在は鉄骨事業を中核に、地場の総合建設も手掛ける体制です。

大きな転機となったのは、八戸市で手掛けた高難度の膜構造(膜材を張力で成立させる構造)建築である八戸市屋内トレーニングセンターでした。ミリ単位の精度が求められる中、当社は一度で完璧に収めることができました。この実績が評価され、県外へと受注が拡大するきっかけとなりました。

膜構造建築の施工事例・八戸市屋内トレーニングセンター

……現在の事業構成と商圏についてもご説明いただけますか。

専務取締役 三浦 喬史氏

喬史氏:事業構成は、鉄骨事業が約8割、総合建設事業が約2割です。鉄骨の生産能力は需要の拡大に合わせて段階的に増強しており、現在は月産1500トン(年産1万8000トン)規模まで拡大しています。

商圏も時代とともに変化しました。かつては地元案件が主でしたが、現在は地域の人口動態や建設需要の変化を踏まえ、関東圏や仙台圏など県外の大型案件にも積極的に取り組んでいます。一方で、地元案件も全体の1~2割を占めており、引き続き大切な商圏の一つです。

……県外の大型案件を獲得できる要因は、どこにあるとお考えですか。

統巨氏:第一に品質です。当社は国土交通大臣が認定する鉄骨製作工場認定制度の立ち上げに関与し、初期段階から制度づくりに参画してきました。現在は同制度における5段階のグレードのうち、上位に区分される「Hグレード」認定工場として1979年の制度開始当初から認定を受けています。

さらに、厚板溶接など、より高い仕様への対応力を示す「高規格材適合工場」にも認定されています。Hグレード認定工場が日本全国で約390社ある中で、高規格材適合工場の保有企業は20社以下に限られるとされており、当社の品質管理能力を示す指標の一つになっています。

喬史氏:近年需要が増えているデータセンターや半導体工場などの高難度案件に対応できる総合力も強みです。重量機器を支えるため床荷重が大きくなりやすく、鋼材も重量化する分、加工精度や溶接品質、検査まで含めた対応力が求められます。こうした高度な条件に応えるため、経営資源を要求水準の厳しい領域に集中させることで、技術力と信頼を基盤に受注へつなげています。

……品質を支える生産体制にも特長があると伺いました。

統巨氏:当社では、一次加工から製品完成までを一貫して行う体制を早くから整備してきました。外注比率が高いと品質や納期が不安定になり、工程間の情報も分断されがちですが、一貫生産によってそれらの課題を解消しています。

喬史氏:工場レイアウトにも特長があり、原材料の搬入から製品の搬出まで、入り口から出口へ工程が一直線に流れる設計です。工程間の「横持ち(構内移動)」を抑え、生産効率と管理性を高めています。

広い敷地を確保できる八戸の立地を生かした工場レイアウト。工場棟の全長は約185mにも及ぶ

……直線のレイアウトは、広い敷地を生かせる八戸の立地ならではですね。ほかにも立地の利点はありますか。

統巨氏:港湾機能を活用できる点です。トラック輸送の担い手不足や輸送力の低下が懸念されている「物流の2024年問題」を見据え、約3年前に八戸港から関東方面へ海上輸送するルートを構築しました。

喬史氏:海上輸送はトラック輸送に比べて一度に運べる量が多く、輸送コストの抑制につながります。CO2排出量削減の観点でも効果が期待できます。ルート構築にあたっては地元の運送事業者にもご参画いただき、地域経済への波及も意識しました。

約18000m2の大型ストックヤードと、東北エリア有数の規模を誇る工場

新体制が拓く、現場と経営の一体化

……そうした競争力を磨く一方で、2025年から新体制へ移行されたとのことですが、事業承継はどのように進められたのでしょうか。

統巨氏:父である当時の社長(現会長)が「元気なうちに次世代へ引き継ぐ」という方針を明確にし、計画的に進めました。単なる世代交代ではなく、海上輸送ルートの構築のような新しい施策を迅速に進めるため、意思決定の体制を見直す狙いがありました。

新体制では、兄弟それぞれの強みが生きる形で役割を分担しています。私は会計事務所や法律事務所での経験を踏まえて、経営・管理を担当し、数字の把握や法務・契約リスクの管理を行いながら、意思決定を担っています。

喬史氏:私は鉄鋼商社での営業経験を生かし、営業と製造現場を担当しています。承継にあたっては溶接や検査の資格も取得し、現場理解を深めました。兄弟で役割を明確に分け、強みを掛け合わせて事業を推進しています。

……新たな体制として掲げる目標はありますか。

統巨氏:現場と経営がより一体化した組織を目指しています。ここで言う一体化とは、現場の改善が利益や成長につながり、経営判断も現場の納得感を伴って実行される好循環をつくることです。そのために「個の力の最大化」と「組織としての視座の共有」の2軸で取り組んでいます。

まず「個の力の最大化」については、業務に関連する資格取得費用を会社が全額負担し、合格者には報奨金や手当も支給しています。こうした制度を通じて、社員一人ひとりのスキル向上と成長を後押ししています。

次に「組織としての視座の共有」ですが、私自身が現場の従業員に向けて、原価計算や利益が生まれる仕組みを直接説明する機会を設けています。自分たちの仕事が会社の価値や収益にどう結び付いているのかを腹落ちしてもらうことが狙いです。

喬史氏:現場でも、変化が着実に表れています。従来の手順をただ踏襲するのではなく、「より良い方法はないか」と主体的に考える文化が根付き始めました。例えば工程管理は、紙と手作業から二次元コード活用型に刷新し、進捗をリアルタイムで共有できるようにしました。現在は現場に定着し、使い勝手を良くする提案も出ています。

紙ベースだった工程管理を刷新。二次元コードで進捗を共有する仕組みは現場に定着し、業務効率化に貢献している

「人の基盤をつくる会社」へ。次の100年を見据えた挑戦

……最後に、次の100年を見据えて、今後の方向性を教えてください。

統巨氏:これまでの100年が「建物をつくる会社」であったとするならば、これからの100年は「人の基盤をつくる会社」へと進化したいと考えています。そのために最も重視しているのが、付加価値の向上と、それを原資とした賃金の引き上げです。賃金の上昇は、社員一人ひとりの人生における選択肢を広げ、豊かな生活の実現につながります。

企業が持続的に成長し、質の高い雇用を生み出し続けることで、地域社会の持続性も高まっていく。本業を通じて社会に好循環をもたらす存在になることこそ、次の100年に向けた私たちの大きなテーマです。

<取材を終えて>
オリックス 青森支店 佐護 秀行、吉岡 隆太郎

高い品質を支える生産体制と長年の実績から、地域を支えてこられた三浦建設工業さまの歩みと競争力の源泉を実感する取材となりました。事業承継を契機に、現場と経営の距離をさらに縮め、組織を進化させていく姿勢は非常に印象的です。企業の成長と地域の発展を両立させる同社の挑戦を、オリックスとしても今後さらに力強く支援していきます。

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