「断らない医療」を徹底し、地域に必要とされる医療を安定的に提供する体制を目指してきた一宮西病院。約10年間で、医師数4倍、法人売上3倍超にまで拡大した実績は、医療業界のみならず、各種メディアでも大きな注目を集めています。

その成長の裏にある病院改革を進めた立役者が事務長の前田昌亮さん(以下、前田さん)です。実は前田さんは、これまで職場環境の不一致によって2度の“うつ”を経験。3回の転職を経て、ようやく活躍できる場所に巡り逢い、成功体験を得ることができました。

そんな前田さんが今年3月17日、自身初の著書となる『弱さを装備する』(マイナビ出版)を上梓。これまでの経験を通じて見えてきた「自分が輝ける場所の見極め」「職場での人間関係」「上司自らの自己開示」の重要性などをはじめ、弱さを抱えた中間管理職に向けて、自分が管理する組織をより良くするための具体的な指針が示されています。

  • 『弱さを装備する』の表紙画像

    『弱さを装備する』の書影

今回、前田さんを直撃し書籍を執筆しようと思ったきっかけや、仕事・キャリアに悩むビジネスパーソンに伝えたいメッセージについてお聞きしました。

  • インタビューに応える前田さん
プロフィール 社会医療法人杏嶺会 営業・人事本部長・一宮西病院事務長。1977年兵庫県神戸市生まれ。同志社大学商学部卒業後、株式会社キーエンスに入社し、法人営業に従事。その後、株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア株式会社)、レイス株式会社で人材紹介・ヘッドハンティング事業に携わり、延べ2,000人以上のキャリア支援を行う。2013年より杏嶺会に入職し、医師採用を中心とした人事改革に取り組む。人事部長就任後は、採用戦略や組織体制の再設計、管理職層のマネジメント支援を通じて病院経営の基盤強化を推進。その結果、2013年の杏嶺会入職後、医師数を4倍に拡大し、法人売上は3倍超の成長を達成。現在は法人全体の営業・人事部門を統括すると同時に、一宮西病院の事務長として現場運営にも深く関与している。2度の“うつ”を経験した自身の実体験を背景に、成果だけに依存しない「病まない・病ませない組織づくり」を実践している。

ひた隠しにしてきたキャリアの“傷”が初めて肯定された瞬間――
書籍『弱さを装備する』が生まれたきっかけ

――『弱さを装備する』を出版しようと思われた動機について教えてください。

前田さん:自分のように折れて立ち上がりなんとかやってきた人間の経験が、世の中の人たちの役に立つかもしれないと思ったのがきっかけです。私は周囲の方から「前田は順風満帆なキャリアを歩んできたのだろう」と思われがちです。でも、実際は違います。私は3回の転職を重ね、今が4社目です。これだけ転職している人は少ないと思いますし、それだけマッチしたキャリアを歩めず、苦しんできました。でもある時、うまくいかずに苦しんできた経験を話した際に、「ギャップがすごい」「逆に興味が湧いてきました」「よく立ち直られましたね」と言ってもらえたんです。

――業界を問わず、マッチしたキャリアを歩めずにモヤモヤしている人は多そうです。

前田さん:人生やキャリアに満足している人の方が少ないと思います。特に今は、SNSなどで「ハッピーで充実している」ことをアピールしなければならない風潮があるじゃないですか。自分のダメなところやイヤなところを世の中にさらけ出しにくい傾向にあると思います。一部の人は公私ともに本当に充実しているのでしょうが、多くの人はそうではありません。仕事やキャリアが充実していなくても、そうした姿は見せずに弱さを抱えながら生きなきゃいけない。酷な時代ですよ。

  • インタビューに応える前田さん

――今回の書籍がまさに『弱さを装備する』と、悪者のように思われがちな「弱さ」を肯定しているのが印象的です。タイトルに込めた想いも教えてください。

前田さん:私は「ありのままで生きていくこと」に対して、非常に肯定的な人間なんですよ。自分にとっての「ありのままとは何か」を考えたときに最初に思いついたのが「弱さ」だったので、それをタイトルで正直に伝え、「弱い自分も受け入れて、ありのままで生きていこう」との想いを込めました。ただ、最後の最後まで悩みはしましたね。「『弱さを装備する』ってかっこ悪いかな?」って変なプライドが邪魔をして、ありのままでいるのはやっぱり難しいと痛感させられました(笑)

――「弱さを許すと甘くなるのではないか」という懸念を持たれることもあるかと思いますが、いかがでしょうか?

前田さん個人的には自分に甘くなっても構わないと考えています。でもそれは、一生懸命に生きていることが大前提。そんな人が、つらくなったり弱くなったりしたとき、ストイックに自分自身を追い込み過ぎると、潰れてしまいますから。確かに「甘え」と混同されるかもしれませんが、弱さを含めて「ありのままに生きる」のとは本質的に異なります。「ありのまま」というのは、戦った結果、自分の強みも弱点も理解している状態のことです。逆に言えば、戦った経験がない人は、自分が強いのか弱いのかどうかもわかりません。「甘え」とは、そもそも戦いを放棄しているという認識です。

『弱さを装備する』の内容を
「マイナビBOOKS」でチラ見せ

『弱さを装備する』をWebで購入

キャリアを再設計する「戦略的ダウンサイズ」のすすめ。
「存在承認」をしてもらえる環境に身を置くべき

――どうすれば、前田さんのように自身の弱さや過去を肯定的に受け止められるのでしょうか?

前田さん:まず、傷付いた瞬間は、絶対に肯定的にはなれません。私もズシッときて心が病みました。その瞬間だけを見れば自分にとって“傷”でしかなく、トラウマにもなるでしょう。でも、後から振り返ったとき、糧となりプラスになってさえすれば、肯定的に受け止めることができます。未来で成功体験を積んで初めて「結果的に過去は良かったよね」と言えるようになるんです。だからこそ、次のキャリアでは、うまくいく環境に身を置くことが欠かせません。つまり、キャリアの再設計が必要です。再設計ができなければ、自分の弱さや過去を引きずってしまいかねません。

  • インタビューに応える前田さん

――キャリアを再設計するには、具体的にどうすれば良いのでしょうか?

前田さん:最も有効なのは「戦略的ダウンサイズ」です。例えば、大企業は極めてシステマチックに組織が動いているため、個人の価値観やパーソナリティ、ハンディキャップにまで手が回りきらないのが実情です。一方で、中小零細企業には、社長以下、スタッフは数名といったところも少なくありません。社員一人ひとりに寄り添い、さまざまな事情を考慮しながら時に優しく時に厳しく、温かく見てくれることでしょう。所属する組織を戦略的にダウンサイジングしていけば、ビジョンと仕事内容を経営者と密に共有することができ、それが自分に合うかどうかが手に取るようにわかります。私はそうやってキャリアを再設計することができました。

――所属する組織の規模が小さくなるのは「負け」のようなネガティブなイメージも付きまといますが、そうではないんですね。

前田さん:私はダウンサイジングした今の環境のほうが好きですね。ライバルが少なく、相対的評価から逃れられた人生って、すごく自由なんですよ。これを「負け」や「逃げ」と捉えるかどうかは、自分次第。周りの人は、他人のキャリアにそこまで興味がありません(笑) 私も振り返ると、他人と競争し、誰かからの評価を気にしてばかりで「何に見栄を張っていたんだろう」と、つくづく思います。ダウンサイジングによって自由な環境へ踏み出すことは、最も適材適所に近い道のりです。人生の究極的なゴールは、幸せになること。それに沿って納得できるキャリアを歩んでいくことのほうが、変なプライドに固執するより大切なのではないでしょうか。

  • インタビューに応える前田さん

――価値観を転換してくれる考え方ですね。弱さや過去を肯定するには、キャリアを再設計して、成功体験を積むのが必要とのことでした。成功体験を積みやすい環境は、どのようなものですか?

前田さん:「存在承認」をしてもらえる環境に身を置くべきです。人は自分で自分の人生を認めるのは難しく、他人から認められることが成功体験につながっていきます。コーチングの世界では、承認に「成果承認」「行動承認」「存在承認」の3種類があると言われていますが、何よりも「いてくれて嬉しい」と思ってもらえる「存在承認」が最も重要でしょう。存在を承認してもらえている人は、がんばって行動し、成果を上げ続けられるスパイラルに乗れます。反対に「いなくてもいい」と存在を否定されてしまったら、そこで生きていく意味を見失ってしまいます。

――ちなみに、前田さんが弱さを受け入れていく過程で、支えになった人はいましたか?

前田さん:今も一緒に働く職場の同僚ですね。一宮西病院の事務・人事改革を一緒に進めた同志・戦友のような存在で、「二人で一緒にがんばるぞ」「よりよい病院にしていくぞ」と励まし合っていました。存在を認めてもらえるまでどうしてもタイムラグが生じるものですが、途中で心が折れずにがんばれたのは、彼と黎明期を過ごし、共に戦えたからにほかなりません。朝から二人で勉強会を開いて医療ニュースを読み合わせしたり、この輪を広げていくために『熱き働き人』という社内広報誌を勝手に作って全職員に配ったりしました。当時の幹部にはめちゃめちゃ怒られましたが(笑)

  • 『熱き働き人』第1号の画像

    『熱き働き人』の第1号では前田さんが登場し、仕事にかける情熱や理想の病院などについて発信した

『弱さを装備する』の内容を
「マイナビBOOKS」でチラ見せ

『弱さを装備する』をWebで購入

人の弱さを受け入れて結果を出す組織づくりで、
管理職が押さえるべき3つのポイント

――管理職が個人の弱さを認め、組織として成果を出すために、今日から実行できるアクションがあれば教えてください。

前田さん:第一に部下とのコミュニケーションです。上司が評価者である以上、部下はそう簡単に腹を割って喋ってはくれません。表層的な言葉ではなく、その奥底にある価値観を吸い上げる必要があります。内容ではなく、その背景にある気持ちに耳を傾けるのがポイントです。次に、部下を「総合得点」で見ないこと。仮に総合点が低くても、何か突出した能力があれば、その分野の仕事に関しては圧倒的な成果を出す可能性があります。部下の能力や価値観、メンタリティを細かく把握し、そのうえで大胆な配置換えをしてあげてください。適材適所でアレンジメントすることが管理職の役割です。

――個人の弱さを認めた組織では、どのようにして数字を追いかけると良いでしょうか?

前田さん:私は「日次」で管理し、報告しないといけない仕組みを作っています。進捗を毎日確認していれば、部下は抱え込まず、早くSOSを出すことができますので。具体例を挙げると、営業系職種に対しては、火曜日までに50%、木曜日までに100%を求めています。前もってSOSが出れば一緒に対策を考えられますし、最終日に厳しく詰めることになって互いに嫌な気分になることもありません。ただ、ごく一部のハイパフォーマーは、日次や週次で管理されることを嫌います。そういう人たちには「何かあったら、アラートだけ出してくれ」と任せています。

――最後に、人生やキャリアに悩んでいるビジネスパーソンに向けて、メッセージをお願いします。

前田さん:人生やキャリアがうまくいかないことが続くと自己否定に陥り、「どこへ行ってもどうせダメだ」と苦しい現状に耐え忍ぼうとしがちですが、勇気を出してキャリアの再設計をしてみてください。私みたいな人間もいるので、ありのままの自分を冷静に受け止め、別の環境で花を咲かせることを諦めないでほしいですね。

***

一生懸命に働き、毎日必死に生きているのにうまくいかない。それは必ずしも自分自身の問題ではなく、環境とのミスマッチが要因かもしれません。『弱さを装備する』では、失敗を唯一無二の武器に変える「キャリアの掛け算」の考え方や、自分の回復力を高め、奮い立たせる方法など、キャリアの再設計に役立つ実践的なトピックが紹介されています。気になった方は、ぜひ書店などで手に取ってみてはいかがでしょう?

『弱さを装備する』の内容を
「マイナビBOOKS」でチラ見せ

『弱さを装備する』をWebで購入

一宮西病院のホームページはこちら

[PR]提供:社会医療法人杏嶺会