Webサイトやアプリを利用していて、「本当に自分の意思で選んだのだろうか」と、ふと違和感を覚えた経験はありませんか。契約や購入、会員登録といった日常的な行動には、実は利用者を意図せず誘導してしまう「ダークパターン」の危険が常に存在します。

ダークパターンは消費者だけでなく事業者にもリスクをもたらします。現在国内で広まりつつある消費者保護の動きも踏まえ、一般社団法人 ダークパターン対策協会の取り組みを見ながら、消費者に信頼される事業者に何が求められているのかに迫ります。

消費者だけでなく事業者にとってもリスクの大きいダークパターン

必ずしもすべてが直ちに法律違反と判断されるわけではありませんが、わかりづらい表示や面倒な手順などにより、消費者に不注意や短気を起こさせ、望まない出費や個人情報の開示などに誘導する不適切な設計は「ダークパターン」と呼ばれています。

ダークパターンが消費者にとって不利益をもたらすものなのはもちろんですが、サービスを提供する事業者にとっても決して良いものではありません。利己的な理由で悪意を持って設計している場合だけでなく、利用者に利便性を提供するつもりで意図せずダークパターンを用いてしまった場合でも、モラルの低い事業者だというイメージが消費者に広まる恐れがあるからです。

例えば、ECサイトでの購入画面において、定期購入にデフォルトで設定されていることがわかりづらくなっている設計は、1個しか買わないつもりなのに購入月以降も商品が届いてしまうといったことにつながる可能性があるため、ダークパターンと見なされかねません。

ダークパターンにはさまざまな種類があり、いずれもグレーゾーンを利用したり、利用者の心理につけ込むような行為であることが多いため明確な線引きが難しく、事業者は善意で設計したつもりでも消費者に悪意で設計したと受け止められる危険性をはらんでいます。ダークパターンは事業者にとって見えにくいリスクでもあるのです。

一般社団法人 ダークパターン対策協会は、ダークパターンによる被害を防ぐため、2024年9月に設立された中立的な立場の民間団体です。ダークパターンを利用していない誠実なサイトを審査して認定する「NDD認定制度」を運営しており、2025年10月にはガイドラインや認定マークを発表。2026年1月にはNDD認定事業者第1号が生まれています。

NDD認定制度は消費者をダークパターンから守る制度であると同時に、事業者が意図せずダークパターンを用いて消費者からの信用を失うリスクも低減させます。NDD認定制度がどのように事業者のリスク回避に役立つのか、ダークパターン対策協会が行っている取り組みや、NDD認定の申請を検討する事業者がどんなことを気にしているのかなどを、事務局長の石村卓也氏に聞きました。

  • 一般社団法人 ダークパターン対策協会 事務局長の石村卓也氏

    一般社団法人 ダークパターン対策協会 事務局長の石村卓也氏

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運用が始まって見えてきた、事業者はNDD認定の何を評価し、どこに迷うのか

――事業者からの相談内容や説明会での質問を通じて、各事業者がどのような考えで認定取得に向き合っているように感じていますか?

石村氏:NDD認定制度に関心を持っていただいている事業者は、自社のサイトが中立的な第三者から信頼できるサイトであると認定されたことを対外的に示せることが、認定取得の一番の動機になっていると感じます。

また、世界的にECにおけるユーザー保護のための法規制が強化されてきています。日本と欧米を比べると、消費者を守る法律には違いがあり、日本は欧米に比べるとまだ緩い状態ですが、日本においても法規制を強化する動きが出てきています。事業者としても、今後欧米に合わせて基準を引き上げていかないと、消費者だけでなく事業者自身も困ることが予想されます。

現在はグレーゾーンのまま曖昧に許されていることが、将来は問題視されるかもしれません。自社はそこに引っかからないのか、問題がある場合すぐに対処できるのか、はっきりわかる人は少ないです。

そうした社会の動きに今のうちから備えておこうと考えている事業者にとって、NDD認定制度は良いツールとして捉えられています。日本の特定商取引法などは、『ダークパターン』という言葉こそ使っていませんが、不透明なECでの取引から消費者を守り、健全な商取引が行われる社会を築こうという趣旨の法律です。これはダークパターン対策協会の理念とも一致します。

――申請を検討する事業者にはどんな共通点がありますか?

石村氏:我々がお話をしている事業者の多くは、LTV(Life Time Value)の向上を重要な経営目標として掲げています。その実現に向けて、ECやD2C(Direct to Consumer)の強化を成長戦略の中核に据え、デジタル取引の推進に取り組んでいます。

石村氏:ダークパターンを用いることは短期的には売上を伸ばすかもしれませんが、中長期的に見ると確実に顧客に嫌われます。中長期的なプランを持って事業を展開する事業者にとって、敢えてダークパターンを使用する選択肢はあり得ません。事業者は誠実な運営こそがLTVの向上につながることをよく理解しています。

また、昨今は消費者庁の行政処分も厳しくなってきています。そうした執行を受けるとレピュテーションに響きます。行政指導がなくても、消費者がSNSなどに投稿して炎上するリスクもあります。国内外でダークパターンを念頭に置いたルール整備や法執行が強化されつつある中、先んじてこれらに対するリスクを事前に回避する策という意味でもNDD認定制度が注目されています。

NDD認定がLTVの向上に役立つこと、リスクマネジメントになること、この2つの認識が共通点だと感じています。

――NDD認定の審査の申請をためらう事業者はどのようなところで迷っているのでしょうか?

石村氏:申請を検討する事業者がNDD認定制度の有効性に疑問を持たれることはあまりありません。すぐに申請されないのは、ガイドラインを守れないのではないかとの心配が大きいようです。

現在のガイドラインはVer1.1で、この中で整備されている審査項目は『購入前確認画面』『クッキーバナー』『組織的対策』の3つです。このうち難しいと思われがちなのが『組織的対策』です。

『購入前確認画面』と『クッキーバナー』は現場がやるべきことがはっきりしています。何をどこに表示するようにといったガイドラインで示されていることに準拠していけば良く、特にクッキーバナーについては、ツールの導入により、比較的手間をかけずに実装ができます。

これに対して、『組織的対策』は、社内の責任者を任命することや、消費者からの問い合わせ窓口の設置、ダークパターンが発生していないかのレビュー体制、発生してしまった場合に是正できる体制の構築などを求めています。これらは現場が自分たちの作業だけで完結できず、複数の部門間にまたがった対応が必要となる場合があり、「主導していく部門がない」という悩みが生まれます。このため、難しいと考えてしまいがちなのです。

  •  NDD認定マーク

     NDD認定マーク

――どのようにアドバイスしていますか?

石村氏:難しく考えすぎないように伝えています。一見大変そうに見えるかもしれませんが、そんなことはありません。多くの企業ではすでに、デジタル/EC担当部門、Webサイト/UX設計部門、プロダクト企画部門、法務/コンプライアンス部門、情報セキュリティ/個人情報担当部門などがUI・UX設計や表示内容に関与しています。

石村氏:誰も何もやっていないのにWebサイトを運営しているという事業者はないと思います。既存の関係部門の中で役割を明確にして、こういう場合はどこが主導権を持って対応すると決めて明文化しておけば、新しい動きにも迅速に対応でき、消費者を迷わせることもありません。新たな部門を設ける必要もありません。

責任者も、必ずしも役員や専門家である必要はありません。NDD認定を申請するWebサイトについて、ある程度全体像を管轄している人であり、変更が必要な時に決断してコントロールできる人であれば良いのです。

もちろん、事業者によって環境は異なります。自社の場合はどうすれば良いのだろうと疑問をお持ちの方はぜひお気軽にお問い合わせください。

――ほかにはどのような質問が寄せられていますか?

石村氏:NDD認定制度のガイドラインはVer1.1が最新です。今後、Ver2.0では審査の範囲が広がる予定です。この点に不安を抱いて、リリースのタイミングや範囲がどこまで広がるのか、あるいはどのくらい厳格になるのかといった質問を何度か受けました。

ダークパターンは判定が難しいケースが多くあります。このため、Ver1.1では比較的取り組みやすい、先述の3つの範囲を審査対象としています。Ver2.0では審査員によって判断が分かれるような場面をどうやって客観的に評価するかしっかり議論してガイドラインに反映したいと思っています。

石村氏:例えば、単体であればダークパターンとまでは言えない表示や設計であっても、それが複数重ねて使われて消費者の誤認を招いたり、意図に反して誘導したりする度合が大きい場合はダークパターンとみなす点数制も考えています。点数が一定基準内に収まる場合や、基準を超えてしまっても猶予期間内に是正したところはダークパターンとみなしませんが、点数が一定基準を超えて是正もないようならダークパターンとみなすという形です。この点数をチェックする仕組みとして現在AIツールを開発中です。

――スリーアウト制のようなイメージですね。いまの基準なら大丈夫でも、審査範囲が広がるとアウトが増えるかもしれないと感じている事業者に対しては、どのようなアドバイスをしていますか?

石村氏:審査範囲の急な拡大で事業者を困らせるようなことはしませんとご説明しています。事業者が実装にかかる時間はきちんと考慮して準備期間を設けます。NDD認定制度のガイドラインは、今後審査範囲の拡大と更新が既定路線です。変化していくもの、更新していくものとしてご理解いただきたいです。

NDD認定制度は一度取得したら終わりではなく、毎年更新する必要があります。これは法整備や新しいWeb技術の登場など、消費者を取り巻く環境の変化に対応しなくてはならないからです。このため、Webサイトに掲示する認定マークは認定取得一年目がブロンズ、二年目がシルバー、三年目がゴールドと段階的にグレードが上がる仕組みになっています。

  • 左から、ゴールド、シルバー、ブロンズ

    左から、ゴールド、シルバー、ブロンズ

ダークパターンは短期的には儲かっても、中長期的には消費者の信頼を失います。ダークパターンは消費者一人ひとりの信頼を大事にして、顧客のロイヤリティ向上や安定した収益確保を目指すLTVの考え方と逆行します。NDD認定ならば、LTVを上げる助けになります。それがダークパターン対策協会の目指すところです。

――ありがとうございます。

消費者志向経営自主宣言・フォローアップ活動にも活用できる取り組み

ダークパターン対策は、特別な企業だけが取り組む課題ではありません。消費者と誠実に向き合い、選択の過程を透明にすることは、信頼されるサービスづくりの土台になります。

消費者庁は2017年から事業者団体、消費者団体、行政機関からなる消費者志向経営推進組織」を設け、消費者志向経営を推進しています。そこで呼び掛けられている「消費者志向経営自主宣言・フォローアップ活動」は、消費者志向経営に誠実に取り組むことについて自主宣言するとともに、そのフォローアップ活動を周囲に働きかけ、企業の取り組みの普及を図るという内容です。消費者庁のWebサイトには1,000を超える賛同事業者の名前が掲載されています。

NDD認定取得はこの活動と相性が良いと言えるのではないでしょうか。NDD認定取得は、ダークパターンを利用しない消費者に対して誠実な組織に変革し、その状態を維持するためのツールとして活用でき、消費者志向経営自主宣言を行う組織としての実体的な証明の1つとして機能するからです。

石村氏はNDD認定制度が内容を更新していくことを踏まえ、長く消費者から信頼されるツールとして、「認定取得者が社内外のステークホルダーに対して誇りに思える制度にしていきたい」と語ります。

そのためにもダークパターン対策協会では、NDD認定制度の認知を広め、「5年後には一般消費者にある程度の認知を得て、認定マークが主要なWebサイトに普及している状態にしたい」との目標を掲げています。

多くのWebサイトにNDD認定マークが掲載され、安心・安全なインターネット環境が消費者の手に戻ることを願ってやみません。

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[PR]提供:一般社団法人 ダークパターン対策協会