人口減少・高齢化に伴う社会課題が深刻化する中、地域の活性化は「待ったなし」の局面にある。各地で志ある担い手が動き始めている一方、ノウハウや人材不足を背景に、取り組みが継続・拡大しにくい地域も少なくない。

NTT西日本は、西日本エリア30府県に根ざす事業基盤をいかして地域が抱える本質的な課題を探索し、地元パートナーと共に持続可能な解決策を創出する活動を進めている。その活動を深化させ、より広範な支援を可能にするため、2021年に100%子会社として「地域創生Coデザイン研究所(以下、Coデザイン研究所)」を設立。地域に伴走し、実装までを見据えた共創を加速させている。

本記事では、両社の活動に共感し協働する南雲岳彦氏と赤澤茂氏、そしてNTT西日本の寺田雅人氏、Coデザイン研究所の東山真也氏に、「地域創生で何を優先し、どう実現へつなげるか」について話を聞いた。

地域創生の思想と、共創を前に進める条件

――最初に、皆さんと地域創生の関わりをご紹介ください。

南雲氏:住民のウェルビーイング(Well-Being:心身の良好な状態)向上を目標にまちづくりを推進し、全国のスマートシティの取り組みを支援する産官学民連携プラットフォーム「一般社団法人スマートシティ・インスティテュート」の代表理事を務めています。国や自治体、民間企業のアドバイザー、大学教授としても活動しており、NTT西日本とCoデザイン研究所が設置した「地域創生アドバイザー」として両社との協働も進めています。

赤澤氏:私はNTT西日本のOBで、社員時代から地域創生・スマートシティ領域の仕事に携わってきました。2021年からの4年間は兵庫県庁に在籍し、DX推進監としてスマートシティ、地域DX、自治体DXの推進を担いました。現在はNTT西日本の地域創生アドバイザーとして活動しています。

寺田氏:NTT西日本で西日本エリア30府県の自治体・企業に対し、ビジネス創造やICTのソリューションを提供する事業全体の戦略・総括組織の責任者を務めています。私自身は国の旗振りでスマートシティの取り組みが本格化し始めた頃から関わり、防災、観光など多様な領域でデジタル化を通じた地域創生に携わっています。

東山氏:自治体、企業などに地域活性化支援のコンサルティングサービス等を提供するCoデザイン研究所で取締役を務めています。NTT西日本時代は富山支店長として、自治体や地元企業と協力しながら、富山県内の地域活性化に取り組んでいました。

――そもそも地域創生とは何で、どのような思いで取り組んでいますか。

南雲氏:スマートシティはテクノロジー活用が注目されがちですが、近年は地域の価値や文化、歴史を踏まえたエコシステムづくりこそが幸福に最も寄与する、という方向に進化しています。

テクノロジーは重要ですが、まずは地域の個性や、市民が何を幸福と感じるのかを理解しなければなりません。そこで、各自治体アンケートに基づく主観指標と、各種オープンデータに基づく客観指標を組み合わせ、「暮らしやすさ」と「幸福感」を数値化・可視化した「地域幸福度(Well-Being)指標」をつくりました。現在はこれが日本の公式な指標となり、デジタル庁の施策等で活用されています。

この指標を用いると、その地域ならではの“幸せの形”が見えてきます。その見えてきたものに基づき、強みを伸ばし、弱い部分を補っていく。これにより、優先順位を明確にした戦略的なアプローチが可能となります。東京の成功例を単純に横展開するのではなく、地域の最も大切なものを守る形でまちづくりを進めることで、地域独自の魅力は増し、より輝いていくと感じています。そうした思いから、まずは地域の“お宝探し”に取り組み、その活動のベースとなる人づくりを進めているところです。

赤澤氏:日本の地方部は、実はもともと非常に豊かです。水も野菜も美味しく、温泉や観光資源も豊富にあります。NTT西日本にも、地方支店勤務でウェルビーイングやQOL(生活の質)の高い暮らしを実感し、住み慣れると「もう帰りたくない」という社員が多くいます。それを都会の物差しで金銭価値に置き換えようとするから、議論が複雑になってしまう。地方部は街に人が少なく、シャッター街が生まれ、工場も撤退していくなど影の部分がクローズアップされ、都会のものをコピーしようという話になりがちですが、もともと豊かなのですから、その豊かさを発見していくことが必要です。

とはいえ、人口減少と高齢化で担い手が少なくなっているのも事実です。ではその人手不足をどうカバーするか。ここでデジタルやICTの出番になります。すでに光ファイバーが全国に張り巡らされ、誰もがスマートフォンを持っているので、デジタル活用の土壌は整っています。だからこそ、都会の価値観を押し付けずに、マネタイズを急がず、それぞれの地域の価値観に合わせた形で進めることが最良でしょう。

寺田氏:民間企業の立場としては、基本的には各地域でソリューションをつくり、それを横展開したいと考えています。ただ、ここ数年取り組む中で、ビジネスの価値観だけでは簡単に進まないこともわかってきました。もちろん、データをつなぐインフラなど当社が得意とするものは全国共通で整備するのですが、その上で地域のつながりをつくって、そこに各地域独自の価値を乗せていくという階層構造で地域を盛り上げる必要性を感じています。

東山氏:もし富山支店長の経験がなければ、地域創生の仕事に強い関心を持たなかったと思います。支店長は、地元自治体をはじめ、企業や農業・漁業の従事者、そして住民と地域のすべての方がお客さまです。多種多様な社会課題に日常的に接する中で、地域の課題解決にコミットするのは当然だというマインドが生まれました。息の長い仕事だからこそ、小さな成功体験を積み重ねながら仲間を増やし、一つのチームとして着実に歩んでいくことの重要性を実感しています。

スマートシティに求められる、幸福起点のICT活用

――実際に地域創生を進める上で、ICTは重要なツールとなります。実際にどういった取り組みを進めているのか、またICTをどう活用しているのか、事例を教えてください。

寺田氏:NTT西日本は通信事業者として全国共通のインフラを提供すると同時に、そのインフラを活用した各地域の活性化にも注力しています。事例は数多くありますが、特に近年は人手不足の解決に資する技術への注目が高まっており、そこに着目した最新の取り組みを2つご紹介します。

1つは自動運転のEV(電気自動車)バスの事例です。高齢者を中心に移動が困難なケースに対し、自動運転バスでそのソリューションを提供できるようになってきました。現在、全国約20カ所で実証を進めており、そこで収集したデータをいかして実績を蓄積し、本格運用につなげていきます。

2つ目はロボットです。最近はフィジカルAIが話題となり、ロボットとの組み合わせで飛躍的に進化すると目されています。ロボットメーカーと提携し、当社はロボット制御プラットフォームを提供する役割分担で事業を推進しています。これらに加え、あらゆる課題解決のベースとなる、全国各地のデータの共有・連携を可能にするデータ基盤の構築にも地道にも取り組み続けています。

東山氏:Coデザイン研究所でもさまざまな実証を進めています。ICTが人手不足の解決や業務効率化に不可欠であることは間違いないのですが、一方でICT一辺倒のアプローチに偏ると「それは人に寄り添っているのか」「人の幸福や可能性を高めることにつながっているのか」といった論点が置き去りになりがちです。

そこで現在注力しているのが、AI同士が相互に議論を行い、多様な視点から話題を広げるNTTの大規模AI連携技術「AIコンステレーション®」を活用した、人と組織の可能性を引き出す「会議シンギュラリティ」の取り組みです。日本の会議では忖度の問題に加え、専門知識を持つ人の前では意見を言いにくく、議論が活性化しないといった課題がよく指摘されます。福岡県大牟田市で行った実証では、参加者個々の役割をAIに持たせ、AI同士の議論結果を見た上で実際の会議に臨んでもらうと、心理的ハードルが下がり、良い会議ができるという結果が出ました。こうした実証を重ね、ICTが人と組織の可能性を引き出せることを確認した上で、社会実装につなげていきたいと考えています。

南雲氏:インフラだけが充実しても、幸福度は高まらないということがわかってきました。逆に言えば、幸せをつくる要素に着目したテクノロジーのあり方には、幸福度を高める可能性があります。いまの会議の話は、まさにそこにアプローチしています。こうしたテクノロジーは、ウェルビーイングを高める大きなドライバーになり得ます。Coデザイン研究所と共に、地域幸福度(Well-Being)指標を活用できる人材の育成を進めており、ウェルビーイング向上の施策をデザインできる人づくりに引き続き力を入れていきます。

赤澤氏:NTT西日本での経験、また兵庫県庁での4年間だけとっても、技術の進化を改めて実感しています。一方で兵庫県庁では、行政のデジタル化を進める上で最大のボトルネックが「デジタル・ディバイド」でした。

高齢者や身体の不自由な方がデジタルを使えないことが大きな悩みでしたが、現在は使いやすい機器も増え、解決に向けた土壌が整ってきました。きめ細かな動きができるロボットによる人の作業の代替も進み、フィジカルAIも実現に向かい始めています。Coデザイン研究所との協働でも、地域創生アドバイザーとしてNTT西日本と行政での経験をいかしていきたいですね。

――両社に期待することを教えてください。

南雲氏:地域と共にという精神が浸透したNTT西日本グループのカルチャーが私は好きです。地域の暮らしや産業を支えるインフラとして、人々と向き合い続けてきた企業だからこそ、地域社会の声・思いを大切にしながら共に発展していくという姿勢が自然に築かれてきたのだと思います。協働を進める上で、こうしたスタンスは非常に重要です。

その社会的価値がミッションに組み込まれているNTT西日本グループの人たちと一緒に、幸福度の高さをどう練り上げていくか。人口が減り高齢化する社会という点で、日本は世界の先端を走っていますが、これはいずれ各国も直面していく課題です。人類に貢献できる価値創造を、これからも共に続けていけることを期待します。

赤澤氏:兵庫県庁に出て社外から客観的に見たとき、NTT西日本グループは地域創生に正面から向き合える数少ない会社だと感じました。通信基盤をはじめとするハード面が注目されがちですが、地域のために頑張ろうというマインドを持った社員がグループに数万人単位で在籍しており、これはとても大きな資産です。その土壌の上にCoデザイン研究所も設立されました。今後に大いに期待していますし、私も貢献したいと思っています。

共創の先に見据える、地域創生・スマートシティの未来

――今後、地域創生に関してどのような挑戦をし、何を実現したいですか。

南雲氏:日本は今後、スマートシティについて4つのモデルを推進すべきで、それが次の地域創生にもつながっていくと考えています。人間の信頼や、その土地ならではの文化・土壌をベースにした「コモンズスマートシティ」、自然環境を中心に置いた「バイオフィリックスマートシティ」、AI同士が会話しながら人間と共生する「コグニティブスマートシティ」、そして、数十年先の未来を見据え月面にウェルビーイング社会をつくる「ルナースマートシティ」です。私としてもこの4つの実現に力を入れていきたいです。

赤澤氏:私も、南雲さんが挙げた4つのスマートシティの実装に取り組みたいと思います。各モデルがどういった地域にフィットし、具体的にどのような技術・仕組みが必要になるのか。民間と行政の双方を経験したフラットな立場で論点を整理し、実装に向けた課題解決と実践に取り組んでいきます。

寺田氏:民間企業として、地域における持続的な活動にこだわっていきたいと考えています。幸い、日本ではスマートシティに関心を持つ組織が増え続けています。この状況を追い風に、地域、あるいは全国の仲間と共に、一歩でも二歩でも前に進めていきたいとの思いです。

東山氏: Coデザイン研究所として課題解決に向けアプローチできる分野を広げていきます。その中で、「この地域が好きだ」と感じる若い世代がどんどん増えていくような取り組みに力を入れ、地域活性化につなげたいと考えています。

――最後に、地域創生に課題を抱える、あるいは関心を持つ読者にメッセージをお願いします。

南雲氏:とにかく、自信を持ちましょう。地域の宝を再発見し、それをさらに大きくすることが幸せへの近道です。

赤澤氏:まずは、何より好きなこと、自分がこうしたいと思うことに取り組んでください。

寺田氏:NTT西日本は地域創生に積極的に取り組んでおり、これからも挑戦を続けるので、同じ志を持つ皆さまと一緒に盛り上げていきたいと思います。

東山氏:地域独特の価値を新しい価値に変えていくお手伝いをしていきたいと考えていますので、お悩みや課題があれば、ぜひお声がけください。

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